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2024年8月 3日 (土曜日)

ファンズワースのスモーク第3弾

Smoke Sessions Records。1999年、ニューヨークのアッパーウエストにオープンしたジャズクラブ「Smoke」のオーナーが2014年に設立したジャズ専門レーベル。

そのジャズクラブ「Smoke」に出演している人気アーティスト、特に、実績のある中堅〜ベテランのジャズマンをリーダーにしたアルバムをメインにリリースしているのだが、その内容は「昔の名前で出ています」的な旧来のハードバップな演奏を懐メロ風にやるのでは無く、しっかりと現代の「ネオ・ハードバップ」や「コンテンポラリーなメインストリーム系ジャズ」な演奏に果敢に取り組んでいる。

そんなSmoke Sessions Recordsの実績のある中堅〜ベテランのジャズマンの中に「Joe Farnsworth(ジョー・ファンズワース)」がいる。ファンズワースは、1968年マサチューセッツ州生まれの、今年で56歳になる中堅ドラマー。テナー・サックスのエリック・アレクサンダーのサイドマンとしての実績が主で、あまり目立った存在では無かったが、Smoke Sessions Records専属になってから、充実のリーダー作をリリースする様になり、サイドマンとしても充実のサポートを提供している。

Joe Farnsworth『In What Direction Are You Headed?』(写真左)。2022年8月31日、NYの「Sear Sound Studio C」での録音。ちなみにパーソネルは、Immanuel Wilkins (as), Kurt Rosenwinkel (g), Julius Rodriguez (ac-p, el-p), Robert Hurst (b), Joe Farnsworth (ds)。Smoke Sessions Recordsから放つ約1年半ぶりのリーダー3作目。

現代ジャズ・ギターの雄、カート・ローゼンウィンケルと切れ味良いアルト・サックスのイマニュエル・ウィルキンスがフロントを張るクインテット編成。この編成の顔ぶれを見れば、単純に現代のネオ・ハードバップはやらないよな、と思って、ワクワクしながらのアルバム鑑賞である。
 

Joe-farnsworthin-what-direction-are-you-

 
冒頭の「Terra Nova」から、非4ビートの現代のコンテンポラリー・ジャズ志向、アメリカーナ系の牧歌的フォーキーでリリカルで流麗な演奏が繰り広げられる。新しい感覚と新しい響き。良い。ネイチャーな音風景が心地良い。

2曲目「Filters」では、ローゼンウィンケルのギターがバリバリ、高速モダールなフレーズを吹きまくり、ウィルキンスのアルト・サックスが相対する。素晴らしいアドリブ・フレーズのバトル。そこに、ロドリゲスのアコピが高速な弾き回しで応戦する。この2曲だけで、このアルバムは隅に置けない、素晴らしい内容のアルバムであることを確信する。

現代版の「70年代ジャズ・ロック」な小粋でグルーヴィーな演奏もあれば、硬派で正統派な現代のネオ・ハードバップな演奏もあり、ダンディズム溢れる硬派なエレ・ジャズもありと、バラエティー溢れる内容だが、どの演奏も「現代のコンテンポラリー・ジャズ志向」で統一されている。とっ散らかった感は全く感じられないのが素晴らしい。

そんな「現代のコンテンポラリー・ジャズ志向」をガッチリ保持し、バンド全体に波及させ、フロントを鼓舞しているのは、リーダーのファンズワースのドラミングである。ファンズワースのドラミングは、コンテンポラリー感が半端無く、今までに聴いたことのない、アグレッシヴでポリリズミック、変幻自在で硬軟自在なドラミングで、現代のコンテンポラリー感を増幅している。

決して古さを感じさせない、現代のネオ・ハードバップの最先端の音の一つを聴かせてくれる充実した内容は見事。ローゼンウィンケルのギターとウィルキンスのアルト・サックス、そして、リーダーのファンズワースのドラムが、とりわけ「新しい」。このクインテット、パーマネント化されるのだろうか。僕はパーマネント化を望みたい。そして、同一メンバー、同一志向での次作を早く聴きたい。
 
 

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