ECMのハーシュのソロ・ピアノ
暑い日が続く。というか、酷暑の日が続いていて、我々としては「命を守るため」の部屋への引き篭もりの日が続く。外は酷暑、気温が35度を超えているので、部屋はエアコンは必須。エアコンをつけて窓を閉め切っているので、部屋の中は静か。こういう時、僕はジャズの「ピアノ・ソロ」盤を選盤することが多い。
Fred Hersch『Silent, Listening』(写真左)。2023年5月 スイスにて録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Fred Hersch (p) のみ。現代の「ピアノの詩人」、フレッド・ハーシュのソロ・ピアノ盤である。ソロ・ピアノとしては2020年リリースの『Songs From Home』以来4年ぶり。また、ECMレーベルからは本作がソロ・デビュー作。
冒頭「Star-Crossed Lovers」は、期待通り、耽美的でロマンティシズム漂う、リリカルで流麗なタッチのソロ・パフォーマンスが繰り広げられる。なるほど、ハーシュっぽいよね、と思っていたら、2曲目の「Night Tide Light」の現代音楽っぽい、静的でアブストラクトな演奏に度肝を抜かれる。こういう面もハーシュは持っているのか、と興味深く耳を傾ける。
この静的でアブストラクトでフリーな演奏傾向は、3曲目「Akrasia」、4曲目「Silent, Listening」にも踏襲されるが、演奏の展開の中で、リリカルで耽美的でスピリチュアルなフレーズがスッと出てくるところが印象的。以降、ラストの「Winter of my Discontent」まで、アブストラクトでフリーな演奏と、静的でアブストラクトな演奏の邂逅の中で、リリカルで耽美的でスピリチュアルなフレーズが即興に浮遊する。実に欧州らしい、ECMらしい音世界。
収録曲もなかなか捻りが効いていて、ストレイホーン作の「Star-Crossed Lovers」、ジークムント・ロンベルグの定番スタンダード曲 「Softly, As In A Morning Sunrise」、アレック・ワイルダー「Winter Of My Discontent」、ラス・フリーマン作「The Wind」など、意外と捻りの効いたスタンダード曲を選曲して、ソロ演奏のベースとしているところが「ニクい」。
スタンダード曲の中では「Softly, As In A Morning Sunrise」のソロ・パフォーマンスが凄い。聴き馴染みのあるテーマをリリカルで耽美的に弾き始めるが、進むにつれ、徐々に即興演奏に突入、現代音楽の様なカッチカチ硬質で尖ったタッチで、フリーにアブストラクトに傾きつつ、リリカルにスピリチュアルに展開、そんな中で、耽美的に浮遊するアドリブ・フレーズは圧巻。
ハーシュらしさ満載。ハーシュしか出せない即興フレーズ、ハーシュ独特の音の重ね方、ハーシュのフリーでアブストラクトな展開、硬質なタッチで展開する耽美的でリリカルなアドリブ・フレーズ。適度なテンションのもと、ECMエコーで耽美的に響くハーシュのピアノ。
「ジャズにおけるソロ・ピアノの芸術に関しては、演奏家には2つのクラスがある。フレッド・ハーシュとそれ以外の人たちだ」という賛辞も大袈裟でなく納得できる、素晴らしいハーシュのソロ・パフォーマンスがこの盤に詰まっている。
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