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2024年8月の記事

2024年8月31日 (土曜日)

若き日のバグスの成熟度合い

ミルト・ジャクソン(Milt jackson)。ジャズ・ヴァイブの神様。愛称は「バグス」。このバグスのリーダー作を棚卸しがてら、聴き直しているのだが、バグスの初期のリーダー作って、どんなんだっけ、と思い当たった。

ブルーノートの『Milt jackson』、プレスティッジの『Milt Jackson Quartet』はしっかり聴いているが、その他は意外と怪しい。バグスのディスコグラフフィーを再確認して、該当する幾枚かの盤について語ってみたい。

Milt Jackson『Roll 'Em Bags』(写真左)。1949年1月25日と1956年1月5日の録音。Savoyレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、以下の通り。バグスは1923年1月生まれなので、1949年の録音時は26歳の時の録音になる。

1949年1月25日の録音(tracks 1-6)は、Milt Jackson (vib, p), Kenny Dorham (tp), Billy Mitchell (ts), Julius Watkins (French horn), Curly Russell (b), Kenny Clarke (ds), Joe Harris (timbales)。フレンチ・ホルンの参加が珍しいセプテット(7人編成)。

1956年1月5日の録音(tracks 7-9)は、Milt Jackson (vib, p), Lucky Thompson (ts) Wendell Marshall (b), Kenny Clarke (ds)。バグスのヴァイブと、トンプソンのテナーがフロントのピアノレスのカルテット(4人編成)。

バグス以前は、ジャズ・ヴァイブ奏者として有名な存在は、ライオネル・ハンプトンとレッド・ノーヴォの2人だけ。ハンプトンの演奏スタイルは「スイング」、ノーヴォの演奏スタイルは「ビ・バップ」。
 

Milt-jacksonroll-em-bags  

 
バグスは1945年、ディジー・ガレスピーの楽団に入って、プロとしてのキャリアをスタートさせていて、演奏スタイルは「ビ・バップ」。程なく、ハードバップのトレンドが押し寄せ、バグスはいち早くハードバップに適応し、ジャズ・ヴァイブの第一人者としての地位を確立している。

そんな「ビ・バップ」のバグスと、「ハードバップ」のバグス、両方のバグスのヴァイブが確認できるアルバムのこの『Roll 'Em Bags』である。1949年1月25日のセッションにて「ビ・バップ」のバグス、1956年1月5日の録音にて「ハードバップ」のバグスのヴァイブが確認できる内容となっていて、とても興味深い。

1949年1月25日の録音の、アルバム冒頭の「Conglomeration」のバグスのヴァイブは「ビ・バップ」だが、流麗かつファンキー&ブルージーな雰囲気濃厚なヴァイブは、ほぼ完成の域にあって、明らかに、ハンプトンやノーヴォのヴァイブとは一線を画する。テクニック面でも一段違う、高度でテクニカルで歌心溢れるヴァイブで、バグスの唄うようにヴァイブを弾き進める様は、他の楽器の演奏と比較しても、一段抜きん出ている。

1956年1月5日の録音では、バグスのヴァイブは「ハードバップ」。ジャズ・ヴァイブの第一人者として、ハードバップに完全適応した、流麗かつファンキー&ブルージーな雰囲気濃厚なヴァイブは完成されている。1949年1月25日のヴァイブと比較して、余裕度の高い、流麗度合いが増した、爽やかで軽やかなファンキー&ブルージーな雰囲気濃厚。

ジャズ・ヴァイブの神様「バグス」のジャズ・ヴァイブは、1949年の時点で、ほぼ完成の域に達していることが良く判る。これは、ブルーノートの『Milt jackson』、プレスティッジの『Milt Jackson Quartet』と同様。サボイにも若き日のバグスの成熟度合いが確認できる、重要な内容の盤があった、ということ。バグスのジャズ・ヴァイブの完成を確認する上で、このサボイの『Roll 'Em Bags』もマスト・アイテムな盤であることが良く判る。
 
 

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2024年8月30日 (金曜日)

Milt Jackson名盤 ”Bags’ Opus”

ミルト・ジャクソンはジャズ・ヴァイブの神様。愛称は「バグス」。このバグスのリーダー作を棚卸しがてら、聴き直しているのだが、バグスのリーダー作の中での名盤・好盤の類について、当ブログでまだまだ記事化されていないものがある。これはいかん、ということで、バグスのリーダー作の記事化のコンプリートを目指して、せっせとアルバムを聴き直している。

Milt Jackson『Bags' Opus』(写真左)。1958年12月28–29日の録音。United Artists レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Milt Jackson (vib), Art Farmer (tp), Benny Golson (ts), Tommy Flanagan (p), Paul Chambers (b), Connie Kay (ds)。バグスのヴァイブ、ファーマーのトランペット、ゴルソンのテナーがフロントの、バックには、トミフラのピアノ、ポルチェンのベース、ケイのドラムという、燻銀ピアノ・トリオがリズム隊として控えている。

このパーソネルを見て感じるのは、ハードバップ・ジャズのそれぞれの楽器の人気ジャズマンがズラリと顔を並べていて、これはもう、内容充実のハードバップ盤だということ。冒頭の「Ill Wind」で、この曲は、ファーマーのトランペットとゴルソンのテナー抜きの、バグスがメインのカルテットで、しみじみと始まるのが実に良い。バグスのヴァイブの流麗でブルージーで唄うような、染み渡るようなフレーズが映えに映える。
 

Milt-jacksonbags-opus

 
この盤には、ベニー・ゴルソンがいる。ハードバップのアレンジの最高峰の一つ「ゴルソン・ハーモニー」の創始者で、この盤でも、ゴルソン本人の作編曲で、「I Remember Clifford」と「Whisper Not」の2大名曲を、バグスのヴァイブがフロントで聴くことが出来る。これがまあ、名演中の名演で、他の演奏と印象が全く異なる。「I Remember Clifford」と「Whisper Not」って、ヴァイブの音が合うんですねえ。ファンクネス漂い、哀愁感タップリ、歌心満載。改めて感心。

ジョン・ルイス作の「Afternoon In Paris」も、曲の持ち味をしっかり踏まえて、アドリブをかます、バグスのヴァイブは見事だし、バラード曲「Thinking Of You」をやらせれば、バグスの面目躍如、自家薬籠中のもの、情感溢れ、耽美的でリリカル、それでいて、ファンクネスが実に芳しい、バグスならではの優れたバラード演奏を聴くことが出来る。ソロを取っても、バックに回っても、バグスのヴァイブは素晴らしいパフォーマンス。

タイトルの「Opus」から、バグスの名盤のひとつ『Opus De Jazz』を想起して、この『Bags' Opus』って、『Opus De Jazz』の二番煎じかと思ったら、全く違った。思い違いも甚だしい。『Opus De Jazz』が1955年10月の録音なので、この3年間で、バグスは確実に進化していた、ということ。バグスのパフォーマンスについては、この『Bags' Opus』の方が、『Opus De Jazz』の名演に比べて、演奏の深みが増している。
 
 

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2024年8月29日 (木曜日)

浪花エクスプレス ”No Fuse”

和フュージョン、いわゆる「日本のフュージョン・ジャズ」は、米国のフュージョン・ジャズとは距離を置いて、独自の進化・独自の深化を遂げた、と感じている。リズム&ビートはファンクネス皆無、フレーズの展開はロック志向、ソフト&メロウな雰囲気は希薄で、爽快感&疾走感が優先。和フュージョンは、世界の中で独特のポジションを獲得している。

日本の中での和ジャズは、かなり地域特性があった。東京の和ジャズだけがレコード会社に取り上げられ、メジャーな存在になっていったが、ジャズはそれぞれの地方で、独自の深化を遂げていったと思っている。地方に行けば、かなり地味な存在ではあるが、その地域ならではの「ジャズ・スポット」が必ずある。

浪花エクスプレス『No Fuse』(写真左)。1982年の作品。ちなみにパーソネルは、青柳誠 (ts, Rhodes), 岩見和彦 (g), 中村建治 (key), 清水興 (b), 東原力哉 (ds, perc)。ゲストに、マリーン (vo), 塩村修 (tb), 渕野繁男, 荒川達彦 (sax), 平山国次, 菅野真吾, 平山修三 (perc)。

上方フュージョンの牽引役として、浪花のファンの熱狂的な支持を受けて、大阪からデビューした、カシオペアやスクエアに並ぶ和フュージョンの代表的グループ「浪花エクスプレス」のファースト・アルバム。
 

No-fuse

 
この浪花エクスプレスのデビュー盤の出来は、カシオペアやスクエアのデビュー盤の出来を凌ぐ。繰り出されてくるフレーズが、実に滑らかで耳に馴染む。非常に鍛錬され洗練された音。流麗とはちょっとニュアンスが違う、しっかり芯の入った、力感溢れるロックなフレーズ。それでいて、和フュージョン独特の乾いたグルーヴ感がジャジーに響く。

今の耳で聴くと、「浪花エクスプレス」の音は、和の「クロスオーバー&ジャズ・ロック」。ガッツリ根性の入った、鍛錬&洗練された、浪花エクスプレス独特の展開は、東京フュージョンには無い、唯一無二なもの。

収録されたどの曲も良い出来だが、やはり1曲目の「Believin」が印象深い。浪花エクスプレスの代表曲であり、浪花エクスプレスの個性がガッツリ反映された名曲&名演である。

1982年という、ジャズ界ではフュージョン・ブームが下降線を辿っていた時期でのデビューだったので、カシオペアやスクエアに比べて、かなり損をしている。明らかにメジャーになり損ねた、人気バンドになり損ねた感が強い。

逆にだからこそ、今の耳で聴いて、このデビュー盤の『No Fuse』は、和フュージョン・ジャズの名盤の一枚として、大いに評価できるのだ。この『No Fuse』は和フュージョンの名盤の一枚。フュージョン者にとっては、避けられないマストアイテムです。
 
 

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2024年8月28日 (水曜日)

増尾好秋 ”Sailing Wonder”

増尾好秋。 1946年10月12日生まれ。今年で78歳。我が国の和フュージョンの代表的ギタリストの一人。渡辺貞夫に認められ、1968年から1971年まで、渡辺貞夫のグループに在籍。1971年に渡米。1973年から1976年までソニー・ロリンズのバンドに在籍したのは有名。

1980年代なかばから2008年まで、ニューヨークのソーホー地区に本格的なレコーディングスタジオ The Studio を所有し、プロデューサーとしても活躍。2008年より演奏活動に完全復帰。2012年6月より、日本での本格的なバンド活動を再開している。

増尾好秋『Sailing Wonder』(写真左)。1978年の作品。ちなみにパーソネルは、増尾好秋 (g, synth, perc),Eric Gale (g), Dave Grusin (synth), Richard Tee(p, org, key), Mike Nock (synth), Gordon Edwards (b), T.M. Stevens (b), Steve Gadd (ds), Howard King (ds), Al Mack (ds), Bachiri (perc), Warren Smith (perc), Shirley Masuo (vo), Judy Anton (vo)。

先に3枚のリーダー作をリリースしているが、この盤は実質上の増尾の初リーダー作と捉えても差し支えないだろう。キングレコード傘下のフュージョン・レーベル、エレクトリック・バードの第一弾アーティストとして契約しての、エレクトリック・バードとしての第1作。

当時、NYに在住していたこともあって、いやはや、錚々たるパーソネル。NYのクロスオーバー&フュージョン・ジャズの「名うて」のミュージシャン達が大集合といった風情である。これだけの「一国一城」的な一流ミュージシャンを集めると、意外とそれぞれ「我が出る」のだが、そうなっていないところが素晴らしい。
 

Sailing_wonder1

 
タイトルやジャケから想起される様に、「海」をテーマにコンセプト・アルバムである。が、それを意識させないくらい、収録された個々の演奏が素晴らしい。曲調もさまざまな増尾のオリジナル曲がメインで、増尾の作曲能力の高さとアレンジのアイデアの豊かさが感じ取れる。

クロスオーバー&フュージョン志向のエレ・ジャズだが、1曲目のタイトル曲「Sailing Wonder」だけ、フュージョンっぽい演奏だが、2局目以降は、どちらかといえば、クロスオーバー・ジャズな音志向が強い。クロスオーバー&ジャズロックとして良いかもしれない。

バンド全体、完成度の高い演奏で、聴いていて、とても清々しい気分になれる。躍動感と爽快感が半端ない。伝説のフュージョン・バンド「スタッフ」からもメンバー参加もあって、アルバム全体に、そこはかとないファンキーなグルーヴ感が漂うところもグッド。フュージョン者の我々からすると「たまらない」。

増尾好秋のギター・テクそのもの、作曲&アレンジの才能など、増尾好秋が持つ「個性と才能」の全てが感じ取れる、「増尾好秋のショーケース」の翼な優れた内容。増尾好秋の代表作の一枚です。

2015年6月23日のブログ記事「増尾好秋のフュージョン名盤」を全面的に改稿しました。
 
 

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2024年8月27日 (火曜日)

松岡 直也 ”Long for The East”

松岡 直也は、我が国におけるラテン・ジャズの第一人者。フュージョン・ブームの折には「ラテン・フュージョン」で一世を風靡した。聴けば直ぐに「松岡 直也のラテン・ジャズ」と判るくらい、松岡の個性溢れるアレンジが秀逸。コンテンポラリーな純ジャズ志向、フュージョン・ジャズ志向の「両刀使い」で、我々の耳を楽しませてくれた。惜しくも、2014年4月29日に76歳で逝去している。

松岡 直也『Long for The East』(写真)。1984年11月のリリース。ちなみにパーソネルは、松岡 直也 (p, syn), 津垣 博通 (key), 和田アキラ (g), 高橋ゲタ夫 (b), 広瀬 徳志 (ds), ウィリー長崎, カルロス菅野 (perc), 久保田 利伸, 楠瀬 誠志郎 (vo)。和ラテン・ジャズの第一人者、松岡 直也の個人名義アルバムの16枚目。

アルバムの冒頭「The Latin Man」は、ボーカル入りラテン・フュージョン。ボーカルが入って、いよいよ、和フュージョンも、米国フュージョンの如く、俗っぽいポップス・ミュージック化するのか、と暗然たる思いで聴き始めたら、なかなかにスケールの広い、日本人離れしたブラコンっぽい歌唱に耳を奪われる。なんと、このボーカル、ソロ・デビュー前の「久保田利伸」とのこと。コーラスには楠瀬 誠志郎が参加して、これまた良い味を出している。
 

Long-for-the-east

 
松岡のピアノ、シンセが大活躍。ラテンのフレーズを散りばめたアドリブ・フレーズは見事。シンセの使い方はセンスがよくて、陳腐な音色になっていないところが、これまた見事。ピアノやシンセの音色を「映えさせる」アレンジが、これまた見事。フュージョンにおけるラテン・ジャズというと、ちょっと陳腐で俗っぽい内容に陥りそうなんですが、そうはならず、小粋で躍動感&爽快感溢れる、クールでスマートな「ラテン・フュージョン」となっているところが秀逸。

サイドマンでは、土方のギターが素晴らしいパフォーマンスを披露している。千変万化な「芳醇で切れ味の良い」音色。クールでスマートな「ジャズロック志向」フレーズ展開。聴く者を圧倒する「高テクニック」。松岡のピアノ&シンセと絡むh土方のギターは、とってもスリリング。5曲目「The End Of The Way」に参加している、当時、プリズムから復帰した和田のギターも印象的。

アルバム全体を覆う、メランコリックで叙情的な響きが印象的。アレンジが優秀なので、インスト曲に飽きがこない、リピートに耐える演奏の数々。アルバム全体にラテン・テイストで統一感を醸し出し、リズム&ビートは「ジャズ・ロック」。僕はこのアルバムについては、松岡直也の名盤の一枚、と評価している。ジャケも秀逸。
 
 

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2024年8月26日 (月曜日)

今田 勝 ”アンダルシアの風”

台風10号の予報が「迷走」している。当初予報よりもどんどん西に西に進路予想がずれていく。テレビのワイドショーの天気予報のコーナーの気象予報士は概ね、変な解説に終始している。もはや、テレビの情報を鵜呑みできる状況では無い。

台風10号はどんどん西に逸れていくが、関東地方は当初予報は「曇り」だったのが、連日、ギラギラの真夏の太陽が照りつけ、猛暑日が続いている。「命を守る為の引き篭もり」も、もう一ヶ月を過ぎた。気がつけば、8月の最終週。来月からは9月である。

そろそろ「夏はボサノバ」でもないだろう。とはいえ、この酷暑な日々の連続では「熱いジャズ」は辛い。フリーなどはもってのほか。ということで、爽やか系のフュージョン・ジャズ盤を聴くことにした。和洋のフュージョン・ジャズ盤の優れどころを選盤する。

今田勝『アンダルシアの風』(写真左)。1980年の作品。ちなみにパーソネルは、今田 勝 (ac-p, el-p), 古野 光昭 (b), 守 新治 (ds), 今村 裕司 (perc), 渡辺 香津美 (g)。今田勝のトリオ(今田・吉野・守)にふたりのゲストが参加。全6曲の全てが、スパニッシュ・ジャズ&サンバ・ジャズ志向。

今田のトリオの演奏は、スパニッシュ&サンバなフレーズとリズム&ビートですっ飛ばすが、安易に当時流行のソフト&メロウに走らず、「スパニッシュとサンバとジャズの融合」レベルのクロスオーバー・ジャズな雰囲気が先行していて、甘々のイージーリスニングに陥っていないのは立派。
 

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音の雰囲気はスパニッシュ。ラテン・ジャズと言えなくは無いが、1960年代に流行った、コッテコテ妖艶なラテン・ジャズではない。当時のコンテンポラリーな純ジャズ的演奏展開は意外と聴き応えがある。

今田のアコースティック・ピアノがメインの弾きっぷりが良い。こういうスパニッシュ&ラテンなフレーズを速弾きするには、アコースティック・ピアノより、エレクトリック・ピアノをメインに選んでしまいそうなんだが、今田はあくまで、アコースティック・ピアノがメインで弾く。

エレクトリック・ピアノも弾くには弾くんだが、音的には、アコースティック・ピアノの音志向を逸脱しないレベルのエレピの音質に留めている。当然、シンセには手を染めていない。この辺りに、和の純ジャズ出身の今田の矜持を感じる。

ゲストで入っている渡辺香津美のエレギはさすが。今田の示す音志向に合致した、クロスオーバーで、メインストリーム志向の8ビートなエレギのフレーズを連発する。今村裕司のパーカッションの参加も効果的。躍動感と清涼感溢れるパーカッションは、今田のスパニッシュ&ラテン志向の音を、よりスパニッシュ&ラテンな雰囲気を増強している。

ちょっと長いが一言で言うと「清々しい躍動感と爽快感がメインの、クロスオーバーな、スパニッシュ&サンバ・ジャズ志向のコンテンポラリーな純ジャズ」と表現したら良いだろうか。我が国のクロスオーバー・ジャズの好盤の一枚です。
 
 

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2024年8月25日 (日曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その38

しかし、お盆も過ぎて、もうあと1週間で8月もおわるというのに「暑い」。暑い、というより酷暑である。「命が危険な暑さ」が午前中からで、もう朝9時には「命を守る引き篭もり」をせざるを得ない。日差しは強烈で、外に出て日に当たろうものなら、数十秒で露出している皮膚が「ジリジリ」してくる。

「命を守る引き篭もり」が7月の終わりから続いているのだが、引き篭もりの間は、ジャズを聴くか、ブログを整理するか、読書をするか、のいずれか。もちろん、家事はしっかりやっている。

ジャズはエアコンが効いた静かな部屋の中なので、色々な種類のジャズが聴ける。それでも、ハードな内容のジャズを聴いて耳がちょっと疲れた時は、感覚のリフレッシュを兼ねて、夏は「ボサノバ・ジャズ」をかける。

Sérgio Mendes and Brasil '66『Equinox』(写真)。1966年11月8日、1967年2月19日の録音。ちなみにパーソネルは、Sérgio Mendes (p, org, vo), John Pisano (g), Bob Matthews (b, sitar, vo, Tracks 2–10), William Plummer (b, sitar, vo, Track 1), José Soares (perc, vo), João Palma (ds), Lani Hall, Janis Hansen (vo)。

セルジオ・メンデスとブラジル'66の2枚目のアルバムで、1967年4月にリリースされている。ボーカリストにはラニ・ホールとジャニス・ハンセンが参加している。リーダーのセルジオ・メンデスはピアノと、意外とプログレッシブなオルガンを弾いている。
 

Sergio-mendesandbrasil-66equinox

 
内容的には「ボサノバ&サンバ・ジャズ」で、ボサノバ&サンバのリズム&ビートが優しく心地良い。1966年から1967年の録音なので、ソフトロックっぽい要素も入っていて、出てくる音は意外と新しい感覚に溢れている。全10曲中ブラジル人アーティストの作品が7曲、スタンダード・ナンバーが3曲と「ボサノバ&サンバ」色が濃い。

とにかく、従来からの手垢の付いた「ボサノバ&サンバ・ジャズ」の音ではない。それがこの盤の最大の個性。ブラジル側からの「ボサノバ&サンバ・ジャズ」なので、音志向の基本は「ボサノバ&サンバ」。やはり、優れた「ボサノバ&サンバ・ジャズ」は、アレンジが命であることを再認識する。

そして、女性ボーカルが印象的。「ボサノバ&サンバ・ジャズ」には、女性ボーカルがよく似合う。全編に渡って、女性ボーカルが効果的に入っていて、ちょっとコケティッシュに、ちょっとアンニュイに、気怠く唄う女性ボーカル。「ボサノバ&サンバ」の雰囲気を増強する。

当時のポピュラー作品のカヴァーでお茶を濁して、セールスを追求するのでは無く、ジョビンやジルベルトを始めとした、ブラジル人アーティストの作品で固めた、ブラジル側からの「ボサノバ&サンバ・ジャズ」の好盤です。
 
 

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2024年8月24日 (土曜日)

ホーニグの「ネオ・ハードバップ」

21世紀に入ってはや丸23年。21世紀に入って頭角を現した、将来有望なジャズマンを追いかけていくと、ライヴ情報などで、サイドマンで活躍する、新たな将来有望なジャズマンに出会う。これが楽しい。

新たなジャズ盤に出会って、そのパーソネルなど情報を確認すると、またまた新たな将来有望なジャズマンに出会う。これがまた楽しい。この2024年になって振り返ると、将来有望な中堅ジャズマンがかなりの数、出揃った感がある。

Ari Hoenig 『NY Standard』(写真左)。2015年9月の録音。2018年のリリース。ちなみにパーソネルは、Ari Hoenig (ds), Tivon Pennicott (ts), Gilad Hekselman (g), Tigran Hamasyan (p #2), Shai Maestro (p #4,6), Eden Ladin (p #3,5), Orlando le Fleming (b)。フロントにテナーとギター、曲により注目のピアニスト3人をフィーチャーした、クインテット編成。

アントニオ・サンチェスと並んで、NYジャズ最重要ドラマーの一人、アリ・ホーニグのリーダー作の9枚目。アントニオ・サンチェスは、デビューした頃からずっと追いかけてきたが、このアントニオ・サンチェスを通じて、アリ・ホーニグの名前を知った。そして、リーダー作を当ブログの記事にするのは初。ドラマーのリーダー作なので、リーダーのドラマーの志向するジャズが展開されている。
 

Ari-hoenig-ny-standard

 
アリ・ホーニングのドラムは、変幻自在な表現豊かなドラミング。自由度の高いリズム&ビートの変化、ドラムの音色のバリエーションの豊かさが存分に楽しめる。クールに熱いドラミングが見事。ホーニングのドラムのコントロールの下、ネオ・ハードバップ、ネオ・モード、ゴスペル&フォーキーなど、ジャズの演奏トレンドを融合した、内容の濃いパフォーマンスを繰り広げている。

ティグラン・ハマシヤン、シャイ・マエストロ、エデン・ラディンの3人のピアニストの曲のイメージに応じて、上手く使い分けている印象。ブルージーでゴスペルチックなハマシヤン、耽美的でリリカルなマエストロ、モーダルで変幻自在なラディン3者3様、ホーニングのドラムのリズム&ビートに乗って、鼓舞され、サポートされながら、気持ちよさそうに、印象的なピアノを弾きまくる。

フロントを張る、ヘクセルマンのギターが良い。モーダルで限りなく自由に、個性的なギターの音色で、個性的なフレーズを弾きまくる。このヘクセルマンのギターに効果的に絡み、効果的にソロを展開するティヴォン・ペンニコットのテナーも良い感じ。

地元NYの「スモールズ」などで繰り広げられている、現代NYを代表する中堅ジャズマンによる、「今」のスタンダード曲の解釈が楽しめる。現代のネオ・ハードバップとネオ・モード。録音年は2015年。まだまだ、ジャズは深化している。
 
 

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2024年8月23日 (金曜日)

ステーシーの酷暑の夏向き好盤

酷暑の8月。毎日の様に「熱中症警戒アラート」時々「熱中症特別警戒アラート」が出まくり、それも朝からのアラート発報なので、朝から終日「命を守るための引き篭もり」をせざるを得ない日々が続く。

エアコンをつけた部屋で、ブログを更新したり、天体写真の画像処理をしたり、録画を見たり、本を読んだりしているのだが、バックに流れる音楽は、やはり「ジャズ」。エアコンをつけていても、なんとなく、外からの熱気は感じるので、爽やかなイメージの「ボサノバ&サンバ・ジャズ」や「女性ボーカル」、「フュージョン・インスト」のアルバムを選ぶことが多い。

Stacey Kent『Summer Me, Winter Me』(写真左)。2019年5月6日(英国)、8月2日(NY)、12月12日(NY)の3セッションからの収録。ちなみにパーソネルは、Stacey Kent (vo), Jim Tomlinson (ts, fl, cl, g, perc, key), Art Hirahara,Graham Harvey (p), Tom Hubbard,Jeremy Brown (b), Anthony Pinciotti, Joshua Morrison (ds) に「弦楽四重奏」がバックに入っている。

米国出身、英国在住の「現代ジャズの歌姫」ステイシー・ケントの、コンサートで唄った「どのアルバムにも収録されていない曲」をピックアップして収録した企画盤。「その曲はどのアルバムに載っていますか?」という、コンサートの後に、よく訊かれる質問がきっかけとなって企画されたアルバムとのこと。なるほど、ファンからの「リクエスト」に応えた、ファン・サービス的な企画盤なのね。
 

Stacey-kentsummer-me-winter-me

 
選曲傾向がちょっとバラバラやなあ、と感じた理由は良く判った。それでも、ステイシー・ケントのキュートで少しコケティッシュなボーカルと、夫君のジム・トムリンソンのテナーに、音志向に一貫性があって、アルバムとしての統一感はしっかり担保されているところはさすが。

確かに、コンサートで聴いて、あの曲って、どのアルバムに入っていたのか、「もう一度聴きたい」と思わせる様な、曲が、ステイシー・ケントの歌唱が選曲されている。

ミッシェル・ルグランが作曲した映画 「 おもいでの夏 」 のテーマ曲 「Summer Song」 に、アラン&マリリン・バーグマン夫妻が後付けの歌詞を書いた、タイトル曲「Summer Me, Winter Me」、トム・ジョビンのボサノバ名曲 「Corcovado」 、映画「マイ・フェア・レディー」の印象的な挿入歌「Show Me」をはじめとして、全11曲、良い曲ばかりがズラリと並ぶ。

ジャズ界のおしどり夫婦、ステーシー・ケントとジム・トムリンソンの好盤。特にステーシー・ケントのキュートでチャーミングで、少しコケティッシュなボーカルがとても印象的。トムリンソンのテナーも伴奏上手。酷暑の夏に清涼感を呼び込む、好ボーカル盤です。
 
 

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2024年8月22日 (木曜日)

ECMのハーシュのソロ・ピアノ

暑い日が続く。というか、酷暑の日が続いていて、我々としては「命を守るため」の部屋への引き篭もりの日が続く。外は酷暑、気温が35度を超えているので、部屋はエアコンは必須。エアコンをつけて窓を閉め切っているので、部屋の中は静か。こういう時、僕はジャズの「ピアノ・ソロ」盤を選盤することが多い。

Fred Hersch『Silent, Listening』(写真左)。2023年5月 スイスにて録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Fred Hersch (p) のみ。現代の「ピアノの詩人」、フレッド・ハーシュのソロ・ピアノ盤である。ソロ・ピアノとしては2020年リリースの『Songs From Home』以来4年ぶり。また、ECMレーベルからは本作がソロ・デビュー作。

冒頭「Star-Crossed Lovers」は、期待通り、耽美的でロマンティシズム漂う、リリカルで流麗なタッチのソロ・パフォーマンスが繰り広げられる。なるほど、ハーシュっぽいよね、と思っていたら、2曲目の「Night Tide Light」の現代音楽っぽい、静的でアブストラクトな演奏に度肝を抜かれる。こういう面もハーシュは持っているのか、と興味深く耳を傾ける。

この静的でアブストラクトでフリーな演奏傾向は、3曲目「Akrasia」、4曲目「Silent, Listening」にも踏襲されるが、演奏の展開の中で、リリカルで耽美的でスピリチュアルなフレーズがスッと出てくるところが印象的。以降、ラストの「Winter of my Discontent」まで、アブストラクトでフリーな演奏と、静的でアブストラクトな演奏の邂逅の中で、リリカルで耽美的でスピリチュアルなフレーズが即興に浮遊する。実に欧州らしい、ECMらしい音世界。
 

Fred-herschsilent-listening

 
収録曲もなかなか捻りが効いていて、ストレイホーン作の「Star-Crossed Lovers」、ジークムント・ロンベルグの定番スタンダード曲 「Softly, As In A Morning Sunrise」、アレック・ワイルダー「Winter Of My Discontent」、ラス・フリーマン作「The Wind」など、意外と捻りの効いたスタンダード曲を選曲して、ソロ演奏のベースとしているところが「ニクい」。

スタンダード曲の中では「Softly, As In A Morning Sunrise」のソロ・パフォーマンスが凄い。聴き馴染みのあるテーマをリリカルで耽美的に弾き始めるが、進むにつれ、徐々に即興演奏に突入、現代音楽の様なカッチカチ硬質で尖ったタッチで、フリーにアブストラクトに傾きつつ、リリカルにスピリチュアルに展開、そんな中で、耽美的に浮遊するアドリブ・フレーズは圧巻。

ハーシュらしさ満載。ハーシュしか出せない即興フレーズ、ハーシュ独特の音の重ね方、ハーシュのフリーでアブストラクトな展開、硬質なタッチで展開する耽美的でリリカルなアドリブ・フレーズ。適度なテンションのもと、ECMエコーで耽美的に響くハーシュのピアノ。

「ジャズにおけるソロ・ピアノの芸術に関しては、演奏家には2つのクラスがある。フレッド・ハーシュとそれ以外の人たちだ」という賛辞も大袈裟でなく納得できる、素晴らしいハーシュのソロ・パフォーマンスがこの盤に詰まっている。
 
 

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2024年8月21日 (水曜日)

ボサノバ&サンバ・ジャズの好盤

セルジオ・メンデス(Sergio Mendes)。1941年2月、ブラジル生まれのピアニスト、今年で83歳。作曲家、編曲家、バンドマスター。ボサノバを語る上で、欠かせないレジェンド。

1950年代後半にはジャズで活躍、そしてアントニオ・カルロス・ジョビンやジョアン・ジルベルトの影響を受け、ボサノバに転身。ブラジル国内外でボサノバを演奏。1960年代の世界的なボサノバ・ブームの牽引役となった。

Sergio Mendes『The Swinger From Rio』(写真左)。1964年12月7–9日の録音。ちなみにパーソネルは、Sérgio Mendes (p), Art Farmer (flh), Phil Woods (as), Hubert Laws (fl), Antônio Carlos Jobim (g), Tiao Neto (b), Chico de Souza (ds)。米国ジャズのメンバーと、ブラジル・ミュージックのメンバーの混成編成。

米国ジャズから、アート・ファーマー、フィル・ウッズ、ヒューバート・ロウズが参加。メンデスのピアノ、ジョビンのギターを含めたリズム・セクションはブラジリアン・ミュージックからの参加。セルジオ・メンデス初期のボサノバ&サンバ・ジャズの名盤である。

セルジオ・メンデスは、1950年代はジャズ畑で活躍していたので、ジャズについては造詣が深い。そこに、ジョビンやジルベルトのボサノバ・ミュージックとの邂逅があって、メンデスは、ブラジル側からの、ボサノバ&サンバ・ジャズの担い手となった。
 

Sergio-mendesthe-swinger-from-rio

 
この『The Swinger From Rio』を聴いていて、ボサノバのリズム&ビート、フレーズをしっかりと踏まえながら、演奏全体の志向は「ジャズ」。メンデスのピアノだって、バップなピアノでボサノバ&サンバのフレーズを上手く弾いている。

メンデスのピアノは、ブラジル側からの米国ジャズに向けてのジャズ・ピアノなので、ボサノバ&サンバのリズム&ビートを踏まえて、ボサノバ&サンバなフレーズをジャジーに弾き進めるのに違和感がない。ボサノバ&サンバのリズム&ビート、フレーズをしっかりと踏まえながら、正統派でバップでジャジーな演奏を繰り広げている。

米国ジャズからの参加、アート・ファーマーのトランペット、フィル・ウッズのアルト・サックス、ヒューバート・ロウズのフルートが、あくまで米国ジャズ基調で、ボサノバ&サンバのフレーズを吹きまくる。これが、この盤の「ジャズ」の要素をより色濃いものにしている。

逆に、ブラジル・ミュージックからの参加、メンデスのピアノ、ジョビンのギターを含めたリズム・セクションのリズム&ビートの底に、ボサノバ&サンバの本場のニュアンスがしっかり横たわっていて、米国ジャズがやるボサノバ&サンバのリズム&ビートよりもブラジル色が濃い。この「濃さ」が、この盤を「ボサノバ&サンバを基調とした純ジャズ」に帰結させている。

米国ジャズとブラジリアン・ミュージックとの素敵な融合。ブラジル側から見た「ボサノバ&サンバ・ジャズ」がこの盤にある。ブラジリアンでありながらジャジー。そんな融合の音志向が、この盤の最大の個性である。
 
 

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2024年8月20日 (火曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その37

ボサノバ・ジャズとは、ボサノバの要素を取り込んだ「ジャズ」。リズム&ビートはボサノバのリズム&ビートをジャジーに仕立て直した「ボサノバ・ジャズ」のリズム&ビート。旋律はボサノバの旋律をそのまま取り込み、即興演奏は、ボサノバの持つ個性的なコード進行を取り込んで、ボサノバの響きを宿したアドリブ展開を繰り広げる。

ボサノバ・ジャズは「ジャズ」で、ボサノバでは無い。正統なボサノバを聴きたければ、ボサノバ・ミュージックの名盤を聴くことをお勧めする。

Lee Konitz & The Brazilian Band『Brazilian Serenade』(写真左)。1996年3月、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Lee Konitz (as), Tom Harrell (tp), Romero Lubambo (g), David Kikoski (p), David Finck (b), Duduka Dafonseca (ds), Waltinho Anastacio (perc)。

リーダーはアルト・サックスの即興演奏の求道者、リー・コニッツと、現代のバップなトランペッター、トム・ハレルがフロント2管、ボサノバに欠かせないアコギ、そして、キコスキーのピアノがメインのトリオがバックに控える、7人編成でのセッション。

1曲目「Favela」、2曲目「Once I Loved」、5曲目「Dindi」、6曲目「Wave」、7曲目「Meditation」が、アントニオ・カルロス・ジョビン作のブラジリアン・ミュージックの名曲。3曲目に、ボサノバ・ジャズの名曲「Recado Bossa Nova」。残り2曲、4曲目「September」はハレル作、、8曲目の「Brazilian Serenade」はコニッツ作。
 

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ジョビンの名曲、ボサノバ・ジャズの名曲、録音メンバーの自作曲、それぞれ、なかなか小粋な曲をしっかりと選んでいる。そして、それぞれの曲に対するアレンジも実に良い。アレンジの方針は「ホサノバ・ジャズ」。ボサノバの持つ雰囲気をしっかり踏襲しつつ、ボサノバに迎合することなく、しっかりとした純ジャズなアレンジがなかなか秀逸。

即興演奏の求道者コニッツのアルト・サックスは切れ味の良いブリリアントな音色で、決して甘くない、純ジャズ志向の堅実硬派なボサノバ・フレーズを吹きまくる。

トランペットのトム・ハレルも同様。正統派なバップ・トランペットで、バップなボサノバ・フレーズを吹き上げる。コニッツもハレルも、ボサノバ・ジャズ志向の吹奏が見事である。

キコスキーのピアノをメインとしたリズム・セクションも良い音を出している。このリズム隊の供給するリズム&ビートは、ボサノバのリズム&ビートをジャジーに仕立て直した「ボサノバ・ジャズ」のリズム&ビートそのもの。上手いなあ。

ホメロ・ルバンボのアコギも地味ながら良い味を出している。やはり、ボサノバ・ジャズにはアコギは必須やなあ。

21世紀を見据えた、ブラジリアンな、ボサノバ基調の夜曲集(セレナーデ)。1962年から、1960年代、1970年代、1980年代と弾き継がれてきた、コンテンポラリーな「ボサノバ・ジャズ」の好例がこの盤に詰まっている。

ヴィーナス・レコードだからと避けて通ってはならない。日本のレーベルが好プロデュースしたボサノバ・ジャズ盤の好盤がここにある。 
 
 

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2024年8月19日 (月曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その36

チャーリー・バード(Charlie Byrd)は、ブラジリアン・ミュージックに傾倒した米国ギタリスト。 1925年9月16日、米国バージニア州サフォークにて生まれ、1999年12月2日に74歳で鬼籍に入っている。ゲッツと組んでリリースしたボサノバ・ジャズの名盤『Jazz Samba』はつとに有名。

Charlie Byrd『Brazilian Byrd』(写真左)。1964年12月, 1965年1,2月、NYにての録音。ちなみにパーソネルは、Charlie Byrd (g, arr), Tom Newsom (arr), Joe Grimm (sax), 演奏者不明だが、弦楽器+木管楽器+管楽器のオーケストラに、ピアノ、マリンバが加わる。プロデューサーはテオ・マセロが担当。

チャーリー・バードの、1964-65年の録音のアントニオ・カルロス・ジョビン特集。バードはラテン音楽やブラジル音楽、特にボサノバに精通していて、チャーリー・バードのリーダー作では、ボサノバ・ジャズでの好盤が多い。この『Brazilian Byrd』は、そんなチャーリー・バードの、優れたボサノバ・ジャズ盤の中の一枚。
 

Charlie-byrdbrazilian-byrd

 
ボサノバ・ジャズは「アレンジが命」と常々思っているが、この盤では、チャーリー・バード自身とトム・ニューサムによるアレンジが効いている。全体に格調高く流麗な、イージーリスニング志向のボサノバ・ジャズが印象的。良好な「ボサノバ・ジャズ」なアレンジに乗って、チャーリー・バードは、耽美的で切れ味の良いギターを弾きまくっている。

「Corcovado」「Jazz 'n' Samba (So Danco Samba)」「The Girl From Ipanema」「Dindi」等々、ジョビンお馴染みのナンバーを、ジャジーで素敵なアレンジとジャジーで印象的なリズム&ビートに乗って、チャーリー・バードが唄う様にギターを弾き進める。特に、オーケストレーションをバックにした、ロマンティックなギターは聴きもの。

ボサノバ・ジャズにはギターの音色がよく似合う。ボサノバ曲の旋律を奏でる時も、ボサノバ風のジャジーなリズム&ビートを刻む時も、チャーリー・バードのギターは、ボサノバの特質と個性をよく理解して、印象的に流麗に弾き進める。イージーリスニング志向のボサノバ・ジャズの名盤の一枚。
 
 

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2024年8月18日 (日曜日)

トリオ・タペストリーの3枚目

酷暑の夏、命を守るための「引き籠り」が長く続く。締め切った、エアコンの効いた部屋は、意外と雑音が少ない。外は酷暑であるが故、静的でスピリチュアルな、硬質で透明度の高い「ECMサウンド」で涼を取りたくなる。21世紀に入っても、西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」は健在で、ここ10年の間に、ECMサウンドは、更なる高みを目指して「深化」している。

Joe Lovano, Marilyn Crispell, Carmen Castaldi - Trio Tapestry『Our Daily Bread』(写真左)。2022年5月の録音。ちなみにパーソネルは、Joe Lovano (ts, tarogato, gongs), Marilyn Crispell (p), Carmen Castaldi (ds)。ジョー・ロバーノのテナーがフロント1管、ベースレスのトリオ「Trio Tapestry」。ジョー・ロヴァーノのトリオ・タペストリーの3枚目のアルバム。2023年11月12日のブログ記事の追記である。

広々とした、奥行きのある、叙情的で神秘的なサウンド・スペース。静的でスピリチュアルなフレーズの展開。限りなく自由度の高い、フリー一歩手前の、漂うが如く、広がりのある幽玄で静的なビートを伴った即興演奏の数々。今までのECMサウンドの中に「ありそうで無い」、どこか典雅な、欧州ジャズ・スピリットに満ちたパフォーマンス。
 

Trio-tapestryour-daily-bread

 
ロバーノの静的でスピリチュアルなテナーが実に魅力的。ベースが無い分、ロバーノのテナーの浮遊感が際立つ。浮遊感の中に、確固たる「芯となる」音の豊かな広がりと奥行きのあるテナーのフレーズがしっかりと「そこにある」。決してテクニックに走らない、高度なテクニックに裏打ちされた、スローなスピリチュアルなフレーズが美しい。

クリスペルの硬質で広がりのあるタッチが特徴の、耽美的で透明度の高い、精神性の高いピアノ。シンバルの響きを活かした、印象的で静的な、変幻自在で澄んだ、リズム&ビートを供給するカスタルディのトラム。この独特の個性を伴ったリズム・セクションが、ロバーノのスピリチュアルなテナーを引き立て、印象的なものにしている。ロバーノのテナーの本質をしっかりと踏まえた、ロバーノにピッタリと寄り添うリズム・セクション。

21世紀の「深化」したECMサウンドが、この盤に詰まっている。21世紀の、神秘的で精神性の高い、静的なスピリチュアル・ジャズの好盤の一つ。チャーリー・ヘイデンに捧げた、6曲目の「One for Charlie」における、ロバーノのテナー・ソロは美しさの極み。現代のニュー・ジャズの「美しい音」「スピリチュアルな展開」が、この盤に溢れている。
 
 

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2024年8月17日 (土曜日)

ケントン流のボサノバ・ジャズ

1962年以来、米国ジャズ界は暫くの間、ボサノバ・ブームに湧いた訳だが、とにかく、猫も杓子も、あらゆる一流ジャズマンはこぞって、ボサノバを取り込んだ「ボサノバ・ジャズ」に手を染めた。なんせ、あのマイルスだって、ギル・エヴァンスと組んで、ボサノバ・ジャズ志向のリーダー作『Quiet Nights』をリリースしているくらいだ(まあ、マイルスはこの盤を認めていないみたいだが・笑)。

猫も杓子もボサノバ・ジャズだが、内容のある、しっかりした「ボサノバ・ジャズ」もあれば、どう聴いてもイージーリスニングで、内容の乏しい「ボサノバ・ジャズ」もあって、玉石混交としている。ボサノバ・ジャズを聴く上では、その辺のところをしっかりと吟味する必要がある。

押し並べて言えることは、優れた「ボサノバ・ジャズ」は、その演奏に対する「アレンジ」が優れている。ボサノバのリズム&ビート、フレーズをしっかりと踏まえながら、演奏全体の志向は「ジャズ」。そういった、優れたアレンジを施されたものが、優れた「ボサノバ・ジャズ」盤として、後世に残っている。

Stan Kenton and His Orchestra『Artistry in Bossa Nova』(写真左)。1963年4月16日~17日、ハリウッドでの録音。ちなみにパーソネルは、Stan Kenton (p, arr, cond), と、スタン・ケントンのオーケストラ。当時、先鋭的なビッグバンド・サウンドを追求していた、スタン・ケントン楽団がボサノバに取り組んだ異色作。リーダーのスタン・ケントンがアレンジと指揮を担当している。

さすがはケントン。このボサノバ・ジャズ盤は、ボサノバ自体に迎合すること無く、ボサノバのリズム&ビート、フレーズをしっかりと踏まえながら、ケントンのジャズに、ケントン楽団のジャズに仕立て上げている。
 

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まず、ケントンのアレンジが秀逸。ケントン楽団の個性をしっかり引き出しつつ、ボサノバの雰囲気を上手く取り込んで、ビッグバンド仕立ての「ボサノバ・ジャズ」の好例をこの盤で提示している。ボサノバのリズム&ビートをジャズにリコンパイルして、切れ味の良い、ジャジーなグルーヴの効いた、ジャズのリズム&ビートが良い。

そのケントン流のボサノバ・ジャズのリズム&ビートに乗って、様々なフレーズが展開される。どんな志向のフレーズが乗っかっても、その演奏は、ケントン流のジャジーな「ボサノバ・ジャズ」になる。そんなケントン流の「ボサノバ・ジャズ」を具現化するビッグバンドの演奏も整っていて、ブルージーで、とても良い雰囲気。

前奏のパーカッションがラテンな雰囲気を煽り、グルーヴィーかつダンサフル、かつジャジーに演奏される「Artistry in Rhythm」や、ブラジリアン・ジャズ・サンバな雰囲気が素敵で、ケントンの硬質なピアノがラテンチックに乱舞する「Brasilia」など、ケントン流のボサノバ・ジャズのリズム&ビートに乗って、ブラジリアン・ミュージックがジャジーに演奏される。

単純にケントン流のボサノバ・ジャズを楽しめる一枚。リズムはかろうじて「ボサノバ」だが、旋律や和声は全く違う。これはボサノバではない、という向きもあるが、それは当たり前。この盤は、ケントン流のジャジーな「ボサノバ・ジャズ」を楽しむべきアルバムで、この盤の音はあくまで「ジャズ」である。

真の「ボサノバ・ミュージック」を聴きたければ、本場のボサノバ盤を聴けば良い。ここでは、あくまで「ジャズ」、優れた内容の「ボサノバ・ジャズ」を愛でている。
 
 

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2024年8月16日 (金曜日)

西海岸のアフロ・キューバン

台風が千葉県の太平洋東岸の沖を通過しつつある。今朝の始発から東海道新幹線が東京〜名古屋間で、地下鉄東西線は西船橋〜東洋長官が終日運転見合わせとかで、どんな暴風雨になるのかしら、と思って速報天気図などを見ていた。が、テレビの報道などは「大袈裟」の限り。千葉県北西部地方は暴風域にも入らず、強風域に入ってはいるが、そんなに大騒ぎするほどの強風は吹いていない。

雨は断続的にゲリラ豪雨っぽい強い雨が降るけど、まあこんなのはたまにあるので、平静そのもの。今まで台風が千葉県北西部地方を直撃〜上陸することもあったが、その時はこんなに大騒ぎしなかったので、今回は思いっきり違和感がある。何か、基準が変わったのかなあ。

Clare Fischer『Manteca!』(写真左)。1965年の作品。ちなみにパーソネルは、Clare Fischer (org), Ralph Peña (b), Nicholas "Cuco" Martinez (timbales), Adolfo "Chino" Valdes and Carlos Vidal (conga), Rudy Calzado (cencero and güiro) に、トランペット4本、トロンボーン2本、ベース・トロンボーン1本のホーン・セクションがバックに付いている。
 

Clare-fischermanteca  

 
ガレスピーの名曲「Manteca」、サンタマリアの作品でディー・ディー・ブリッジウォーターのカバーで有名な「Afro Blue」、アントニオ・カルロス・ジョビン作「Favela」など、ラテン・ジャズからボサノバの佳曲に、躍動感溢れるアフロ・キューバンなジャズ・アレンジを施した「アフロキューバン・ジャズ」盤。

フィッシャーの代表曲の1つ「モーニング」のメロー&ダンサンブルなアレンジに乗った演奏も、この盤の魅力の一つ。

フィッシャーのアレンジが効いている。バックに付いたホーン・セクションや、ラテンなパーカッションが、アフロ・キューバンな音世界をより濃厚なものにしている。そして、フィッシャーのアフロ・キューバンな雰囲気満載のアコピとオルガンが実に良い雰囲気を醸し出している。

フィッシャーのアレンジの才能とキーボーディストとしてのテクニックが全ての、内容の濃い、米国西海岸ジャズにおけるアフロ・キューバン。洒落てアーバンな雰囲気のアフロ・キューバンな雰囲気が実に魅力的。意外とハマると癖になるアフロ・キューバン盤です。
 
 

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2024年8月15日 (木曜日)

ボサノバ曲の米国西海岸ジャズ化

明日は台風7号が関東地方に再接近する予報。ここ千葉県北西部地方から見ると、東の太平洋上を北上するらしいので、吹き込みの強い暴風は避けられると思うので、ちょっと安心。逆に台風の強雨域が台風の西側に広がっていて、これがこの辺りにもかかってくる可能性があるので、大雨だけは細心の注意を払う必要はある。

ということで、明日は一日、台風通過の一日となるので、自宅に引き篭もりである。まあ、今年は猛暑日続きで、外出は控え気味なので、今さら引き篭もりも特別では無いのだが、エアコンをしっかり付けて、ジャズ盤鑑賞の一日になるだろうな。

Bud Shank and Clare Fischer『Bossa Nova Jazz Samba』(写真)。1962年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Bud Shank (as, fl), Clare Fischer (p), Larry Bunker (vib), Ralph Pena (b), Larry Bunker, Frank Guerrero, Milt Holland, Bob Neel (perc)。

このところの「引き篭もり」状態の日々の中で、よく聴くジャズが「ボサノバ・ジャズ」。ということで、今回の選盤は、米国西海岸ジャズの名アルト・サックス奏者であるバド・シャンクと、ピアニスト兼アレンジャーのクレア・フィッシャーによるボサノバ・ジャズ盤。いかにも米国西海岸ジャズらしい、ボサノバ・ジャズが展開されていて興味深い。

恐らく、クリア・フィッシャーのアレンジだと思うのだが、パーカッションを充実させて、ボサノバのリズムを産み出しつつ、演奏全体をボサノバ・ジャズらしい音作りに仕立て上げるというアレンジが成功している。
 

Bud-shank-and-clare-fischerbossa-nova-ja

 
楽器の選択を見ても、軽快で爽やかなフルートやヴァイブの音が良いアクセントになって、ボサノバな雰囲気を増幅している。

聴き手にしっかり訴求するアレンジ重視の「聴かせるジャズ」という、西海岸独特のジャズの音世界の中で、ボサノバ曲を取り込み、演奏するという、いかにも西海岸ジャズらしいボサノバ・ジャズが展開されている。

と言って、米国西海岸ジャズのメインとなっていたジャズマン達が、ボサノバ・ミュージックに迎合するということは全く無く、ボサノバ曲を選曲することで、ボサノバ独特のフレーズ展開を自家薬籠中のものとし、リズム&ビートはボサノバ志向ではあるが、根っこと響きは、あくまでジャズのリズム&ビート。

シャンクのアルト・サックスは、ボサノバ曲だからと言って、ゲッツの様に、何か特別な吹き回しをすること無く、通常の西海岸ジャズにおけるシャンクの吹き回しそのものでボサノバ曲を吹きまくっている。

クレア・フィッシャーのピアノは、硬質でスクエアにスイングする。どう聴いても、ボサノバに迎合しているとは思えない(笑)。

ボサノバ曲を題材にした米国西海岸ジャズ。そういう捉え方が、この盤に相応しい。演奏の内容、雰囲気を聴いていると、米国西海岸ジャズとボサノバ・ミュージックは相性が良いと感じる。西海岸ジャズの特徴である、聴き手にしっかり訴求するアレンジが、ボサノバ曲を上手く取り込んで、上手く西海岸ジャズ化している。
 
 

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2024年8月14日 (水曜日)

純ジャズ・ボーカルのベンソン

2ヶ月ほど前になるだろうか。ネットのジャズの新盤情報を覗いていて、こんな文章が目に飛び込んできた。

「ジャズ・ギタリストそしてシンガーのジョージ・ベンソンが全盛期に録音していながら、長きにわたり発表されてこなっかた幻のアルバムが遂に35年の時を経て現代の技術でリマスターを施した公式作品となって登場!」

ジョージ・ベンソンは「唄って弾きまくる」ギタリスト兼ボーカリストの、いわゆる「ジャズ二刀流」のレジェンド・ジャズマン。ギタリストの側面は、ウエス直系、ウエス後継の壮絶技巧なギターの弾き回しが特徴。ボーカリストの側面は、ブラコン志向のソウルフルな、クロスオーバー&フュージョン志向のボーカルが特徴。

常々、ベンソンの「ブラコン志向のソウルフルな、クロスオーバー&フュージョン志向のボーカル」も良いが、正統派な純ジャズ志向のボーカルを披露してくれないかなあ、と思っていた。

純ジャズ志向の正統派なボーカルは絶対にベンソンに合う。そして、歴代の純ジャズ志向ボーカリストのレジェンド達、フランク・シナトラやメル・トーメ、果てはナット・キング・コールらと肩を並べるだけの力量がベンソンに備わっていると睨んでいたからだ。

George Benson『Dreams Do Come True: When George Benson Meets Robert Farnon feat. The Robert Farnon Orchestra』(写真左)。1989年の制作。「唄って弾きまくるギタリスト兼ボーカリスト」のレジェンド、ジョージ・ベンソンとロバート・ファーノンが率いるオーケストラとのコラボレート。しかし、なぜか「お蔵入り」になって、長きにわたり未発表だった「発掘音源」。
 

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内容は、20世紀のポップ・スタンダードを取り上げたアルバム。有名スタンダード曲の「Autumn Leaves」「At Last」「My Romance」など、いわゆる、アメリカン・スタンダードな楽曲、そして、ビートルズの「Yesterday」やレオン・ラッセルの「A Song For You」、ポール・モーリア楽団の「Love Is Blue(恋はみずいろ)」といったポップ・クラシックを選曲している。

これらの楽曲が、ロバート・ファーノンのアレンジと、ファーノンと彼が率いるオーケストラの演奏によって、見事な「コンテンポラリーなジャズ・ボーカル曲」として、華麗な変身をとげている。

そして、ベンソンがこれらの楽曲を、ポップでジャジーな「正統派ボーカル」で、見事に唄い上げている。特に、ポップ・クラシックのリメイクが良い。しっかりとコンテンポラリーな純ジャズな雰囲気をしていて、ポップ・クラシックのスタンダード化に成功している。

ジャジーな雰囲気をさらに盛り上げてくれるのが、ベンソンのギター・ワーク。短いものではあるが、ベンソンのジャズ・ギターの弾きまくりが実に良いアクセントになっている。

オーケストラだけだと、どうしても甘さが前面に出て、耳にもたれるケースが多々あるのだが、このベンソンの正統派ジャズ・ギターの弾き回しが、そんなオーケストラの甘さを排除し、見事にジャジーな雰囲気をアルバム全体に振り撒いている。

「最近になってベンソンのアーカイヴで発見されるまで、長らく行方不明となってしまっていた音源がレコーディングから35年の時を経て、ついに正式にリリース」なのだが、どうして、行方不明のまま放置されたのかなあ。

しかし、発掘リリースされて良かった。この盤は、ベンソンのジャズ・ボーカルの名盤として評価して良い。素直に発掘リリースされたこと喜びたい。
 
 

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2024年8月13日 (火曜日)

バップ・ギタリストなベンソン

マイルス・デイヴィスに見出され、ウェス・モンゴメリーの後継として頭角を表した「バップ・ギタリスト」のジョージ・ベンソン。クロスオーバー&フュージョン・ブームの折には、余芸だったボーカルを前面に押し出し、「唄って弾きまくるフュージョン・ギタリスト」として一世を風靡した。

1980年代以降、現在まで「超一流のギターの巧いブラコン志向のボーカリスト」として、ボーカリストをメインに活動を継続。今では、ベンソンが、ウエス・モンゴメリー直系のバリバリのバップ・ギタリストだったことは、ほぼ忘れ去られた状態になっている。

George Benson『Love for Sale』(写真左)。1973年4月29日、ニュージャージー州プレインフィールドのカーサ・カリブでライヴ録音。ちなみにパーソネルは、George Benson (g), Mickey Turner (p), George Duvivier (b), Al Harewood (ds)。ベンソンのギターがメインのカルテット編成。ベンソンは、この時点では「唄っていない」。

この『Love for Sale』とタイトルされたベンソン盤は、ネット上で幾種類もリリースされているらしいが、僕の聴いている盤は以下の収録曲全7曲のバージョン。

1. Witchcraft (Carolyn Leigh, Cy Coleman)
2. Blue Bossa (Kenny Dorham)
3. All Blues (Miles Davis)
4. Invitation (Bronsislaw Kaper, Paul Francis Webster)
5. Love Walked In (George Gershwin)
6. Love for Sale (Cole Porter)
7. Oleo (Sonny Rollins)
 

George-bensonlove-for-sale

 
ジョージ・ベンソンは当時 CTI と契約していた為、ブートとしてしかリリースされていなかった音源が、正式盤扱いでリリースされていたのに気がついた。

このライヴ盤では、若き日のウエス・モンゴメリー直系のバリバリの超一流バップ・ギタリストのジョージ・ベンソンの凄まじいパフォーマンスが記録されている。

ストレート・アヘッドな演奏で展開する有名スタンダード曲の数々。それぞれの曲で、ベンソンは長尺のソロをふんだんに聴かせてくれる。

高速弾き回しからオクターヴ奏法まで、ウエス・モンゴメリー直系のエモーショナルで切れ味の良い、バリバリのロング・ソロは圧巻である。超一流ギタリストとしてのベンソンを再認識する。

バックのターカー=デュヴィヴィエ=ヘアウッド、のリズム・セクションの演奏も、切れ味よくポジティヴな「攻めの演奏」も良い。記録通りだと、録音は1973年。ジャズの斜陽時代、クロスオーバー・ジャズ全盛の時代に、こんなに硬派でダイナミックなハードバップ演奏が行われていたとは、ちょっとビックリである。

ベンソンの出身は「ギタリスト」。そんな基本的なことを思い出させてくれる、1973年のライヴ録音。おそらく、ベンソンは、今でもこれくらいのパフォーマンスは出せると思うんだけどなあ。

これから時々は、こういった、ストレート・アヘッドなウエス・モンゴメリー直系のバリバリのバップ・ギターだけを弾き回した盤を聴かせて欲しい、と切に思う。
 
 

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2024年8月12日 (月曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その35

夏はボサノバ・ジャズが良い。特に今年の様な猛暑日の連続だと、まず「熱いジャズ」は絶対に避けたい。フリーやスピリチュアルな「激しいジャズ」も避けたい。そうすると、ほとんどの純ジャズ、メインストリーム系ジャズは避けたくなる。そこで活躍するのが「ボサノバ・ジャズ」。

Astrud Gilberto『Shadow Of Your Smile』(写真左)。邦題『いそしぎ』。1964年10月から、1965年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Astrud Gilberto (vo), Joao Donato, Claus Ogerman, Don Sebesky (arr) with Jazz Orchestra。

「ボサノバの歌姫」アストラッド・ジルベルトが、ジョアン・ドナート、クラウス・オガーマン、ドン・セベスキーの名編曲家たちの素晴らしいアレンジとジャズオケをバックに唄い上げた、セカンド・リーダー作。

収録された曲は、有名なジャズ・スタンダード曲とボサノバ曲。アストラッドの囁く様な、気怠くアンニュイなボーカルで唄うジャズ・スタンダード曲は、それまでに無い、独特の魅力を振り撒く。ボサノバ曲は言うまでも無い。アストラッドのボーカルの個性全開の秀作である。
 

Astrud-gilbertoshadow-of-your-smile

 
リズム&ビートが全ての曲において、ボサノバ・ジャズのリズム&ビートを踏襲していて、演奏の基本は「ジャズ」。しかし、演奏全体の雰囲気は「ボサノバ」。切れ味の良い、爽快なボサノバ・ジャズのリズム&ビートがしっかりと効いていて、アストラッドの囁く様な、気怠くアンニュイなボーカルとの対比が「粋」。

しかも、このボサノバ・ジャズのリズム&ビートの全面採用によって、選曲が有名なジャズ・スタンダード曲とボサノバ曲の混合でありながら、アルバム全体に統一感がある。

アストラッドの囁く様な、気怠くアンニュイなボーカルを際立たせるのに、ボサノバ・ジャズ基調のアレンジが良い。ドナート、オガーマン、セベスキーのアレンジ、三者三様のアレンジではあるが、共通しているのは、アストラッドのボーカルの個性を際立たせること。アストラッドの個性を際立たせるボサノバ・ジャズなアレンジが実に見事。

冒頭の「The Shadow of Your Smile」や、4曲目の「Fly Me to the Moon」の様な有名スタンダード曲における「ボサノバ・ジャズなアレンジ」が素晴らしい。間に、ボサノバ曲「Manhã de Carnaval」が入ってきても、全く違和感を感じない。この盤は、アストラッドの個性を際立たせる、ボサノバ・ジャズ基調のアレンジの勝利である。
 
 

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2024年8月11日 (日曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その34

ボサノバ・ジャズの「歌姫」は、アストラッド・ジルベルト(Astrud Gilberto)。アストラッドは、1940年3月生まれ。つい昨年、2023年6月に83歳で亡くなった。1959年にジョアン・ジルベルトと結婚、ブラジル国内での情勢不安、軍事政権による圧力などもあって、1963年にアメリカ合衆国に移住。

アルバム『ゲッツ/ジルベルト』に参加し、アストラッドの囁く様な、気怠くアンニュイなボーカルで唄う「イパネマの娘」はヒットし、グラミー賞の最優秀レコード賞と最優秀女性ボーカル賞ノミネートを獲得している。1964年にジョアン・ジルベルトと別居、1965年に『The Astrud Gilberto Album』でソロ・デビュー。以降、米国での「ボサノバ歌手」としての地位を確立している。

『The Astrud Gilberto Album』。1965年の作品。ちなみにパーソネルは、Astrud Gilberto (vo), Antônio Carlos Jobim (g, vo), Joe Mondragon (b), Bud Shank (as, fl), João Donato (p), Stu Williamson (tp), Milt Bernhart (tb), with Guildhall String Ensemble。ボサノバ分野と米西海岸のジャズマンがメインの編成。西海岸ジャズの優れた編曲者、マーティ・ぺイチによるアレンジ。
 

The-astrud-gilberto-album

 
ストリングス・アンサンブルの入った、ドラムレスのボサノバ・ジャズ向けのバックバンド。そんなイージーリスニング志向のボサノバ・ジャズ向けアレンジをバックに、アストラッドが唄う。このバックバンドの編成とアレンジが、アストラッドの囁く様な、気怠くアンニュイなボーカルにバッチリ合っていて、アストラッドのボーカルが映えに映える。

アルバムの内容としては、ジョビンなどのボサノバ系ミュージシャンの伴奏が効いていて、英語の歌詞ではあるが、本格的なボサノバ曲集になっている。もちろん、バックのリズム&ビートは「ジャズ」志向で、本格的なボサノバ演奏では無い。あくまで、ボサノバ・ジャズの範疇での優秀盤である。実際聴いてみると判るが、本格的なボサノバは、リズム&ビートがもっと「ボサノバ独特」なものになっている。

癒し系のボサノバ・ジャズ・ボーカル盤。これがジャズか、と訝しく思われるジャズ者の方々もおられるだろう。が、フュージョンやスムースが「ジャズ」として成立していること、そして、この盤のバックバンドのリズム&ビートは「ジャズ」であること。そういう観点から、このアストラッドの初ソロ・アルバムは「ボサノバ・ジャズ」の範疇と解釈して差し支えないだろう。
 
 

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2024年8月10日 (土曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その33

1962年、ボサノバ・ジャズのブレイクの年である。ズート・シムズの『ニュー・ビート・ボサノヴァ Vol.1』や、スタン・ゲッツの『ジャズ・サンバ』、クインシー・ジョーンズの『ビッグバンド・ボサノヴァ』など、ジャズとボサノヴァが融合した好盤がリリースされた。当然、セールスは好調だったようで、この1962年からしばらくの間、ジャズ界は「猫も杓子も」ボサノバ・ジャズに走った。

Gene Ammons『Bad! Bossa Nova』(写真左)。1962年9月9日の録音。Prestigeレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Gene Ammons (ts), Kenny Burrell, Bucky Pizzarelli (g), Hank Jones (p), Norman Edge (b), Oliver Jackson (ds), Al Hayes (bongos)。アモンズのテナー、バレルとピザレリのギター、ハンク・ジョーンズのピアノがメインのボンゴ入りリズム隊、総勢7人のセプテット編成。

オールド・スタイルのテナーマン、ジーン・アモンズが流行に乗って、ボサノバ・ジャズに手を染めたアルバム。と思うが、聴いてみると、様子がちょっと違う。全編、ボサノバ・ジャズで溢れているかと思いきや、「Ca' Purange (Jungle Soul)」や「Cae, Cae」は、ボサノバ曲、いわゆるブラジリアン・チューンなんだが、他は渋めのスタンダード曲とアモンズの自作曲。ボサノバどっぷりのジャズ盤では無い。
 

Gene-ammonsbad-bossa-nova

 
しかし、である。リズム&ビートの雰囲気は、明らかにボサノバ&サンバのリズム&ビートをジャズ向けに借用していて、ボサノバ曲のみならず、渋めのスタンダード曲にも、アモンズの自作曲にも、そんなジャズ向けに借用した、ボサノバ&サンバのリズム&ビートを適用している。アルバム全体にはボサノバ・ジャズ的雰囲気での「統一感」があって、ボサノバ・ジャズ志向のトータル・アルバムとして、しっかりと訴求する。

そして、そんなジャズ向けに借用した、ボサノバ&サンバのリズム&ビートに乗った、アモンズのテナーがとっても良い音を出している。暖かいトーンの吹奏で、明るく切れ味良く歌心満点。アルバム全体を覆うブラジリアン・ミュージックの雰囲気に乗って、そんなアモンズのテナーが大らかに鳴り響く。ほんといい音な、オールド・スタイルのテナーが、ボサノバ&サンバのリズム&ビートにばっちりフィットしている。これが、このアモンズのボサノバ・ジャズ盤の一番の聴きどころ。

アモンズのディスコグラフィーの中でも、特に重要な位置付けのリーダー作ではないんですが、とても良い雰囲気の「アモンズ流のボサノバ・ジャズ盤」として捉えて良いかと思います。とにかく聴き心地が良い。バックの演奏も良好で、凡百なボサノバ・ジャズ盤にありがちな、チープで俗っぽいところは無い。ボサノバの雰囲気を漂わせつつ、ファンキーな要素も忍ばせたアモンズ節が心地良い、隠れ好盤だと思います。
 
 

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2024年8月 9日 (金曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その32

今年の夏は特別に「暑い」。いわゆる酷暑日が連日続く。朝の9時を過ぎると、朝の日差しが灼熱化して、もう外出するのが憚られる。というか、外出すると「危険」な暑さ。これだけ暑いと「シビアなジャズ」を聴く気力がなくなってくる。フリー・ジャズなんてもってのほか(笑)。ハードバップだって、なんだか暑苦しい。

ということで、やっぱり、夏はボサノバ・ジャズ、である。ここバーチャル音楽喫茶「松和」では、以前「夏はボサノバ・ジャズ」のシリーズ記事を継続していた。2020年8月20日の「その31」まで記事化してきたが、当時、そこでネタ切れで休止した。が、この4年で記事ネタも再収集を完了。この酷暑ゆえ、今年、復活します。

The Dave Brubeck Quartet『Bossa Nove USA』(写真左)。1962年1, 10月の録音。ちなみにパーソネルは、Dave Brubeck (p), Paul Desmond (sax), Eugene Wright (b), Joe Morello (ds)。名盤『Time Out』を産んだ、ブルーベックの「最強のカルテット」によるボサノバ・ジャズ集である。

ブルーベック・カルテットは「リズム&ビートに強い」。名盤『Time Out』で変則リズムにいとも容易く適応する「最強のカルテット」である。ボサノバのビートに対応するのもお手のもの。全く違和感無く「ブルーベック・カルテットらしい」ボサノバのリズム&ビートを、モレロの切れ味良いドラムとライトの堅実にスイングするベースが供給する。
 

The-dave-brubeck-quartetbossa-nove-usa

 
そして、ブルーベック・カルテットは「作曲&アレンジが秀逸」。ボサノバの名曲のアレンジ、ブルーベックによるボサノバ曲、どちらも聴き味良く、良質のボサノバ・ジャズを提供してくれる。アレンジについては、ボサノバ曲における、硬質でスクエアにスイングするブルーベックのピアノと、流麗でウォームだが、しっかり芯の入ったデスモンドのアルト・サックスの使い分けが絶妙。

ブルーベック・カルテットは、ボサノバ曲の雰囲気に安易に流されず、安易にコピーせず、カルテット独自のボサノバのリズム&ビートの解釈と、ボサノバ曲の要素を「ジャズ」に取り込み、カルテットならではのボサノバ・ジャズに、きっちりアレンジし切っているところが素晴らしい。

1960年代、米国ジャズの中で、大量のボサノバ・ジャズ盤が作成されリリースされたが、その内容的には、このブルーベック・カルテットの『Bossa Nove USA』は、屈指の出来、と言える。

我が国では、ブルーベックのボサノバ盤というだけで、スルーされる傾向にあるが、ボサノバを安易になぞるのではない、あくまで、ボサノバの要素を取り込んで、上質のジャズ化を実現している、この『Bossa Nove USA』は、優れた硬派なボサノバ・ジャズ盤だと僕は思う。
 
 

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2024年8月 8日 (木曜日)

ディメオラの異色の秀作です。

振り返ってみれば、アル・ディ・メオラ(Al Di Meola・以降「ディメオラ」)は、超絶技巧なクロスオーバー&フュージョン・ジャズ志向のギタリストで、その演奏スタイルは変わらないのだが、リーダー作の「音の志向」については、定期的に変化している。常に「バリバリ弾きまくっている」訳ではない。

Al Di Meola『Cielo e Terra』(写真左)。1985年の作品。ちなみにパーソネルは、Al Di Meola (ac-g, Synclavier-g), Airto Moreira (perc, tracks: 1, 3, 7, 9)。ディメオラのソロと、ディメオラとパーカッション担当のアイアート・もレイラとのデュオの二本立て。基本は「ディメオラのストレンジなギター・ソロ」の世界。ちなみに、邦題は「天地創造」。思わず「何じゃこりゃ」な邦題です(笑)。

アコギとギター・シンセサイザーを弾き分けながら、多重録音で紡がれる、幽玄でフォーキーでネイチャーで、少しエスニックな音世界。クロスオーバー&フュージョンというよりは、現代の「静的なスピリチュアル・ジャズ」な雰囲気が濃厚。

超絶技巧なテクニックは相変わらずだが、しっかり自己抑制を効かせていること、そして、アコギを活用することで、その高速弾き回しテクニックが耳につかない。逆に、たっぷりエコーの効いた多重録音が良い効果を生んでいて、透明度の高いピッキング音と併せて、演奏全体に絶妙の幽玄感や浮遊感を醸し出している。

1970年代の「スパニッシュ・フレーバーな超絶技巧なエレギ」はマンネリ気味だったので、1980年代に入って、演奏の「音志向」をガラッと変えたディメオラ。そんなイメチェン・ディメオラの第2弾。
 

Al-di-meolacielo-e-terra

 
前作は「テクノ・ミュージックと、英国プログレと、フュージョン・ジャズの融合」だったが、今回は再びガラッと変わって、幽玄でフォーキーでネイチャーで、少しエスニックな音志向」なアルバムに仕上がっている。

ディメオラの超絶技巧が良い方向に出ている。アコギとギター・シンセのシンプルな音が、多重録音を通じて、流麗で切れ味の良い音世界を現出している。

スムース・ジャズとも取れるが、スムース・ジャズの様に、聴き心地優先ではない。かなり硬派で切れ味の良い速弾きフレーズは、流れる様な流麗さで、深いエコーを湛えた幽玄でフォーキーな、そして、どこかエスニックな、不思議な雰囲気を醸し出している。

フレーズはどれも切れ味良く流麗で幽玄。ディメオラ独特の、ディメオラしか出せないフレーズ&ピッキングの数々に、聴き手に迎合しない、ディメオラのアーティストとしての矜持を感じる。

このディメオラの1980年代の「音志向の劇的変化」については、「停滞期の音」という酷評もあるが、僕は「聴き手に迎合せず、自分が表現したい音をリーダー作を通して世に問う」という、超絶技巧でラテン・フレイバーなエンターティナーから、自らが表現したい音の表現者、への変革だと解釈しているので、僕はこの『Cielo e Terra』には好感を覚えます。

クロスオーバー&フュージョン全盛期の音の余韻が残っていた時代に聴いた感覚より、現代の静的なスピリチュアル・ジャズを経験した「今」に聴いた感覚の方が優っていて、僕は、この『Cielo e Terra』は、ディメオラの異色の秀作、と解釈しています。
 
 

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2024年8月 7日 (水曜日)

ビル・オコンネルの初ライヴ盤

ビル・オコンネルは、1953年8月、NY生まれのジャズピアニスト。ラテン・ジャズやハードバップとの関わりが最も深い。教育者でもあり、ニュージャージー州ラトガース大学ニューブランズウィックキャンパスのメイソングロス芸術学校でジャズピアノを教えている。リーダー作については寡作。1970年代に1枚、1980年代に1枚、1990年代に3枚。21世紀に入ってからは、2015年以降、やや頻繁に、1〜2年に1枚に割合でリーダー作を出している。

Bill O’Connell Quartet & Quintet『Live in Montauk』(写真左)。2021年8月15日、NYモントークの「Gosman's Dock」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Bill O’Connell (p), Craig Handy (ts), Santi Debriano (b), Billy Hart (ds), スペシャル・ゲストとして、Randy Brecker (tp、tracks 1 & 7)。オコンネルの長い活動期間の中で、初めてのバンド・ライヴ盤。

ハンプトンズ・ジャズ・フェストでのセッションがライヴ音源として収録されている。リーダーのオコンネルのピアノ、テナー・サックス担当のクレイグ・ハンディ、ベーシストのサンティ・デブリアーノ、ドラムのビリー・ハートがメインとなるカルテット編成。1曲目の「Do Nothing till You Hear from Me」と、7曲目の「Tip Toes」だけ、ファンキー・トランペットのレジェンド、ランディ・ブレッカーが客演している。
 

Bill-oconnell-quartet-quintetlive-in-mon

 
スタイルを塗り替えたり、何か、ジャズのライヴの歴史になるような「派手な何か」があるライヴ盤ではないのだが、端正で切れ味の良いネオ・ハードバップな演奏が魅力。硬派な4ビート曲あり、ゆったりしたファンキー・ジャズな演奏あり、バンドの実力の高さが窺い知れる。躍動感もあり、スピード感も十分、整った内容のネオ・ハードバップな演奏が心地良い。

オコンネルのピアノは「総合力勝負」のピアノ。端正で適度にファンキー、破綻無くタッチは深く、少し速めのフレーズで指がよく回る。他にありそうでない、ネオ・バップな、オコンネル独特の弾き回し。ファンキー&ラテンなフレーズが魅力のオコンネルのピアノはなかなか聴き心地が良い。リーダー作は寡作のピアニストではあるが、オコンネルのピアノは一級品。聴き応え十分である。

テナーのハンディ、ゲスト・トランペットのランディのフロント2管は、躍動感溢れる、バップな吹き回しが見事。リズム隊のデブリアーノのベース、ハートのドラムも堅実で柔軟。オコンネルのピアノは、そんなフロントとリズム隊をサポートし鼓舞、ソロのフレーズは「総合力勝負」なピアノで、硬派にファンキーに、余裕の響きで弾き回す。良いネオ・ハードバップなライヴ盤。意外とヘビロテ盤。朝に昼に夜に、どんなシチュエーションにもマッチする万能なネオ・ハードバップ盤。好盤です。
 
 




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2024年8月 6日 (火曜日)

小洒落たファンキー・ジャズ

ファンキー・アルト・サックスのレジェンド、キャノンボール・アダレイについては、どうも我が国では人気がイマイチ。「ファンクの商人」なんて酷いあだ名をつけられて、ファンキー・ジャズやジャズ・ファンクをベースに、商業主義に走ったジャズマンの烙印を押されている。酷い話である。

ファンキー・ジャズ&ジャズ・ファンクは俗っぽくて、芸術としてのジャズでは無い、との評価で、しかも、キャノンボールのリーダー作は、米国ではそのセールスは好調だったのだが、この「売れる」ジャズをやるキャノンボールはけしからん、という論理である。

キャノンボールの名誉の為に言っておくと、生涯、彼のリーダー作は水準以上で、ほぼ駄作が無い。内容的にもしっかりしたファンキー・ジャズ、ジャズファンクのリーダー作が目白押しなんだが、我が国では、1960年代から70年代にかけてのリーダー作については、評論の対象に上がることがほとんど無い。

当然、我が国のレコード会社が国内リリースに踏み切ることもなく、21世紀になって、音楽のおサブスク・サイトで音源がアップされる様になって、やっと我々のレベルでも、1960年代から70年代にかけてのキャノンボールのリーダー作を鑑賞できる様になった。自分の耳で、キャノンボールのリーダー作を評価できるようになった。喜ばしいことである。

Cannonball Adderley Quintet『Plus』(写真左)。1961年5月11日の録音。ちなみにパーソネルは、Cannonball Adderley (as), Nat Adderley (cornet), Wynton Kelly (p, tracks 2–5), Victor Feldman (p tracks 1,6, vib), Sam Jones (b), Louis Hayes (ds)。
 

Cannonball-adderley-quintetplus

 
キャノンボール兄弟がフロント2管、フェルドマンのヴァイブが一部フロント参加、ピアノについては、ケリーとフェルドマンが分担する変則セクステット(6人編成)。

冒頭の「Arriving Soon」から、小粋なファンキー・ジャズ全開。キャノンボールのアルトも、ナットのトランペットも適度に抑制が効いた、小粋なブロウが好感度良好。

2曲目の「Well You Needn't」は、ファンクネス強調のモンク・ミュージック。フェルドマンのヴァイブがお洒落にアドリブをかまし、キャノンボール兄弟のユニゾン&ハーモニーがファンクネスを増幅する。とてもお洒落でファンキーなモンク・ミュージック。いい感じだ。 

この小粋で小洒落たファンキー・ジャズに貢献しているのが、フェルドマンとケリーのピアノの存在。フェルドマンのピアノは、西海岸出身らしく、小洒落て乾いたファンクネスを忍ばせたピアノ、ケリーのピアノは、ハッピースイングで、洒落たファンクネスを湛えたピアノ。二人のピアノが、このキャノンボールのファンキー・ジャズを小粋で小洒落たものにしている。

5曲目の「Star Eyes」などは、そんな小粋で小洒落たファンキー・ジャズが全開。ここまでくると、小粋で小洒落た、というより、ファンクネス全開の大ファンキー・ジャズ大会。それでも、フェルドマンのお洒落な響きのヴァイブが良いアクセントになっていて、通り一辺倒の、ありきたりなファンキー・ジャズにはなっていない。

良好な内容のファンキー・ジャズ。フェルドマンとケリーの存在によって、いつものどっぷりファンキーなジャズを、小粋で小洒落たファンキー・ジャズに変身させているところが、この盤の聴きどころだろう。選曲も良い。キャノンボールの秀作の一枚。
 
 

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2024年8月 5日 (月曜日)

コーエンの「温故知新」な好盤

コロナ禍の影響だろうか、2021年以降、ジャズの新盤で、ソロやデュオの演奏が多くみられる傾向にある。ソロやデュオだとスタジオに入っても、あまり「密」な状態にはならず、感染防止に最適な演奏フォーマット、という判断もあったのだろう。そうそう、自宅のスタジオでも、いわゆる「宅録」のアルバムも結構あったなあ。コロナ禍は、ジャズの演奏フォーマットにも影響を及ぼしている。

Emmet Cohen & Houston Person『Masters Legacy Series, Volume 5: Houston Person』(写真左)。2023年の作品。ちなみにパーソネルは、Emmet Cohen (p), Houston Person (ts), Yasushi Nakamura (b), Kyle Poole (ds)。ピアニストのエメット・コーエンがレジェンドとプレイするレガシー・シリーズの5作目。レジェンドに、サックス奏者、ヒューストン・パーソンを選んでの録音である。

エメット・コーエンは、1990年、米国フロリダ州マイアミの生まれ。今年33歳のバリバリ若手のジャズ・ピアニストである。2011年に初リーダー作『In the Element』をリリース。以降、1年に1枚のペースでコンスタントにリーダー作をリリースしている。今年34歳、期待の中堅ピアニストの一人である。

コーエンはクラシック音楽にも造詣が深く、コーエンのピアノを聴いていると、確かにクラシックの影響が垣間見える。誰かに似ているなあ、と思ったら、そうそう、米国西海岸ジャズで、クラシックとジャズの「二足の草鞋」で活躍した、アンドレ・プレヴィンを想起した。だが、プレヴィンよりブルージーな響きで、ジャジーに弾き回す。

ヒューストン・パーソンは、1934年、米国サウスカロライナ州フローレンスの生まれ。米国ジャズのジャズ・サックス奏者で音楽プロデューサー。今年で90歳になる「現役のレジェンド」である。スウィングやハード・バップのジャンルで演奏し続け、1960年代以降、ソウル・ジャズの中で活躍した。リーダー作は相当数にのぼる。

しかし、我が国ではほとんど無名。リーダー作が1966年以降と、ジャズが斜陽になっていった時期のリリースで、恐らくセールスにならない、と安易に判断したのだろう。僕だって、21世紀に入ってから、このヒューストン・パーソンと出会い、その名を知ったのは、音楽のサブスク・サイトだった。
 

Emmet-cohen-houston-personmasters-legacy

 
そんなエメット・コーエンのピアノ・トリオが、1管フロントにヒューストン・パーソンに迎えたのが、今回のこの盤。特色ある小粋な音色と、表現力に富んだテナー・サックスが聴き心地満点。そんな硬派で正統派、メインストリームなパーソンのテナーを、コーエンのピアノが素敵に流麗にサポートする。

冒頭、パーソンの温かで印象的なテナーが魅力のゆったりとした「Why Not?」で始まる。流麗でバップな弾き回しで、パーソンのテナーをスッポリと包むようにサポートするコーエンのピアノ。決して古くない、新しい響きを宿した、伝統的なハードバップ演奏が実に良い。

4曲目の「Just The Way You Are(素顔のままで)」は、ビリー・ジョエルの名曲のカヴァー。原曲の美しい旋律をデフィルメすることなく、素直でシンプルなテナーでカヴァーするパーソンのテナー。アドリブ展開で「ジャズらしさ」を担うのは、コーエン・トリオのアドリブ展開。原曲のコード進行を借用しつつ、モーダルな展開で、この盤にネオ・ハードバップ志向の「新しい響き」を醸し出している。

5曲目のオールド・スタイルなバップ演奏を展開する「I Let A Song Go Out Of My Heart」。これが絶品。古き良き時代の4ビート・ハードバップを踏襲しながら、出てくる音は「新しい」。決して、懐メロに陥らない、コーエンのピアノのフレーズと、それにしっかりと乗っかるパーソンのオールド・スタイルなテナー。緩やかなミッド・テンポのリズム&ビートに乗ったインタープレイが見事である。

続く6曲目の「All My Tomorrows」の、パーソンのバラード・テナーが実に心地良い。そして、バッキングに回ったコーエンの耽美的で流麗でリリカルなピアノは聴きもの。パーソンの魅力的でオールド・スタイルなテナーを最大限に引き立てる。伴奏にも長けたコーエンの才能が、この演奏で確認できる。

4ビート・ジャズがメインの、ピアニストのエメット・コーエンがレジェンドなテナー奏者、ヒューストン・パーソンとプレイするレガシー・シリーズの5作目。これって古くないか、と聴く前に懸念を感じるのだが、その懸念は見事に裏切られる。新しい響きを宿した伝統的なハードバップ演奏。古さを感じさせない演奏とアレンジは立派。この盤を聴いていて「温故知新」という四字熟語を思い出した。
 
 

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2024年8月 4日 (日曜日)

初めて、エスコフェリーを聴く

Smoke Sessions Records は、コンスタントに、現代のネオ・ハードバップ、現代のコンテンポラリー・ジャズの好盤をリリースしている。今まで、影の存在に甘んじていた、優れた資質を持つジャズマンをスカウトして、専属のリーダー人材とするのに長けている。

今まで、Smoke Sessions Records からリリースされたアルバムのリーダーの中で、この人は誰、というジャズマンも多くいた。しかも、その、それまで無名に近かったジャズマンがリーダーを張ったアルバムについて、どれもが水準以上の優れた内容なのだから隅におけない。Smokeからの新盤については、折につけ、しっかりと内容確認をしている。

Wayne Escoffery『Like Minds』(写真左)。2022年3月31日、NYの「Sear Sound Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Wayne Escoffery (ts, ss), David Kikoski (p), Ugonna Okegwo (b), Mark Whitfield Jr (ds) のワンホーン・カルテットが基本。ゲストに、Gregory Porter (vo, on 4, 5), Tom Harrell (tp, on 2, 4),
Mike Moreno (g, on 1, 3, 8, 9), Daniel Sadownick (per, on 5), が入っている。
 
Wayne Escoffery(ウエイン・エスコフェリー)は、1975 年イギリスにて生まれ、後にアメリカに移住。
以降ニューヨークで活動し、グラミー賞受賞歴もあるサックス奏者/作曲家。リーダー作は、2001年の『Times Change』を手始めに、今回の2023年の『Like Minds』まで、11枚を世に出しているのだが、僕は彼のリーダー作に触れたことが無かった。
 

Wayne-escofferylike-minds

 
この新作『Like Minds』は、現代のネオ・ハードバップど真ん中な内容。非常に充実した、硬派で正統派な演奏内容は好感度アップ。リーダーのアルト・サックス担当のエスコフェリー、ピアニストとして評価の高いキコスギ、堅実ベースのウゴナ・オケゴ、躍動感溢れるドラミングで、演奏全体を鼓舞するマーク・ホワイトフィールドJr。まず、カルテットのメンバーが充実している。

エスコフェリーのアルト・サックスは、正統派でテクニック良好、突出した個性は無いが、総合力勝負の優れたもの。録音時47歳。テクニック優秀な中堅アルト・サックス奏者である。まず、このエスコフェリーのアルト・サックスが全編に渡って、良い味を出している。聴き応え十分のブリリアントで流麗で大らかなアルト・サックス。

キコスギのピアノが効いている。キコスギの柔軟度の高い、適応範囲の広い、現代のネオ・バップなピアノが良い。要所要所で、気の利いたフレーズを弾き回して、フロントのエスコフェリーのアルトを支え、オケゴのベース、ホワイトフィールドJrのドラムと共に、演奏全体のリズム&ビートを変幻自在に供給する。

ゲストの存在も良いアクセントになっている。現代のレジェンド級のバップ・トランペッターであるトム・ハレル、革新的なギタリストの マイク・モレノ、上質パーカッションの ダニエル・サドーニック、そして、 グラミー級ボーカリストの グレゴリー・ポーター。これらのゲストが、要所要所で極上にパフォーマンスを提供していて、このエスコフェリーのリーダー作の内容を更に充実させている。

4ビートを含むコンテンポラリ系の演奏がメインの、充実した内容のネオ・ハードバップ盤。特に現代のモード、ネオ・モーダルな演奏が秀逸です。破綻の無い、力感溢れ、流麗でコンテンポラリーな内容の演奏は、聴いていてとても心地の良いもの。本盤も、Smoke Sessions Recordsからの好盤の一枚です。
 
 

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2024年8月 3日 (土曜日)

ファンズワースのスモーク第3弾

Smoke Sessions Records。1999年、ニューヨークのアッパーウエストにオープンしたジャズクラブ「Smoke」のオーナーが2014年に設立したジャズ専門レーベル。

そのジャズクラブ「Smoke」に出演している人気アーティスト、特に、実績のある中堅〜ベテランのジャズマンをリーダーにしたアルバムをメインにリリースしているのだが、その内容は「昔の名前で出ています」的な旧来のハードバップな演奏を懐メロ風にやるのでは無く、しっかりと現代の「ネオ・ハードバップ」や「コンテンポラリーなメインストリーム系ジャズ」な演奏に果敢に取り組んでいる。

そんなSmoke Sessions Recordsの実績のある中堅〜ベテランのジャズマンの中に「Joe Farnsworth(ジョー・ファンズワース)」がいる。ファンズワースは、1968年マサチューセッツ州生まれの、今年で56歳になる中堅ドラマー。テナー・サックスのエリック・アレクサンダーのサイドマンとしての実績が主で、あまり目立った存在では無かったが、Smoke Sessions Records専属になってから、充実のリーダー作をリリースする様になり、サイドマンとしても充実のサポートを提供している。

Joe Farnsworth『In What Direction Are You Headed?』(写真左)。2022年8月31日、NYの「Sear Sound Studio C」での録音。ちなみにパーソネルは、Immanuel Wilkins (as), Kurt Rosenwinkel (g), Julius Rodriguez (ac-p, el-p), Robert Hurst (b), Joe Farnsworth (ds)。Smoke Sessions Recordsから放つ約1年半ぶりのリーダー3作目。

現代ジャズ・ギターの雄、カート・ローゼンウィンケルと切れ味良いアルト・サックスのイマニュエル・ウィルキンスがフロントを張るクインテット編成。この編成の顔ぶれを見れば、単純に現代のネオ・ハードバップはやらないよな、と思って、ワクワクしながらのアルバム鑑賞である。
 

Joe-farnsworthin-what-direction-are-you-

 
冒頭の「Terra Nova」から、非4ビートの現代のコンテンポラリー・ジャズ志向、アメリカーナ系の牧歌的フォーキーでリリカルで流麗な演奏が繰り広げられる。新しい感覚と新しい響き。良い。ネイチャーな音風景が心地良い。

2曲目「Filters」では、ローゼンウィンケルのギターがバリバリ、高速モダールなフレーズを吹きまくり、ウィルキンスのアルト・サックスが相対する。素晴らしいアドリブ・フレーズのバトル。そこに、ロドリゲスのアコピが高速な弾き回しで応戦する。この2曲だけで、このアルバムは隅に置けない、素晴らしい内容のアルバムであることを確信する。

現代版の「70年代ジャズ・ロック」な小粋でグルーヴィーな演奏もあれば、硬派で正統派な現代のネオ・ハードバップな演奏もあり、ダンディズム溢れる硬派なエレ・ジャズもありと、バラエティー溢れる内容だが、どの演奏も「現代のコンテンポラリー・ジャズ志向」で統一されている。とっ散らかった感は全く感じられないのが素晴らしい。

そんな「現代のコンテンポラリー・ジャズ志向」をガッチリ保持し、バンド全体に波及させ、フロントを鼓舞しているのは、リーダーのファンズワースのドラミングである。ファンズワースのドラミングは、コンテンポラリー感が半端無く、今までに聴いたことのない、アグレッシヴでポリリズミック、変幻自在で硬軟自在なドラミングで、現代のコンテンポラリー感を増幅している。

決して古さを感じさせない、現代のネオ・ハードバップの最先端の音の一つを聴かせてくれる充実した内容は見事。ローゼンウィンケルのギターとウィルキンスのアルト・サックス、そして、リーダーのファンズワースのドラムが、とりわけ「新しい」。このクインテット、パーマネント化されるのだろうか。僕はパーマネント化を望みたい。そして、同一メンバー、同一志向での次作を早く聴きたい。
 
 

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2024年8月 2日 (金曜日)

レイ・ギャロンの個性的なピアノ

ジャズを長年聴いてきて、ある日突然、コロッと魅力的な内容の盤が出てきて、リーダーは誰かな、と思って見たら、今までに聴いたことが無い名前で、調べてみたら、長年、米国でジャズマンとしてプレイしてきた、意外と実績のあるジャズマンだったりして、改めて、ジャズの裾野の広さと深さに呆れたり、感心したりすることがある。

Ray Gallon, Ron Carter & Lewis Nash『Grand Company』(写真左)。2022年5月20日、Van Gelder Recording Studioでの録音。ちなみにパーソネルは、Ray Gallon (p), Ron Carter (b), Lewis Nash (ds)。リーダーは、ピアニストのレイ・ギャロン。 ギャロンは、30年以上にわたって活躍しているニューヨーク出身のピアニスト。この盤は、2021年の『Make Your Move』以来の2枚目のリーダー作。

レイ・ギャロンというピアニストの名前は、2021年の初リーダー作『Make Your Move』で初めて知った。資料によると、なんと30年以上にわたって活躍しているニューヨーク出身のピアニストとのことなんだが、ギャロンの経歴は不明なところが多く、1958年、NYで生まれた様で、それが正しいとすると、今年66歳になる、大ベテランの域に達したピアニスト、ということになる。

共演歴としては、ライオネル・ハンプトンやロン・カーター、グラディ・テイト、ジョージ・アダムス、ハーパー・ブラザーズなどとの共演歴があり、スタジオ・ミュージシャンとしても活躍してきた、とある。僕は全く知らなかった。ただ、この2枚目のリーダー作を聴くと、ギャロンのピアノは個性的で素性確かなもの、ということを十分に理解する。

この盤を聴くと、ギャロンのピアノはとても個性的。ビバップとブルースを基調としていることは明らか、スイング感はスクエア、どこか、セロニアス・モンクに通じる幾何学的なスクエアなスイング感も見え隠れする。
 

Ray-gallon-ron-carter-lewis-nashgrand-co

 
どう聴いても、オーソドックスなハードバップ志向のピアノでは無い。キレのある硬質なタッチ、鋭角的な音のエッジ、凹凸のある流麗さ、自然とモーダルに展開する柔軟性、パーカッシヴなブロックコード等々、かなりユニークなピアノが展開される。

エリントンの「Drop Me Off in Harlem」や、ビル・エヴァンスの「Nardis」、スタンダード曲「 If I Had You」「Old Folks」を聴けば、そんなギャロンのピアノのユニークさが良く判る。

オーソドックスな4ビート演奏ではあるが、速弾きすること無く、ミッド・テンポな丁寧な弾き回しで、ギャロンの個性的なピアノが鳴り響く。右手のシングルトーンでフレーズを唄い上げながら、絶妙に挿入される左手のブロックコードは小粋で絶妙な、ギャロン独特のグルーヴ感を醸し出している。

そんな個性的なピアノを弾き回すギャロンをサポートする、ロン・カーターのベースと、ルイス・ナッシュのドラムは見事。カーターに関しては近年のプレイと同様、ここでも音程のズレは無く、安定&安心のベースで、独特のグルーヴ感溢れるベースラインをブンブンはじき出す。ギャロンのピアノのフレーズの「底」をガッチリ押さえた、素晴らしい「脇役ベース」を聴かせてくれる。

ナッシュのドラミングは硬軟自在、変幻自在、緩急自在、多彩なドラミングのニュアンスを繰り出して、ギャロンの個性的なピアノのリズム&ビートをガッチリサポートしている。ナッシュの職人芸的ドラミングは素晴らしいパフォーマンスである。

最近の若手〜中堅ジャズマンが展開する「ネオ・ハードバップ」な4ビートなピアノとは明らかに一線を画したギャロンの個性的なピアノは、意外と聴き応えがある。ピアノ・トリオとしてのまとまりも良く、各人の個性もきちんと発揮されている、なかなかに充実した内容のピアノ・トリオ盤である。Takao Fujiokaのイラストをあしらったジャケも良い感じ。好盤です。
 
 

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2024年8月 1日 (木曜日)

素敵なジョン・ルイス楽曲集です

伊ジャズの至宝、欧州ジャズ・ピアニストの第一人者、エンリコ・ピエラヌンツィ(Enrico Pieranunzi)がオーケストラと共演したアルバムがもう一つ。長年共演関係を続けてきた、ルカ・ブルガレッリ、マウロ・ベッジョとのトリオで、イタリアの室内管弦楽団、オルケストラ・フィラルモニカ・イタリアーナとのコラボレーションである。

Enrico Pieranunzi Trio & Orchestra『Blues & Bach - The Music of John Lewis』(写真)。2021年9月16, 17日、イタリアの「Cavalli Musica Auditorium In Castrezzato」での録音。改めて、パーソネルは、Enrico Pieranunzi (p), Luca Bulgarelli (b), Mauro Beggio (ds), Michele Corcella (arr, cond) and Orchestra Filarmonica Italiana。

ジャズとクラシックの融合を真摯に追求した、MJQのリーダーでもあった「ジョン・ルイス」のトリビュート盤。ジョン・ルイスの決定的アレンジと弾き回しで有名な、ヴァーノン・デュークの「Autumn in New York(ニューヨークの秋)」以外、残り7曲はジョン・ルイス作曲の優秀曲をチョイスしている。

冒頭のジョン・ルイスの名曲「Skating in Central Park」から始まる。聴いていて涙腺が緩むほどに僕はこの曲が大好きなんだが、まず、ピエラヌンツィ・トリオの演奏が秀逸。

ピエラヌンツィのリリカルで耽美的なバップ・ピアノによる、この曲の持つ美しい旋律の流れ。そこに印象的に絡むルカ・ブルガレッリのベース。リズム&ビートを効果的にサポートするマウロ・ベッジョのドラム。このトリオの演奏だけでも、十分に「聴かせる」。
 

Enrico-pieranunzi-trio-orchestrablues-ba

 
そこに、曲の持つ旋律、トリオのアドリブ・ブレーズを効果的に「映え」させるオーケストラの調べ。最初は、これ、トリオ演奏だけで十分やん、と感じるのだが、オーケストラのサポートが入ると、ジャズとクラシックの融合を真摯に追求したジョン・ルイスの「クラシック」志向の部分がくっきり浮かび上がってくる。オーケストラのサポートの存在に納得する。

2曲目の「Spanish Steps」以降、ピエラヌンツィ・トリオの優れた演奏と、それを効果的にサポートするオーケストラのバッキングが素晴らしいパフォーマンスが続く。

特に、3曲目「Vendome」や6曲目「Concorde」でのトリオとオーケストラによる対位法のアレンジや、5曲目「Django」のクラシック志向のアレンジなどは圧巻である。しかも、このクラシック志向の楽曲のジャジーな部分を引き出して、トリオ演奏で表現するピエラヌンツィ・トリオの見事な展開は聴き応え十分。

そして、4曲目「Autumn in New York」における、ジョン・ルイスの決定的アレンジのオーケストラによる再現は見事。そこにピエラヌンツィのリリカルで耽美的なバップ・ピアノが、「ニューヨークの秋」の美しい旋律をシンプルにリリカルに唄い上げる。

僕はジョン・ルイスの、クラシック志向が見え隠れする、ジャジーでブルージーな自作曲が大好きなんだが、このピエラヌンツィ・トリオとオーケストラは、そんなジョン・ルイスの楽曲に素敵なアレンジを施し、ジョン・ルイスの楽曲の持つ、クラシック志向の部分、ジャジーでブルージーな部分をそれぞれ、効果的に浮き立たせ、演奏映えさせている。

ジョン・ルイスのトリビュート盤として、申し分ない内容。ピアノ・トリオ+オーケストラの傑作盤です。
 
 

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