ディメオラの新境地開拓な盤
1982年に、それまでの活動を総括したライヴ盤『Tour De Force』を出したアル・ディ・メオラ(以降「ディメオラ」と略)。内容的には、それまでに聴いたことのあるディメオラてんこ盛りで、ディメオラ者には実に楽しめる、ディメオラ乳門盤の様な内容だった。しかし、その音世界には「マンネリ」の雰囲気が漂っていたのは否めない。
Al Di Meola『Scenario』(写真左)。1983年の作品。ちなみにパーソネルは、Al Di Meola (g, g-syn, mandocello, tom tom, Hawaiian chordophone, Fairlight CMI, ds), Jan Hammer (key, Fairlight CMI, Roland drum machine, Moog bass, ac-p), Will Alexander (Fairlight CMI programming), Tony Levin (stick bass, on track:8), Phil Collins (ds, on track: 3), Bill Bruford (Simmons electronic drums, on track: 8)。
動機は判らないが、突如、ディメオラがコンピュータによる打ち込みサウンドを完全に前面に押し出した企画盤。それまでの「速弾きギターソロ」や「リズム隊の強烈なリズム&ビート」はほとんど聴かれないが、打ち込みによるクールで無機質なリズム&ビートに乗った、ディメオラとヤン・ハマーの不思議なコラボの音世界が広がる。
ディメオラの繰り出すフレーズはエスニック。それまでのキャッチフレーズだった「スパニッシュ」なフレーズを飛び越して、エスニックな香り濃厚なフレーズをガンガンに繰り出す。その妖しく幽玄な不思議なマイナーフレーズが、打ち込みによるクールで無機質なリズム&ビートに乗って映えに映える。
ヤン・ハマーのフェアライトCMI中心の、ちょっと捻れた、妖しくも幽玄なエスニック・フレーズがこの盤の全体の雰囲気を支配している。打ち込みによるリズム&ビートは、当時の英国のプログレッシヴ・ロック志向で、純粋なフュージョン・ジャズとは、全くテイストの異なった、唯一無二なもの。そこかしこに英国プログレッシヴ・ロックのテイストを感じる。
そんなヤン・ハマーの妖しくも幽玄なエスニック・フレーズと打ち込みリズム&ビートに乗って、ディメオラが、ギター・シンセを駆使して、エスニックなフレーズを弾きまくる。ギター・シンセを活用しているので、その楽器の性格上、従来のディメオラの高速速弾きは叶わないが、ギター・シンセの音の特性を活かした、魅惑的で妖艶なエスニック・フレーズを振り撒いている。ここでのディメオラの弾き回しはさすがで、説得力と聴き応えのあるギターをしっかりと聴かせてくれる。
テクノ・フュージョン・ジャズとでも形容したら、ちょっとシックリくる音世界。ディメオラのギター・シンセは、あくまでジャズに軸足があり、今回のパートナーである、ヤン・ハマーのフェアライトCMIは、英国のプログレッシヴ・ロック志向で、テクノなジャズロックなフレーズが実にユニーク。
テクノ・ミュージックと、英国プログレと、フュージョン・ジャズの融合。基本のフレーズは「エスニック」。ディメオラが考える「スムース・ジャズ」として捉えても面白い内容。優れた一人の音楽家としてのディメオラの矜持を感じる、ディメオラにしか創り得ない、ディメオラ独自の音世界。意外とこの企画盤、聴き応えがあります。
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