マイケルの新「オルガン・ジャズ」
マイケル・ブレッカーは早逝して、絶対、損をしたと思っている。生前は、特に我が国では「コルトレーンのフォロワー」のレッテルを貼られて、マイケルの個性をかなり誤解されていたきらいがある。21世紀に入って、ネット上での正しい情報に触れることのできる環境になって、マイケルのテナーな正当な評価を獲得したと思っている。
Michael Brecker『Time Is of the Essence』(写真左)。1999年の作品。ちなみにパーソネルは、Michael Brecker (ts), Larry Goldings (org), Pat Metheny (g), Elvin Jones (ds, tracks 1, 4, 9), Jeff "Tain" Watts (ds, tracks 2, 5, 7), Bill Stewart (ds, tracks 3, 6, 8)。
マイケルのテナー、ゴールディングスのオルガン、メセニーのギターまでが全曲で演奏、ドラムだけ、エルヴィンとワッツとスチュワートの3人で分担している。ベースはゴールディングスがオルガンで兼任している。
前作『Two Blocks from the Edge』で、コルトレーンが確立した、サックスがメインの「モーダルなメインストリーム志向の純ジャズ」を二段も三段も深化させた、1997年時点での新しい「モーダルなネオ・ハードバップ」を提示したマイケル。
次はどうするんだろう、と思っていたら、前々作『Tales From the Hudson』から、ギターのパット・メセニーが帰ってきて、コールディングスのオルガンが新規参入。
オルガン・ジャズの編成なので、ファンキー色の強いジャズ・ファンクな内容かと思いきや、コンテンポラリーなメインストリーム志向の純ジャズ路線は変わらず、オルガンとギターを入れたことによって、コンテンポラリー色とポップ度が増した、ネオ・ハードバップなオルガン・ジャズな内容になっている。4ビート・ジャズとは全く無縁のモーダルでコンテンポラリー志向のネオ・ハードバップが炸裂している。
メセニーのギターも、PMGでのフォーキーで浮遊感溢れる流麗なフレーズや、ソロでのオーネット・コールマン風のフリーなフレーズを封印し、マイケルの音楽性に合わせた弾き方になっていて、さすが。
ゴールディングスのオルガンも変にファンク色に偏らず、マイケルのテナーの音質に合わせた、軽快でポップで、そこはかとなくファンクネス漂う音色の「現代風」のオルガンになっているのも、さすが。
曲想によって、ドラマーを替えているところが、これまた成功している。エルヴィン、ワッツ、スチュワート、それぞれ、持ち味の異なるドラマーなのだが、曲想にあったドラミングを叩き出しているので、ドラマーが替わることによる違和感は全く無い。エルヴィンなど、野生味溢れ、思いのままに叩きまくる、従来のエルヴィンのドラミングを封印し、マイケルの音世界に合わせたドラミングを披露しているところなど、さすが。
コンテンポラリー色とポップ度が増した、ネオ・ハードバップなオルガン・ジャズを前提としたマイケルのテナーは、もはやマイケルの個性のみのテナーになっていて、この盤でのマイケルのテナーを聴いて、コルトレーンのコピー、何ていう評価をするのは、全くもって「的外れ」。マイケルのオリジナル度が増したテナーはこの盤での最大の「聴きどころ」。
演奏全体がオルガン・ジャズのアレンジになっていて、過去の「モーダルなメインストリーム志向の純ジャズ」の雰囲気に引きずられなくなったのが、この盤の良いところ。マイケルの音世界の個性が弾けた、マイケルの傑作だと思う。
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