チックが一番「尖った」ソロ
チック・コリアのソロ・ピアノの落穂拾い。残すは5枚。チックの真の実力とピアニストとしての力量が如実に判る、1980年代以降、チックがジャズ・ピアノのスタイリストの一人として、その個性と実力を確立した後のソロ・ピアノ盤の数々。チックを確実に語る上では避けて通れないソロ・ピアノの数々。
Chick Corea『Solo Piano: From Nothing』(写真左)。1982年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (p, syn) のみ。チック・コリアのソロ・ピアノ盤。1971年、ECMからの『Piano Improvisations Vol.1&2』以来、11年ぶりのソロ・ピアノの録音。しかし、録音当時は「お蔵入り」。リリースの陽の目を見たのは、1996年になる。
このソロ・ピアノは聴くと、大体のジャズ者の方々は「ビックリする」と思う。チックのロマンティシズム溢れるリリカルで耽美的なソロ・ピアノを期待す向きからすると、絶対に「椅子から落ちる」。
なんせ、チックが一番「尖った」方向に振れたソロ・ピアノ。録音当時は「お蔵入り」にしたのは理解できる。録音当時、無理してリリースする必要のない、特殊な内容のソロ・ピアノである。1996年にチックのStretchレーベルからリリースされたが、我々「チック者」としては、よくぞリリースしてくれたと思う。
新ウィーン楽派を彷彿とさせる、不協和音の展開、解決しないフレーズ、歌心を排除する旋律、複雑な変拍子の採用、と、フリー・ジャズに走るのではない、現代音楽志向に尖った、とてもシビアで前衛的な内容。アントン・ウェーベルン、アーノルド・シェーンベルグのピアノ作品を想起する。
この現代音楽志向、新ウィーン楽派志向の尖ったソロ・パフォーマンスを聴くと、チックのピアノ・テクニックの凄さと、即興展開に対する高い対応能力をビンビンに感じる。現代音楽志向に走りながらも、ピアノの即興展開には破綻や緩みは全く無い。堂々とした弾きっぷりである。
チックの硬質でアタックの強いタッチで、ハイ・テクニックな弾き方ができるからこそ対応できる、現代音楽志向のパフォーマンスの数々。ジャズ・ピアノの世界で、現代音楽志向のジャズを前提としたソロ・ピアノを弾きこなすピアニストはチックの他にはいない。
このソロ・ピアノ盤は、一般のジャズ者の方々には、まず必要が無い、と思う。それほど、現代音楽志向に真摯に対峙して、怯むところが全く無い、どころか、現代音楽志向の弾き回しを自家薬籠中にした様な、ガチに「尖った」ソロ・パフォーマンスである。
ただし、我々の様な「チック者」が、チックのピアニストとしての資質と能力、そしてテクニックについて、他のジャズ・ピアニストとの、明確な「差異化要素」を見出すのに、大いに役立つソロ・ピアノ盤である。
いかに、チックがジャズ・ピアニストとして、並外れた資質と能力、そしてテクニックの持ち主であったか、このソロ・ピアノを聴くと、その一端を随所に感じる。
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