« エスペランザのボーカルの扱い | トップページ | ブレイのピアノの個性が良く判る »

2024年7月14日 (日曜日)

チックが一番「尖った」ソロ

チック・コリアのソロ・ピアノの落穂拾い。残すは5枚。チックの真の実力とピアニストとしての力量が如実に判る、1980年代以降、チックがジャズ・ピアノのスタイリストの一人として、その個性と実力を確立した後のソロ・ピアノ盤の数々。チックを確実に語る上では避けて通れないソロ・ピアノの数々。

Chick Corea『Solo Piano: From Nothing』(写真左)。1982年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (p, syn) のみ。チック・コリアのソロ・ピアノ盤。1971年、ECMからの『Piano Improvisations Vol.1&2』以来、11年ぶりのソロ・ピアノの録音。しかし、録音当時は「お蔵入り」。リリースの陽の目を見たのは、1996年になる。

このソロ・ピアノは聴くと、大体のジャズ者の方々は「ビックリする」と思う。チックのロマンティシズム溢れるリリカルで耽美的なソロ・ピアノを期待す向きからすると、絶対に「椅子から落ちる」。

なんせ、チックが一番「尖った」方向に振れたソロ・ピアノ。録音当時は「お蔵入り」にしたのは理解できる。録音当時、無理してリリースする必要のない、特殊な内容のソロ・ピアノである。1996年にチックのStretchレーベルからリリースされたが、我々「チック者」としては、よくぞリリースしてくれたと思う。

新ウィーン楽派を彷彿とさせる、不協和音の展開、解決しないフレーズ、歌心を排除する旋律、複雑な変拍子の採用、と、フリー・ジャズに走るのではない、現代音楽志向に尖った、とてもシビアで前衛的な内容。アントン・ウェーベルン、アーノルド・シェーンベルグのピアノ作品を想起する。
 

Chick-coreasolo-piano-from-nothing

 
この現代音楽志向、新ウィーン楽派志向の尖ったソロ・パフォーマンスを聴くと、チックのピアノ・テクニックの凄さと、即興展開に対する高い対応能力をビンビンに感じる。現代音楽志向に走りながらも、ピアノの即興展開には破綻や緩みは全く無い。堂々とした弾きっぷりである。

チックの硬質でアタックの強いタッチで、ハイ・テクニックな弾き方ができるからこそ対応できる、現代音楽志向のパフォーマンスの数々。ジャズ・ピアノの世界で、現代音楽志向のジャズを前提としたソロ・ピアノを弾きこなすピアニストはチックの他にはいない。

このソロ・ピアノ盤は、一般のジャズ者の方々には、まず必要が無い、と思う。それほど、現代音楽志向に真摯に対峙して、怯むところが全く無い、どころか、現代音楽志向の弾き回しを自家薬籠中にした様な、ガチに「尖った」ソロ・パフォーマンスである。

ただし、我々の様な「チック者」が、チックのピアニストとしての資質と能力、そしてテクニックについて、他のジャズ・ピアニストとの、明確な「差異化要素」を見出すのに、大いに役立つソロ・ピアノ盤である。

いかに、チックがジャズ・ピアニストとして、並外れた資質と能力、そしてテクニックの持ち主であったか、このソロ・ピアノを聴くと、その一端を随所に感じる。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年4ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

« エスペランザのボーカルの扱い | トップページ | ブレイのピアノの個性が良く判る »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« エスペランザのボーカルの扱い | トップページ | ブレイのピアノの個性が良く判る »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー