1990年代のチックの純ジャズ
僕の永遠のお気に入りのピアニストの一人、チック・コリア。ラジオのFMから聴こえてきた「Now He Sings Now He Sobs」。なんだこれは、このピアノは何だ。これがチック・コリアのピアノとの出会いである。今を去ること半世紀前。
チックが2021年2月に急逝して早3年。この世にいなくなっても、チックの音は残っている。リーダー作の記事化のコンプリートを目指しているが、まだ10数枚が残っている。
今、1990年代以降のリーダー作の落穂拾いをしているが、この時代のチックのリーダー作は押し並べて、評論家筋からは評価が低い。しかし、何を基準にして評価が低いかがよく判らない。よって、自分の耳で聴いて、その真偽を明らかにしていきたい。
Chick Corea『TIme Warp』(写真左)。1995年8月のリリース。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (p), John Patitucci (b), Gary Novak (ds), Bob Berg (sax)。マイケル・ブレッカーを迎えた1981年のスタジオ録音『Three Quartets』以来、14年ぶりのホーン入りカルテットの録音になる。
チックが考案した「Time Warp」というストーリーに基づくコンセプト・アルバム。1960年代末から1970年代半ばの「プログレッシヴ・ロックのアルバムによくあったもので、ジャズの世界では珍しい。が、意外とこれがよくまとまっているから、チックの作曲&アレンジ能力の高さに、毎度ながら驚く。
チックはアコースティック・ピアノのみでガンガン攻めている。ベースには、当時の盟友、ジョン・パティトゥッチ、ドラムには、セッション・ドラマーのゲイリー・ノヴァクが参加している。
ドラムがセッション・ドラマーなので、このチックのリズム・セクションってどうなのかなあ、と、聴く前に不安になったのだが、それは杞憂だった。十分にハイテクニックで流麗、バッチリ尖った硬質のリズム&ビートが良い。ノヴァクのドラミング、良い。
そして、そんなチックのリズム隊をバックに、ボブ・バーグがネオ・ハードバップなサックスを吹きまくる。もともと、新しい感覚のネオ・ハードバップな吹奏が個性のボブ・バーグだが、この盤では、その「新しい感覚」と、ネオ・モーダルな、新しいイメージのモーダルなアドリブ・フレーズをブイブイ言わせている。ボブ・バーグのベスト・プレイの一つがこの盤に記録されている、と言って良いかと思う。
このボブ・バーグの新しい感覚のサックス・プレイを引き出しているのが、チック率いるリズム・セクションであり、チックの繰り出す「鼓舞するフレーズ」の嵐である。
と言って、ガンガン、フロントを攻めるのではない、フロントの個性をより輝かせ、新しい個性を引き出す様な、新しい感覚のバッキング。チックの繰り出す創造的なフレーズが、フロントのボブ・バーグのサックスを良い方向に刺激している。
このコンセプト・アルバム、イラストのジャケットの印象が、クロスオーバー&フュージョン志向のジャズを想起させるので、確実に損をしているが、この盤に詰まっているのは、1990年代のネオ・ハードバップであり、ネオ・モードであり、バッキングに優れたチックのパフォーマンスであり、それに応えるボブ・バークのベスト・プレイ。
1990年代のチックのディスコグラフィーの中で、この盤だけが突出した「メインストリーム志向のコンテンポラリーな純ジャズ」。4ビートなノリは皆無だが、1990年代のチックの考えるネオ・ハードバップ盤として、十分、評価できる佳作だろう。
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