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2024年7月の記事

2024年7月31日 (水曜日)

ピアノ + ペット + ビッグバンド

ここ2〜3年、エンリコ・ピエラヌンツィ(Enrico Pieranunzi)が元気である。自らのリーダー作から、共演作含めて、「毎月、何かしらのアルバムをリリースしている」印象の多作ぶりである。

1949年12月5日、ローマでの生まれなので、 現在、年齢 74歳。もうベテランの域を超えて、レジェンドの域に達した、伊ジャズの至宝、欧州ジャズ・ピアニストの代表格なのだが、とにかく「多作」。しかも、その内容はどれもが水準以上。というか、優れた内容のものばかりで、ピエラヌンツィの力量・ポテンシャルや恐るべし、である。

Enrico Pieranunzi『Chet Remembered』(写真左)。2022年9月5-8日、"Hörfunkstudio il, Hessischer Rundfunk, Frankfurt am Main" での録音。ちなみにパーソネルは、Enrico Pieranunzi (p), Bert Joris (tp), Frankfurt Radio Big Band。

伊ジャズ・ピアノの第一人者、エンリコ・ピエラヌンツィと、欧州最高峰とも形容されるベルギーの名トランぺッター、バート・ヨリスとの共演盤。2021年作品の『アフターグロウ』が二人の初共演盤だったので、今回のアルバムはヨリスとの再会セッションになる。

ピエラヌンツィは1979年にチェット・ベイカーと出会い、多くのコンサートやレコーディング・セッション実績を残している。今回のアルバムは、そんなウェストコースト・ジャズを代表するトランぺッター&ヴォーカリストの偉人チェット・ベイカーに対するトリビュート・プログラムを収録している。
 

Enrico-pieranunzichet-remembered

 
選曲は、ピエラヌンツィがチェットと共演した時期に、ピエラヌンツィが作曲した作品をメインに、今回、チェットのために新たに作曲した曲を含め、バート・ヨリスによる優れたビッグ・バンド・アレンジを基に録音されている。

このフランクフルト放送ビッグ・バンドの演奏がかなりの充実度の高さで、スイング感抜群、パンチ力十分に、ユニゾン&ハーモニー、チェイス、ソロ、高揚感溢れる豪快なパフォーマンスを展開する。一糸乱れぬ、呼吸がバッチリ合ったカラフルなホーン・アンサンブル、躍動感溢れソリッドでタイトなリズム・セクション。超一級のビッグバンド・サウンドが素晴らしい。

そんなビッグバンド・サウンドをバックに、ピエラヌンツィは気持ち良さそうに、躍動感溢れる、リリカルでバップなピアノを弾きまくる。ヨリスもエモーショナルでバイタル、切れ味の良いトランペットを吹きまくる。やはりヨリスのアレンジが優れているのだろう。ビッグ・バンド・サウンドをバックにしているが、ピエラヌンツィのピアノ、ヨリスのトランペットが、全面に出て映えに映える。

ピエラヌンツィのピアノ、ヨリスのトランペットの「良好なパフォーマンス」と、躍動感溢れる「ビッグバンドの醍醐味」と、上手くバランスをとった、良好な「ピアノ+トランペット」と超強力なビッグバンドとの傑作である。
 
 

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 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

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2024年7月30日 (火曜日)

ディメオラの新境地開拓な盤

1982年に、それまでの活動を総括したライヴ盤『Tour De Force』を出したアル・ディ・メオラ(以降「ディメオラ」と略)。内容的には、それまでに聴いたことのあるディメオラてんこ盛りで、ディメオラ者には実に楽しめる、ディメオラ乳門盤の様な内容だった。しかし、その音世界には「マンネリ」の雰囲気が漂っていたのは否めない。

Al Di Meola『Scenario』(写真左)。1983年の作品。ちなみにパーソネルは、Al Di Meola (g, g-syn, mandocello, tom tom, Hawaiian chordophone, Fairlight CMI, ds), Jan Hammer (key, Fairlight CMI, Roland drum machine, Moog bass, ac-p), Will Alexander (Fairlight CMI programming), Tony Levin (stick bass, on track:8), Phil Collins (ds, on track: 3), Bill Bruford (Simmons electronic drums, on track: 8)。

動機は判らないが、突如、ディメオラがコンピュータによる打ち込みサウンドを完全に前面に押し出した企画盤。それまでの「速弾きギターソロ」や「リズム隊の強烈なリズム&ビート」はほとんど聴かれないが、打ち込みによるクールで無機質なリズム&ビートに乗った、ディメオラとヤン・ハマーの不思議なコラボの音世界が広がる。

ディメオラの繰り出すフレーズはエスニック。それまでのキャッチフレーズだった「スパニッシュ」なフレーズを飛び越して、エスニックな香り濃厚なフレーズをガンガンに繰り出す。その妖しく幽玄な不思議なマイナーフレーズが、打ち込みによるクールで無機質なリズム&ビートに乗って映えに映える。
 

Al-di-meolascenario

 
ヤン・ハマーのフェアライトCMI中心の、ちょっと捻れた、妖しくも幽玄なエスニック・フレーズがこの盤の全体の雰囲気を支配している。打ち込みによるリズム&ビートは、当時の英国のプログレッシヴ・ロック志向で、純粋なフュージョン・ジャズとは、全くテイストの異なった、唯一無二なもの。そこかしこに英国プログレッシヴ・ロックのテイストを感じる。

そんなヤン・ハマーの妖しくも幽玄なエスニック・フレーズと打ち込みリズム&ビートに乗って、ディメオラが、ギター・シンセを駆使して、エスニックなフレーズを弾きまくる。ギター・シンセを活用しているので、その楽器の性格上、従来のディメオラの高速速弾きは叶わないが、ギター・シンセの音の特性を活かした、魅惑的で妖艶なエスニック・フレーズを振り撒いている。ここでのディメオラの弾き回しはさすがで、説得力と聴き応えのあるギターをしっかりと聴かせてくれる。

テクノ・フュージョン・ジャズとでも形容したら、ちょっとシックリくる音世界。ディメオラのギター・シンセは、あくまでジャズに軸足があり、今回のパートナーである、ヤン・ハマーのフェアライトCMIは、英国のプログレッシヴ・ロック志向で、テクノなジャズロックなフレーズが実にユニーク。

テクノ・ミュージックと、英国プログレと、フュージョン・ジャズの融合。基本のフレーズは「エスニック」。ディメオラが考える「スムース・ジャズ」として捉えても面白い内容。優れた一人の音楽家としてのディメオラの矜持を感じる、ディメオラにしか創り得ない、ディメオラ独自の音世界。意外とこの企画盤、聴き応えがあります。
 
 

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2024年7月29日 (月曜日)

ギルの「ジミヘンへのオマージュ」

久しぶりに、サイケデリックなジャズ・ロックとして、ジョン・マクラフリンの『Devotion』(1970年)を聴いて、確か、この盤って、マクラフリンによる「ジミ・ヘンドリックス(ジミヘン)へのオマージュ」を表明した企画盤だったことを思いました。

ジミヘンと言えば、マイルス・デイヴィスと一緒にプレイする可能性があったことは有名な話で、ただ、1970年9月18日に、ジミヘンが麻薬のオーヴァードーズが原因で急逝してしまったので、ジミヘンとマイルスの共演は実現しなかった。

そんなマイルスとジミヘンの間を取り持っていたのが、「音の魔術師」と形容されたジャズ・コンポーザー&アレンジャーのギル・エヴァンスだったらしい。間を取り持つくらいにジミヘンのサウンドに強い興味を持っていたギル・エヴァンス、ジミの楽曲のジャズ・オーケストラへのアレンジの構想も具現化しつつあって、いつか発表したいと目論んでいた節がある。

ギル・エヴァンスは、1974年、カーネギー・ホールにて、ギル・エヴァンス・オーケストラを率いて、ジミヘンの曲だけのコンサートを行い、その後直ぐに、ジミヘン曲がメインのスタジオ録音に臨んでいる。

『The Gil Evans Orchestra Plays the Music of Jimi Hendrix』(写真左)。1974年6月の録音。ちなみにパーソネルは、以下の通り。

Gil Evans (ac-p, el-p, arr, cond), Hannibal Marvin Peterson (tp, vo), Lew Soloff (tp, flh), Peter Gordon (French horn), Pete Levin (French horn, syn), Tom Malone (tb, fl, syn, arr), Howard Johnson (tuba, b-cl, el-b, arr), David Sanborn (sax, fl), Billy Harper (ts, fl), Trevor Koehler (sax, fl, arr), John Abercrombie, Ryo Kawasaki (el-g), Keith Loving (g), Don Pate, Michael Moore (b), Bruce Ditmas (ds), Warren Smith (vib, marimba, chimes, perc), Sue Evans (ds, congas, perc)。

錚々たるメンバーで固めたギル・エヴァンス・オーケストラである。ハンニバル・ピーターソン、ルー・ソロフのトランペット、デイヴィッド・サンボーン、ビリー・ハーパーのサックス、ジョン・アバークロンビーと川崎遼のエレギ、これだけでも、このオーケストラが、どれだけ先鋭的でいマージネーション豊かなサウンドを出すか、が想像できる。
 

The-gil-evans-orchestra-plays-the-music-  

 
そして、ジャズ・オケとして、ユニークな管楽器のフレンチ・ホルン、チューバが入って、ヴァイブも入って、通常のジャズ・オケとは異なる、幽玄で神秘的な響きを伴った、ギル・エヴァンス・オーケストラならではの音世界が広がっている。そんな個性的でユニークなギル・エヴァンス・オケの音で、ジミヘンの自作曲を演奏していく。オーケストラのアレンジ能力の高さが窺い知れる。

印象的なジミヘン曲「Angel」から入る。これが「痺れる」。楽曲の持つ美しくR&Bな旋律を上手にアレンジして、ジャズ・オケで聴かせる。「Foxy Lady」や「Voodoo Chile」のアレンジも優秀。ジミヘン曲のジャズ化が大成功を収めている。

逆に「Castle Made Of Sand」「Up From The Skies」「Little Wing」あたりは、原曲のイメージが判らなくなるくらいデフォルメされているが、ジミヘン曲のユニークなコード進行やフレーズの捻れをうまく、ジャズ・オケにアレンジしている。

アルバム全曲を聴き通して感じるのは、アレンジ担当が、ギル・エヴァンスだけではなくて、オケ・メンバーの3人くらいがアレンジを担当している。曲によって、与える印象やニュアンスが異なるのは、それが原因だろう。ただ、アレンジの基本路線はギル・エヴァンス親分のイメージを踏襲しているので、大きくイメージが逸脱することは無い。逆に、親分以外のアレンジは、判りやすくシンプルなアレンジが多く、聴きやすいという「副産物」も感じられるところが良い。

ジミヘン曲へのオマージュという点では、ジョン・アバークロンビーと川崎遼のエレギが「エグい」音で、ジミヘンのエレギに対するオマージュを捧げている。ジミヘンがエレ・ジャズの中で、ジャズのリズム&ビートに乗ったら、こういう音を出したのかなあ、と想像しながら聴くと、とても楽しい。

当時として、かなり先進的、先鋭的なアレンジと響きを持ったギル・エヴァンス・オーケストラの音は、なかなか一般ウケは難しく、セールスには繋がり難かったみたいだが、その内容は、現代の「今の耳」で聴いても、かなり優れている。ジミヘンの曲の採用については成功していて、この盤、ギル・エヴァンス・オーケストラの名盤の一枚と高く評価して良い。僕の大好きなギル・エヴァンス・オーケストラの名盤の一枚です。
 
 

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2024年7月28日 (日曜日)

マクリーン流ハードバップの完成

1961年のジャキー・マクリーンは、マクリーン流のハードバップを完成させた年。アルト・サックスの吹きっぷり、演奏のイメージとアレンジ、どれもがマクリーン流にこなれて、マクリーン独特のアルト・サックスの音色と相まって、一聴してすぐに判る「マクリーン流」ハードバップな演奏を確立している。

Jackie Mclean『A Fickle Sonance』(写真左)。1961年10月26日の録音。ブルーノートの4089番。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Tommy Turrentine (tp), Sonny Clark (p), Butch Warren (b), Billy Higgins (ds)。

マクリーンのアルト・サックスと、珍しく、トニー・タレンタインのトランペットがフロント2管、これまた珍しくソニー・クラークがピアノを担当、ベースのワーレンとドラムのヒギンスはこのところの、マクリーンのお気に入りリズム隊。

1961年の録音なので、マクリーンは、まだ、モードやフリーには傾倒してはいない。アルト・サックスの吹きっぷりは、コルトレーンのストレートな吹き方を踏襲、シーツ・オブ・サウンドにも似た高速アドリブ・フレーズも吹きまくる、先進的なハードバップ志向の演奏。演奏内容の傾向としては、前リーダー作の『Bluesnik』の内容を継承している。そう、この『A Fickle Sonance』は、前リーダー作の『Bluesnik』と併せて、兄弟盤の様な位置付けで、一気に聴き通した方が判り易いかもしれない。

『A Fickle Sonance』の演奏自体の雰囲気は「先進的」。マイルスやコルトレーンが提示した「先鋭的」なハードバップを自分なりに消化して、従来のハードバップの成果を踏襲することなく、精度の高い、内容充実の「先進的」なハードバップを展開していて立派。モードに展開する前に、しっかりと自分なりのスタイルを固めた、マクリーン流のハードバップを確立して様は見事である。
 

Ficklesonance_2

 
サイドマンの演奏も充実している。トニー・タレンタインのトランペットはブリリアントでリリカルで切れ味の良い力感溢れるトランペットを聴かせてくれる。

ピアノのソニー・クラークも、マクリーンの志向に応じて、新しい響きのハードバップなバッキング・フレーズをガンガン繰り出している。これが、マクリーンの「先進的」なハードバップ・フレーズと相まって、爽快感溢れる、躍動感抜群のパフォーマンスを演出する。

マクリーンのアルト・サックスと、タレンタインのトランペットとのユニゾン&ハーモニー、そして、チェイス、コール・アンド・レスポンス、どれをとっても極上の響き。ワーレンのベースとヒギンスのドラムも、通常のハードバップにはない、一癖も二癖もある、新しい響きを宿したリズム&ビートを供給していて「隅に置けない」。

マクリーン流の「先進的」ハードバップが詰まった名盤。マクリーンはこの盤を置き土産に、次作『Let Freedom Ring』で、モード&フリーに「挑戦」していく。マクリーンのハードバップの「マイルストーン的位置付け」の一枚。

実はこの『A Fickle Sonance』、2021年12月28日に鑑賞記事をアップしているのですが、今回、聴き直した折、印象がかなり違ったんで、今回、改めて鑑賞記事をアップし直しました。今回のこの鑑賞記事を最新としてお読みいただければ幸いです。
 
 

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2024年7月27日 (土曜日)

マクラフリンの初期の名盤です

ジャズ・エレギのイノベーター&レジェンドの一人、ジョン・マクラフリン。彼は、ギタリストのキャリアの中で、何度か、そのスタイルを大きく変えている。いわゆる「進化」するタイプのギタリストで、その「進化」の跡は、後継に対して、一つの「スタイル」として定着している。

John McLaughlin『My Goal's Beyond』(写真)。March 1971年3月、NYでの録音。John McLaughlin (ac-g), Charlie Haden (b), Jerry Goodman (vln), Mahalakshmi (tanpura), Dave Liebman (fl, ss), Billy Cobham (ds), Airto Moreira (perc), Badal Roy (tabla)。

マクラフリンのソロ3作目。全編アコースティック・ ギターによる演奏がメイン。アルバム構成としては、LP時代のA面は、インド音楽への傾倒を露わにした、マクラフリンの新しいスタイルの演奏。マクラフリンの精神的指導者であるインドの導師、 シュリ・チンモイに捧げられている。B面は、マニアックなミュージシャンズ・チューンや自作曲を演奏している。

まず、当時のマクラフリンの最初の「進化」である、インド音楽への傾倒。とはいえ、完全にインド音楽している訳では無くて、インド音楽とジャズロックの「クロスオーバー」な演奏と形容するのがしっくりくる。ただ、ジャズロックがメインの演奏に、インド音楽のフレーズとビートが濃厚に漂い、インド音楽とジャズロックの融合は「成功」している。

ジェリー・グッドマンのバイオリン、デイヴ・リーブマンのフルート&ソプラノ・サックスが効果的に、深淵で幽玄なスピリチュアルな響きを撒き散らし、バダル・ロイのタブラがインド音楽志向のリズム&ビートを一手に引き受ける。ヘイデンのベース、コブハムのドラム、モレイラのパーカッションが、ジャズロックなリズム&ビートをしっかりとキープする。
 

John-mclaughlinmy-goals-beyond

 
そんなインド音楽とジャズロックの「クロスオーバー」な演奏をバックに、マクラフリンのアコギがスピリチュアルに飛翔する。インド音楽のストレンジな響きに流されない、切れ味の良い、スピリチュアルなマクラフリンのアコギの響き。このマクラフリンのアコギがこのインド音楽の雰囲気濃厚な演奏をジャズロックに仕立て上げている。

LP時代のB面の演奏も実に興味深い。最初の1曲目「Goodbye Pork Pie Hat」は、英国ロックのオールド・ファンは懐かしさに駆られると思う。あのジェフ・ベックの名演の基になったであろう、このマクラフリンのアコギのパソーマンス。アレンジが後のジェフ・ベックの演奏とほとんど同じ。アコギでの切れ味良いスピリチュアルな弾き回しは、明らかにジェフ・ベックのエレギの演奏を上回る。

LP時代のB面は、2〜3分の小品ばかりだが、マクラフリンのアコギのパフォーマンスは申し分ない。このB面のアコギのパフォーマンスの優れた内容がマクラフリンの基本的個性であり、マクラフリンがジャズロック&クロスオーバー・ジャズのギター・レジェンドである所以だろう。ところどころ、コブハムによる様々なシンバルのアクセントが効果的に加わるところもなかなか「ニクい」アレンジである。

このアルバムでのジャズロック&クロスオーバー・ジャズでの「バイオリン」の導入は、英国のプログレッシヴ・ロックにも影響を与えた様で、ロバート・フリップ率いる、第3期キング・クリムゾンのバイオリンの導入にも繋がっている、と言われる。それも納得の「効果的なヴァイオリンの導入」も見事。

マクラフリンのエフェクトを駆使したエレギよりも、この盤でのアコギのパフォーマンスに、とことん感じ入ります。インド音楽への傾倒も興味深い内容ですが、僕は、この盤でのマクラフリンのアコギのパフォーマンスに、ギター・レジェンドとしての「凄み」をビンビンに感じます。
 
 

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2024年7月26日 (金曜日)

サイケデリックなジャズ・ロック

ジョン・マクラフリンのエレギは、ジャズに軸足をしっかり残した、先鋭的で革新的なエレギで唯一無二。ジャズ色の強いクロスオーバーなエレギなので、何故か我が国では人気は高くないが、ジャズ・エレギのイノベーターの一人として、絶対に無視できない。

John McLaughlin『Devotion』(写真左)。1970年2月の録音。ちなみにパーソネルは、John McLaughlin (el-g), Larry Young (org, el-p), Billy Rich (b), Buddy Miles (ds, perc)。ジョン・マクラフリンのソロ・リーダー作の2作目になる。

パーソネルを見渡すと、お気に入りのプログレッシヴなオルガン奏者、ラリー・ヤング。そして、ジミ・ヘンドリックスと共演歴のあるビリー・リッチ。ジミ・ヘンドリックスのバンド・オブ・ジプシーのドラマーであった、バディ・マイルス。ジミヘンゆかりのリズム隊が目を引く。

そして、この盤を聴くと、思わずニヤリ。これって「ジミヘン」やん。マクラフリン流のジミヘン・フレーズの嵐。演奏の基本は「サイケディック・ロック」をベースとしたクロスオーバー・ジャズ。

ジミヘンと共演歴のあるベースとドラムのリズム隊が「バンド・オブ・ジプシー」風のリズム&ビートを叩きまくって、演奏全体のサイケ色、ジミヘン色を色濃くしている。
 

John-mclaughlindevotion

 
1970年2月の録音なので、まだ、ジミヘンは存命していた時期の録音になる(ジミヘンは1970年9月にオーヴァードーズが原因で急逝している)。そういう意味では、この盤は、マクラフリンによる「ジミヘンへのオマージュ」を表明した企画盤とも解釈出来る。

さすがはマクラフリンといったエレギの弾き回しで、ジミヘンのオマージュ的な音作りではあるが、ジミヘンそっくりでは全く無い。ギターの基本テクニックはマクラフリンの方が上。

ロック的なグルーヴはジミヘンだが、マクラフリンはジャズロック的なグルーヴで応戦している。マクラフリンの弾き回しは端正で規律的。ジミヘンの弾き回しは適度にラフで直感的。アタッチメントによる音の加工も、両者、似て非なるもの。

マクラフリンのエレギとヤングのオルガンのフレーズは完全に「モード」。サイケ色に彩られたモーダルなフレーズをマクラフリンとヤングは弾きまくる。マイルスのアルバムやトニー・ウィリアムスのライフタイムでブイブイ言わせていた「呪術的でアブストラクトに捻れた」切れ味の良い、サイケデリックなフレーズの嵐。

適度なテンションも張っていて、サイケ色が強いながら、演奏全体は整っていて、理路整然としている。カッチリまとまった、しっかり作り込まれたサイケデリック・ジャズロックである。

音の雰囲気はいかにも「英国的」。ブリティッシュなサイケデリック・ロックの音の雰囲気や、プログレッシヴ・ロックの音の雰囲気をしっかりと漂わせている。こういうところが、英国のジャズロック、クロスオーバー・ジャズならでは個性であり、僕はとても気に入っている。
 
 

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マクリーンの果敢な挑戦の記録

ブルーノートには「ボツになった理由不明」の未発表音源がゴロゴロしていた。そんなブルーノートの未発表音源を「Blue Note LTシリーズ」として、1979〜1981年にLP40数タイトルでリリースした。どのアルバムも聴いてみて、「どこがお蔵入りなんや」「どこが気に入らなかったんや」と思ってしまう優秀な音源ばかりなのだ。

Jackie McLean『Vertigo』(写真左)。1959年5月2日、1963年2月11日の録音。ここでは、1980年リリースの「Original LP」の収録曲(全6曲)に絞ってコメントする。ちなみにパーソネルは以下の通り。

1959年5月2日の録音(3曲目: 「Formidable」のみ)については、Jackie McLean (as), Donald Byrd (tp), Walter Davis Jr. (p), Paul Chambers (b), Pete LaRoca (ds)。

1963年2月11日の録音(3曲目以外: 「Marney」「Dusty Foot」「Vertigo」「Cheers」「Yams」)については、Jackie McLean (as), Donald Byrd (tp), Herbie Hancock (p), Butch Warren (b), Tony Williams (ds)。

2セッション共通で、ジャキー・マクリーンのアルト・サックスとドナルド・バードのトランペットの2管フロント。リズム・セクションは総入れ替え。

3局目の「Formidable」だけが、マクリーンの『New Soil』(ブルーノートの4013番)録音時のボツテイク。この曲だけは、この『New Soil』収録曲と同列で評価されたい(2021年5月3日のブログ参照)。ここでは、3局目の「Formidable」以外の1963年2月11日の録音についてコメントする。

パーソネルを見渡すと、リズム・セクションの3人に目がいく。ピアノに若かりし頃のハービー・ハンコック、ベースにブッチー・ワーレン、そして、ドラムに、当時弱冠17歳のトニー・ウィリアムス。そう、この音源、トニー・ウィリアムスの初録音である。
 

Jackie-mcleanvertigo  

 
録音は、正式盤でリリースされた『One Step Beyond』(2016年1月8日のブログ参照)の約2ヶ月前の録音で、トニー・ウィリアムスだけが、『One Step Beyond』にも、ドラム担当としてチョイスされている。

さて、1963年2月11日のセッションについては、成熟したハードバップと、当時、マクリーンが取り組んでいた「モード・ジャズ」が良い塩梅でミックスされたユニークな内容。テーマ部のフロントのユニゾン&ハーモニーは、成熟したハードバップの響き、アドリブ展開部は、少しハードバップのコードな展開が見え隠れするマクリーンなりのモーダルなフレーズ。

で、ピアノのハンコックは、と問えば、意外とモード・ジャズしていない、ハードバップなバッキングをメインにしているのが面白い。ハンコックなりのモーダルなフレーズを封印して、マクリーンならではのモーダルな展開を優先させていることがよく判る。サイドマンの鏡の様なバッキング。

トニーのドラムも同様。後の細かくシンバルを叩きまくりつつ、フロント管を煽りに煽る攻撃的なドラミングは全く無し。神妙にハードバップなビートを正確に叩き出している。が、これが意外と「老獪」。弱冠17歳にして、トニーのハードバップなドラミングは完成されている。

この1963年2月11日のセッションの内容については、ボツとした理由が判らない。モードに適用する過渡期のマクリーンの独特の個性をしっかり捉えている。恐らく、この日のセッションについては、ここに収録された5曲のだった様で、LPにしてリリースするには、収録時間を考えると、曲が1曲、足らなかったのだろう。ブルーノートは、プレスティッジの様に、やっつけのアルバム編集はしない。

3曲目をちょっと横に置いて、残りの5曲は意外と聴き応えのある内容です。モードに果敢にチャレンジするマクリーンの奮闘ぶりが良く判る佳作だと思います。
 
 

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2024年7月24日 (水曜日)

プログレッシヴなジャズ・ロック

John McLaughlin(ジョン・マクラフリン)。英国出身のジャズ・ギタリスト。ジャズ・ロック〜クロスオーバーなエレギを基本とするテクニシャンで、ジャズ・ギタリストの歴史の中でも、重要なポジションを占めるバーチュオーゾである。

マイルスの「In a Silent Way」から「On the Corner」まで、エレギ中心に参加、当時の「エレ・マイルス」のビートを形成する上で、重要な役割を担ったギタリストである。

この人のエレギは凄い。とにかくテクニックがもの凄い。そして、音色のバリエーションが凄い。そして、出てくるフレーズの自由度が相当に高い。アル・ディ・メオラと並んで、ジャズ・ロックなエレギの最高峰。

John McLaughlin『Extrapolation』(写真)。1969年1月18日、ロンドンの「Advision Studios」での録音。ちなみにパーソネルは、John McLaughlin (g), John Surman (bs, ss), Brian Odgers (b), Tony Oxley (ds)。

ジャズロックなギタリストの鬼才、ジョン・マクラフリンの初リーダー作。マクラフリンが、トニー・ウィリアムス・ライフタイムに参加する為に渡米する前にロンドンで録音され、当時の英国における先鋭的な若手のジャズ・ロックなミュージシャンが参加している。
 

John-mclaughlinextrapolation

 
米国ジャズには絶対に無い「先鋭的」な音世界。元々、ロックとジャズの境界線が曖昧な英国ジャズ・シーン、この盤は、ジャズから表現した「プログレッシヴ・ロック」。マクラフリンのエレギの音は、当時、プログレッシヴ・ロックで活躍していたギタリストが奏でる音と同質なもの。

ただ、出てくるフレーズは、モードであり、フリーであり、バップ。この辺りが「ジャズ」に軸足が乗ったジャズロックなギタリストと形容される所以だろう。サウンドの質は実に英国的。ソフト・マシーンや、キング・クリムゾンを聴いている様な、渋い黄昏色のキラキラした、湿度の高い、哲学的でスピリチュアルな「音の色」。

バリサク&ソプラノ担当のジョン・サーマン、ベースのブライアン・オッジス、ドラムのトニー・オックスレイという、当時の英国における先鋭的な若手のジャズ・ロックなミュージシャンが、幾何学的に8ビート的に強烈にスイングする。バップから、シーツ・オブ・サウンドからモードと、当時の先進的なジャズの演奏トレンドをジャズロックでガンガンやるのだから堪らない。

主役のマクラフリンのギターは、それはそれは凄まじいもの。サーマンのサックスとの超高速ユニゾンをはじめ、ソロの弾き回しやカッティングも、切れ味鋭く、相当にスリリング。テクニックは相当に高度、速弾きをしても破綻は全く無い。

バンド全体のサウンドは、プログレッシヴなジャズ・ロック。フレーズやリズム&ビートは、モードであり、フリーであり、バップ。いかにも英国ジャズらしい音世界。そして、マクラフリンのギタリストとしての「途方も無い力量」が良く判る秀作である。
 
 

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2024年7月23日 (火曜日)

アジムス初期のライヴ音源です

酷暑の日が続く。ここまで暑いと「爽やかなフュージョン」が聴きたくなる。ブラジリアン・フュージョンの代表的バンド「アジムス」を選択。ソフト&メロウなフレーズに、軽快なファンクネスをベースに、スペーシーな音の広がりとサイケデリックなブレイクダウン、しなやかでソリッドにうねるようなグルーヴが、涼しいエアコンが効いた部屋の中で聴くのにピッタリ。

Azymuth『Live at the Copacabana Palace』(写真左)。1979年3月、リオデジャネイロの「Copacabana Palace Hotel」での録音。オリジナルは1985年にフランスのSBAからリリースされている。ちなみにパーソネルは、José Roberto Bertrami (key), Alesandre Malheiros (b), Ivan Conte "Mamao" (ds), Aleuda (perc)。ベルトラミ、ママォン、マリェイロスに加え、アレウーダがパーカッションで参加した4人編成。

ブラジリアン・フュージョン・グループ代表格、アジムスが1979年にコパカバーナ・パレス・ホテルで行った、とされるライヴ録音。アジムス初期のキレキレの演奏が聴ける。爽快感、軽快感溢れる、ブラジリアンな8ビートのグルーヴ感が独特の感覚。このアジムス独特のグルーヴ感を、このライヴ音源でもしっかりと感じることが出来る。
 

Azymuthlive-at-the-copacabana-palace

 
アブストラクトな音の空間を演出がアジムスらしい「Light As A Feather」、ブラジリアン・フュージョンの古典的ダンスフロア・ミュージックな「Jazz Carnival」、NHK-FMのクロスオーヴァー・イレブンのオープニングで懐かしい「Voo Sobre O Horizonte」など、アジムスの個性的で代表的なフュージョン・ミュージック曲の数々を聴くことが出来る。

アジムスのフュージョン・ミュージックは、米国のそれとは全く違う、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズ独特の音作りが基本なんだが、スペーシーな音の広がり、ライトなファンクネスを忍ばせつつ、しなやかでソリッドにうねるようなグルーヴ、シンセのギミックな使い方は、米国のフュージョン・ジャズには聴かれない、アジムス独特のもの。

スタジオ録音に歓声を被せるなど小細工しただけの「疑似ライヴ盤」という評価もあるみたいだが、演奏の内容、演奏の精度については、スタジオ録音と比較して劣ることはない。真偽のほどはよくわからないが、スタジオ録音の初期の名盤『Light As A Feather』と合わせて、じっくりと味わいたいアジムスのライヴ音源です。
 
 

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2024年7月22日 (月曜日)

ソウル・ジャズの ”G・グリーン”

グラント・グリーン(Grant Green)という伝説のジャズ・ギタリスト、我が国ではあまりポピュラーな存在では無かった。

生まれは1935年6月6日、米国ミズーリ州セントルイス、ギタリストとしての活動期間は、概ね1959年〜1978年。1959年、セントルイスで演奏しているところを、ルー・ドナルドソンに見出され、ブルーノートの総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンに紹介される。

1961年から1965年まで彼はブルーノートの専属ギタリストとして、リーダーとサイドマンの両方で活躍。1966年にグリーンは一旦、ブルーノートを離れ、ヴァーヴを含む他のレーベルでレコーディング、1967年から1969年までは個人的な問題とヘロイン中毒の影響で活動を休止。1969年にブルーノートに復帰している。

Grant Green『Green is Beautiful』(写真左)。1970年1月30日の録音。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), Blue Mitchell (tp), Claude Bartee (ts), Neal Creque (org, track 3), Emmanuel Riggins (org, tracks 1, 2, 4 & 5), Jimmy Lewis (el-b), Idris Muhammad (ds), Candido Camero (conga), Richie "Pablo" Landrum (bongos)。プロデューサーは「フランシス・ウルフ」に代わっている。

全5曲中、プーチョ&ラテン・ソウル・ブラザーズの音楽監督でもあったキーボード奏者のニール・クリーキーの曲が2曲(「The Windjammer」と「Dracula」)、以下、ジェイムス・ブラウンの「Ain't It Funky Now」、ビートルズ「A Day In The Life」、ディオンヌ・ワーウィックの「I'll Never Fall in Love Again」と、ロック、R&Bの有名曲のカヴァー集。
 

Grant-greengreen-is-beautiful

 
1969年、ブルーノートに復帰後のグラント・グリーンの快作。冒頭の「Ain't It Funky Now」を聴いて判るが、演奏されるジャズは「ソウル・ジャズ」。

ブルーノートを一旦離れる前は、こってこての「ファンキー・ジャズ」だったが、復帰後は、こってこての「ソウル・ジャズ」に変わっている。そして、この、こってこての「ソウル・ジャズ」が、グラント・グリーンのパッキパキでファンキーな、シングル・トーンのギターにバッチリ合っている。

グリーンのギターの音色は、骨太で硬質でホーンライク。そんな太くて硬い音色で、R&B曲の旋律を唄うが如く弾きまくるのだ。これが実にソウルフル。ジャズ・ファンク色溢れるグルーヴも芳しく、グリーンのギターは唄うが如く、踊るが如く、R&B色豊かなソウル・ジャズを弾きまくる。

このソウル・ジャズ色を更に確実に、更に色濃くしているのが、オルガンの存在。ニール・クリークとエマニュエル・リギンズの二人がオルガンを担当しているが、このオルガンが実に効いている。どちらかといえば、R&B系のオルガンの様で、この盤でのグリーンの「ソウル・ジャズ」にバッチリ填まっている。

1960年代後半から1970年代のソウル・ジャズ、ジャズ・ファンク好きにはたまらない内容。逆に、硬派な「純ジャズ命」のジャズ者の方々には「際もの」以外の何者でも無い。しかし、そこはブルーノート、当時の流行をしっかりと踏まえて、なかなかアーティスティックなソウル・ジャズ志向にまとめているところが素晴らしい。メインストリーム系のソウル・ジャズとして、この盤は「アリ」ですね。
 
 

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2024年7月21日 (日曜日)

グリーンの優れたカヴァー能力

暑い。酷暑である。梅雨明け宣言があった翌日からの猛暑。午前中から外出が憚られる強い日差しと熱風。外出したら絶対に体に悪い。これはもう「引き籠り」しかない。ありがたいのはエアコンの存在で、朝からエアコンをフル稼働させて、なんとか涼しい部屋の中でテレビを見たり、ジャズを聴いたり。

Grant Green『I Want to Hold Your Hand』(写真左)。1965年3月31日の録音。ブルーノートの4202番。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), Hank Mobley (ts), Larry Young (org), Elvin Jones (ds)。グラント・グリーンのギターと、ハンク・モブレーのテナー・サックスがフロントの、オルガン入り変則カルテット。ベースはラリー・ヤングのオルガンが代替している。

前々作の『Talkin' About!』(1964年9月録音)で、出会ったリーダーでギタリストのグリーンとオルガンのヤング、ドラムのエルヴィン。きっと相性が良かったのだろう、前作『Street of Dreams』では、新進気鋭のヴァイブ奏者ハッチャーソンを加えて、そして、今回は、ベテランの域に達していたテナーのハンク・モブレーを加えて、意外と硬派で正統派なファンキー・ジャズを聴かせてくれる。

今回はアルバム・タイトルにあるように、レノン=マッカートニーの「I Want to Hold Your Hand(抱きしめたい)」の、ビートルズ・ナンバーのカヴァーを目玉に、アルバムの冒頭に配している。当時、ビートルズが大人気で、ジャズ界では、こぞって猫も杓子もビートルズ曲のカヴァーを録音して、アルバムの売り上げに貢献させようと躍起だった。

が、ビートルズ曲はコード進行がジャジーでは無い。ロックンロールとして捉えても、コード進行がかなりユニーク。そして、演奏ビートは8ビート。ジャズにアレンジするには、かなり障壁が高かった。事実、ビートルズ曲のジャズ化については、曲の旋律を忠実になぞって、4ビートに収めて、アドリブ展開無しに終わる、という「イージーリスニング」的アレンジが多かった。コード進行がユニークがゆえ、アドリブ展開が意外と難しかったのだろう。

しかし、このグラント・グリーン盤の「I Want to Hold Your Hand」はなかなか良く出来たアレンジで、上手く4ビートに乗せ直し、ユニークなコード進行を踏襲しつつ、アドリブ部もしっかりと展開している。この演奏を聴いて思うのは、ビートルズ曲のジャズ化って、演奏するジャズマンのセンスと力量によるところが大きい、ということが良く判る。
 

Grant-greeni-want-to-hold-your-hand

 
全く未経験のユニークなコード進行を基に、アドリブ展開をするのは、やはり至難の業なんだろう。それまでのアドリブ経験が全く応用できないのだからたまらない。

しかし、この盤でのグリーンは、全く違和感なく、「I Want to Hold Your Hand」のアドリブ展開を実現している。未経験のユニークなコード進行を基にアドリブを展開するには、その想像力の高さとセンス、そして、そのイメージを実現する確かなテクニック。これらを兼ね備えたジャズマンだけが、ビートルズ曲の「優れたジャズ化」を実現出来るのだろう。

聴いていて、1曲目の「I Want to Hold Your Hand」の演奏の流れと、次の有名スタンダート曲「Speak Low」の演奏の流れと、全く違和感が無いのはさすが。ビートルズ曲のジャズ化の好例が、この「I Want to Hold Your Hand」だろう。4曲目のボサノバの名曲「Corcovado」のカヴァーも良好。グリーンはポップス系の楽曲のカヴァーが上手い。

サイドマンも良好。特に、新進気鋭の「オルガンのコルトレーン」こと、ラリー・ヤングのオルガンも良い。しっかりと地に足を着けた、伝統的なハードバップなフレーズを繰り出すヤングは意外と凄い。

さらに良いのは、サイドマンに回ったハンク・モブレーのテナー。この盤でのモブレーは「当たり」。彼にとって何が良かったか判らないが、素晴らしい「伴奏のテナー」をきかせてくれる。おおらかにアドリブを繰り出し、絶妙にチェイスを入れる。伴奏のモブレー、素晴らしい。

そして、さすがなのは、ドラムのエルヴィン。「I Want to Hold Your Hand」の4ビートへの落とし込み。ボサノバ・ジャズへの柔軟かつ違和感の無い対応。エルヴィンは単にポリリズミックなドラマーでは無い。歴代のレジェンド級のドラマーの中でも、類稀なセンスと力量を兼ね備えた、適応力抜群のオールラウンドなドラマーである。

ビートルズ曲のカヴァーをタイトルにした企画盤なので、硬派なジャズ者の方々からは敬遠され気味ですが、敬遠するには及ばず。サイドマンの演奏内容も秀逸。グリーンのギターの力量とテクニックの素晴らしさが実感できる秀逸な内容です。
 
 

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2024年7月20日 (土曜日)

オルガン入りギター盤の秀作です

グラント・グリーンは、ほとんど「ブルーノートのお抱え」ギタリストと思って良いと思う。グラント・グリーンの秀作は、当時のブルーノート・レーベルに集中している。ブルーノートの総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンが、グラント・グリーンのギターの個性について、いかに造詣が深かったか、が非常に良く判る。

Grant Green『Street of Dreams』(写真左)。1964年11月16日の録音。ブルーノートの4253番。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), Bobby Hutcherson (vib), Larry Young (org), Elvin Jones (ds)。グラント・グリーンのギターと、ボビー・ハッチャーソンのヴァイブがフロントの、オルガン入り変則カルテット。ベースはラリー・ヤングのオルガンが代替している。

オルガン入りのグリーンのリーダー作。まず、グリーンのギターはシングル・トーンでありながら、音がとても太い。普通、シングル・トーンのギターは音が細くて、オルガンの太い音色に負けることが多いのだが、グリーンのシングル・トーンはとても太いので、オルガンの太い音色に負けず、オルガンと対等にフレーズを奏で、ユニゾン&ハーモニーを奏でることが出来る。

しかも、オルガンは、当時、新進気鋭のラリー・ヤング。いわゆるオルガンの新主流派、と形容される、スマートな音色が個性。つまり、従来のオルガンの様に、例えば、ジミー・スミスなどの様に、ファンクネスが濃厚では無い。そんな「オルガンのコルトレーン」と形容されるヤングが、ファンキー・ジャズなオルガンを弾きまくる。
 

Grant-greenstreet-of-dreams

 
これが「ミソ」で、グリンのギターとオルガンが絡む時、グリーンの持つ濃厚なファンクネスが前面に推し出てくるのだ。ヤングのオルガンにも、そこはかとなくファンクネスは漂うのだが、この盤での濃厚なファンクネスは、絶対のグリーンのギターから醸し出るファンクネスなのだ。

ハッチャーソンのヴァイブの存在も見逃せない。ハッチャーソンのヴァイブも、いわゆるヴァイブの新主流派、と形容されるモーダルでスマートなヴァイブが身上。例えば、ファンキー・ヴァイブのレジェンド、ミルト・ジャクソンのヴァイブだと、グリーンのギターの濃厚なファンクネスと相まって、オーバー・ファンクな演奏になって、確実に「耳にもたれる」。

が、ハッチャーソンのヴァイブだとそうならない。逆にハッチャーソンのスマートなヴァイブがグリーンのギターの持つ濃厚なファンクネスを際立たせる効果を産んでいる。グリーンのファンクネス濃厚なギターの音色を、洗練したスマートなファンクネスの音色に変化させ際立たせる。ハッチャーソンのヴァイブの存在も、この盤での「キモ」である。

あとは、リズム&ビートを推進するドラマーの存在。この盤では、エルヴィンがいつになくファンキーなドラミングでバンド全体の演奏をコントロールし鼓舞する。この盤でのエルヴィンのファンキーなドラミング。エルヴィンって器用で引き出しの多いドラマーなんだ、ということを再認識する。

グリーンのファンクネス濃厚でホーンライクな弾き回しも魅力的で、バンド全体のリラックス度の高い、ファンキーな演奏も、このメンバーでは異色。ジャケットも良好。実にスマートでリラクゼーション溢れる、グルーヴィーなオルガン入りギター盤の秀作です。
 
 

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2024年7月19日 (金曜日)

グリーンの奏でるハードバップ

僕はグラント・グリーンのギターが好きだ。ウエス・モンゴメリーの豪快なオクターヴ奏法も格好良いが、グラント・グリーンの質実剛健、誠に潔い「シングル・トーン」= 一本弾きが、とてつもなく「好き」。独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなギターを弾きまくるグリーンは格好良い。

Grant Green『Idle Moments』(写真左)。1963年11月4, 15日の録音。ブルーノートの4154番。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), Joe Henderson (ts), Bobby Hutcherson (vib), Duke Pearson (p), Bob Cranshaw (b), Al Harewood (ds)。リーダーのグラント・グリーンのギター、ジョー・ヘンダーソン(ジョーヘン)のテナー、ハッチャーそんのヴァイブがフロントのセクステット編成。

ピアソンの「Idle Moments」、グリーンの自作「Jean De Fleur」、ジョン・ルイスの名曲「Django」、そして、再びピアソンの「Nomad」の4曲を収録。CDでは、ボートラで「Jean De Fleur」と「Django」の別テイクが付くが、アルバム鑑賞には、正式な4曲を聴き込むのが正解だろう。

この盤は珍しくスタンダード曲を選曲していない。しかも、グリーンとピアノのピアソン以外は、新主流派志向のモード・ジャズが得意な面々。これはもしかしたら「大モード大会」か、と思いきや、真っ当な、正統派でストレートなハードバップな演奏が繰り広げられているから面白い。変にモードに捻ったところは無い、本当に正統派なハードバップ演奏に終始しているところに好感度アップである。
 

Grant-greenidle-moments

 
グリーンの独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなギターはブレがない。シングルトーンでの一本弾きなのに、アーバンで、こってこてファンキーな音色とフレーズが醸し出されるのはいつ聴いても不思議。このシングルトーンの、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなフレーズで弾きまくるグリーンのギターが最大の魅力。

正統派でストレートなハードバップ・フレーズを吹きまくるジョーヘンは凄く良いし、新主流派でややフリーなハッチャーソンのヴァイブが、正統派でストレートなハードバップ・フレーズを弾きまくる様は「実に新鮮」。

ピアソンのピアノを中心とするリズム・セクションも、こってこてハードバップなリズム&ビートを供給していて立派。しかし、この盤、正統派でストレートなハードバップな演奏でありながら、古さ、レトロ感を感じさせず、どこか新しい響きを宿しているところが「ニクイ」。

後に新主流派のメンバーとしてブイブイ言わせる新進気鋭のメンバーを従えて、独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなギターを弾きまくるグリーンは潔い。新しい響きを宿したハードバップ。さすがブルーノート、良い仕事してます。
 
 

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2024年7月18日 (木曜日)

チックのソロ傑作 ”Expressions”

チック・コリア。我が国においては、1980年代以降のリーダー作については、概ね不当な評価を受けていた様に思う。

純ジャズ志向、メインストリーム志向のジャズをやれば、持ち味が全く違う両者を比較して、キースの方が圧倒的に優れている、とか、適当に手を抜いて、ウケ狙いで弾いているなどという、もはや、これは客観的な評価では無い、個人的な言いがかりとしか思えない、酷い評論もあった。

エレ・ジャズ中心のコンテンポラリーなジャズをやれば、1970年代の「リターン・トゥ・フォーエヴァー」の二番煎じ、汗をかいていないなど、本当にこう評価する人って、アルバムをちゃんと聴いているのか、と思える、嘆かわしい評論もあった。プロのミュージシャンの対しても失礼だろう。

しかし、チック者の方々、ご安心あれ。現代の第一線で活躍する中堅から若手のピアニストについては、チックのピアノの「良き影響」をこぞって語っている。チックのピアノの個性のフォロワーと思われるフレーズを弾きまくる優れたピアニストもいて、長年、チック者をやってきた我々にとっては溜飲の下がる思いである。

Chick Corea『Expressions』(写真左)。February 1994年2月、ロスの「Mad Hatter Studios」での録音。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (p) のみ。当時のチックの正式盤としては、1971年、ECMからの『Piano Improvisations Vol.1&2』以来、13年ぶりのソロ・ピアノの録音。しかも、チックとしては、当時、珍しいジャズ・スタンダード曲や、ミュージシャンズ・チューンを選んで弾きまくったソロ・ピアノ盤になる。

スイング・ジャーナル誌の「1994年度ジャズディク大賞の金賞作品」であるが、この受賞についても、口の悪い評者は「この年のジャズ盤は不作だった」とこの快挙を一蹴する。自分の好みにあった優れたアルバムが無かっただけだと思うのだが、こういう個人的見解に偏った評価は良くない。ジャズ者初心者だとその酷評を鵜呑みにして、この傑作を聴き逃す可能性がある。

さて、このチックのソロ・ピアノ盤『Expressions』は傑作である。十分に用意周到に準備された好パフォーマンスの数々。破綻などある訳が無し、変な展開も無い。チックの個性の全てを動員して、高テクニックで歌心溢れるソロ・ピアノを聴かせてくれる。
 

Chick-coreaexpressions_20240718194301

 
もともとチックはその時その時のジャズのトレンドに迎合することは無い。意外とチックは「我が道を行く」タイプで、これは師匠格のマイルスのスタイルとよく似ている。

その都度、自分のやりたいことをやる。それがチックのスタンスでありながら、このソロ・ピアノ盤については、なぜ、1994年にソロ・ピアノなのだ、という向きも多々ある。アーティストがやりたいことをやっているのだ、評論家を含め我々素人が、とやかくいうことでは無いだろう。

このソロ・ピアノ盤『Expressions』は、これまでの、アコースティック・ピアノを弾くチックの集大成的位置付けの内容。ミュージシャンズ・チューンはやはりセロニアス・モンクやバド・パウエル。チックのこだわりを感じる。スタンダード曲もチックの個性がはっきりと反映され易い曲を選んでいるようだ。この選曲にも、チックの用意周到さを感じる。

どの曲の演奏にも、チックの個性と特徴が明確に現れる。用意周到であまりにスムーズな展開に、チックは適当にリラックスして、本気で弾いていない、なんていう失礼な評論もあったように記憶するが、それも的外れ。チックは本気で弾いている。アコースティック・ピアノを弾くチックの集大成的位置付けの内容なのだ。適当に流して弾くなんてありえない。

ジャズ・ピアノストの個性は「ソロ・ピアノ」を聴くのが一番、と思うが、チックについては、1971年、ECMからの『Piano Improvisations Vol.1&2』、1982年録音の『Solo Piano: From Nothing』、そして、この『Expressions』の4枚を聴けば、チックのジャズ・ピアノの凡そが理解できる。それほど、この『Expressions』は完成度が高い。

チックは決して、売れ線狙いの「商業主義」に偏ったジャズマンでは無い。このソロ・アルバムを聴けば、それが良く判る。その時その時で、やりたいジャズを誠実に真摯にやる。それが純ジャズ志向であったり、コンテンポラリーなニュー・ジャズ志向であったり。それが「カメレオンの様に志向がコロコロ変わる」という印象を与えるのか。それでも、どちらの志向のリーダー作も高度な内容とチックの個性を伴ったものだから、バラエティーに富んだ演奏志向に文句をつける方がおかしい。

1980年代以降の我が国もチックに対する評論には問題が多いが、各国の現代の第一線で活躍する中堅から若手のピアニストは、チックのピアノの「良き影響」をこぞって語り、チックのピアノの個性のフォローする。これが何よりの証拠だろう。1980年代以降のチックについても安心して聴いて欲しいと思う。ジャズはやはり、最後は自分の耳で聴いて、自分の耳で判断するのが一番良い。

 

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2024年7月17日 (水曜日)

邦題通り「アメリカン・ポップ」

『エクステンションズ』『モダン・パラダイス(邦題)』とジェイ・グレイドン・プロデュースの優れた内容の作品が2作。ジャズ名曲あり、ポップあり、アカペラあり、とアルバムの完成度が非常に高く、ともにグラミー賞受賞した。さて、その次はどの様な展開になるのか、興味津々の1983年。マントラは「ポップ志向」の色濃い、R&Bをも取り込んだ傑作をリリースしてきた。

The Manhattan Transfer『Bodies And Souls』(写真左)。1983年の作品。ちなみにパーソネルは、The Manhattan Transfer = Tim Hauser, Cheryl Bentyne, Alan Paul, Janis Siegel。マンハッタン・トランスファーの7枚目のスタジオ録音アルバム。邦題は『アメリカン・ポップ』。

このアルバムは、マントラのアルバムとして、R&Bチャートにランクインしている。スティーヴィー・ワンダーによる個性的なハーモニカ・ソロがフィーチャーされた「Spice of Life」は、R&Bチャートで32位、ポップ・チャートで40位とスマッシュ・ヒットとなった。
 

The-manhattan-transferbodies-and-souls

 
アニタ・ベイカーが後にカヴァーした事でも有名な「Mystery」、当時サントリーのTVCMでマントラ自身も登場した「American Pop」、グラミー賞で、 Best Jazz Vocal Performance賞をとった「Why Not !」、1982年に亡くなったピアニスト、セロニアス・モンクへのトリビュート「The Night That Monk Returned To Heaven(邦題:モンクに捧ぐ夜)」と佳曲揃い。

マントラのボーカル技術は凄みすら感じる。ハーモニーも素晴らしい。ポップスからジャズ、R&Bまで、幅広く完璧に対応する。このアルバムでのマントラの唄いっぷりは、ピークに達していたのではないか。完成度の高いボーカル・コーラスだからこそ、「ポップ志向」の色濃い、R&Bをも取り込んだボーカルを気軽にリラックスして聴くことができるのだろう。

録音がデジタル黎明期のものなので、音のエッジが立ちすぎて、キンキンしているのが玉に瑕。このマントラ盤はCDよりは、LPで聴いた方がしっくりする様な気がする。マントラが一番ポップに振れた内容で、純粋なジャズ・コーラスとして聴くにはポップ色が強いかもしれないが、フュージョンなジャズ・コーラスとして聴くには絶対に「アリ」。マントラの名盤の一枚でしょう。
 
 

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2024年7月16日 (火曜日)

ジョンアバとタウナーの再会盤

梅雨空が続く。天気予報ではもうすぐ梅雨明け、という話だが、ここ3〜4日、思いっきり梅雨空で、時々雨が降って、湿度はマックス状態になり、少しでも日差しが差し込もうなら、モワッとした不快指数マックスの空気になる。こういう時は、もはや家の中に引きこもって、エアコンをかけながら、静謐感&爽快感溢れるジャズを聴くに限る。

エアコンをかけながらの「静謐感&爽快感溢れるジャズ」となれば、ECMレコードの諸作だろう。これは、ジャズを本格的に聴き始めた半世紀ほど前から変わらない。西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」。限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音。ECMジャズは清涼感抜群である。

Ralph Towner & John Abercrombie 『Five Years Later』(写真左)。ECM/1207番。1981年3月、オスロの「Talent Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Ralph Towner (ac-g, el-g, el-12-string guitar, mandolin), John Abercrombie (12-string guitar, classical-g)。

ECMレコードの「お抱えギタリスト」の二人、ジョン・アバークロンビー(ジョンアバ)とラルフ・タウナー。この二人がガッツリと組んだ、ニュー・ジャズ志向のギターのデュオ演奏。
 

Ralph-towner-john-abercrombie-five-years

 
この二人のデュオ盤としては、1976年5月録音の『Sargasso Sea』(2010年8月16日のブログ記事を参照)が有名だが、この『Five Years Later』は、その『Sargasso Sea』から、タイトル通り、約5年後の再会デュオ演奏。

5年後の再会デュオ・セッションということからか、『Sargasso Sea』よりも、リラックス感が溢れ、ジョンアバもタウナーもゆったりと余裕を持ったギターを聴かせてくれる。

切れ味の良い、クラシカルでリリカル、耽美的なタウナーの12弦ギター、そして、エモーショナルで、サスティーンが効いたロングトーンなフレーズを駆使した、スピリチュアルなジョンアバのエレギ。「静」のタウナー、「動」のジョンアバ、好対照なECMお抱えの欧州ジャズ・ギター2本が、極上のデュオ演奏を紡ぎ上げる。

内省的で叙情感たっぷり、静謐感溢れ、切れ味よく耽美的でエモーショナル、耽美的でスピリチュアルな、極上のデュオの即興演奏。聴けば聴くほどに味わいが深まる、「スルメの様な」デュオ・パフォーマンス。ECMなジャズが静かに炸裂する極上のデュオ盤です。
 
 

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2024年7月15日 (月曜日)

ブレイのピアノの個性が良く判る

ポール・ブレイのディスコグラフィーを整理して、ポール・ブレイって、かなりの数のリーダー作をリリースしていたのを確認して、少々驚いている。リーダー作は、100枚は超えているのではないか。

我が国では、フリー・ジャズが基本の、マニア好みなピアニストの位置付けで、あまり人気があるとは言えない。我が国ではフリー・ジャズは、ジャズ評論家があまり取り上げないので、一般ウケしない。ポール・ブレイもそんな一般ウケしないピアニストになっている。が、恐らく欧州では人気が高いのではないか。しかし、生涯のリーダー作100枚は凄い。

Paul Bley『Touching』(写真左)。1965年11月5日、コペンハーゲンでの録音。オランダのフィリップス・レコードの子会社「フォンタナ・レコード」からのリリース。ちなみにパーソネルは、Paul Bley (p), Kent Carter (b), Barry Altschul (ds)。ベースのカーター、ドラムのアルトシュルという、アバンギャルド・ジャズを得意ジャンルとするリズム隊と組んだトリオ編成。

ポール・ブレイのフリー&アバンギャアルドなピアノの個性が良く理解できるトリオ盤である。ブレイのピアノは、フリー・ジャズの範疇に位置付けられているが、無調でもなければ、新ウィーン楽派を彷彿とさせる現代音楽志向でも無い。ジャズとして必要最低限の決め事が定められていて、従来のモダン・ジャズの演奏スタイルや決め事を踏襲しない、言うなれば「オーネット・コールマンの考えるフリー・ジャズ」に近い感覚。
 

Paul-bleytouching

 
明らかに、モダン・ジャズのスタイルや決め事は踏襲していないが、演奏の底にはリズム&ビートが流れ、フリーに聴こえるフレーズにも、独特な破調なメロディーが存在する。フリー&アバンギャアルド志向なピアノとしては、音数は洗練されていて、間を活かした浮遊感を伴ったフレーズが特徴的。ハマると意外と「クセになる」ピアノである。

音数が洗練され、間を活かしたピアノのフレーズを前提に、アルトシュルの、感覚的で手数の多い、ポリリズミックなドラムが、ピアノの音の「間」を埋め、浮遊感を伴ったピアノを効果的にサポートし鼓舞する。このアルトシュルのドラムが意外と「格好良い」。切れ味の良い疾走感を振り撒きながら、限りなくフリーな、それでいて、最低限のリズム&ビートを押さえた、絶妙なドラミングは聴いていて、とても清々しく気持ちが良い。

カーターのベースも良い仕事をしている。ドラムと同様に、ピアノの音の「間」を埋めつつ、限りなくフリーな演奏のベース・ラインをしっかり確保し、トリオ演奏自体に効果的に供給する。ピアノがキレても、ドラムがキレても、カーターの、アバンギャルドな堅実ベースが、演奏のベースラインをしっかり押さえているので、抜群の安定感と安心感がある。

ポール・ブレイは、フリー&アバンギャルドなピアノの代表格の一人。同時代の同一志向のピアニストにセシル・テイラーがいるが、音数が洗練されて間を活かした浮遊感を伴ったポール・ブレイのフリー&アバンギャルドなピアノは、多弁で躍動的なセシル・テイラーのスタイルの「対極」に位置する、と捉えても良いかと思う。

この『Touching』は、そんなポール・ブレイのピアノの個性と特徴が良く捉えたれた好盤である。
 
 

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2024年7月14日 (日曜日)

チックが一番「尖った」ソロ

チック・コリアのソロ・ピアノの落穂拾い。残すは5枚。チックの真の実力とピアニストとしての力量が如実に判る、1980年代以降、チックがジャズ・ピアノのスタイリストの一人として、その個性と実力を確立した後のソロ・ピアノ盤の数々。チックを確実に語る上では避けて通れないソロ・ピアノの数々。

Chick Corea『Solo Piano: From Nothing』(写真左)。1982年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (p, syn) のみ。チック・コリアのソロ・ピアノ盤。1971年、ECMからの『Piano Improvisations Vol.1&2』以来、11年ぶりのソロ・ピアノの録音。しかし、録音当時は「お蔵入り」。リリースの陽の目を見たのは、1996年になる。

このソロ・ピアノは聴くと、大体のジャズ者の方々は「ビックリする」と思う。チックのロマンティシズム溢れるリリカルで耽美的なソロ・ピアノを期待す向きからすると、絶対に「椅子から落ちる」。

なんせ、チックが一番「尖った」方向に振れたソロ・ピアノ。録音当時は「お蔵入り」にしたのは理解できる。録音当時、無理してリリースする必要のない、特殊な内容のソロ・ピアノである。1996年にチックのStretchレーベルからリリースされたが、我々「チック者」としては、よくぞリリースしてくれたと思う。

新ウィーン楽派を彷彿とさせる、不協和音の展開、解決しないフレーズ、歌心を排除する旋律、複雑な変拍子の採用、と、フリー・ジャズに走るのではない、現代音楽志向に尖った、とてもシビアで前衛的な内容。アントン・ウェーベルン、アーノルド・シェーンベルグのピアノ作品を想起する。
 

Chick-coreasolo-piano-from-nothing

 
この現代音楽志向、新ウィーン楽派志向の尖ったソロ・パフォーマンスを聴くと、チックのピアノ・テクニックの凄さと、即興展開に対する高い対応能力をビンビンに感じる。現代音楽志向に走りながらも、ピアノの即興展開には破綻や緩みは全く無い。堂々とした弾きっぷりである。

チックの硬質でアタックの強いタッチで、ハイ・テクニックな弾き方ができるからこそ対応できる、現代音楽志向のパフォーマンスの数々。ジャズ・ピアノの世界で、現代音楽志向のジャズを前提としたソロ・ピアノを弾きこなすピアニストはチックの他にはいない。

このソロ・ピアノ盤は、一般のジャズ者の方々には、まず必要が無い、と思う。それほど、現代音楽志向に真摯に対峙して、怯むところが全く無い、どころか、現代音楽志向の弾き回しを自家薬籠中にした様な、ガチに「尖った」ソロ・パフォーマンスである。

ただし、我々の様な「チック者」が、チックのピアニストとしての資質と能力、そしてテクニックについて、他のジャズ・ピアニストとの、明確な「差異化要素」を見出すのに、大いに役立つソロ・ピアノ盤である。

いかに、チックがジャズ・ピアニストとして、並外れた資質と能力、そしてテクニックの持ち主であったか、このソロ・ピアノを聴くと、その一端を随所に感じる。
 
 

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2024年7月13日 (土曜日)

エスペランザのボーカルの扱い

エスペランザ・スポルディングのデビューは、結構、衝撃的だった、と記憶している。ベーシストとしてのデビューだったので、女性でありながら、骨太でソリッドで切れ味の良いアコースティック・ベース、繰り出すフレーズが新鮮だった。デビュー盤ではスキャット中心のボーカルで、ベースを弾く傍らでの「彩り」だと感じていた。

しかし、1曲だけ、『Cantora De Yala』は、 エスペランザのベースのみの弾き語りによる、暖かな日だまりの様な、ほんのり暖かで、芯はしっかりと通った、意外と硬派な内容で、ベーシストの弾き語りというのは、このスポルディングの初リーダー作で、初めて聴いた。ベーシストのスキャットについては、ジャコ・パストリアス御大の前例があるんですが、本格的に唄うのは、エスペランザが初めてだった。

Esperanza Spalding『Esperanza』(写真左)。2008年の作品。ちなみにパーソネルは、Esperanza Spalding (b, vo), Leo Genovese (ac-p, el-p :track 7, Rhodes :track 10), Jamey Haddad (perc), Otis Brown (ds), Horacio Hernandez (ds, tracks 4 and 8), Ambrose Akinmusire (tp, tracks 8 and 11), Donald Harrison (sax, tracks 6 and 11), Gretchen Parlato (back-vo, tracks 1 and 4)。

エスペランザの2枚目のリーダー作。この盤で、エスペランザは本格的に唄う様になっている。ベースもしっかり弾いているが、とにかく唄う唄う。しかも、過去の女性ジャズ・ボーカルのイメージに全く囚われない、エスペランザ独特のキュートでエレガントで、ワールド・ミュージック志向のボーカルは唯一無二。エスペランザのボーカルを聴いていると、ボーカルって「楽器」として捉えても違和感が無い、ということを再認識できる。
 

Esperanza-spaldingesperanza

 
アルバム全体の音志向は「ブラジリアン・ミュージック」な志向が強いが、旧来の4ビート・ジャズの欠片も無い、ワールド・ミュージック志向の様々な音楽要素が融合した、コンテンポラリーなニュー・ジャズ風のボーカル・アルバムという風情が新鮮。

同じ志向に「ミルトン・ナシメント」がいると思うが、ナシメントよりもエスペランザの方が確実に「ジャズ寄り」。おそらく、エスペランザの弾き出すベースラインがジャジーなので、それが、アルバム全体の雰囲気を「ジャズ寄り」にしているのだろう。

ベースとユニゾンでスキャットする様を聴いていると、やっぱり、エスペランザはボーカルを「楽器」として扱おうとしている様に感じる。ベースや既成の楽器では表現出来ない、微妙なニュアンスや節回し、フレーズの飛びを、ボーカルでは比較的自由に表現できるので、それを見越して、スポルディングは唄っている様な気がする。

エスペランザのボーカルを、旧来からの本格的な女性ジャズ・ボーカルとして捉えると、違和感を感じる瞬間があるんだが、楽器の一つとして捉えると、全く違和感が無い、どころか、新しいジャズの響きを獲得している、そんな化学反応をこの盤で感じることが出来る。エスペランザのボーカルは「楽器」。そう捉えることで、違和感無く、エスペランザならではの音楽性を正確に捉えることが出来る。そんな想いを持たせてくれる、この2枚目のリーダー作『Esperanza』である。
 
 

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2024年7月12日 (金曜日)

マイケルの新「オルガン・ジャズ」

マイケル・ブレッカーは早逝して、絶対、損をしたと思っている。生前は、特に我が国では「コルトレーンのフォロワー」のレッテルを貼られて、マイケルの個性をかなり誤解されていたきらいがある。21世紀に入って、ネット上での正しい情報に触れることのできる環境になって、マイケルのテナーな正当な評価を獲得したと思っている。

Michael Brecker『Time Is of the Essence』(写真左)。1999年の作品。ちなみにパーソネルは、Michael Brecker (ts), Larry Goldings (org), Pat Metheny (g), Elvin Jones (ds, tracks 1, 4, 9), Jeff "Tain" Watts (ds, tracks 2, 5, 7), Bill Stewart (ds, tracks 3, 6, 8)。

マイケルのテナー、ゴールディングスのオルガン、メセニーのギターまでが全曲で演奏、ドラムだけ、エルヴィンとワッツとスチュワートの3人で分担している。ベースはゴールディングスがオルガンで兼任している。

前作『Two Blocks from the Edge』で、コルトレーンが確立した、サックスがメインの「モーダルなメインストリーム志向の純ジャズ」を二段も三段も深化させた、1997年時点での新しい「モーダルなネオ・ハードバップ」を提示したマイケル。

次はどうするんだろう、と思っていたら、前々作『Tales From the Hudson』から、ギターのパット・メセニーが帰ってきて、コールディングスのオルガンが新規参入。

オルガン・ジャズの編成なので、ファンキー色の強いジャズ・ファンクな内容かと思いきや、コンテンポラリーなメインストリーム志向の純ジャズ路線は変わらず、オルガンとギターを入れたことによって、コンテンポラリー色とポップ度が増した、ネオ・ハードバップなオルガン・ジャズな内容になっている。4ビート・ジャズとは全く無縁のモーダルでコンテンポラリー志向のネオ・ハードバップが炸裂している。
 

Michael-breckertime-is-of-the-essence

 
メセニーのギターも、PMGでのフォーキーで浮遊感溢れる流麗なフレーズや、ソロでのオーネット・コールマン風のフリーなフレーズを封印し、マイケルの音楽性に合わせた弾き方になっていて、さすが。

ゴールディングスのオルガンも変にファンク色に偏らず、マイケルのテナーの音質に合わせた、軽快でポップで、そこはかとなくファンクネス漂う音色の「現代風」のオルガンになっているのも、さすが。

曲想によって、ドラマーを替えているところが、これまた成功している。エルヴィン、ワッツ、スチュワート、それぞれ、持ち味の異なるドラマーなのだが、曲想にあったドラミングを叩き出しているので、ドラマーが替わることによる違和感は全く無い。エルヴィンなど、野生味溢れ、思いのままに叩きまくる、従来のエルヴィンのドラミングを封印し、マイケルの音世界に合わせたドラミングを披露しているところなど、さすが。

コンテンポラリー色とポップ度が増した、ネオ・ハードバップなオルガン・ジャズを前提としたマイケルのテナーは、もはやマイケルの個性のみのテナーになっていて、この盤でのマイケルのテナーを聴いて、コルトレーンのコピー、何ていう評価をするのは、全くもって「的外れ」。マイケルのオリジナル度が増したテナーはこの盤での最大の「聴きどころ」。

演奏全体がオルガン・ジャズのアレンジになっていて、過去の「モーダルなメインストリーム志向の純ジャズ」の雰囲気に引きずられなくなったのが、この盤の良いところ。マイケルの音世界の個性が弾けた、マイケルの傑作だと思う。
 
 

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2024年7月11日 (木曜日)

マイケルの創る「モード・ジャズ」

さて、ブログを再開です。東四国を旅している間のジャズ盤は何故か「マイケル・ブレッカー(Michael Brecker)」。

Michael Brecker『Two Blocks from the Edge』(写真左)。1997年12月20–23日の録音。ちなみにパーソネルは、Michael Brecker (ts), Joey Calderazzo (ac-p), James Genus (b), Jeff 'Tain' Watts (ds)。マイケル・ブレッカーがフロント1管のワンホーン・カルテット。

もちろん主役はマイケル。しかし、バックのリズム隊には、当時、まだまだ若手駆け出しのジョーイ・カルデラッツォがピアノを担当、復活後のブレッカー・ブラザースでベースを担当したジェームス・ジーナス、そして、ドラムには実績十分、中堅のポリリズミック・ドラマーのジェフ・ティン・ワッツ。当時としては、「抜擢」レベルのリズム隊をバックにマイケルがテナーを吹きまくる。

前々作『Now You See It... (Now You Don't)』で、素敵な内容のコンテンポラリーな「マイケルの考えるエレ・ジャズ」を提示したマイケルだが、前作の『Tales From the Hudson』では、コンテンポラリーではあるが、メインストリームな純ジャズ路線に軌道修正、この『Two Blocks from the Edge』も、そんな「コンテンポラリーでメインストリームな純ジャズ路線」を踏襲している。

せっかく、前々作『Now You See It... (Now You Don't)』で、復帰後マイルスのエレ・ジャズのコンセプトをベースにした、マイケルならではのエレ・ジャズを世に問うたのに、前作の『Tales From the Hudson』ではメインストリームな純ジャズ路線へ軌道修正。これはあまりに面白くない展開なんだが、所属していたレコード会社が大手のVerveだったので、売れ筋の「メインストリームな純ジャズ路線」を余儀なくされたのかもしれない。
 

Michael-breckertwo-blocks-from-the-edge

 
マイケル・ブレッカーがフロント1管のワンホーン・カルテットなので、当時、我が国では「コルトレーンの二番煎じ」などと揶揄する向きもあったが、マイケルのテナー自体が既にコルトレーンの影響下から脱して、マイケルならではのテナーの個性を振り撒いているので、二番煎じなどと揶揄される謂れは無い。

カルデラッツォがピアノがマッコイ・タイナーそっくりだ、なんて揶揄されたこともあったが、今の耳で聴き直しても、どこがタイナーそっくりなのか判らない。確かに、タイナーやハンコックのモーダルなピアノの「いいとこ取り」している風に聴こえないことも無いが、そこは、要のタッチやフレーズについては、カルデラッツォならではの個性で弾きまくっているので問題ない。

ジェフ・ティン・ワッツのドラムだって、エルヴィンそっくりと言うジャズ者の方もいたが、ワッツのドラミングは、自由奔放の様でいて、意外と理知的で自己コントロールが行き届いている。野生味溢れ、思いのままに叩きまくるエルヴィンとはそこが違う。

以上の様な聴いた印象でまとめると、コルトレーンが確立した、サックスがメインの「モーダルなメインストリーム志向の純ジャズ」を二段も三段も深化させた、1997年時点での新しい「モーダルなネオ・ハードバップ」がこの盤で提示されている、と考えるのが妥当だろうと思う。

1960年代のモード・ジャズを焼き直してマイナー・チェンジを施した、懐古趣味的な新伝承派のアプローチとは全く異なる、マイケル率いるワンホーン・カルテットが提示してくれる「モーダルなメインストリーム志向の純ジャズ」の深化の音は、当時の新伝承派のモード・ジャズよりも、新鮮で思索に富んでいる。現代につながるネオ・ハードバップの良質な音がこの盤に詰まっている。
 
 

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2024年7月 7日 (日曜日)

7日〜10日までブログをお休み

明日7日(日)から10日(水)まで、ブログをお休みします。

2020年3月からのコロナ禍の影響で、しばらく遠方の個人旅行は控えていたのですが、今回、再開の運びとなりました。

大阪での旧友連中と久しぶりの「集会」を経て、去年から再開した「全国の博物館・美術館巡り」の一環で、東四国方面へトリップです。車中とホテルでは、好みのジャズ三昧で楽しみたいと思ってます。

ということで、当ブログは、11日(木)より再開予定です。よろしくお願いします。
それではお休みの間、既アップの記事をお楽しみ下さい。
 

Photo_20240706201801
 

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2024年7月 6日 (土曜日)

1990年代のチックの純ジャズ

僕の永遠のお気に入りのピアニストの一人、チック・コリア。ラジオのFMから聴こえてきた「Now He Sings Now He Sobs」。なんだこれは、このピアノは何だ。これがチック・コリアのピアノとの出会いである。今を去ること半世紀前。

チックが2021年2月に急逝して早3年。この世にいなくなっても、チックの音は残っている。リーダー作の記事化のコンプリートを目指しているが、まだ10数枚が残っている。

今、1990年代以降のリーダー作の落穂拾いをしているが、この時代のチックのリーダー作は押し並べて、評論家筋からは評価が低い。しかし、何を基準にして評価が低いかがよく判らない。よって、自分の耳で聴いて、その真偽を明らかにしていきたい。

Chick Corea『TIme Warp』(写真左)。1995年8月のリリース。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (p), John Patitucci (b), Gary Novak (ds), Bob Berg (sax)。マイケル・ブレッカーを迎えた1981年のスタジオ録音『Three Quartets』以来、14年ぶりのホーン入りカルテットの録音になる。

チックが考案した「Time Warp」というストーリーに基づくコンセプト・アルバム。1960年代末から1970年代半ばの「プログレッシヴ・ロックのアルバムによくあったもので、ジャズの世界では珍しい。が、意外とこれがよくまとまっているから、チックの作曲&アレンジ能力の高さに、毎度ながら驚く。

チックはアコースティック・ピアノのみでガンガン攻めている。ベースには、当時の盟友、ジョン・パティトゥッチ、ドラムには、セッション・ドラマーのゲイリー・ノヴァクが参加している。
 

Chick-coreatime-warp

 
ドラムがセッション・ドラマーなので、このチックのリズム・セクションってどうなのかなあ、と、聴く前に不安になったのだが、それは杞憂だった。十分にハイテクニックで流麗、バッチリ尖った硬質のリズム&ビートが良い。ノヴァクのドラミング、良い。

そして、そんなチックのリズム隊をバックに、ボブ・バーグがネオ・ハードバップなサックスを吹きまくる。もともと、新しい感覚のネオ・ハードバップな吹奏が個性のボブ・バーグだが、この盤では、その「新しい感覚」と、ネオ・モーダルな、新しいイメージのモーダルなアドリブ・フレーズをブイブイ言わせている。ボブ・バーグのベスト・プレイの一つがこの盤に記録されている、と言って良いかと思う。

このボブ・バーグの新しい感覚のサックス・プレイを引き出しているのが、チック率いるリズム・セクションであり、チックの繰り出す「鼓舞するフレーズ」の嵐である。

と言って、ガンガン、フロントを攻めるのではない、フロントの個性をより輝かせ、新しい個性を引き出す様な、新しい感覚のバッキング。チックの繰り出す創造的なフレーズが、フロントのボブ・バーグのサックスを良い方向に刺激している。

このコンセプト・アルバム、イラストのジャケットの印象が、クロスオーバー&フュージョン志向のジャズを想起させるので、確実に損をしているが、この盤に詰まっているのは、1990年代のネオ・ハードバップであり、ネオ・モードであり、バッキングに優れたチックのパフォーマンスであり、それに応えるボブ・バークのベスト・プレイ。

1990年代のチックのディスコグラフィーの中で、この盤だけが突出した「メインストリーム志向のコンテンポラリーな純ジャズ」。4ビートなノリは皆無だが、1990年代のチックの考えるネオ・ハードバップ盤として、十分、評価できる佳作だろう。
 
 

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2024年7月 5日 (金曜日)

米国ジャズでの「ジョンアバ」

ジョン・アバークロンビー(John Abercrombie、以降「ジョンアバ」と略)。基本、ECMレーベルのハウス・ギタリスト的位置付け。欧州ジャズらしい、彼しか出せない叙情的なサスティーン・サウンドが、とにかく気持ち良い。特に、ECMレーベルでの、ECM独特の深いエコーに乗ったジョンアバのギターシンセには、聴くたびに惚れ惚れである。

John Abercrombie『Route Two』(写真左)。1981年の作品。Landslideレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、John Abercrombie (g), Gary Cambell (sax), Jeremy Steig (fl), Dan Wall (org), Joe Chambers, David Earle Johnson (ds)。ECMを離れての、米国録音でのジョンアバのギターが聴ける。

ECMのハウス・ギタリストのジョンアバと、オルガン奏者のダン・ウォール、ドラムのデヴィッド・アール・ジョンソンによるトリオの1981年作品。

ジェレミー・スタイグのフルート、ゲイリー・キャンベルのサックスが客演、ドラムのジョー・チェンバースがサポートで入っている(ジョンソンがパーカッションを担当する時、チェンバースがドラムを代役しているようだ)。
 

John-abercrombieroute-two

 
1981年の録音なので、当時大流行のフュージョン・ジャズな内容かと思いきや、さにあらず。クロスオーバー寄り4ビートのオルガン・ジャズから16ビートのジャズ・ファンクまで、当時の米国東海岸のコンテンポラリー・ジャズが展開される。意外とメインストリーム志向、クールでホットな演奏内容にしばし感心する。

ジョンアバのギターは、サスティーンは効いてはいるものの、エレギの弾きっぷりは「流麗なバップ」。ちょっとくすんで伸びのある音で、バップなフレーズやモーダルなフレーズを流麗に飄々と弾きまくる。ECMの録音の時の様に、耽美的にリリカルに展開したり、音の広がりと伸びを活かした、知的で内省的な展開したりすることは全く無い。ジョンアバは米国NY出身のジャズ・ギタリストであることを再認識する。

米国東海岸のコンテンポラリー・ジャズに興じるジョンアバのエレギも十分にイケる。ジョンアバのジャズ・ギターの基本は他の例に漏れず、バップなギターが基本。

ジョンアバのテクニックと表現力が卓越しているが故、録音時のレーベルの音の傾向やプロデューサーの音志向に関する要望に的確に応えることが出来る、ということを再認識する。一流ジャズマンについては、その音志向は基本的にバリエーションが豊かである。
 
 

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2024年7月 4日 (木曜日)

「後半のペッパー」の最初の傑作

天才アルト・サックス奏者、アート・ペッパー。1972年だったか、シナノンを正式に出所、ペッパーの「活動後期」が始まる。

そして、1975年8月、このケーニッヒ率いるコンテンポラリー・レーベルと契約を交わし、復帰後初のスタジオ録音を行う。『Living Legend』である。復帰後第一弾であるが故、慎重に誠実に着実にアルト・サックスを吹き進めていて、「後半のペッパー」の実力の半分くらいしか出ていないのがもどかしい。それでも、復帰後第一弾のリーダー作としては及第点。

Art Pepper『The Trip』(写真左)。 September 1976年9月15–16日の録音。1977年のリリース。ちなみにパーソネルは、Art Pepper (as), George Cables (p), David "Happy" Williams (b), Elvin Jones (ds)。

前作『Living Legend』から、バックのリズム・セクションは総入れ替え。目立つところでは、ピアノは後に”盟友”となるジョージ・ケイブルス。ドラムはポリリズミックなレジェンド・ドラマー、エルヴィン・ジョーンズ。

この「活動後期」のリーダー作第2弾で「後半のペッパー」のスタイル全開。「活動前期」のスタイルに比べて、覇気溢れアグレッシヴ、硬派で力感溢れるアドリブ展開、そして、時々、フリーにアブストラクトにブレイクし、スピリチュアルな響きを振り撒いたりする。

が、この盤での演奏については、決して感情のままに吹きまくるのでは無い。しっかり感情をコントロールし、抑制を効かせたフリーなブレイクダウン。端正でモーダルで、ハードバップな要素とフリーな要素が程よくハイブリッドした、当時のハードバップな演奏のトレンドにしっかり追従した、メインストリーム志向の純ジャズな展開。
 

Art-pepperthe-trip

 
基本はハードバップ、モーダルに展開し、時々、フリーにスピリチュアルにブレイクする。モーダルな展開は流麗でペッパーならではの展開。以前、どこかで聴いたモーダルな展開ではない。明らかに、ペッパーのオリジナル。フリーにスピリチュアルにブレイクするところは、しっかり感情コントロールされ、抑制が効いたもの。

ケイブルスのピアノとの相性が抜群に良い。「後半のペッパー」の特質を咄嗟に理解し、ペッパーと同様に「覇気溢れアグレッシヴ、硬派で力感溢れるアドリブ展開、そして、時々、フリーにアブストラクトにブレイクし、スピリチュアルな響きを振り撒く」ケイブルスのピアノは見事。

そこに、エルヴィンのポリリズミックはドラムが、様々なニュアンスのアクセントを付けていく。この盤でのエルヴィンのドラミングの貢献度は高い。

我が国の評論家筋から、なぜか「コルトレーンの物真似」なんていう難癖をつけられ、何かと問題にされる「後半のペッパー」盤だが、選曲も良く、それぞれの曲想に応じた、様々な表現を聴かせてくれるペッパーのアルト・サックスは「本物」である。

端正で、モーダルな展開のいマージネーションがユニークで豊か、抑制の効いたフリーなブレイク。この盤のペッパーのアルト・サックスは唯一無二であり、コルトレーンの物真似では決して無い。どこがコルトレーンの物真似なのか、良く判らない。

「後半のペッパー」は、「前半のペッパー」に、覇気溢れアグレッシヴ、硬派で力感溢れるアドリブ展開を付加し、モーダルで、ハードバップな要素とフリーな要素が程よくハイブリッドした、「前半のペッパー」からアップグレードしたペッパーである。そんな「後半のペッパー」の最初の成果が、この盤に溢れている。
 
 

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2024年7月 3日 (水曜日)

サン・ビービーの『Here Now』

「ジャズ批評 第18回 ジャズオーディオ・ディスク大賞 2023」にノミネートされたアルバムを眺めていると、北欧ジャズのアルバムが、以前より多く挙がっているなあ、という印象。ジャズのボーダレス化とグローバル化が進みつつあって、以前の様に、米国ジャズのアルバムだけ気にしていれば良い、という時代では無くなった、という感が強くする。

と言って、ジャズは特に欧州の各国に根付いていて、ジャズの新リリースも各国でコンスタントに行われている。それらを全て網羅するのは困難で、毎年、その該当年度にリリースされたアルバムの中からディスク大賞を選ぶ、ということも、何か前提条件をつけないと困難になるのでは、という懸念が出てきた。もしかしたら「ディスク大賞を選ぶ」という行為自体が、既にジャズの現状に合っていないのかもしれない。

Søren Bebe Trio『Here Now』(写真左)。2023年4月の録音。ちなみにパーソネルは、Søren Bebe (p), Kasper Tagel (b), Knut Finsrud (ds)。Søren Bebe = サン・ビービー、と読むらしい。デンマークを拠点に活躍しているピアニスト、サン・ビービー率いるピアノ・トリオの2023年リリースの新作。「ジャズ批評 第18回 ジャズオーディオ・ディスク大賞 2023」のインストゥルメンタル部門で銀賞を受賞している。

サン・ビービーはピアニスト。1975年12月生まれ。現在48歳。コペンハーゲン在住。2010年の『From Out Here』あたりから頭角を現して、2年に1枚程度のペースでリーダー作をリリースしている。実は、僕はこのピアニストの名前を「ジャズ批評 第18回 ジャズオーディオ・ディスク大賞 2023」で初めて知った。

北欧ジャズには独特のフレーズと響きがある。耽美的でリリカルでメロディアス。静的で決して暑くはならないクールなインプロ。クラシック風の端正なタッチ。深遠でメロディアスな弾き回し」。ファンクネスは皆無、間とフレーズの広がりを活かした透明度の高い音の展開がメイン。
 

Sren-bebe-triohere-now

 
しかし、サン・ビービーのピアノは、間とフレーズの広がりを活かした弾き回しでは無く、クラシック風の端正でノーマルな弾き回し。北欧ジャズというよりは、欧州の大陸側のいわゆる「欧州ジャズ」の弾き回しに近い。冒頭のタイトル曲「Here Now」を聴いた時は、北欧ジャズとは思わなかった。

確かに、ビービーはデンマーク出身なので、北欧ジャズの範疇のピアニストなんだが、その弾きっぷりは北欧ジャズらしからぬもの。ECMレーベルで、米国ジャズマンが演奏する「欧州ジャズ」風な、端正でバップな弾き回しも見え隠れして、北欧ジャズのピアノ・トリオ演奏としては、ちょっと異端っぽくて面白い。

収録曲もところどころユニーク。冒頭の「Here Now」の持つフレーズは耽美的なもので、北欧ジャズらしいかな、と思うんだが、2曲目の「Tangeri」では、哀愁の漂うタンゴのメロディーが出てくる。北欧ジャズでタンゴ、である。僕は北欧ジャズの演奏するタンゴのメロディーを初めて聴いた。

3曲目以降も、モーダルな展開あり、耽美的でリリカルな「バップな引き回し」もあるしで、従来の北欧ジャズ・トリオの演奏とは、ちょっと雰囲気が異なる。4曲目の「Winter」などは、典型的な従来の北欧ジャズの雰囲気を色濃く宿しているが、9曲目の「Summer」はビートの効いたジャズ・ロック風の演奏。

このビービー・トリオの演奏は、北欧ジャズのボーダレス化、グローバル化をタイムリーに捉えていると感じる。従来の北欧ジャズの個性と特徴に留まること無く、欧州の大陸側、いわゆる「欧州ジャズ」の音世界や、米国ジャズの「欧州ジャズ化」の音世界と同種の、新しい北欧ジャズ・トリオの音と響きを獲得している。これからビービー・トリオは、どの方向に深化していくのだろう。次作が今からとても楽しみである。
 
 

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2024年7月 2日 (火曜日)

復帰後ペッパーの初リーダー作

天才アルト・サックス奏者、アート・ペッパーの活動時期について、薬物中毒者の為のリハビリテーション施設シナノンで過ごしたブランクの時期を境に、シナノン出所後を「後半のペッパー」とするのだが、確か、シナノンを正式に出所したのは1972年だったか、それでも出所後、そんなには世の中は甘く無かった訳で、すぐにはジャズ・シーンに戻れなかった。

それでも、シナノン療養所に入っていた時に、コンテンポラリー・レーベルの総帥プロデューサー、レスター・ケーニッヒがペッパーを訪問、復帰するよう励ました、という逸話が残っている。そして、ペッパーはその恩義に報いる様に、1975年8月、このケーニッヒ率いるコンテンポラリー・レーベルと契約を交わし、復帰後初のスタジオ録音を行う。

Art Pepper『Living Legend』(写真左)。1975年8月9日の録音。ちなみにパーソネルは、Art Pepper (as), Hampton Hawes (ac-p, el-p), Charlie Haden (b), Shelly Manne (ds)。ペッパーのワンホーン・カルテット。バックのリズム・セクションは、ウエストコースト・ジャズのレジェンド・ミュージシャンで固めている。ペッパーからすると、この人選はリラックス出来ただろう。ケーニッヒの粋な計らいである。

ここでのペッパーの吹奏は「後半のペッパー」のスタイル。覇気溢れアグレッシヴ、硬派で力感溢れるアドリブ展開、しかし、フリーにアブストラクトにブレイクダウンはしない。復帰後第一弾、しかも、有力ジャズレーベルのコンテンポラリーでの録音。失敗は許されない。と言って、「昔の名前で出ています」風に、ウエストコースト・ジャズのマナーに則った、流麗で歌心溢れる、聴いていて心地良く、心地良くスイングする「前半のペッパー」は、プロとして出来ない。
 

Art-pepperliving-legend

 
昔の「前半のペッパー」の雰囲気を少し漂わせながら、慎重に誠実に着実に、覇気溢れアグレッシヴ、硬派で力感溢れるアドリブ展開という「後半のペッパー」のスタイルで吹き進めるペッパーが愛おしい。本当は、フリーにアブストラクトにブレイクダウンし、スピリチュアルな響きを振り撒いたりしたいのだが、復帰後初のリーダー作である。とても慎重に吹き進めるペッパー。気持ちは判るなあ。

慎重に誠実に着実に、覇気溢れアグレッシヴ、硬派で力感溢れるアドリブ展開しているが、そのパフォーマンスの内容は良い。テクニック的にも「前半のペッパー」と比べて遜色は無いし、アドリブ・フレーズの流麗さについては、「前半のペッパー」を彷彿とさせる部分も多々登場する。ブロウが覇気溢れアグレッシヴ、硬派で力感溢れる内容に変化しているので、「前半のペッパー」をなぞっているのでは無い。この辺りにペッパーの矜持を強く感じる。

バックのリズム・セクションも「後半のペッパー」のスタイルを理解して、なかなか躍動感溢れるパフォーマンスで、ペッパーを支え鼓舞する。ホーズのエレピもなかなか味があって、そのホーズのエレピに絶妙に絡む、ベースの哲人ヘイデンのパフォーマンスも聴きもの。ドラムのマンは変幻自在なドラミングで、ペッパーの様々な表現に対して、的確に最適なリズム&ビートを供給する。

シナノン出所後、有力レーベル下での初のリーダー作なので、ペッパーは、とにかく慎重に誠実に着実にアルト・サックスを吹き進めていて、「後半のペッパー」の実力の半分くらいしか出ていないのがもどかしいが、テクニック含めて、水準以上のブロウをキープしているところは、さすが、天才アルト・サックス奏者、アート・ペッパーである。復帰後第一弾のリーダー作としては及第点だろう。
 
 

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2024年7月 1日 (月曜日)

ペッパーの復活直前のライヴ音源

さて、いよいよ、後期のアート・ペッパーのリーダー作を記事に上げていこうかと思う。

アート・ペッパーの活動時期は大きく2つに分かれる。1960年代後半、薬物中毒者の為のリハビリテーション施設シナノンで過ごしたブランクの時期を境に、1950年代~1960年代前半の「前半のペッパー」とする。そして、麻薬禍からの復活、後半のカムバック後、1970年代~亡くなる1982年までを「後半のペッパー」としている。

Art Pepper 『I'll Remember April : Live at Foothill College』(写真左)。1975年2月14日、Los AltosのFoothill Collegeのジムでの録音。ちなみにパーソネルは、Art Pepper (as), Tommy Gumina (polychord), Fred Atwood (b), Jimmie Smith (ds)。アート・ペッパーのワンホーン・カルテット。ペッパーのパフォーマンスの様子が良く判る演奏編成。

1960年代の終わりには、麻薬禍からの回復ステージに入ってはいたが、現在、正式盤として残された音源は、1968年11月録音の『Live at Donte's, 1968』。その後、この1975年の『I'll Remember April』まで、6年以上、残された録音は無い。このロスアルトスのフットヒル・カレッジのジムでの録音は、コンテンポラリー・レコードと契約する直前のライヴ録音になる。

まだ、有力なジャズ・レーベルと契約していない状態。ペッパー自体、ジャズ・シーンからも忘れられた存在なので、バックのメンバーはほぼ無名のミュージシャンばかり。よって、バッキングの演奏レベルは酷くは無いが中程度。
 

Art-pepper-ill-remember-april-live-at-fo  

 
キーボードはシンセで弾きまくっていて、1970年代の純ジャズの悪いところが揃っている。そして、録音場所が大学のジムらしく、録音状態は良くない。雑音が、というよりは、音がモワンと変に広がって、変なエコーがかかっている状態。

しかし、である。フロント1管のアート・ペッパーのアルト・サックスのパフォーマンスが素晴らしく良いのだ。やはり、シャバの空気はウマかったのか(笑)、覇気に満ちたノリノリの吹奏を聴かせてくれる。但し、活動時期の前半、ウエストコースト・ジャズのマナーに則った、流麗で歌心溢れる、聴いていて心地良く、心地良くスイングするペッパーの吹奏では全く無い。

覇気溢れアグレッシヴ、硬派で力感溢れるアドリブ展開、そして、時々、フリーにアブストラクトにブレイクダウンし、スピリチュアルな響きを振り撒いたりする。これを、以前では「コルトレーンの物真似」と切り捨てられているが、それは極端な評価だろう。フリーにアブストラクトにブレイクダウンはするが、そのフレーズもコルトレーンとは異なる。加えて、特にテーマ部の吹奏では、活動期前半の流麗で歌心溢れるフレーズもしっかり出てくる。

コルトレーンの物真似、というよりは、プレイする時点での感性に正直に従い、硬派にアグレッシヴに、フリーにアブストラクトに展開する側面を、活動期前半の「流麗で歌心溢れる、聴いていて心地良く、心地良くスイングする」ペッパーにアドオンしたとした方がしっくりくる。コルトレーン流に宗旨替えしたのではなく、アルト・サックス奏者としてアップグレードして、表現の幅が大きく広がった、と評価すべきかと思う。

そして、1975年8月、コンテンポラリー・レコードと契約し、活動期後期の最初のスタジオ録音盤『Living Legend』をリリースし、ペッパーは、やっと麻薬禍からの復活を遂げることになる。
 
 

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