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2024年6月 8日 (土曜日)

向井滋春 ”ヒップ・クルーザー”

月刊誌「レコード・コレクターズ」2024年6月号の特集、「フュージョン・ベスト100 邦楽編」を眺めていて、向井滋春のアルバムが目に入った。懐かしい。和フュージョン全盛時、もともと、トロンボーンの音色が好きなこともあって、向井滋春のフュージョン盤はよく聴いた。意外とトロンボーンって、フュージョン・ジャズに向いているんですよね。

向井滋春『Hip Cruiser』(写真左)。1978年10月2~6日の録音。1979年のリリース。ちなみにパーソネルは、向井滋春(tb), 植松孝夫(ts), 元岡一英(p, el-p, key), 渡辺香津美, 橋本信二(g), 真鍋信一(b), 古澤良治郎(ds, perc), 山木秀夫(ds), 横山達治, 吉田和雄, 三島一洋(perc), ベラ・マリア(cho), 大貫妙子(cho)。「異業種」から、ブラジル人シンガーのベラ・マリア、Jポップ畑から大貫妙子がコーラスで参加しているのが目を引く。

純ジャズ、メインストリーム路線を突っ走っていた向井が、フュージョン路線に転身、フュージョン・ジャズ全開の好盤。和ジャズの、それも、メインストリームな純ジャズで活躍していた名うての名手達が、こぞって参加して、ご機嫌なフュージョン・ジャズをやっている。これがまあ、やっぱり上手い。一流は何をやらせても一流、である。

ラテン・フュージョン&ブラジル・フュージョンがメインの充実の和フュージョン。こうやって聴いていると、和ジャズのジャズマンって、ラテン・ミュージックや、ブラジル・ミュージックに対する適応度がかなり高いことが判る。
 

Hip-cruiser

 
リズム&ビートにも違和感が無く、ちょっと「ダル」なフレーズも難なくこなす。しかし、どこか「生真面目」な雰囲気が漂っていて、ラテンをやっても、ブラジルをやっても、演奏自体が俗っぽくならない。

ちゃんと一本筋の通ったジャズ、と言う一線はしっかり確保していて、ユニゾン&ハーモニー、そして、アドリブ展開、どれをとっても、演奏の底に「ジャズ」がいる。これが「和フュージョン」らしいところ、日本人のフュージョン・ジャズの面目躍如である。

ブラジリアン・メロウなタイトル曲「Hip Cruiser」、ブラジル人シンガーのベラ・マリアのボイスがバッチリ効いたブラジリアン・ジャズ・サンバなチューン「Nimuoro Neima」、ばっちりハマったブレイクがむっちゃカッコ良い「Manipura」。ライトなノリのディスコ・フュージョン「 V-1 Funk」、大貫妙子がスキャットで参加したクロスオーヴァーなフュージョン曲「Coral Eyes」など、格好良くキマッたラテン・フュージョン&ブラジル・フュージョンな演奏がてんこ盛り。

和フュージョンだから、と敬遠することなかれ。演奏のクオリティーは高く、十分にジャズ鑑賞の耳に耐える。テクニック確か、適度に脱力した、ブリリアントでラウンドで柔らかい、向井のトロンボーンの響きが、ラテン・フュージョン&ブラジル・フュージョンにバッチリ合っている。和フュージョン・ジャズの好盤です。

ちなみに、表ジャケ(写真左)は平凡なデザイン。しかし、裏ジャケ(写真右)は「斬新?」なデザイン。どういう発想でこんな裏ジャケになったんだか .....(笑)。
 
 

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