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2024年6月23日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・274

グローヴァー・ワシントンJr.(Grover Washington Jr.、以下「ワシントンJr.」と略)は、スムース・ジャズの父、フュージョン・ジャズにおけるサックスの帝王と呼ばれていたが、それ故、彼の名前を出すと「ああ、コマーシャルでソフト&メロウな、フュージョン・サックスね」と、結構、低く見られることが多かった。大体、そういう輩は、ワシントンJr. のサックスをちゃんと聴いていない。失礼千万である。

Grover Washington, Jr.『Then and Now』(写真左)。1988年の作品。ちなみにパーソネルは以下の解説の通り、3つのセッションに分かれる。

注目は、1曲目のロン・カーター作の「Blues for D. P.」、2曲目のハービー・ハンコック作の「Just Enough」、5曲目のワシントンJr.作の「Lullaby for Shana Bly」のセッション。ワシントンJr.のサックスのワンホーンに、ハンコックのピアノ、カーターのベース、スミスのドラムの、バリバリ純ジャズ系の超一流リズム・セクションがバックを固める。

そう、これが、素晴らしい、メインストリーム志向の純ジャズな演奏なのだ。力感溢れる、歌心溢れる、流麗で切れ味の良いサックス。これ、ワシントンJr. のリーダー作と知らずに聴いたら、この素晴らしいサックス、誰だ、となる。

そして、ばりばりとハードバップ風だが、新しい響き満載のバッキングを弾き進めるピアノ、これも、誰だ、となる。骨太のアタッチメントで増幅されたベース、これは、もしかしたら、ロン・カーターか、と思うが、そんなことは無いだろうと思い直す、そして、この新しい響きを宿したポリリズミックなドラム、これも、誰だ、となる。

この素晴らしい、メインストリーム志向の純ジャズな演奏のパーソネルは、 Grover Washington Jr. (sax), Herbie Hancock (p), Ron Carter (b), Marvin "Smitty" Smith (ds)。1曲目の「Blues for D. P.」にだけ、Grady Tate (ds, track: 1) がゲストに加わる。

次に注目するのが、4曲目のトミー・フラナガン作の「Something Borrowed, Something Blue」、7曲目、デューク・エリントンの「In a Sentimental Mood」の、サックスとピアノのデュオ。これがまた、正統派ハードバップなデュオ演奏で、この洒脱で小粋でバップなピアノは誰だ、となる。そして、正統派ハードバップなサックスが、そんなピアノに相対する。堂々とした切れ味の良いサックス。これ誰だ、となる。
 

Grover-washington-jrthen-and-now

 
この素晴らしい、メインストリーム志向の純ジャズなデュオ演奏のパーソネルは、Grover Washington Jr. (sax), Tommy Flanagan (p)。

残りの3曲目「French Connections」、6曲目「Stolen Moments」、8曲目の「Stella by Starlight」は、有名なジャズ・スタンダード曲。このスタンダード曲を、コンテンポラリー・ジャズ志向のフュージョンな演奏で、新しい解釈を表現している。これが意外と見事で、これって、純ジャズ復古後の「ネオ・ハードバップ」な演奏かな、と思う。誰がやってるんだ、となる。

このコンテンポラリー・ジャズ志向のフュージョンな演奏で、ハードバップやるパーソネルは、Grover Washington Jr. (sax), Igor Butman (ts), James "Sid" Simmons (p), Richard Lee Steacker (g), Gerald Veasley (5-string el-b), Darryl Washington (ds), Miguel Fuentes (perc)。

この『Then and Now』は、ワシントンJr. の純ジャズ盤である。メインストリーム志向の純ジャズな演奏で固められていて、その演奏も、当時の純ジャズ復古後の、新伝承派の新しいハードバップな解釈と比較しても、勝るとも劣ることのない、正統派な純ジャズな演奏が、コンテンポラリー・ジャズ志向のフュージョンな響きを前提で演奏されている。

これが、1960年代のモーダル演奏の響きに戻った、新伝承派の新しいハードバップの解釈とは正反対のアプローチで、フュージョン・ジャズの演奏スタイル、響き、要素を「正」と捉えて、ワシントンJr. は、メインストリーム志向の純ジャズを展開している。

今の耳で聴くと、これって「正解」なアプローチで、このフュージョン・ジャズの演奏スタイル、響き、要素を「正」と捉えているところは、現代の「ネオ・ハードバップ」に直結するところで、この盤に詰まっているスタンダード曲の演奏は、不思議と古さを感じない。

ワシントンJr. のサックスは正統派なもの。この盤に詰まっている、素晴らしいサックスの吹奏は、ワシントンJr. のサックスの実力の確かさを証明する。ワシントンJr. のサックスは、テクニックに優れ、歌心満載、特に流麗で爽快感のあるアルト・サックスは個性的でクセになる。この盤での、純ジャズなパフォーマンスは見事という他ない。

今までのジャズ盤紹介本でも、ジャズ雑誌でも、はたまた、ネットのジャズ記事でも、この盤の話題はほとんど見かけない。しかし、この盤は、ワシントンJr. が純ジャズに取り組んだ名盤だと僕は評価している。良いアルバムです。
 
 

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