マントラの隠れ名盤『Pastiche』
1973年の再結成後、順調に内容のあるアルバムを2枚、リリースしてきた、マンハッタン・トランスファー(The Manhattan Transfer=以下「マントラ」と略)。そろそろ「マントラの音志向」を確立するタイミングでもあった。
The Manhattan Transfer『Pastiche』(写真左)。1976年12月から1977年9月の録音。1978年のリリース。ちなみにパーソネルは、Tim Hauser, Laurel Massé, Alan Paul, Janis Siegel (vo) 以上が「The Manhattan Transfer」。
前作、前々作同様、バックのバンドには、当時のクロスオーバー&フュージョン畑の有名ジャズマンから、ハイテクニックなスタジオ・ミュージシャンまで、多数の面子が参加して、マントラのコーラスをバックアップしている。特に、この盤では、ジャジーな音志向を強化していて、バックに豪華なビッグバンドが控えている。
ビッグバンドをバックにした、ジャジーな4人組コーラス。マントラ独特のコーラス・ワークを引き立たせるビッグバンド・アレンジが見事。ややもすれば、コーラス・ワークの邪魔になりそうな、ビッグバンドの重厚なユニゾン&ハーモニーなんだが、この盤でのビッグバンドのユニゾン&ハーモニーは重厚かつダイナミックだが、ユニゾンは効果的に抑制を効かせ、ハーモニーはコーラスの邪魔にならない、逆にコーラスを引き立たせる様な音の重ね方が上手い。
このアルバムを聴いていて、マントラの音作りって、往年の「ウエストコースト・ジャズ」がベースにあるのかな、と感じた。いわゆる、小粋なアレンジを施し、ハイテクニックだがお洒落に抑制を効かせて、じっくり「聴かせるジャズ」。マントラのアルバムの根底には、この「聴かせる」というキーワードがしっかりと「ある」。
まず、どの曲でも、マントラのコーラス・ワークのアレンジが見事。マントラならではのユニゾン&ハーモニーの個性を外さすに、原曲のニュアンスをしっかりと踏襲し、時に上回る。どこから聴いても「マントラ」を感じるコーラス・アレンジは見事という他ない。
選曲も良い。後にマントラの代表曲になる、ジミー・ジェフリー作の「Four Brothers」、エリントン作「In a Mellow Tone」、ヴィッド・バトー作「Walk in Love」。ルパート・ホルムズ作の「Who, What, When, Where, Why」。個人的には、ゴフィン=ゴールドバーグの「It's Not the Spotlight」。どの曲もアレンジが秀逸で、マントラのコーラス・ワークが映える。というか、アレンジが秀逸であれば、マントラのコーラス・ワークが映える曲を選んでいる様に見える。
この盤もマントラの数あるアルバムの中で、そのタイトルが特別に上がるアルバムでは無い。しかし、このジャズ・スタンダード曲からポップスの佳曲までを、ジャジーでライトなフュージョン・ジャズ風のアレンジでカヴァーした内容は、マントラのコーラス・アレンジの優秀さと演奏全体のアレンジの見事さを再認識させてくれる。
マントラの音志向が確立された感のある「マントラの隠れ名盤」だと僕は思う。
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