モブレーのブルーノート最終作
ブルーノートでの初リーダー作が、1955年3月録音のブルーノートの5066番『Hank Mobley Quartet』。以来14年間で、録音リアルタイムでリリースされたリーダー作が17枚。ほぼ1年に一枚のペースでリーダー作をリリースし、サイドマンでの参加も多数。今回、ご紹介するアルバムは、ブルーノートのハウス・テナー奏者の位置付けだったモブレーのブルーノート最終作である。
Hank Mobley『The Flip』(写真左)。1969年7月12日の録音。ブルーノートの4329番。ちなみにパーソネルは、Hank Mobley (ts), Dizzy Reece (tp), Slide Hampton (tb), Vince Benedetti (p), Alby Cullaz (b), Philly Joe Jones (ds)。モブレーのテナー、リースのトランペット、ハンプトンのトロンボーンが3管フロントのセクステット編成。
パーソネルを見ると面白い。フロントが、モブレーのテナー、リースのトランペット、ハンプトンのトロンボーン。ハードバップ時代を彩った一流ジャズマンが大集合。加えて、ドラムがこれまたハードバップ時代のファースト・コール・ドラマーのフィリー・ジョー・ジョーンズ。ピアノとベースはちょっと無名の人たちだが、今回のパーソネルは「ハードバップ同窓会」の趣である。
内容を聴いてみると、収録曲の曲調の展開は、1965年リリース『The Turnaround!』から続いてきた、冒頭の1曲目はコッテコテのジャズロック、2局目以降は根明でポップなハードバップ、という収録曲の並びの傾向は変わらない。
冒頭の「The Flip」はジャズロック志向。モブレーのテナー、リースのトランペット、ハンプトンのトロンボーンのフロント3管が、ピンプルで判り易い「熱い」パフォーマンスを繰り広げている。フィリー・ジョーのドラミングが、ジャズロック志向の演奏をハードバップに染め直している。ジャズロック志向のハードバップ・ナンバーと聴いても良いかもしれない。
2局目「Feelin' Folksy」、4局目「18th Hole」、ラストの「Early Morning Stroll」は、根明でポップなハードバップではあるが、明るい曲調のアレンジの中、フロント3管のパフォーマンスは、モードの影も形もない、あくまでハードバップ。モブレーのテナーもこの盤では、モード風のアドリブ展開を封印し、リースのトランペット、ハンプトンのトロンボーンと足並みを合わせる様に、硬派でハードバップなアドリブを展開している。
3曲目の「Snappin' Out」は、ジャジーなマイナー・コード+ラテン調で演奏されるボサノバ・ジャズな演奏。冒頭のジャズロック志向と同じ、ロックやソウル・ファン向けに迎合したコマーシャルな曲かと思いきや、この曲でもフィリー・ジョーのドラミングがハードバップしていて、硬派なブルーノート仕様のボサノバ・ジャズに仕上げている。
このセッションでモブレーはブルーノートを離れることになる。ブルーノート最後のリーダー作は、ハードバップ懐古な内容。但し、懐メロでは無い。昔のパフォーマンスをなぞることもない。あくまで、1969年時点での最新イメージのハードバップ。
特に、フィリー・ジョーのドラムが効いている。モブレーは、従前からの中音域中心の歌心溢れる流麗な、ハードバップなテナーをブイブイ言わせている。1969年という時代背景をしっかり反映した、良質のハードバップ演奏がこの盤に詰まっている。好盤です。
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