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2024年5月27日 (月曜日)

現代ジャズの新しいブルースの音

ジャズの楽器の中での「絶滅危惧種」の一つ、ヴァイブ(ヴィブラフォン)。スイング時代には、ライオネル・ハンプトン。ハードバップ期には、ミルト・ジャクソンがモダン・ジャズ・ヴァイブを確立した。

エディ・コスタ、デイブ・パイク、ヴィクター・フェルドマン、レッド・ノーヴォらが後に続く。そして、ハードバップ後期には、レム・ウィンチェスター、ゲイリー・バートン、ボビー・ハッチャーソンが継ぎ、ジャズの多様化の時代には、ロイ・エアーズ、マイク・マイニエリが頭角を現した。

その後が続かなかった。1990年代に入って、ベテランの域に入った、ゲイリー・バートン、ボビー・ハッチャーソン、マイク・マイニエリが頑張っていたが、21世紀に入ると、さすがに活躍のペースが落ちる。新しいジャズ・ヴァイブ奏者が現れることは無かった。

しかし、2019年になって、新しい有望なヴァイブ奏者が現れ出でたのである。ジョエル・ロス(Joel Ross)。名門ブルーノート・レコードからデビューした若き天才ヴィブラフォン奏者。シカゴ生まれ、現在はNYブルックリンをベースに活動。トレードマークのドレッドヘアー、スタイリッシュなファッション。現代の若きジャズマン。

Joel Ross『Nublues』(写真左)。NYブルックリン「The Bunker Studio」での録音。2024年2月のリリース。ちなみにパーソネルは、Joel Ross (vib), Immanuel Wilkins (as), Gabrielle Garo (fl), Jeremy Corren (p), Kanoa Mendenhall (b), Jeremy Dutton (ds)。ジョエル・ロスの4枚目のリーダー作になる。
 

Joel-rossnublues

 
ほぼ毎年1枚のペースでリーダー作をリリースしているロス。ロスのヴァイブは、順調にジャズ者の皆さんに受け入れられているようで、これは喜ばしいことである。

で、この最新作であるが、ロスのオリジナルが6曲、ガロとの共作で1曲、参加ミュージシャンの大半がクレジットされる共作が1曲。それに、コルトレーン作の曲が2曲、モンクの曲が1曲、で全10曲。タイトルでも分かる通り、ブルースをテーマにしている。

ロスをはじめ、メンバーの自作曲でのパフォーマンスは「ニュー・ジャズ」の類。モーダルな展開を基本に、即興演奏の妙を全面に押し出しつつ、時々、対位法や現代音楽風の展開を交えた「ニュー・ジャズ」の中でのブルース。21世紀の新しいジャズの、ブルースの音が満載である。

どこか、ミルト・ジャクソンとジョン・ルイスが所属していた「モダン・ジャズ・カルテット」の実験ジャズを想起する瞬間があって、ちょっとハッとする瞬間がある。

そして、コルトレーン曲とモンク曲の演奏が良い。21世紀のネオ・ハードバップ、ネオ・モードを前提とした、コルトレーンとモンク。伝統に根差した、それでいて、新しい響きのエネルギッシュな「ニュー・ジャズ」の中でのコルトレーンとモンク。新鮮な解釈に思わず耳を奪われる。

ネオ・ハードバップ、ネオ・モード、ニュー・ジャズとは言いつつも、しっかりとジャズの伝統に根差した響きも漂う、ロスのレギュラー・グループの演奏はなかなか聴き応えがある。好盤です。
 
 

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