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2024年4月25日 (木曜日)

「聴かせる」ジャズの真骨頂な盤

米国ウエストコースト・ジャズは、洒脱に小粋に「聴かせる」ジャズである。

この盤では、米国のウエストコースト・ジャズの真骨頂を聴く様な、どこから聴いても「ウエストコースト・ジャズ」な演奏がズラリと並んでいる。洒落たアレンジ、響きの美しいアンサンブル、テクニック溢れる洒脱なアドリブ展開、グループサウンズ優先の整った演奏。そんな、ウエストコースト・ジャズの個性をバッチリ反映した演奏がこの盤に詰まっている。

Barney Kessel『Music to Listen to Barney Kessel By』(写真左)。1956年8, 10, 12月の録音。1956年の3セッションからの選曲。ちなみにパーソネルは以下の通り。

1956年8月6日の録音は、Barney Kessel (g), Buddy Collette (fl, alto-fl, cl), Junie Cobb (oboe, English horn), George W. Smith (cl), Justin Gordon (cl, b-cl), Howard Terry (cl, b-cl, bassoon), André Previn (p), Buddy Clark (b), Shelly Manne (ds) で、2曲目「Makin' Whoopee」, 9曲目「Gone with the Wind」, 11曲目「"I Love You」, 12曲目「Fascinating Rhythm」を演奏。

1956年10月15日と12月4日の録音は、Barney Kessel (g), Ted Nash (fl, cl), Jimmy Rowles (p), Red Mitchell (b), Shelly Manne (ds) で、1曲目「Cheerful Little Earful」, 3曲目「My Reverie」, 4曲目「Blues for a Playboy」, 5曲目「Love Is for the Very Young」, 6曲目「Carioca」, 8曲目「Indian Summer」, 10曲目「Laura」を演奏。

ちなみに、1956年12月4日の録音の7曲目「Mountain Greenery」だけ、ピアノが Claude Williamson (p) に代わっている。
 

Barney-kesselmusic-to-listen-to-barney-k

 
演奏形態の基本は、ギター、フルート/クラリネット、ピアノ、ベース、ドラムのクインテット編成。ギターはケッセル、ドラムはシェリー・マンが全曲固定。フルート/クラリネット、ピアノ、ベースがセッション毎に担当が代わっている。加えて、1956年8月6日の録音には、クラリネット、バスクラ、バズーン、イングリッシュ・ホルンなどの木管楽器4本が追加で入って、重厚でウォームなアンサンブルを醸し出している。

選曲も良い。ウエストコースト・ジャズの洒脱で優れたアレンジが効果的に映える小粋なスタンダード曲が中心で、ウエストコースト・ジャズのジャズマン達の小粋な演奏が効果的に響く。

特に、この盤では、フルート/クラリネット、バスクラ、バズーンの木管楽器の存在がポイントで、この木管楽器が入ったアンサンブル、木管楽器のソロが、演奏全体をアーバンで洒落た「聴かせる」ジャズに仕立て上げている。逆に、柔らかな音質の木管楽器のアンサンブルをバックにすると、ケッセルの端切れ、切れ味の良いギターの音がグッと浮き上がってくる。良く考えて練られたアレンジ。さすが、ウエストコースト・ジャズ全盛期の作品である。

ウエストコースト・ジャズの「聴かせる」ジャズについては、ピアノ、ベース、ドラムのリズム・セクションの出来が重要になるが、この盤については、当時のウエストコースト・ジャズの名うての名手たちが集っているので、全く問題が無い。特に、全曲ドラムを担当しているシェリー・マンのドラミングは見事。ベースを担当するバディ・クラーク、そして、レッド・ミッチェルも職人気質で堅調なベースラインを供給して見事。

全編、ウエストコースト・ジャズの「聴かせる」ジャズな演奏なので、ポップで聴き易く、心地良い響きがどこかイージーリスニング風に聴こえることがあるが、曲のアレンジ、奏でられるアンサンブル、演奏者個々の高度な演奏テクニックなど、立派なモダン・ジャズである。ウエストコースト・ジャズの実力のほどが、この盤の演奏から垣間見える。ウエストコーストのハードバップな秀作です。
 
 

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