« 「抑制の美のドーハム」の名演 | トップページ | 「モブレーのジャズ」のポップ化『Hi Voltage』 »

2024年4月29日 (月曜日)

ドーハムのペスト・プレイの一つ

ケニー・ドーハムは、1924年8月生まれ、1972年9月に48歳で逝去。リリースしたリーダー作は20枚。最後のリーダー作は1965年だから、その後7年間は引退状態。初リーダー作が1953年なので、ドーハムの活動期間は12年と短いものだった。

ドーハムはちょっと不思議なトランペッターで、ジャズマン同士の中で、米国評論家の間では何故か評価が高い。しかし、人気はイマイチで、アルバムの売り上げも芳しいものではなかったらしい。

一方、我が国では、昨日ご紹介した『Quiet Kenny(静かなるケニー)』(1960年)の存在だけが突出していて、ドーハムに「哀愁のトランペッター」というキャッチフレーズを付けて、評論家はその哀愁感溢れるトランペットを褒めそさえ、聴き手はその哀愁感溢れるトランペットに聴き惚れる、という偏った状況が続いている。

『Kenny Dorham and The Jazz Prophets, Vol.1』(写真左)。1956年4月4日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Dorham (tp), J.R. Monterose (ts), Dick Katz (p), Sam Jones (b), Arthur Edgehill (ds)。ケニー・ドーハムがリーダーの超短命のグループ「The Jazz Prophets」の唯一のスタジオ録音盤。ちなみに超短命なバンドだったので「Vol.2」はありません。

グループ名の「The Jazz Prophets」=「ジャズの預言者たち」となるのだが、この盤の内容は、こってこてのハードバップ。しかも、ドーハムの好調なトランペットと、マイナーな存在のテナー奏者、モンテローズの希少なパフォーマンス、白人ピアニスト、ディック・カッツの個性的なピアノが売りの盤で、グループ全体のパフォーマンスやインタープレイについては、当時のハードバップとして水準レベルかな。

全編に渡って、リーダーのドーハムのトランペットが元気溌剌。もともと、ドーハムのトランペットは、ビ・バップにバリバリ吹きまくるトランペット。この盤に詰まっているドーハムのパフォーマンスが「ドーハムのトランペットの本質」である。
 

Kenny-dorham-and-the-jazz-prophets-vol1

 
冒頭の「The Prophets」では、ドーハムとモンテローズが順に素晴らしくファンキーなソロを聴かせてくれる。ピアノのカッツが白人らしい小粋で流麗なフレーズで、フロント2管をサポートする。とにかくドーハムが元気。

2曲目の「Blues Elegante'」は、ドーハムのミュート・プレイもが秀逸。ミッドテンポな演奏の中でのモンテローズのテナーが良い。このテナーマンは、ミッドテンポの演奏に強い。イマージネーション溢れる上質なソロを聴かせてくれる。

3曲目の「DX」はアップテンポなファンキー・ジャズな演奏。ドーハムもモンテローズもバリバリ吹きまくっている。カッツの美しい響きのピアノが個性的で目立つ。

続く「Don't Explain」は、有名スタンダードなバラード曲。ドーハムの泣きのミュート・プレイが見事。このバラード曲でのドーハムのトランペットは端正で柔和で芯がしっかり入ったトランペット。どうも、ドーハムもバラード曲の様に、ミッドテンポ〜ややスローな演奏に強いみたい。とにかくドーハムが元気である。

ラストの「Tahitian Suite(タヒチ組曲)」は、どの辺が「組曲」なのかは判らないが、ドーハムが力感溢れるビ・バップなトランペットをバリバリ吹きまくる。とにかく、この曲でもドーハムは元気である。

「フレーズがちょっと危うい」ところ、ところどころで音の端々で「よれる」もしくは「ふらつく」ところが、ドーハムの個性のひとつとしてあるのだが、この盤ではその頻度が少ない。意外とこの盤は、ドーハムのトランペットの本質を明確に突いた、ドーハムの「ビ・バップなバリバリ吹きまくる」トランペットのベスト・プレイを記録した好盤の一枚として評価できるのではないか。

どうしても好意的に評価できないアルバみが1枚、入手できなかったリーダー作が1枚、計2枚の欠盤はあるのですが、この盤のレビューにて、当ブログにおける「ドーハムのリーダー作のレビュー」は完了。当ブログの右下の「カテゴリー」欄の中で「ケニー・ドーハム」をクリックしていただければ、当ブログでドーハムのリーダー作のレビューを読むことが出来ます。よろしかったら、ご一読を。さて、お後がよろしいようで...(笑)。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

« 「抑制の美のドーハム」の名演 | トップページ | 「モブレーのジャズ」のポップ化『Hi Voltage』 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 「抑制の美のドーハム」の名演 | トップページ | 「モブレーのジャズ」のポップ化『Hi Voltage』 »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー