好盤 『Kessel Plays Standards』
バーニー・ケッセルのギターは、チャーリー・クリスチャンを源とするビ・バップ・ギターを洗練させ、ビ・バップ・ギターの奏法を取りまとめて、ひとつのスタイルとして完成させたもの。コード弾きを織り交ぜたシングル・トーンの旋律弾き、伴奏に回った時のクールなコード弾きのカッティング、太いトーンでホーンライクに弾きまくるアドリブ・フレーズ。
バーニー・ケッセルのギター奏法は、源にチャーリー・クリスチャンのモダン・ジャズ・ギターが見え隠れする。このバーニー・ケッセルのギターは、モダン・ジャズ・ギターの原型のひとつだと感じる。同じオリジンのギタリストにウェス・モンゴメリーがいるが、ウェスのギターは硬派で骨太で豪快でストイック。ケッセルのギターは温和でフレーズが小粋でキャッチー。
Barney Kessel 『Kessel Plays Standards』(写真左)。1954年6月4日、7月1日、1955年9月12日の録音。ちなみにパーソネルは、以下の通り。
1954年6月4日の録音は、1曲目「Speak Low」、3曲目「On a Slow Boat to China」、8曲目「Prelude to a Kiss」、9曲目「A Foggy Day」。パーソネルは、Barney Kessel (g), Bob Cooper (ts, oboe), Claude Williamson (p), Monty Budwig (b), Shelly Manne (ds).。
1954年7月1日の録音は、2曲目「Love Is Here to Stay」、4曲目「How Long Has This Been Going On?」、7曲目「Barney's Blues」、12曲目「64 Bars on Wilshire」。パーソネルは1954年6月4日の録音と同じ。
1955年9月12日の録音は、5曲目「My Old Flame」、6曲目「Jeepers Creepers」、10曲目「You Stepped Out of a Dream」、11曲目「I Didn't Know What Time It Was」。パーソネルは、Barney Kessel (g), Bob Cooper (ts, oboe), Hampton Hawes (p), Red Mitchell (b), Chuck Thompson (ds)。
選曲が振るっている。タイトル通り、この盤はスタンダード曲集なんだが、いわゆる「皆がよく知っている」有名スタンダードは殆ど選曲されていない。
洒落た小粋な隠れた名曲的なスタンダード曲を選曲しているのに感心する。さすがウエストコースト・ジャズ。洒落た聴かせるアレンジを施すと、さらにその曲の魅力が増す様な、洒落た小粋な隠れた名曲的なスタンダード曲がずらり。
パーソネルを見渡せば、3セッションとも、米国ウエストコースト・ジャズの精鋭達が勢揃い。演奏全体の雰囲気は明らかに「米国ウエストコースト・ジャズ」。洒落た聴かせるアレンジ、その聴かせるアレンジに乗って、バーニー・ケッセルが、小粋で疾走感溢れるギターをバリバリ弾きまくる。
曲の旋律を弾くケッセルのギターに、寄り添う様にユニゾン&ハーモニーの相棒を務める「不思議な」音のする楽器が目立つ。この「聴き慣れない」楽器の音は、なんとオーボエ。主楽器がテナー・サックスのボブ・クーパーが、このオーボエを吹いている。
恐らく、ギターとユニゾン&ハーモニーをする際、テナーだとテナーの音が勝ってしまって、ギターの音が隠れてしまうのを防ぐ為だったかもしれない。でも、このオーボエ、ユニークな音なのだが、ちょっとテクニックが拙くて、別に無くても良かったのになあ、と思ってしまう。とにかく、拙いオーボエの音が気になって、どうもいけない。
ケッセルのギターは申し分無い。コード弾きを織り交ぜたシングル・トーンの旋律弾き、伴奏に回った時のクールなコード弾きのカッティング、太いトーンでホーンライクに弾きまくるアドリブ・フレーズ。ウエストコースト・ジャズを代表するバップ・ギター。小粋でキャッチーな「聴かせる」フレーズをバンバン弾きまくる。
バックのリズム隊は2編成存在するが、どちらも米国ウエストコースト・ジャズの精鋭達が担当しているので、音の雰囲気に違和感は無い。小粋で洒落た、クールで聴かせるリズム&ビートを供給、フロントのケッセルのギターを鼓舞し、ガッチリとサポートする。
ケッセルの代表盤に挙がることが少ない初期のリーダー作だが、内容の充実度は高い。ケッセルのギターの個性と特徴が、洒落た小粋な隠れた名曲的なスタンダード曲の演奏を通じて、クッキリと浮かび上がる。ボブ・クーパーのオーボエの存在だけがマイナス要素だがクーパーに罪は無い。このオーボエだけを気にせず聴くと、このスタンダード曲集、なかなかの好盤だと思うのだがどうだろう。
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