コニッツの歌心と即興演奏の妙
Lee Konitz(リー・コニッツ)。1927年10月13日、米国シカゴ生まれ。2020年4月15日、米国NYにて逝去。享年92歳。コロナ感染が起因の合併症での逝去であった。トリスターノ門下生として「クール・ジャズ」推進の旗手の一人として活躍。その後、即興演奏の極みを求めて、様々な演奏フォーマットにチャレンジ。70年余の活動期間の中で、自らのスタイルを貫き通した「サックスの仙人」である。
Lee Konitz『Tenorlee』(写真)。1977年1月7日、7月24日、1978年3月23日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Lee Konitz (ts), Jimmy Rowles (p), Michael Moore (b)。「アルト・サックスの仙人」がリーダーの、ドラムレスの変則トリオ編成。コニッツの「即興演奏の可能性のチャレンジ」シリーズの一枚。
この時代のコニッツは、自由度の高い、硬軟自在、緩急自在のインプロビゼーションが素晴らしい時代。「即興演奏の可能性のチャレンジ」に没頭している割に、コニッツのサックスには、尖ったところ、鋭角立ったところがなく、音のエッジは切れ味が良いが、フレーズはあくまで流麗。即興演奏なのに、よくまあこれだけ流麗なフレーズを瞬間瞬間に吹けるなあ、と聴くたびに感心する。
ドラムレスのトリオ編成なので、リズム&ビートがドラムに規制されず、時にアルト・サックスが、時にピアノが、時にベースが、演奏の「リズム&ビート」を代わる代わる先導する。テナー、ピアノ、ベース、それぞれの楽器毎に醸し出される「リズム&ビート」は、そのニュアンスが異なるので、ドラムが一手に「リズム&ビート」を担う場合に比べて、即興演奏の幅と奥行きが広がる。
スタンダード曲がずらりと並ぶが、スタンダード曲を素材として、素晴らしい即興演奏が展開されている。特にコニッツのテナーが流麗でバリエーション豊かで素晴らしい吹き回し。恐らく、今回のコニッツはテナーを持っているので、演奏全体の雰囲気がユッタリと唄う様な感じになっていて良い感じ。コニッツの歌心と即興演奏のテクニックと閃きを感じ取るのに格好の内容になっている。
即興演奏の可能性にチャレンジしているのだが、いきなりフリー・ジャズに走らず、モダン・ジャズの伝統的な演奏形式の範囲内で演奏フォーマットの編成を変えたり、アルトとテナーを持ち替えたり、コニッツはイマージネーション豊かに「即興演奏の可能性のチャレンジ」を推し進める。「純ジャズ・冬の時代」の1970年代に、メインストリームど真ん中のコニッツの活躍。今から振り返ると「素晴らしい」の一言である。
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