コブハムが目指す「融合」ジャズ
『A Funky Thide of Sings』(1975)のリリース後、ブレッカー兄弟が抜けて、エレクトリックなジャズ・ファンクの橋頭堡が不在となったビリー・コブハムのバンド。クロスオーバーなエレ・ジャズ・ファンクを捨てて、次作では、いきなりハードで硬派なクロスオーバー・ジャズに転身した。
Billy Cobham『Life & Times』(写真左)。1976年の作品。ちなみにパーソネルは、Billy Cobham (ds, perc, syn), Dawilli Gonga (key), John Scofield (g), Doug Rauch (b)。コブハムのアトランティック・レコードでの最後のスタジオ盤になる。
パーソネルの中の「Dawilli Gonga」は、George Duke (key) の契約上の理由からの変装名。ギターのジョンスコはそのままに、新たに加わったキーボードのジョージ・デューク、エレベの元サンタナのダグ・ロウチと、リーダーのコブハムのドラムを交えたカルテット編成のクロスオーバー・ジャズである。
前作『A Funky Thide of Sings』までのホーン・セクションを配した、分厚いジャズ・ファンクな演奏をガラッと変えて、リズム&ビートを主体とする、コンパクトなメンバーでの、ジャズとロックの融合がメインのハードなクロスオーバーなエレ・ジャズを展開している。
1970年代前半、マイルスが推し進めていたジャズ・ファンクなエレ・ジャズからファンクネスを差し引いて、ポップでキャッチーな音作りを加味したクロスオーバーなエレ・ジャズ。
シンセが唸りを上げ、エレギが捻れ響くインスト中心の演奏。まるで「プログレ」な雰囲気だが、ジャジーなビートと途方も無い演奏テクニックが、この演奏は「ジャズ」に軸足をしっかり置いていることを確信させてくれる。
コブハムのドラムは、徹底して「千手観音ドラミング」で叩きまくり。ジョンスコのギターは、意外とストレートな伸びのロック・ギターの様な迫力と疾走感溢れる骨太なフレーズを聴かせてくれる。
冒頭のタイトル曲「Life & Times」など、やたらハードでアクセル全開なナンバーが印象に残るが、爽やかでクールなファンクネスを忍ばせた4曲目の「East Bay」のヒップで小粋な演奏など、この盤のリリース後、すぐに結成された「The Billy Cobham - George Duke Band」の音世界がこの盤で確立されている。
ちなみに、ジャケの写真はコブハムの幼少期。それを持っている手は、アルバム制作当時のコブハムの手。このジャケが何を意味するのか、コブハムの真意は測りかねるが、時代はソフト&メロウをメインとしたフュージョン・ジャズの入り口の時代。この盤に詰め込まれた演奏は、エレクトリックなクロスオーバー・ジャズの成熟形と捉えることも出来る。
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