サンチェスの初リーダー作を聴く
昨日、アントニオ・サンチェス(Antonio Sánchez)の『Three Times Three』(2014年)を聴いて、彼は現代ジャズの先端を行くドラマーの一人だということを再認識。そういえば、まだ、当ブログで、彼の初リーダー作を記事にしていないことに気がついた。と言うことで、早急に彼の初リーダー作を聴き直してみた。
Antonio Sánchez 『Migration』(写真左)。2007年1月の録音。ちなみにパーソネルは、Antonio Sanchez (ds), David Sanchez, Chris Potter (sax), Scott Colley (b), 特別ゲストとして、Pat Metheny (g), Chick Corea (p)。2002年にパット・メセニー・グループに招聘されて以来、メセニーとの共演の傍での初リーダー作。そのメセニーとチック・コリアが特別ゲストとして招かれている。
主役のサンチェスのドラミングの個性とスキルがはっきりと聴き取れる。スネアを中心にスネア・タムとをマシンガンの如く、高速で切れ味よく叩きまくる。どこか、トニー・ウイリアムスを彷彿とさせるところがあるのだが、トニーほどデジタルチックな叩きっぷりではない。サンチェスの高速ドラミングはウェーヴを生み出すような、抑揚のある叩きっぷり。このドラミングはとても個性的。以前のジャズ・ドラマーには無い個性である。
演奏全体の雰囲気は、上質のネオ・ハードバップ & ネオ・モード。サックスの二人は一聴すれば、何となくコルトレーン風に聴こえるところはあるが、コルトレーンより、フレーズがシャープで活度が高く、爽快感があってアドリブのイマージネーションが豊か。二人ともしっかりとオリジナリティーを確保している。二人のサックス奏者は「コルトレーンのそっくりさん」では無い。
この二人のサックスのバックでのドラミングと、特別ゲストのチックのバック、メセニーのバック、それぞれでのドラミングは明らかに異なる。二人のサックス、チックのピアノ、メセニーのギター、それぞれの個性が活きるよう、それぞれのフロント楽器の推進力となるよう、サンチェスは、サンチェスの個性そのままに、ドラミングの内容を変えている。これは見事。サンチェスのドラミング・スキルの高さがよく判る。
上質のネオ・ハードバップ & ネオ・モードの演奏の中で、サンチェスのドラミングの個性をはっきり浮き上がらせ、特別ゲスト二人と共演することで、サンチェスのドラミング・スキルの高さを証明する。ジャズの世界で「初リーダー作」は、そのリーダーのジャズマンの個性が明確に出る、というが、このサンチェスの初リーダー作はその好例の一つ。サンチェスのドラミングを理解する上で、必聴のリーダー作だと言える。
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