ダブル・ドラムの優秀な企画盤
ジャズ・ドラムというのは、意外と「個性の塊」である。フロント管を交えたバンド演奏の中で、リズム&ビートを供給する役割のドラム。リズム&ビートを供給するだけ、と思いがちなので、ドラムには個性は必要無い、と言われそうなんだが、それは「違う」。
ドラミングの個性によって、演奏の雰囲気は変わるし、演奏全体のトーンによって、ドラミングの質は変わる。ジャズにおいては、ドラミングは演奏の雰囲気やトーンを決定づける重要な役割を担っている。ゆえに、ドラミングのテクニックは高度なものが要求されるし、そのドラマーならではの個性や特徴は当然、要求される。
Elvin Jones and Philly Joe Jones『Together!』(写真左)。1961年2月2日の録音。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), Philly Joe Jones (ds), Blue Mitchell (tp), Curtis Fuller (tb), Hank Mobley (ts), Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b)。
ハードバップど真ん中なバップ・ドラムの第一人者、フィリー・ジョー・ジョーンズ(フィリージョー)と、新しい響きを宿した・バップ・ドラムの第一人者、エルヴィン・ジョーンズのダブル・ドラム、ダブル・リーダーの企画盤。
フロントに、ミッチェルのトランペット、フラーのトロンボーン、モブレーのテナーの3管を配して、ダブル・ドラムの重厚な布陣。個性溢れるジャズ・ドラマーの代表する2人がリズム&ビートを担うので、フロント3管くらいの重厚なアンサンブルで十分にバランスが取れる。
二人のドラマーが主役なんだが、この二人の個性溢れるドラミングが素晴らしい。典型的なハードバップ・ドラムな、ダイナミックで切れ味の良いフィリージョー、少しラフで印象的なオフビートで今までに無い叩きっぷりのエルヴィン、どちらのドラミングも素晴らしいの一言。これぞ、ハードバップなドラミングという個性を遺憾無く発揮していて、聴き応えがある。
これだけ優れたドラミングに鼓舞されるのである。フロント3管は好調に吹きまくる。ミッチェルもフラーも良いが、特に、モブレーが好調。このセッションでのモブレーのテナーは「当たり」である。覇気溢れるエネルギッシュな吹奏で聴き応え満点。
加えて、これだけ優れたドラミングが様々なニュアンスのリズム&ビートを繰り出すのである。ピアノ、ベースのリズム隊も健闘に次ぐ健闘。ハッピー・スインガーなケリーのピアノは、翳りを封印し、ファンクネス溢れる明快なタッチの弾き回しでドラムに調子を合わせ、ポルチェンのしなやかでソリッドなベースが、リズム・セクションの「底」をガッチリ支える。
演奏全体の雰囲気は、明確に「絵に描いた様なハードバップ」。ドラムが優れていると、ちゃんとこう言った優れたハードバップな演奏が展開されるという好例。ダブル・ドラムの効果も十分出て、重厚なアンサンブルは聴いていて気持ちがスッとする。良い企画盤です。ジャケ・デザインはイマイチだけど(笑)。
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