異色のドルフィーの 『Caribe』
アルト・サックスの早逝の鬼才、エリック・ドルフィーは独特のモード〜フリー〜アブストラクトなジャズが個性。どこから聴いても、ワン〜ツゥー・フレーズで「これはドルフィー」と判るほどの強烈な個性的ブロウ。そんなドルフィー、単独、もしくはコルトレーンとの共演は理解できるとして、ラテン・ジャズ系のアルバムにも手を染めているのが面白い。
The Latin Jazz Quintet + Eric Dolphy 『Caribe』(写真左)。1960年8月19日の録音。ちなみにパーソネルは、Eric Dolphy (as, fl b-cl), Juan Amalbert (congas), Gene Casey (p), Charlie Simons (vib), Bill Ellington (b), Manny Ramos (ds, timbales)。マルチリード奏者のドルフィーがプレステッジ・レーベルに残したラテン・ジャズ志向のアルバム。パーソネルを見渡せば、フロントがドルフィーのワン・ホーン。
独特のモード〜フリー〜アブストラクトなブロウが個性のドルフィーが、ラテン・ジャズをやる、なんて、どうも信じ難い話。日々の生活費に困って、レーベルの要請に乗って、やむなくやったのかなあ、なんて想像するのだが、実際にこの盤を聴いてみると、意外と真面目に、意外と喜々として、ラテンのリズムに乗って、アルト・サックスを吹き上げているのだから、ちょっと面食らう。
ラテン・ジャズ・クインテットにドルフィーが参加した形でのセッションだが、ドルフィーは基本的にノーマルな吹奏がメイン。ドルフィー単独のリーダー作では、ユニークに捻れ、フリーに飛び、モードに戻ったかと思えば、アブストラクトに展開する、という自由闊達な吹奏は極力抑えて、ラテンのリズム&ビートに乗った正統派アルト・サックスな吹奏は、不思議なことに、これはこれで良い感じ。
俗っぽくて大衆受けのする、ちょっと気恥ずかしくなるようなフレーズやリズムが満載のラテン・ジャズが多い中、正統派なアルト・サックスで、切れ味の良いブリリアントなアルト・サックスを吹き上げる傍ら、時々、思い出したように捻れフリーに飛び、モードに走ってアブストラクトに揺れる、先進的なドルフィーのフレーズが、ラテン・ジャズ志向の俗っぽさを払拭している。
ドルフィーが単独でフロントに立っているおかげで、通常のありきたりなラテン・ジャズになっていないところが良い。まあ、異色と言えば異色、ミスマッチといえばミスマッチなドルフィーのラテン・ジャズだが、あのプレスティッジ・レーベルの仕業ゆえ、ユニークな組み合わせで、いつもとは違った顔を見せるドルフィーが聴ける、ということで、前向きに捉え評価すべき企画盤だろう。基本的にノーマルな吹奏がメインのドルフィーが堪能出来る。
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