米国ジャズマン「渡欧組」の活躍 『The Squirrel』
米国ではジャズマンの扱いが粗雑で、人種差別もあり、生活も苦しい中、1960年代には、ジャズマンの渡欧が相次いだ。ジャズについては、欧州では「音楽芸術」として評価され、その演奏の担い手のジャズマンは「アーティスト」として、一目置かれて扱われた。ジャズマンにとって、欧州の方が活躍の場があり、生活の糧も得やすかった。
米国東海岸ジャズマンの「渡欧組」の演奏拠点としてはパリ、ロンドン、ミュンヘン、そして、一番有名なのは、デンマークのコペンハーゲン。欧州の純ジャズ・レーベルの老舗「スティープルチェイス(SteepleChase)」のライヴ録音の拠点である「モンマルトル」がある。このモンマルトルでのライヴ録音は、数々の名盤、好盤を産んでいる。
Dexter Gordon『The Squirrel 〜 Live At Montmartre Copenhagen '67』(写真左)。1967年6月29日、コペンハーゲンのジャズハウス「モンマルトル」でのライヴ録音。デンマーク放送協会による放送用の録音らしい¥。ちなみにパーソネルは、Dexter Gordon (ts), Kenny Drew (p), Bo Stief (b), Art Taylor (ds)。
1960年代初頭から1976年にかけて渡欧した、サックス奏者のデクスター・ゴードン(愛称:デックス)。1961年にパリに渡り、1964年からデンマークのコペンハーゲンに活動の拠点を移した、ピアニストのケニー・ドリュー。1963年に渡欧して、その後20年間を主にパリを拠点に活動を続けた、ドラマーのアート・テイラー。
いわゆる、米国東海岸ジャズマンの「渡欧組」の面々に加えて、地元ベーシストのボ・スティーフが入ってのデックスのワンホーン・カルテット。放送用の割にはちょっと音が良くないが、リーダーがデックスの、ワンホーン・カルテットのエネルギッシュな演奏の雰囲気はしっかりと捉えている。
いつになく、デックスのテナーがダイナミックでエネルギッシュ。このライヴ盤、1曲当たりの収録時間が12分から20分と長尺の演奏ばかりなんだが、そんな長尺の演奏の中で、デックスはテナーを骨太に悠然と、キャッチャーで力感溢れるフレーズを吹きまくっている。そんな中、やっぱり、デックス作の人気曲「Cheese Cake」が良い雰囲気。
ケニー・ドリューがバップなピアノをテクニック優秀にガンガン弾きまくる。こんなにガンガンにバップ・ピアノを弾くタイプだったけ、と思うほど、このライヴ盤でのドリューは、解放された様に、ガンガンに弾きまくる。フロントのデックスを煽りに煽っている。そんなドリューの長尺のアドリブ・ソロも聴きもの。
そして、米国東海岸ではフロントを立てた、小粋で味のあるドラミングを披露していたのだが、このライヴ盤では「叩きまくるだけ叩きまくっている」。叩きまくってはいるが耳につかない。叩きまくってはいるが、叩き出すリズム&ビートがどこまでもジャジーで、カルテットの醸し出す純ジャズなハードバップ演奏にバッチリ適合する。
地元ベーシストのスティーフは堅実なベースラインを供給して、安定のウォーキング・ベース。米国東海岸ジャズマンの「渡欧組」の一部面々の、コペンハーゲンはモンマルトルでのライヴ演奏。米国にいた時より、のびのびと力感溢れるハードバップを演奏しまくっている様は痛快。実際にその場にいて聴きたかったなあ、という思いにさせられる、熱いハードバップ演奏で、なかなかのライヴ盤です。
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