« McCoy Tyner『Expansions』 | トップページ | 復活直後の『Live at Donte’s』 »

2024年2月23日 (金曜日)

後を継ぐ者・ニタイのソロ盤

2018年、キース・ジャレットが脳卒中に倒れ、復帰の見込みが立たなくなって、キースの様な耽美的でリリカル、クラシック風味の創造的なソロ・ピアノの担い手が見当たらなくなった。というか、この10年くらい、キース以外で、ソロ・ピアノのアルバムがめっきり少なくなったと感じている。

Nitai Hershkovits『Call On The Old Wise』(写真左)。2022年6月、スイス ルガノのコンサート ホール「Auditorio Stelio Molo RSI」での録音。ECMレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Nitai Hershkovits (p)。イスラエル出身の若手有望ピアニスト、ニタイ・ハーシュコヴィッツのソロ・ピアノ盤である。

ニタイ・ハーシュコヴィッツ(Nitai Hershkovits)は、1988年2月21日イスラエル生まれ。モロッコ人の母とポーランド人の父の間に生まれる。15歳でピアノに転向、テルアビヴ近郊のジャズ・コンクールで何度か優勝したが、その後、ジャズとクラシック両方を学ぶ。そして、アヴィシャイ・コーエンのトリオに5年間在籍した後(2011~2016年)、NYに活動拠点を移動し、現在に至る。若手ジャズ・ピアニストの有望株である。

さて、このソロ・ピアノ盤、短いものは1分ちょっと、長くても4分ちょっとの短いパフォーマンスが18曲続く。が、曲毎のトーンとイメージが整っているので、1曲毎の曲の短さは気にならない。曲毎にキーやフレーズやタッチが異なるので、バリエーション豊かなロング・レンジのソロ・パフォーマンスにも聴こえる。
 

Nitai-hershkovitscall-on-the-old-wise

 
即興演奏を中心としたソロ・パフォーマンスで、ジャズの文脈を基本とするが、クラシックの音要素が見え隠れする。タッチは明確、フレーズは耽美的でリリカル。キースと比較すると、キースより弾き回しはドライで、感情移入も控えめ。フレーズの展開は詩的でシンプルで、キースよりもクラシック的要素は濃い。

スタジオ録音なので、よく吟味され、リハーサルされたであろう、一期一会の即興フレーズが止めどなく流れてくる。感情移入が控えめなので、フレーズの抑揚は少し地味に聴こえるが、弾き回しは色彩豊かで軽快で単調にはならないので、聴いていて飽きがこない。

親しみやすいメロディー、明確で暖かいタッチは、キースとチックの間を行くような感じの「ニタイならでは」のソロ・パフォーマンス。ピアノの腕前はかなりレベルの高いところにあって、そういう面でも、キースとかチックとかのソロ・ピアノの「後を継ぐ」逸材が現れ出た、という感じを強く持った。

マンフレート・アイヒャーがプロデュース。さすがアイヒャー、ソロ・ピアノのなかなかの逸材を発掘したなあ、と感心する。アイヒャーの慧眼恐るべし、である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から12年11ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

« McCoy Tyner『Expansions』 | トップページ | 復活直後の『Live at Donte’s』 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« McCoy Tyner『Expansions』 | トップページ | 復活直後の『Live at Donte’s』 »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー