純ジャズ志向の『Trio 99→00』
パット・メセニーは何の前触れもなく、いきなり「コンテンポラリーな純ジャズ」に転身することがある。
通常のパットは、パット・メセニー・グループ(PMGと略)での活動がメインで、音の基本は「コンテンポラリーなクロスオーバー・ジャズ、もしくは、硬派な純ジャズ志向のジャズ・ロック。パットの個人名義での活動もあるが、こちらは「オーネット・コールマン」を踏襲したフリー・ジャズがメイン。しかし、突如として「コンテンポラリーな純ジャズ」に志向を変えたりするから面白い。
Pat Metheny『Trio 99→00』(写真左)。1999年8月の録音。2000年2月のリリース。ちなみにパーソネルは、Pat Metheny (g), Larry Grenadier (b), Bill Stewart (ds)。パット・メセニーのソロ・プロジェクト。今回は「ギター・トリオ」である。演奏の基本は、コンテンポラリーな純ジャズ。
1996年リリースの『Quartet』で、PMGとして、いきなり純ジャズ化。しかし、PMGとして違和感を覚えたのか、次作の『Imaginary Day』で、ワールド・フュージョンな音世界に軌道修正している。で、この『Trio 99→00』は、パットのソロ・プロジェクトの範疇での「コンテンポラリーな純ジャズ」化である。
パットのソロ・プロジェクトでの直近のトレンドは「デュオ」演奏だった。当アルバムは、そのデュオの演奏を一歩進めて、ギター・トリオでの「コンテンポラリーな純ジャズ」化である。ベースにラリー・グレナディア、ドラムにビル・スチュワートを迎えた、本気で硬派なギター・トリオである。
収録された曲を見渡すと、コルトレーンの「Giant Steps」やウェイン・ショーターの「Capricorn」といった、シーツ・オブ・サウンドや、モード・ジャズなど、パッキパキ硬派な純ジャズ曲と、「Lone Jack」や「Travels」のパットメセニーグループ時代の曲を、本気で硬派なギター・トリオでやるといった「快挙」。
ただし、パットの「コンテンポラリーな純ジャズ」である。スインギーな4ビートでもなければ、マイルス流やショーター流のベーシックなモーダルなジャズでも無い。パットの個性全開、浮遊感溢れる、それでいて、フレーズの芯がしっかりしたフォーキーなフレーズで、パット流の即興モード・ジャズを展開する。
グレナディアのベース、スチュワートのドラム、共にそんな「パット流の即興モード・ジャズ」に的確に反応し、しなやかで力感溢れるリズム&ビートで、パットをしっかりとサポートする。今回、この盤で初めてトリオを組んだとは思えない、しっかりと意思疎通された、臨機応変なトリオ・サウンド。見事である。
録音時、パットは45歳。人生の半ばに差し掛かり、「コンテンポラリーな純ジャズ」に回帰する気になったのだろうか。そして、パットは、この『Trio 99→00』で、「パット流の即興モード・ジャズ」として、見事なパフォーマンスを捉えている。今の耳で聴き直して、現代のネオ・ハードバップの名盤として良い内容かと思う。
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