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2024年2月22日 (木曜日)

McCoy Tyner『Expansions』

ブルーノート時代のマッコイ・タイナーは、自らのモード・ジャズの完成に向けて鍛錬を積んでいた時期であり、そのタイナー流のモード・ジャズの確立に向けてのチャレンジ、試行錯誤が演奏から透けて見えて、なかなか味わい深いものがある。

McCoy Tyner『Expansions』(写真)。1968年8月23日の録音。ちなみにパーソネルは、McCoy Tyner (p), Woody Shaw (tp), Gary Bartz (as, fl), Wayne Shorter (ts, cl), Ron Carter (cello), Herbie Lewis (b), Freddie Waits (ds)。

ピアノのマッコイ・タイナーがリーダー。若手有望株のウディ・ショウのトランペット、ゲイリー・バーツのアルト・サックス、そして、中核ジャズマンのウェイン・ショーターの3管フロント、ロン・カーターがチェロを弾いて、ハービー・ルイスとのダブル・ベース、そして、フレディー・ワッツのドラムの総勢7名の変則セプテット編成。

この『Expansions』、次作の『Extensions』と併せて、タイナー流のモード・ジャズの確立を確認できる兄弟盤の様な位置付けのアルバムだと解釈している。

タイナー流のモード・ジャズは、アフリカ志向のモーダル・ジャズ。アフリカの大地を想起させるような躍動感、ワールド・ミュージック志向のフレーズの響きは「エスニック&アフリカン」。まるでビッグバンドを聴いている様な「分厚い」アンサンブル。そんなバンド・サウンドをバックに、それぞれのソロイストが完全モーダルなアドリブを展開する。
 

Mccoy-tynerexpansions

 
当然ながら、リーダーのマッコイ・タイナーのモーダルなピアノが素晴らしい。タイナー流の「シーツ・オブ・サウンド」の右手、重力感溢れる印象的な左手のハンマー奏法。フロント管やロンのチェロの完全モーダルなフレーズ展開のバックで、効果的にビートを刻むブロック・コード。マッコイ・タイナーのモーダルなピアノ全開である。

ショウのトランペット、バーツのアルト・サックス、若手の2管は溌剌と個性的なモーダル・フレーズを撒き散らしている。尖った熱い、自由度の高い高速モーダル・フレーズの吹き回しは若さ爆発、勢いがあって聴き応え十分。

そんな中でやはり際立っているのは、ウェイン・ショーターのテナー・サックス。ショーターのモーダル・フレーズは重量感溢れ、ショーター流「シーツ・オブ・サウンド」の高速フレーズ、音の広がりと間を活かしたモーダルな展開、どれもが唯一無二で、どこから聴いても「ショーターのモード」。ショーターのモーダルなテナー全開である。

この盤を聴いていると、初リーダー作『Inception』から追求してきた、マッコイ・タイナーならではの「タイナー流のモード・ジャズ」が遂に確立したなあ、と思う。この盤で確立した音世界をベースに、タイナーは1970年代の活動のピークへと進化を続けていく。
 
 

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