パットのソロ『Dream Box』
パット・メセニーは、今年70歳。盟友ライル・メイズが2020年に亡くなって、パット・メセニー・グループの活動は停止した。ソロ活動のみに集中して現在に至る。2021年リリースの『Side-Eye NYC(V1.IV)』は、久しぶりに「PMGサウンドに通じるパット」らしい内容で、聴いていてワクワクしたが、その後が続かない。どうしたのか、と思っていたら、昨年、突如、ソロアルバムが出た。
Pat Metheny『Dream Box』(写真左)。2023年6月のリリース。パット・メセニーの声明文によると「この盤は、僕にとって珍しい録音で、ツアー中に聴いて発見した数年間に録音されたソロ曲のコンピレーションです」。タイトルの「Box」は、スラングで、フルアコのエレキ・ギターを指す。そう、このアルバムは、パットのフルアコ・エレギのソロ・パフォーマンス集。
全編に渡って、絶妙にコントロールされたフルアコ・エレギのソロ・パフォーマンスが繰り広げられる。フルアコ・エレギの表現力の豊かさ。パットのフルアコ・エレギをコントロールするテクニックの高さが良く判る。ビートの効いたスインギーな純ジャズ志向の演奏では無い。限りなく耽美的でリリカル、静的で哀愁感溢れる、即興演奏をメインとした「ニュー・ジャズ」な音世界。静かなエレキ・ギター。
演奏しているのはパット一人なのだが、ギター1本だけの完全なソロは1曲だけ。他の曲は、バックのギターにソロを重ねて録音している。パット曰く「ツアー中に思いつくまま、バラバラに録り溜めておいた演奏が、聴き直してみるとその一貫性に驚いた」ということだが、確かに、このアルバムの収録された曲にはしっかりとした一貫性が感じられる。
語りかける様な繊細なダイナミズム、哀愁感漂うマイナー調の流麗なフレーズ、決して熱くならない緻密な音の積み重ね、しっとりとした静的で穏やかなリズム&ビート。これらの音の個性を融合して、パットは即興演奏の極致を表現する。即興演奏というところで、このパットのソロ・パフォーマンスは、ギリ「ジャズ」の範疇に留まっている。
「エレギをアコギのように静かに情感豊かに弾くにはどうしたらいいか」という命題に取り組んでいる様な、パットの思索的な、沈思黙考的なソロ・パフォーマンス。聴いていて、ECMからデビューした時の『Bright Size Life』(1976年) での、パットの透明感溢れる、耽美的でリリカルなパットのパフォーマンスを思い出した。
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