アレッシの『It’s Always Now』
ラルフ・アレッシは、1963年3月5日、米国SFO生まれ。今年で61歳の大ベテラン・トランペッターである。が、これまでかなりマイナーな存在だった。というか、僕はこのアルバムで出会うまで、アレッシの名前に馴染みが無かった。
それもそのはずで、アレッシは基本的に学者であり研究者。カリフォルニア芸術大学で、ジャズ・トランペット演奏で学士号、ジャズ・ベース演奏で修士号を取得している。そして、教育者として、2001年にニューヨークのブルックリンに即興音楽学校を設立している。
初リーダー作は1999年。マイナー・レーベルからのリリース。アレッシのディスコグラフィーを見ていると、初リーダー作から7枚ほどマイナー・レーベルからリーダー作がリリースされていたが、突如、9枚目のリーダー作『Baida』(2013年)が、老舗のメジャー・レーベル、ECMレコードからリリース。
以来、今回の『It's Always Now』まで、4枚のリーダー作がECMからリリースされている。そして、今回、やっと、アレッシのトランペットを聴くことが出来た。まあ、そんな感じのジャズ・フィールドでの活動なので、アレッシの名前に馴染みがなくても仕方がない。
Ralph Alessi Quartet『It's Always Now』(写真左)。2021年6月の録音。ECMレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Ralph Alessi (tp), Florian Weber (p), Bänz Oester (b), Gerry Hemingway (ds)。ECMレコードでの4枚目のリーダー作になる。
このアルバムを聴き始めて、まず、アレッシのトランペットについては、とても素性が良く、欧州ジャズ的な端正で癖のない、ブリリアントで綺麗に鳴るトランペット。テクニックは上々、今回はアレッシのトランペット1管のワンホーン・カルテットなんだが、アレッシのトランペット一本でフロントをやり切っている。相当にテクニック的に優れていることが良く判る。
始めの頃は、ブリリアントでストレートな良い音のするトランペットで、静的な「ネオ・モーダル」な即興演奏メインの展開の曲を吹き進めていく。音はさすがに「欧州調」なんだが、ECMらしからぬ「ネオ・ハードバップ」な音世界に、ECMも柔軟になったなあ、と思いながら聴き進めると、徐々に静的な音世界が怪しくなってくる。
曲が進むにつれ、徐々に徐々にフリーに傾いていく。しかも演奏の雰囲気は一気にアグレッシヴ。静的な音世界から、音数の多い自由即興な音世界に早変わり。これには、ちょっとビックリ。それでも、フリーと言っても、内容的には、欧州的で整った、節度をわきまえた即興演奏で現代音楽風。
ECMの「サウンド・カラー」からは逸脱していない、ほどよく抑制が効いた素性の良いフリーな展開なので、耳につくことは無い。ギリギリ、限りなく自由度の高いモード・ジャズと解釈することもできるアーティステックなフリー展開。
バックでリズム隊を担う、ピアニストのフロリアン・ウェーバー、ベースのベンズ・オースター、ドラマーのゲリー・ヘミングウェイというトリオも、アレッシのトランペットをしっかりサポートしていて立派。
ラルフ・アレッシのトランペットの優れた個性を確認することが出来る、なかなかの内容のリーダー作。内容的には、米国ジャズの様なファンクネスは皆無で、コマーシャルな要素も皆無だが、欧州の「現代の即興演奏をメインとしたニュー・ジャズ」として、聴き味良好なワンホーン・カルテットの佳作。マンフレート・アイヒャーのプロデュースの賜物でしょう。
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