新生「バッド・プラス」の新作
1960年代は、1950年代のハードバップをベースとした「ジャズの多様化」の時代だった。エンターテインメント志向としては、ファンキー・ジャズ、ソウル・ジャズ、イージーリスニング・ジャズ。アーティステック志向としては、モード・ジャズ、フリー・ジャズ。聴く側の嗜好と演奏する側の志向とで、様々なバリエーションのジャズが展開された。
この「ジャズの多様化」は、1960年代以降、意外と綿々と続いている。1970年代のクロスオーバー・ジャズ、フュージョン・ジャズ、そして、1980年代のスムース・ジャズも、この「多様化」の一つだろう。
21世紀に入っては、以前のジャズのトレンドやスタイルのリニューアル、例えば、ネオ・ハードバップとか、ネオ・モード。そして、8ビートがメインのクロスオーバーなインストに特化した、ネオ・フュージョンなどが「多様化」の成果だろう。
『The Bad Plus(2022)』(写真左)。2022年の作品。2021年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Reid Anderson (b), Dave King (ds), Ben Monder (g), Chris Speed (ts, cl)。音楽性については、グランジ・ロック、テクノ、フリー・ジャズ等の要素を取り入れた、ジャジーなインスト志向のプレイが身上の「バッド・プラス」の新作になる。
「バッド・プラス」は、2001年、イーサン・アイヴァーソン (p)、リード・アンダーソン (b)、デヴィッド・キング (ds) のトリオでデビュー。2018年、ピアノがオリン・エヴァンスに変わり、2021年に脱退。ピアノが空席となる。
ここで意外にも、オリジナル・メンバーのアンダーソンとキングは、ピアニストの後継を補充するのでは無く、新しい楽器、ギターとサックスを引き入れる。
「バッド・プラス」は、ピアノ・トリオから、ギターとサックスがフロントのピアノレス・カルテットとして生まれ変わった。現代のインスト志向のピアノ・トリオから、インスト志向のエレ・カルテットに変身した。
当然、音楽性は変わる。超絶技巧インスト系プログレッシヴ・ロックの雰囲気漂う、クロスオーバー志向のジャズ・ロック、もしくは、現代の「ネオ・フュージョン」と評しても良い、成熟したフュージョン・ジャズ。
そんな音世界に大変身。但し、テクニック抜群、独特の疾走感溢れる、メロディアスでドラマチックな展開の「ジャジーなインスト志向のプレイ」は変わらない。
スムースでメロディアス、エネルギッシュで切れ味良い演奏は聴き応え十分。インスト志向のジャズ・ロック、もしくは、インスト系クロスオーバー。新生「バッド・プラス」、ピアノからギター+サックスへの変更は大成功。
オリジナル・メンバーのアンダーソン曰く「「デビュー・アルバムのようなエネルギーを持ったレコードを出すことができるのなら、僕にとっては、それは意味があることなんだ。これこそが自分自身を改革することなんだ」。納得である。
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
★ AORの風に吹かれて
★ まだまだロックキッズ 【New】 2024.01.07 更新
・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
記事をアップ。
★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新
・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
の記事をアップ。
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
東日本大震災から12年10ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
« John Patitucci Trio の秀作です | トップページ | ジェリとカートの孤高のデュオ盤 »
コメント