コルトレーン『Traneing In』再び
明けましておめでとうございます。今年最初のブログ記事は、コルトレーン記事のリニューアルからスタート。コルトレーン関連の記事については、2010年代前半に書かれた記事が多く、今を去ること10年以上になる。10年以上にもなると、自分のジャズの「聴き耳」も進歩しているので、昔、聴けなかった音が聴けたり、昔、気が付かなかったフレーズや展開、アレンジに気がついたりする。
John Coltrane『Traneing In』(写真左)。1957年5月31日の録音。プレスティッジ・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、John Coltrane (ts), Johnnie Splawn (tp), Sahib Shihab (bs), Red Garland (p on 1-3), Mal Waldron (p on 4-6), Paul Chambers (b), Albert "Tootie" Heath (ds)。基本はフロント3管(テナー、トランペット、バリサク)に、ピアノ・トリオのリズム・セクションがバックに控える。
この盤、プレスティッジのコルトレーンのリーダー作の中で、唯3枚しかない、在籍録音時に直ぐにリリースされたリーダー作の中の一枚。しかも、この盤、当初は『John Coltrane with the Red Garland Trio』(写真右)のタイトルで1958年にリリースされている。
が、コルトレーンがプレスティッジを去って、アトランティックに移籍して人気を獲得した1961年に、この『Traneing In』のタイトルに変えて、再リリースされている。内容は全く同じ。タイトルとジャケが違うだけ。プレスティッジって、ほんとエゲつないことするなあ。
この盤、バックにガーランド or ウォルドロンのトリオが控えた、コルトレーンとトランペットのジョニー・スプローンがフロント2管のクインテット編成。プレスティッジのコルトレーンのリーダー作って、大体がそうなんだが、パーソネルが雑然としている。プレスティッジって、コルトレーンを低く見ていたのか、パーソネルが雑然としている盤が多い。この盤も例に漏れず、である。
しかし、この盤はあまり「パーソネルは関係無し」な盤。この盤は、コルトレーンがフリー〜アバンギャルドに傾いていない頃の演奏で、ハード・バップを基調にした、実に素直な「シーツ・オブ・サウンド」のフレーズを体験することができる。つまり、コルトレーンの初期の「シーツ・オブ・サウンド」を楽しむ、その唯一点に価値がある盤である。
冒頭の「Traneing In」、3曲目の「Bass Blues」、ラストの「Soft Lights and Sweet Music」では、高速の「シーツ・オブ・サウンド」が堪能できる。単に速いだけではない、コードを分解して、いかに高速に、いかに鋭く吹き切るか、を追求する、修道僧のような求道的なコルトレーンを体験できる。
そして、2曲目の「Slow Dance」と4曲目の「You Leave Me Breathless」では、バラードでの「シーツ・オブ・サウンド」が体験できる。コードを分解して、いかに単純に、いかに簡素化して、最短距離でバラードを吹き切るか、を追求する、甘いエモーショナルを排除した、禁欲的なコルトレーンを体験できる。
特にこの盤では「シーツ・オブ・サウンド」へ至る、演奏上のアプローチが体感できる。最初は手探りで入りながら、確信を掴むと一気に吹き切る、ジャズのインプロの「最良のサンプル」のひとつがここにある。全5曲で、トータル38分ちょっと。今のCD前提のアルバムと比べると、ちょっと短い収録時間だが、唯、コルトレーンの初期の「シーツ・オブ・サウンド」を楽しむには問題は無い。
コルトレーンのアルバムの中では、地味な存在で、ジャズ入門本では、滅多に取り上げられることの無いアルバムですが、どうして、コルトレーンの初期の「シーツ・オブ・サウンド」が体感できる、意義のあるアルバムです。マニアだけが知っている「オタク盤」で留めるには勿体ない。もっと、広く聴かれても良いのでは、と僕は思います。
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