ジャンゴの名盤『Djangology』
Django Reinhardt(ジャンゴ・ラインハルト)は「ジャズ・ギターの創始者」とされる。
ジャンゴ・ラインハルトは1910年、ベルギー生まれ。父母ともに旅芸人の音楽家&ダンサー、つまりジプシー。旅から旅へのキャラバン育ち。ジャンゴの音楽性に、この「ジプシーのキャラバン育ち」の影響は明らかで、汎欧州的、欧州の様々な国の音楽の要素が混ざった、ユニークな音楽性がジャンゴのギターの個性。
18歳の頃、キャラバンが火事を出し、ジャンゴは火を消し止める為、火に飛び込び、左手の薬指と小指に大火傷を負う。ところがジャンゴは、残った3本の指だけで健常者のギタリストを凌駕する、超絶技巧のスタイルを生み出す。しかし、1953年5月、スイス公演を行っていたジャンゴは指の障害や頭痛に悩まされるようになり、フランスへ戻った5月16日、友人の経営する店で突然倒れ、その日の夕方に脳出血にて逝去している。
Django Reinhardt『Djangology』(写真左)。1949年1月~2月、ローマでの録音。ちなみにパーソネルは、Django Reinhardt (g), Stéphane Grappelli (vln), Gianni Safred (p), Carlo Pecori (b), Aurelio de Carolis (ds)。ローマのクラブに出演した際に、アマチュアの手で録音されたものらしい。
ジャンゴ・ラインハルトとステファン・グラッペリ率いるフランス・ホット・クラブ五重奏団の代表作。というか、ビ・バップ期の欧州ジャズの名盤中の名盤。録音状態は中の下だが、逆に、ジャンゴのギターが硬質でアグレッシブな音で捉えられているので、ジャンゴの超絶技巧さを感じるには、こんな感じの録音が良いのかもしれない。
しかし、凄まじいほどの、オーバー・ドライブ気味の思いっきりスインぎーなジャンゴのギターとグラッペリのバイオリン。どちらも超絶技巧、疾走感溢れるアドリブは思わず「手に汗握る」迫力がある。それでいて、意外と耳につかないのが面白い。アドリブ・フレーズが流麗で淀みがないからだと思われる。
米国東海岸のビ・バップなど目じゃないほど、圧倒的なスイング感と迫力ある流麗なアドリブで圧倒するジャンゴ。ほんまに3本指での演奏なんかい、と突っ込みたくなる。
そして、その傍らで、ジャンゴのパフォーマンスをしっかと受け止めて、ジャンゴと同様、圧倒的なスイング感と迫力ある流麗なアドリブで、ジャンゴに応戦するグラッペリのバイオリン。この二人のインタープレイは見事という他ない。聴いていて、自分の口があんぐり開き始めるのが判る。
ジャンゴは「ジャズ・ギターの創始者」と言われる。チャーリー・クリスチャンは「バップ・ギターの祖」とされる。ジャズ・ギターは、このジャンゴとクリスチャンの二人の途方も無い、超絶技巧で歌心溢れるギターから始まったと思って良い。特に、ジャンゴは「欧州ジャズ」の雰囲気を色濃く宿していて、「欧州ジャズの祖」と評価しても良いかと思う。
それほどまでにジャンゴのギターは凄い。ジャンゴを知るにはこの盤が一番の近道。ちなみに。ジョン・ルイス作曲、MJQの名演、多くのジャズマンのカヴァー演奏で有名な名曲「ジャンゴ」は、このジャンゴ・ラインハルトにちなんだ名曲。ジャンゴの持つ個性的な「哀愁感」を的確に捉えている。
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