これも好盤『The 45 Session』
中間派トロンボーンの代表格、ベニー・グリーン。リーダー作の多くをブルーノートからリリースしており、その内容はどれもが優れたもの。中間派、つまりはスイングとハードバップの間。スイングの雰囲気を残しつつ、ロング・レンジのアドリブ・ソロを展開する。
と言って、ハードバップの様に切れ味良く、丁々発止としたアグレッシブなソロでは無く、スイングの雰囲気を踏襲した、味のあるミドル・テンポの小粋で聴き心地の良いソロを展開する。ハードバップの様でハードバップでは無い。モダンの様でスイングの雰囲気が漂う。中間派の個性はいかにも「ジャズらしい」もので、一旦、ハマると病みつきになる。
Bennie Green『The 45 Session』(写真左)。1958年11月23日の録音。ちなみにパーソネルは、Bennie Green (tb), Eddie Williams (ts), Sonny Clark (p), Paul Chambers (b), Jerry Segal (ds), Babs Gonzales (vo)。ベニー・グリーンのトロンボーンとエディー・ウィリアムスのテナーがフロント2管のクインテット編成。1曲だけボーカルが入る。
不思議なタイトルが付いているが、この盤の収録曲については、当初、45 rpmシングルとしてリリースされる予定だった、とのことで、その由来から『The 45 Session』というタイトルになっている。
ちなみに、この盤の音源、1975年に日本のキングレコードから『Minor Revelation』のタイトルで、Blue Note世界初登場シリーズ第3期のうちの1枚としてリリースされている。
録音当時のブルーノートは、この中間派のベニー・グリーンのトロンボーンの個性の活かし方がとても上手い。「ホンワカしたトロンボーンならではの音色とスイング・スタイルを踏襲した、伝統的なフレーズと味のあるブルージーなプレイ」が独特の個性を十分に活かせる様な楽曲を選んで、のびのび演奏させている。
2曲目の「On the Street Where You Live(君住む街角)」が良い例で、この曲、ミュージカル「マイ・フェア・レディ」の有名な挿入歌なのだが、この曲の持つ美しいフレーズをゆったりとしたテンポで、味のあるホンワカ、ほのぼのとして暖かく優しいトロンボーンで唄い上げている。これ、なかなかほのぼのとしていていい感じ。トロンボーンならではの音色が、この曲の旋律に良く合っている。感心した。
7曲目の「Minor Revelation」はエキゾチックな趣も含んだマイナー調の雰囲気が心地良いのだが、この曲でもトロンボーンの音色が映える。フレーズの作りは中間派のスイングの雰囲気を踏襲した、味のあるミドル・テンポの小粋で聴き心地の良いもので、これも良い感じでトロンボーンが活躍している。自身作のブルース・ナンバー「Ain't Nothin' But The Blues」も同様。
このセッションでは、バリバリ、ハードバップなジャズマン、ピアノのソニー・クラーク、ベースにポール・チェンバースが入っているが、ベニー・グリーンのトロンボーンの個性を損なうハードバップな演奏は全くしていない。どころか、両者、中間派の演奏に寄り添っている感じで微笑ましい。
当初、45 rpmシングルとしてリリースされる予定だったセッションだが、曲毎に統一感があって、一枚のアルバムにまとめても違和感が無い。さすがである。この盤でも、ベニー・グリーンの中間派トロンボーンがとことん楽しめる。
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