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2024年1月の記事

2024年1月31日 (水曜日)

ECMのギター・トリオの秀作

3日ほど前まで、しばらくの間、冷たい北西の季節風が吹き荒れ、外出するのが憚られた。とにかく冷える。気温は上がらない。そんな日に外出〜散歩なんて、とんでもない。風邪をひいたらどうするんだ、ということで、暖房の効いた室内で、終日、読書とジャズ鑑賞に勤しむことになる。

こんな真冬の冷え冷えした日の昼下がり、暖かい室内で聴くジャズは、意外とECMレコードの「耽美的で静的でクリスタルでリリカル」な即興演奏メインの欧州風ニュージャズのアルバムが良い。真冬の寒い昼下がり、そんなECMの現代の欧州風ニュー・ジャズにじっくりと聴き耳を立てるのが僕の好み。

Wolfgang Muthspiel, Scott Colleyf & Brian Blade『Dance of the Elders』(写真左)。2022年2月、米国オークランドでの録音。ちなみにパーソネルは、Wolfgang Muthspiel (g), Scott Colley (b), Brian Blade (ds)。ヴォルフガング・ムースピールのギター、 スコット・コリーのベース、ブライアン・ブレイドのドラム、ピアノレスのギター・トリオ編成の演奏。

以前より聴いたことの無い、初聴きのアルバムに出会った時、聴く前にする幾つかの見極めポイントがあるんだが、その見極めポイントの一つに「ブライアン・ブレイドがドラムを担当するアルバムに駄盤はない」というのがある。このムースピール、コリー 、ブレイドの3者共同リーダーの新盤についても、ドラムにブレイドの名前を見つけて、これは聴いて大丈夫、と踏んで、初聴きと相成った。

ヴォルフガング・ムースピールは、オーストリア出身のギタリスト。1965年生まれなので、今年で59歳、還暦一歩手前のベテラン・ギタリスト。1989年に初リーダー作をリリースして以来、1〜2年に一枚のペースでリーダー作をコンスタントにリリース、特に、2014年の『Driftwood』から、ECMお抱えのギタリストとして、今回のアルバム含めて、5枚のリーダー作をECMからリリースしている。
 

Wolfgang-muthspiel-scott-colleyf-brian-b

 
ムースピールの名前を真っ先に挙げたのは他でもない、この3者共同リーダーの新盤については、共同リーダー作でありながらも、ムーズピールのギターが全面に押し出されていて、このムースピールのギターを心ゆくまで堪能できるアルバムとして仕上がっている。

少しくぐもった、ストレートな伸びの素性の良いギター。明らかに欧州風でECM好みの「耽美的で静的でクリスタルでリリカル」なギターの音世界。冒頭の1曲目「Invocation」から、明らかにECMレコードの音の傾向をしっかり踏まえていて、録音も含め、ECMレコードの音世界を堪能できる。

フォーキーで耽美的なムースピールのギターが心地良い響き。今回の新盤ではクラシックな響きも見え隠れする。そんなムースピールの魅惑的なギターを、コリーのソリッドで重量感溢れるベースと、ブレイドの変幻自在、硬軟自在、緩急自在でポリリズミックなドラムがしっかりサポートしている。

そして、このムーズピールのギター、コリーのベース、ブレイドのドラムの3者一体となった、濃密なインタープレイな展開も聴き応え満点。よくよく聴けば、コリーのベースもかなりゴリゴリアコベの低音を轟かせ、ブレイドのドラムもかなりダイナミックでスケールの大きいドラミングを披露している。それでいて、ダイナミックな展開の傍で、繊細でスリリングな表現も抜群。

なるほど「3者共同リーダー」なのも納得、3者均等の素晴らしいパフォーマンスである。ECMの音世界、欧州的な響きが芳しい。即興演奏が基本のギター・トリオのパフォーマンス。そんなECMの現代の欧州風ニュー・ジャズは聴き応え十分。
 
 

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2024年1月30日 (火曜日)

アレッシの『It’s Always Now』

ラルフ・アレッシは、1963年3月5日、米国SFO生まれ。今年で61歳の大ベテラン・トランペッターである。が、これまでかなりマイナーな存在だった。というか、僕はこのアルバムで出会うまで、アレッシの名前に馴染みが無かった。

それもそのはずで、アレッシは基本的に学者であり研究者。カリフォルニア芸術大学で、ジャズ・トランペット演奏で学士号、ジャズ・ベース演奏で修士号を取得している。そして、教育者として、2001年にニューヨークのブルックリンに即興音楽学校を設立している。

初リーダー作は1999年。マイナー・レーベルからのリリース。アレッシのディスコグラフィーを見ていると、初リーダー作から7枚ほどマイナー・レーベルからリーダー作がリリースされていたが、突如、9枚目のリーダー作『Baida』(2013年)が、老舗のメジャー・レーベル、ECMレコードからリリース。

以来、今回の『It's Always Now』まで、4枚のリーダー作がECMからリリースされている。そして、今回、やっと、アレッシのトランペットを聴くことが出来た。まあ、そんな感じのジャズ・フィールドでの活動なので、アレッシの名前に馴染みがなくても仕方がない。

Ralph Alessi Quartet『It's Always Now』(写真左)。2021年6月の録音。ECMレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Ralph Alessi (tp), Florian Weber (p), Bänz Oester (b), Gerry Hemingway (ds)。ECMレコードでの4枚目のリーダー作になる。
 

Ralph-alessi-quartetits-always-now

 
このアルバムを聴き始めて、まず、アレッシのトランペットについては、とても素性が良く、欧州ジャズ的な端正で癖のない、ブリリアントで綺麗に鳴るトランペット。テクニックは上々、今回はアレッシのトランペット1管のワンホーン・カルテットなんだが、アレッシのトランペット一本でフロントをやり切っている。相当にテクニック的に優れていることが良く判る。

始めの頃は、ブリリアントでストレートな良い音のするトランペットで、静的な「ネオ・モーダル」な即興演奏メインの展開の曲を吹き進めていく。音はさすがに「欧州調」なんだが、ECMらしからぬ「ネオ・ハードバップ」な音世界に、ECMも柔軟になったなあ、と思いながら聴き進めると、徐々に静的な音世界が怪しくなってくる。

曲が進むにつれ、徐々に徐々にフリーに傾いていく。しかも演奏の雰囲気は一気にアグレッシヴ。静的な音世界から、音数の多い自由即興な音世界に早変わり。これには、ちょっとビックリ。それでも、フリーと言っても、内容的には、欧州的で整った、節度をわきまえた即興演奏で現代音楽風。

ECMの「サウンド・カラー」からは逸脱していない、ほどよく抑制が効いた素性の良いフリーな展開なので、耳につくことは無い。ギリギリ、限りなく自由度の高いモード・ジャズと解釈することもできるアーティステックなフリー展開。

バックでリズム隊を担う、ピアニストのフロリアン・ウェーバー、ベースのベンズ・オースター、ドラマーのゲリー・ヘミングウェイというトリオも、アレッシのトランペットをしっかりサポートしていて立派。

ラルフ・アレッシのトランペットの優れた個性を確認することが出来る、なかなかの内容のリーダー作。内容的には、米国ジャズの様なファンクネスは皆無で、コマーシャルな要素も皆無だが、欧州の「現代の即興演奏をメインとしたニュー・ジャズ」として、聴き味良好なワンホーン・カルテットの佳作。マンフレート・アイヒャーのプロデュースの賜物でしょう。
 
 

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2024年1月29日 (月曜日)

チャーラップとロスネスのデュオ

ちょっと「デュオ」づいている。ジャズのユニットの最小単位の「デュオ」。双方のテクニックと音楽性のバランスがバッチリ取れると、一人では出せない、スケールの広い、ダイナミズム溢れる、奥行きのある即興演奏を実現することが出来る演奏編成。二人というシンプルな編成なので、音が重なるのは最小限。個々の音の一つ一つをしっかり確認できるのも「デュオ」の良いところ。

Bill Charlap & Renee Rosness『Double Portrait』(写真)。2009年12月27-29日、NYのKaufmann Concert Hall でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Bill Charlap, Renee Rosness (p)。現代のバップ・ピアニストの第一人者の一人、ビル・チャーラップと女流ジャズ・ピアニスト最高峰の1人、リニー・ロスネスとのピアノの連弾デュオ。

ピアノの連弾デュオにはコツがあると思っている。同じ楽器同士なので、相手の音をしっかり聴いておれば、次に出てくるフレーズは予測が付き易い。フロントのフレーズ弾きとバックのリズム&ビート弾きの役割分担と分担交代のタイミングさえ、しっかりと意識合わせしておれば、音がぶつかることは無い。ただ、必要なのは、ピアノの個性と音楽性が似通っていないと連弾は成立しない。つまり、バップなピアノとフリーなピアノとは連弾が成立しない、ということ。

さて、このピアノ連弾のデュオ、チャーラップとロスネス、この二人は実生活では「夫婦」。夫婦だからということは無いが、相手のことを良く判っている同士なので、次に出てくるフレーズは予測が付き易いし、お互いの役割分担と分担交代のタイミングの意識合わせがし易いことこの上ない。
 

Bill-charlap-renee-rosnessdouble-portrai  

 
そして、双方の「ピアノの個性と音楽性」なのだが、チャーラップは「バップなピアノ」、ロスネスは「モーダルなピアノ」。連弾するには、ちょっと合わないところが出てくるよなあ、と思うのだが、このデュオ盤を聴けば良く判るのだが、双方、しっかりと歩み寄った「バップでモーダルなピアノ」で着地させている。

つまり、アプローチはモードが基本なのだが、フレーズの弾き回しは音の拡がりをメインとしたモード弾きではなく、バップ・ピアノの様な音符の多いフレーズを活用したモード弾きで、二人は意思統一している様なのだ。聴けば、チャーラップでもなく、ロスネスでも無い。ロスネスの様に弾くチャーラップと、チャーラップの様に弾くロスネス。そんな二人が連弾デュオにチャレンジする。

出てくる音は、キース・ジャレットを想起させる、耽美的でリリカルな音だが、出て来るフレーズはバップでモーダル。キースの様にマイナー調をところどころぶっ込んでくるのでは無く、どこまでも明るく健康的な「バップでモーダルなピアノ」。どこか端正なクラシックな響きもするが、伴奏に回ったピアノのリズム&ビートはジャズ。そんなピアノを腕4本で、スケールの広い、ダイナミズム溢れる、奥行きのある即興演奏を弾きまくる。

しかも、感心するのはライヴ音源であるということ。これは二人の演奏テクニックと演奏勘がずば抜けて優れている、という証。一発勝負、やり直しの効かないライヴで、これだ淀みなく流麗に連弾デュオの即興演奏を弾きまくる、とは。疾走感も適度、スイング感も適度、チャーラップとロスネスの「バップでモーダルなピアノ」での連弾デュオは大成功である。
 
 

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2024年1月28日 (日曜日)

ジャンゴの名盤『Djangology』

Django Reinhardt(ジャンゴ・ラインハルト)は「ジャズ・ギターの創始者」とされる。

ジャンゴ・ラインハルトは1910年、ベルギー生まれ。父母ともに旅芸人の音楽家&ダンサー、つまりジプシー。旅から旅へのキャラバン育ち。ジャンゴの音楽性に、この「ジプシーのキャラバン育ち」の影響は明らかで、汎欧州的、欧州の様々な国の音楽の要素が混ざった、ユニークな音楽性がジャンゴのギターの個性。

18歳の頃、キャラバンが火事を出し、ジャンゴは火を消し止める為、火に飛び込び、左手の薬指と小指に大火傷を負う。ところがジャンゴは、残った3本の指だけで健常者のギタリストを凌駕する、超絶技巧のスタイルを生み出す。しかし、1953年5月、スイス公演を行っていたジャンゴは指の障害や頭痛に悩まされるようになり、フランスへ戻った5月16日、友人の経営する店で突然倒れ、その日の夕方に脳出血にて逝去している。

Django Reinhardt『Djangology』(写真左)。1949年1月~2月、ローマでの録音。ちなみにパーソネルは、Django Reinhardt (g), Stéphane Grappelli (vln), Gianni Safred (p), Carlo Pecori (b), Aurelio de Carolis (ds)。ローマのクラブに出演した際に、アマチュアの手で録音されたものらしい。

ジャンゴ・ラインハルトとステファン・グラッペリ率いるフランス・ホット・クラブ五重奏団の代表作。というか、ビ・バップ期の欧州ジャズの名盤中の名盤。録音状態は中の下だが、逆に、ジャンゴのギターが硬質でアグレッシブな音で捉えられているので、ジャンゴの超絶技巧さを感じるには、こんな感じの録音が良いのかもしれない。
 
Django-reinhardtdjangology
 
しかし、凄まじいほどの、オーバー・ドライブ気味の思いっきりスインぎーなジャンゴのギターとグラッペリのバイオリン。どちらも超絶技巧、疾走感溢れるアドリブは思わず「手に汗握る」迫力がある。それでいて、意外と耳につかないのが面白い。アドリブ・フレーズが流麗で淀みがないからだと思われる。

米国東海岸のビ・バップなど目じゃないほど、圧倒的なスイング感と迫力ある流麗なアドリブで圧倒するジャンゴ。ほんまに3本指での演奏なんかい、と突っ込みたくなる。

そして、その傍らで、ジャンゴのパフォーマンスをしっかと受け止めて、ジャンゴと同様、圧倒的なスイング感と迫力ある流麗なアドリブで、ジャンゴに応戦するグラッペリのバイオリン。この二人のインタープレイは見事という他ない。聴いていて、自分の口があんぐり開き始めるのが判る。

ジャンゴは「ジャズ・ギターの創始者」と言われる。チャーリー・クリスチャンは「バップ・ギターの祖」とされる。ジャズ・ギターは、このジャンゴとクリスチャンの二人の途方も無い、超絶技巧で歌心溢れるギターから始まったと思って良い。特に、ジャンゴは「欧州ジャズ」の雰囲気を色濃く宿していて、「欧州ジャズの祖」と評価しても良いかと思う。

それほどまでにジャンゴのギターは凄い。ジャンゴを知るにはこの盤が一番の近道。ちなみに。ジョン・ルイス作曲、MJQの名演、多くのジャズマンのカヴァー演奏で有名な名曲「ジャンゴ」は、このジャンゴ・ラインハルトにちなんだ名曲。ジャンゴの持つ個性的な「哀愁感」を的確に捉えている。
 
 

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2024年1月27日 (土曜日)

ジェリとカートの孤高のデュオ盤

形体が全く異なるのだが、ピアノとギターは良く似た性格の楽器である。ピアノとギターは音のスケールも似通っている。

ギターについては、単音のみならず和音も出る。アルペジオも出来る。弦を掻きむしることもできるし、和音をストロークで連続することで、リズム楽器としての機能を果たすことも出来る。

ピアノについては、和音と単音を右手と左手に分けて別々に同時に出せるし、リズム部と旋律部を同時に奏でることが出来る。つまりは、ピアノ一台で楽器表現の全てを出すことが出来る訳で、ピアノは「一人オーケストラ」という異名を持つくらいである。

良く似た楽器同士のデュオ演奏は難度が高い。演奏者同士が我を出すと音がぶつかったり、伴奏と旋律との役割分担がスムースに行かなくなる。音のコンフリクト(ぶつかり)を瞬時に感じて、それを回避するには、演奏者に相当のテクニックが必要になるし、何より、相手の音をしっかり聴き分ける高い能力が必要になる。

ピアノとギターのデュオは難度が高い。双方の演奏家としての力量のバランスが取れていないと成立しないし、お互いに演奏家としての人間性の高さが要求される。とにかく、俺が私がと「我を出しては」ピアノとギターのデュオは成立しない。

Geri Allen, Kurt Rosenwinkel『A Lovesome Thing』(写真左)。2012年9月5日、フィルハーモニー・ド・パリでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Geri Allen (p), Kurt Rosenwinkel (g)。2017年に惜しくも逝去した、女流ジャズ・ピアニスト最高峰の1人、ジェリ・アレンと、現代ジャズ・ギターの雄の一人、カート・ローゼンウィンケルとのデュオでのライヴ音源。
 

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ジェリ・アレンのピアノは「男勝り」の力強いタッチのモーダルなピアノ、というイメージがあるが、それは彼女のピアノの「一面」。このデュオでは柔軟で繊細なタッチで、相棒のギターに寄り添うが如く、語らうが如く、囁くが如く、リリカルで耽美的なピアノを弾き進めている。

ローゼンウィンケルのギターは、オーソドックスなトーンでありながら「新しい」響きとフレーズが芳しい、現代ジャズ・ギターの正統派で繊細な弾き回しで、ジェリのリリカルで耽美的なピアノに相対する。ギターの暖かい丸いエッジと、ピアノの切れ味の良い硬質のタッチとの対比が美しい。

1〜2曲目のスタンダード曲でも、双方、攻めに攻めているが、お互い、相手の音をしっかり聴き、持ち味はしっかり出しているのが良く判る。しかも、お互いの持ち味をしっかり確認して、二人共通の「音の個性」を紡ぎ出している様に感じる。双方の音の個性の底が「似通っている」ことが良く判る。

そして、双方の技術の高さは、5曲目の「Ruby My Dear」で良く判る。このセロニアス・モンクの難曲をジェリとカートは二人で見出した、二人共通の「音の個性」で、二人なりのモンク曲の解釈で、ガンガンに攻めまくる。この難曲をリリカルに耽美的に、難なく弾き進めるデュオ。素晴らしいパフォーマンスである。

素晴らしいピアノとギターのデュオ演奏。これがライヴで演奏された音源だとは。あのピアノとギターのデュオ演奏の名作、ビル・エヴァンス&ジム・ホールの『Undercurrent』に匹敵する、すばらしいデュオ盤の登場である。

ジェリは生前、このカートとのデュオ演奏によるスタジオ・アルバムの制作を熱望していたそうだが、このライヴ音源を聴けば、それが実感できる。しかし、こんなに素晴らしいデュオ演奏のライヴ音源が約10年もの間、お蔵入りだったとはなあ。今回、よくリリースされたなあ。その幸運を素直に喜びたい。
 
 

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2024年1月26日 (金曜日)

新生「バッド・プラス」の新作

1960年代は、1950年代のハードバップをベースとした「ジャズの多様化」の時代だった。エンターテインメント志向としては、ファンキー・ジャズ、ソウル・ジャズ、イージーリスニング・ジャズ。アーティステック志向としては、モード・ジャズ、フリー・ジャズ。聴く側の嗜好と演奏する側の志向とで、様々なバリエーションのジャズが展開された。

この「ジャズの多様化」は、1960年代以降、意外と綿々と続いている。1970年代のクロスオーバー・ジャズ、フュージョン・ジャズ、そして、1980年代のスムース・ジャズも、この「多様化」の一つだろう。

21世紀に入っては、以前のジャズのトレンドやスタイルのリニューアル、例えば、ネオ・ハードバップとか、ネオ・モード。そして、8ビートがメインのクロスオーバーなインストに特化した、ネオ・フュージョンなどが「多様化」の成果だろう。

『The Bad Plus(2022)』(写真左)。2022年の作品。2021年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Reid Anderson (b), Dave King (ds), Ben Monder (g), Chris Speed (ts, cl)。音楽性については、グランジ・ロック、テクノ、フリー・ジャズ等の要素を取り入れた、ジャジーなインスト志向のプレイが身上の「バッド・プラス」の新作になる。

「バッド・プラス」は、2001年、イーサン・アイヴァーソン (p)、リード・アンダーソン (b)、デヴィッド・キング (ds) のトリオでデビュー。2018年、ピアノがオリン・エヴァンスに変わり、2021年に脱退。ピアノが空席となる。
 

The-bad-plus2022  

 
ここで意外にも、オリジナル・メンバーのアンダーソンとキングは、ピアニストの後継を補充するのでは無く、新しい楽器、ギターとサックスを引き入れる。
 
「バッド・プラス」は、ピアノ・トリオから、ギターとサックスがフロントのピアノレス・カルテットとして生まれ変わった。現代のインスト志向のピアノ・トリオから、インスト志向のエレ・カルテットに変身した。

当然、音楽性は変わる。超絶技巧インスト系プログレッシヴ・ロックの雰囲気漂う、クロスオーバー志向のジャズ・ロック、もしくは、現代の「ネオ・フュージョン」と評しても良い、成熟したフュージョン・ジャズ。

そんな音世界に大変身。但し、テクニック抜群、独特の疾走感溢れる、メロディアスでドラマチックな展開の「ジャジーなインスト志向のプレイ」は変わらない。

スムースでメロディアス、エネルギッシュで切れ味良い演奏は聴き応え十分。インスト志向のジャズ・ロック、もしくは、インスト系クロスオーバー。新生「バッド・プラス」、ピアノからギター+サックスへの変更は大成功。

オリジナル・メンバーのアンダーソン曰く「「デビュー・アルバムのようなエネルギーを持ったレコードを出すことができるのなら、僕にとっては、それは意味があることなんだ。これこそが自分自身を改革することなんだ」。納得である。
 
 

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2024年1月25日 (木曜日)

John Patitucci Trio の秀作です

ジャズ盤の鑑賞については、昔のハードバップやモードを聴くこともあるが、最近の、現代のジャズの新盤も努めて聴く様にしている。1970年代においては「ジャズは死んだ」として、現代のジャズはジャズで無い、とし、コルトレーン逝去前のジャズをジャズとして、1950〜60年代のジャズしか聴かないジャズ者の方々もいたみたいだが、それはかなり極端な見解だろう。

21世紀に入った現在から以前のジャズを聴き直すと、コルトレーン逝去後もジャズは「進化」、やっと1980年代に入って、さすがにジャズの世界では「イノベート」な何かは生まれ出なくなった。

しかし、それまでのジャズのトレンドやスタイルを捉え直して、現代のジャズは「深化」している。以前のトレンドやスタイルをグイグイ掘り下げて、完成度を高め洗練し、新しい解釈を添加する。そんな「深化」は未だに途絶えることは無い。

『John Patitucci Trio: Live in Italy』(写真左)。2022年の夏、イタリアツアーでのライヴ録音。なみにパーソネルは、John Patitucci (b), Chris Potter (sax), Brian Blade (ds)。現代のジャズ・ベースのヴァーチュオーゾの一人、ジョン・パティトゥッチのリーダー作。パーソネルを見れば、フロント一管・サックス、ベース、ドラムのピアノレス・トリオ。

もともと、ジャズ・ベーシストのリーダー作はその数が少ない。もともとリズム・セクションで、バンドの演奏の「ベースライン」を守る楽器。フロント楽器の様な旋律楽器では無いので、バンド演奏の前面に押し出たリーダーとしては振る舞い難い。そんな、数が少ないベーシストのリーダー作であるが、そのリーダー作の内容的傾向は幾つかに分かれる。

リーダーとして自分の音世界をプロデューサーの様に創造していくケース。もう一つは、ベーシストとしてのテクニックの高さを全面的に披露するケース。そして、リーダーとして、グループ・サウンズを統率する役割に徹するケース。
 

John-patitucci-trio-live-in-italy

 
今回のパティトゥッチのリーダー作は、リーダーとして自分の音世界をプロデューサーの様に創造していくケースと、ベーシストとしてのテクニックの高さを全面的に披露するケースのハイブリッド。

ピアノレス・トリオの特性を最大限活かした、ネオ・ハードバップ&ネオ・モード。決して、1950年代から60年代のハードバップやモード・ジャズの焼き直しでは無い。

このピアノレス・トリオの演奏は、基本はモードだが、出てくるフレーズはどれもが新鮮。ベースもドラムもサックスも、躍動感が溢れ、変幻自在、活き活きしたパフォーマンスが全編に渡って繰り広げられている。

パティトゥッチのベースが凄く良い。ジャズの歴代のレジェンド・ベースマンのパフォーマンスに匹敵する素晴らしいウォーキング・ベース、そして、ベースソロ。タイトでソリッドでメロディアスなアコベ。バンド全体の一体感を醸し出す説得力あるアコベ。

ブライアン・ブレイドのドラムがこれまた凄く良い。ブレイドの変幻自在、緩急自在、硬軟自在のドラミングが映えに映える。このピアノレス・トリオの躍動感を一手に引き受けている様な、ポジティヴでアグレッシブで「小粋な」ドラミング。

そして、そんなパティトゥッチのベースとブレイドのドラムをバックに、クリス・ポッターのサックスが飛翔する。これだけレベルの高い、味のあるリズム隊をバックに吹くのだ。イマージネーション豊かに、バリエーション豊かに、自由自在に、在らん限りの様々なフレーズを吹き上げる。

ライヴ音源だけに演奏の躍動感もビンビンに伝わってくる。録音当時、63歳の大ベテランの域に達したパティトゥッチの成熟した、新鮮な響きに満ち溢れた好盤。現代のモダン・ジャズ、現代のネオ・モーダルなジャズが単純に楽しめる秀作。
 
 

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2024年1月24日 (水曜日)

デュオ盤『Crystal Silence』再び

『Return To Forever』と『Light As A Feather』の名盤2枚で、リリカルでメロディアスなユートピア志向のサウンドをメインとした「クロスオーバーなエレ・ジャズ」を表現したチック・コリア。

しかし、音楽性のバリエーションが豊かなチックは、その傍らで、メインストリーム系の純ジャズにも、しっかりと手を染めている。ただし、チックは旧来のハードバップをなぞることは無い。必ず、新しい「何か」にチャレンジする。この時点で、チックが手がけたのは「デュオ」。あの名デュオ、コリア&バートンの誕生である。

この名デュオの結成の経緯については以下の通り。1972年、ミュンヘンで開催されたジャズ・フェスで、コリアとバートンはデュオによるジャム・セッションを披露する。それを聴いていたECMの総帥プロデューサーのマンフレート・アイヒャーが、コリアとバートンに「デュオ盤」の制作を持ちかけた。つまりは、この名デュオは、アイヒャーの提案によって結成されたらしい。

Chick Corea & Gary Burton 『Crystal Silence』(写真左)。1972年11月6日、オスロ、タレント・スタジオで録音。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (p), Gary Burton (vib)。ECMレコードからのリリース。プロデューサーは当然、マンフレート・アイヒャー。以降、チックが亡くなるまで、不定期にアルバムをリリースしライヴを敢行した「名デュオ」のファースト盤である。

透明な響きとロマンティシズム。チックとバートンの「共通の音の質と志向」が、この盤で出会った。デュオというフォーマットは、簡単そうに見えて難しい。まず「音の質と志向」が同質のものでないと苦しい。また、お互いの音が重なったり被ったりしてはいけないし、フロントに出るタイミングとバッキングに回るタイミングが一致していなければ、バラバラな演奏になる。
 

Crystal_silence_1  

 
片方が目立ちすぎてもいけないし、引っ込み思案でもいけない。その辺の「あうん」の呼吸と、相手の音を聴きながらの、機微を心得た、臨機応変なインプロが重要になる。それって、双方に高度なテクニックと音楽性が備わっていないと出来ない仕業。このチックとバートンのデュオは、その「デュオ」に関する必要な事柄が、奇跡的に全て双方に揃った、稀有なデュオ・ユニットである。

チックとバートンは、いとも簡単に、この難度の高い「デュオ」のフォーマットを征服する。この盤を聴けば、恐らくたいていの人は「デュオって意外と簡単やん」と感じるに違いない。それほど、チックとバートンは、自然にシンプルに、ポジティヴに柔軟に、ピアノとヴァイヴのデュオ演奏を紡ぎ上げていく。

さて、チックとバートンのデュオ盤と言えば、この1972年の『Crystal Silence』にとどめを刺す、と言って良い位の素晴らしい出来、奇跡的に充実した内容となっていて、収録されたどの曲も素晴らしい出来。

とりわけ、冒頭の「Senor Mouse」、5曲目の表題曲「Crystal Silence」、そしてラストの「 What Game Shall We Play Today」の出来が際立っている。適度な緊張感に包まれた、とてもスリリングでリリカルな、躍動感溢れるデュオ演奏。即興の妙が芳しく、ロマン溢れるフレーズがとても美しい。

聴けば判る。素晴らしい不滅のデュオ盤。両人フロントに立ってのユニゾン&ハーモニーは絶妙。フロントに立ったチックのソロもバートンのソロも素晴らしい。バックに回ったチックもバートンも、絶妙に機微を心得た、ハイ・テクニックで切れ味の良いバッキングを聴かせてくれる。

ちなみに、このデュオという演奏フォーマットについては、特にバートンは当初、「リズム・セクション無しで、ヴァイブとピアノだけの演奏を1時間も聴きたがるオーディエンスなんているのだろうか」と猜疑心を抱いていたという。しかし、そのパフォーマンスは歴史に残るほどの素晴らしさで「大当たり」。ECMという欧州ジャズのレーベルだからこそ出来た盤であり、アイヒャーの慧眼の成せる技であった。
 
 

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2024年1月23日 (火曜日)

名盤『Light As A Feather』再聴

大傑作『Return To Forever』の録音が1972年2月、リリースが1972年9月。次作の録音が1972年10月。『Return To Forever』のアルバムとしての出来と評判を確認して、満を持しての次作の録音である。この次作、チックの、そして、バンド「リターン・トゥ・フォーエヴァー(RTF)」の揺るぎない自信が満ち溢れた傑作に仕上がった。

Chick Corea & Return To Forever『Light As A Feather』(写真)。1972年10月8, 15日の録音。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (el-p, Fender Rhodes), Stanley Clarke (b), Flora Purim (vo, perc), Joe Farrell (ts, ss, fl), Airto Moreira (ds, perc)。チック・コリア率いる「リターン・トゥ・フォーエヴァー(RTF)」の2枚目のアルバム。

タイトルの「Light As A Feather」は直訳すると「羽のように軽い」。前作『Return To Forever』で提示された、リリカルでメロディアスなユートピア志向のサウンドをメインとした「クロスオーバーなエレ・ジャズ」をベースに、ポップでメロディアスな面を全面に押し出した音世界。つまり、この盤に詰まっているのは「羽のように軽い」クロスオーバー・サウンドである。

評論家の方々やジャズ・ファンの方で『Light as a Feather』は、前作『Return to Forever』と比べてポップになって、神秘性、緊張感が薄れて「イマイチ」なんて言われることがあるが、的はずれも甚だしい。そもそも、アルバム・コンセプトが違う。チックがこのRTFで表現するサウンドはバリエーション豊かで圧倒的に幅広。安易に前作のサウンドを踏襲することはしないだろう。

当盤のコンセプトは「羽のように軽い」クロスオーバー・ジャズ志向である。そう解釈すればこの盤の評価は座りが良くなる。そして、この「羽のように軽い」クロスオーバー・ジャズ志向を濃厚に表現しているのが、チックの弾く「フェンダー・ローズ」である。チックの弾くフェンダー・ローズの音色・フレーズが、この盤の音世界の志向を決定付けている。
 

Chick-corea-return-to-foreverlight-as-a-

 
そもそも、以前より、チックのフェンダー・ローズは凄い。ローズにはローズなりの弾き方というものがあって、ローズをアコピのように弾いても何の意味も無い。コリアは、ローズならではの、ローズの特性を活かした弾き方が出来る第一人者である。

かのマイルスが電気化していった時、ローズをアコピの様にしか弾けない(弾かない?)ハービーに代わって、マイルス・グループのレギュラーとなったのがチック。あのマイルスが、チックのローズの弾き方にはたいそう満足したというから凄い。確かに、ローズって、その音の表現という面で、こんなに可能性を秘めた楽器だったんだ、とチックの演奏を聴いて、強く思ったのを覚えている。

そんなローズの幅のある表現の中で、この盤では、チックはローズの「ポップでメロディアスな表現」を引き出し、「羽のように軽い」クロスオーバー・ジャズ志向のフレーズを弾きまくる。冒頭「You're Everything」から「Light as a Feather「Captain Marvel」「500 Miles High」「Children's Song」と、チックのポップでメロディアスなローズの響き、フレーズが満載である。

そして、極めつけは、何と言っても、ラストの名曲・名演「Spain」。「アランフェス協奏曲」をイントロに用いた、スパニッシュな雰囲気満載の人気曲。フローラ・プリムの爽やかで神秘的な歌声と、チックの硬軟自在、緩急自在、変幻自在の「ポップでメロディアスな」ローズの弾きっぷりが堪らない。

この『Light As A Feather』は「演奏の親しみやすさ」と「バンド全体の演奏能力の高さ」がバランス良くミックスされた、ポップでメロディアスなクロスオーバー・ジャズ。前作の『Return to Forever』は「硬」、当作の『Light As A Feather』は「軟」。チックは自らの新しい音志向を2枚のアルバムで「硬軟」の双方向から表現した、と言える。見事である。
 
 

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2024年1月22日 (月曜日)

名盤『Return to Forever』再聴

ECMでの録音、マンフレート・アイヒャーとの出会い、欧州ジャズとの触れ合い。このあたりが良かったのだろうか。チック・コリアは、自由度の高い硬派なモード・ジャズ〜フリー・ジャズへの傾倒から、リリカルでメロディアスなユートピア志向のサウンドをメインとした「クロスオーバーなエレ・ジャズ」に転身した。

Chick Corea『Return to Forever』(写真左)。1972年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (el-p), Joe Farrell (fl, ss), Stan Clarke (b), Airto Moreira (ds, perc), Flora Purim (vo, perc)。ジャズのアルバムの中で一番好きな盤を一枚だけ挙げよ、と言われたら、僕はこの盤の名を挙げる。僕にとっての「永遠の名盤」の中の一枚である。

フュージョン・ブームの先駆けとなった記念碑的名盤、と良く言われるが、それは違うだろう。フリー・ジャズによる、従来の「音楽の本質」の放棄の後、必然として現れた、新しいモダン・ジャズの観念に基づいた「音楽の本質」の追求の一つの成果が、この『Return to Forever』だろう。

それほど、この盤には、音楽の美しさ、音楽を演奏することの喜び、そして、音楽を愛でることの楽しみ、が溢れている。この盤の演奏内容は文句の付けようがない。フュージョン・ブームの先駆けといわれるので、ソフト&メロウなリラクシング系の癒し音楽を思い浮かべる方が多いと思うが、それはとんでもない誤解である。

この盤は全編に渡って印象的なフレーズ満載であるが、演奏の根幹は「骨太なメインストリーム・ジャズ」。ハード・バップな要素から、モード・ジャズからフリー・ジャズな要素まで、1972年の録音時点での「純ジャズ」の要素を包含し、クロスオーバーな8ビートに乗せて、演奏者全員が印象的なフレーズとリフをかましまくる。それはそれは素晴らしい技の応酬であり、目眩く印象的なフレーズとリフの嵐である。
 

Return_to_forever  

 
全編に渡って、チックのフェンダー・ローズが美しい。これだけ、ハイ・テクニックに裏打ちされた、様々な美しい響きを伴ったフェンダー・ローズは「なかなか聴けない」。即興演奏ベースのフェンダー・ローズを演奏させたら、チックの右に出る者はいないだろう。

そのローズの音に絡む、スタンリー・クラークのウッド・ベース。重低音溢れ、ブンブンと唸りを上げる超弩級のベース音。しかし、チックのフェンダー・ローズに最適に絡んでいるので、全く耳障りでは無い。そのバックで、様々なパターン、音色のリズムを供給するアイアート・モレイラのドラム&パーカッション。スタン・チック・モレイラ、この3者のリズム・セクションの音は凄まじく美しい。

唯一無二、空前絶後な「フェンダー・ローズ」+「ビート&リズム」の上で、吹き上げられるジョー・ファレルのソプラノ・サックスとフルート、そして、 フローラ・ピュリムのボーカルは、舞い上がる様な飛翔感を持って、ユートピア的なサウンドの如く、ポジティブに明るく響く。

LP時代A面の1〜2曲目である「Return To Forever」〜「Crystal Silence」を聴いて、やっぱりジャズの演奏フォーマットって凄いな〜、と単純に感心する。LP時代のA面ラスト「What Game Shall We Play Today」を聴きながら、音楽ってジャンルじゃないよな〜、って強く思う。

LP時代のB面を占める、美しく躍動感溢れる名演・名曲「Sometime Ago 〜 La Fiesta」に至福の時を感じながら、ジャズを聴いていて良かったな〜、と再認識する。特に「La Fiesta」は素晴らしい。ジャズ曲の傑作の一曲である。

純ジャズの要素はもとより、フリー・ジャズ、フュージョン・ジャズ、ワールド・ミュージック、プログレッシブ・ロック、クラシック、などなど、チックがクールと思う音楽の要素がギッシリと詰まっている。それも、しっかりと整理され、しっかりとアレンジされているところがチックらしい。

基本的には、チックの生み出す音楽は「ぶれ」が無い。この『Return to Forever』には、チックの考えるジャズの全てが詰まっている。以降、チックはこの「チックの考えるジャズ」の中で展開されていく。圧倒的に幅広で奥行きのあるチックの音世界。そして、その成果の数々はジャズの音楽遺産の中で最高の部類にある。
 
 

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2024年1月21日 (日曜日)

ハービーのソロ『The Piano』

ハービー・ハンコックは「2つの顔」を持つ。一つは、メインストリーム系、アコピをモーダルに弾きまくるバリバリ硬派な「純ジャズ志向」、もう一つは、判り易くてポップな、エレピやシンセを駆使した「ジャズ・ファンク志向」。どちらの顔も超一流。どちらの志向も、ジャズ史に残る立派な成果をしっかりと残している。

Herbie Hancock『The Piano』(写真左)。1978年10月25–26日の録音。ちなみにパーソネルは、Herbie Hancock (p)。ハービー・ハンコックのキャリアの中で唯一のアコースティック・ピアノ一本のソロ・パフォーマンス。

1978年、ハービー・ハンコックが来日時、ジャズ・ファンク志向の『Directstep』録音の後、一週間後、同じく新設のSME信濃町スタジオに入り、『Directstep』と同様に、ダイレクト・カッティング方式で録音したアルバム。翌年1月に日本限定盤として、『Directstep』と併せてリリースされている。

アナログディスク、いわゆるLPでのA面は大スタンダード大会。「My Funny Valentine」「On Green Dolphin Street」「Some Day My Prince Will Come」。どこから聴いても「大スタンダード曲」。

これがかなりスッキリした出来で肩透かしを喰らう。アレンジも平易、弾きっぷりもシンプル。キースやチックと比べると、明らかに物足りなさを感じる。ただし、リリカルさと耽美的なフレーズはハービーらしからぬ、ハービーとして新しい響き。これは「聴きもの」。
 

Herbie-hancockthe-piano

 
アナログディスク、いわゆるLPでのB面は、ハービー・ハンコックの自作曲集。こちらの方は、ハービー自らの作曲らしく、ハービーのモーダルな弾きっぷりが映えるアレンジと展開が備わっていて聴き応えがある。

B面2曲目の「Sonrisa」は、そんな中でも名曲名演。ハービーはスタンダード曲よりもファンクネスの濃い、ジャズ・ファンク志向の自作曲の方が、ソロ・ピアノの素材に合っているようだ。

ただ、このハービーのキャリアの中で唯一のアコピ一本のソロ・アルバムを聴いていると、ハービーって、ピアノ・ソロって、あんまり好きじゃなかったのではないか、と思う。ダイレクト・カッティング方式という「一発勝負」の録音環境と相まって、かなり安全運転的な弾き回しになっていて、ちょっと隔靴掻痒というか、何となく物足りなさを感じてしまう。

僕はこの盤を入手して以来、CDリイシューを入手してからも、LP時代のB面ばかりを聴いている。このB面の4曲には、辛うじて「ハービーらしさ」が詰まっている。ハービーらしさとは、理知的なモードと軽やかなファンクネス。このハービー唯一のソロ・ピアノ盤は、CDでの4曲目から7曲目が聴きもの。

そうそう、CDのボートラの8曲目以降はオミット。ハービーの『The Piano』は、LP時代の7曲だけで十分である。
 
 

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2024年1月20日 (土曜日)

『Eastern Rebellion 2』を聴け

Cedar Walton(シダー・ウォルトン)のリーダー作を追いかけている。存在はジャズを聴き始めた頃から知っていた。が、ビッグネームから追いかけていって、ウォルトンに辿り着くのに30年かかった。そして、今、記事を書く為に聴き直しを進めている。順にウォルトンのリーダー作を聴いていると、やはり、ウォルトンは優れたジャズ・ピアニストの一人だった、と再認識させられる。

Cedar Walton『Eastern Rebellion 2』(写真)。1977年1月の録音。ちなみにパーソネルは、Cedar Walton (p), Bob Berg (ts), Sam Jones (b), Billy Higgins (ds)。ピアノのシダー・ウォルトンのリーダー作。ボブ・バーグのテナーがフロント1管のカルテット編成。

ユニット名「Eastern Rebellion」名義のセカンド盤。フロント1管がボブ・バーグに代わっている(前任は、ジョージ・コールマン)。フロントのテナーは交代したが、リーダーのウォルトン率いるトリオは変わらない。グループ・サウンドについても、ファースト盤(2016年7月20日の記事参照)と変化は無い。1960年代のモード・ジャズの「進化形」。

当時、流行っていた「V.S.O.P」や「Great Jazz Trio」は、1960年代のモード・ジャズの「マイナー・チェンジ」のイメージ。1960年代のモードを振り返って、そこにちょっと新しい要素を加えて、1960年代のモード・ジャズの完成形イメージを提示する。それが、当時「バカうけ」。
 

Cedar-waltoneastern-rebellion-2

 
しかし、このウォルトンの「Eastern Rebellion」のモード・ジャズは、明らかに1960年代のモード・ジャズの「先にある」イメージで、モーダルな展開やモーダルなアドリブなど、1960年代のものとは明らかに響きやアプローチが違う。1960年代のモード・ジャズの連続した延長線上にある「進化形」だと理解している。当時、ウケなかったけどね(笑)。

この『2』は、ボブ・バーグの存在が面白い。唯我独尊、バックのスインギーでグルーヴィーなトリオの音など関係なく、自分の吹きたい様に吹いている。コルトレーンの「シーツ・オブ・サウンド」の様に音符を敷き詰めた速吹きを披露したり、ちょっとフリーに吹いてみたり、スイングっぽく吹いてみたり、やりたい放題である。これが良い。バックのウォルトン率いるトリオの「端正さ」との対比が面白い。

この『2』でも、ウォルトンは好調を維持。ウォルトンの音を敷き詰めた様なモーダルなフレーズ、躍動感を生む弾むようなコード弾き。そこに骨太なサム・ジョーンズがガッチリと音の底を支え、ビリー・ヒギンスの柔軟なドラミングが、グループ全体のスインギーなグルーヴを堅実にキープする。

端正でスインギーでグルーヴィーなピアノ・トリオをバックに、自由闊達に独りよがりに、独特なモーダル・フレーズを吹きまくるボブ・バーグ。1960年代には無かったモーダルな音世界。今の耳で聴き直してみて、意外と個性的なモード演奏に、ふと嬉しくなったりする。

今の耳で聴くと、改めて「Eastern Rebellion」のモード・ジャズは良い感じ。思わず「再評価」である。
 
 

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2024年1月19日 (金曜日)

良い音ハービー『Directstep』

ハービー・ハンコックのリーダー作の落穂拾い。当ブログで記事にしていないリーダー作はあるのか、と調べてみたら、まだまだあるんですね、これが。ハービーについては、評論記事のコンプリートを目指しているので、記事にしていないリーダー作を順に聴き直している。

Herbie Hancock『Directstep』(写真左)。1978年10月17–18日の録音。ちなみにパーソネルは、Herbie Hancock (key, syn), Webster Lewis (org, syn, Rhodes, vo), Bennie Maupin (ss, ts, lyricon), Ray Obiedo (el-g), Paul Jackson (el-b), Alphonse Mouzon (ds), Bill Summers (perc)。

1978年、ハービー・ハンコックが来日時、新設のSME信濃町スタジオに入り、ダイレクト・カッティング方式で録音したアルバム。翌年1月に日本限定盤としてリリースされている。「ダイレクト・ディスク」と銘打って発売されていて、リリース間もなく入手した思い出がある(懐かしいなあ)。

ダイレクト・カッティングなので、収録曲は3曲のみ。収録時間は、それぞれ、1曲目7分・2曲目7分・3曲目15分。トータル29分という短さ。それでも当時は、ダイナミックレンジが広く音が良い、ピュア・オーディオ・ニーズに十分応えるアルバム(LP)だった。
 

Herbie-hancockdirectstep

 
間違いが許されない、やり直しの効かない「ダイレクト・カッティング」なので、演奏自体は「ちょっとユックリめのテンポの安全運転」なんだろうな、と聴き始めたが、意外と疾走感溢れる、ビートとグルーヴィーが効いた、ハービー流のジャズ・ファンクが流れてきたので、思わず、襟元を正して座り直して聴き直した。

クロスオーバー志向のジャズ・ファンクの色合いが濃く、ファンクネスはほどほど、演奏の切れ味と疾走感が心地良い。ポール・ジャクソンのエレベがソリッドなファンクネスを供給。当時、新加入のアルフォンス・ムザーンのドラミングがエグい。ウェブスター・ルイスのオルガンも格好良く、ベニー・モウピンのソロも決まっている。

ハービーも好調なキーボードを聴かせる。一発勝負の録音なのに、よくまあ複数台のシンセやキーボードを操るなあ、と感心する。それだけ精通しているのだろう。3曲目の「I Thought It Was You」はハービーのヴォコーダー・ヴォーカルが聴ける(ウェブスターのヴォコーダー・デュオです)。

今の耳で聴き直してみて、確かに、この音源は音が良い。スッキリとした音像でハービー流のジャズ・ファンクが疾走する様は、当時のクロスオーバー・ジャズの成熟度の高さを伝えてくれる。とにかく、判り易くてクールなハービー流のジャズ・ファンク。今一度、LPで聴き直してみたいなあ。
 
 

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2024年1月18日 (木曜日)

マイルスを愛でる『Amandla』

マイルス・デイヴィスは、1991年9月28日に鬼籍に入っている。65歳。ジャズマンとしては早すぎる逝去であった。

マイルスは、正式にリリースされた音源として、1991年2月までスタジオ録音を、1991年7月までライヴ録音を残している。1991年9月初旬、定期検査の為、サンタモニカの自宅近くのセントジョンズ病院に入院。入院時に脳内出血を引き起こし昏睡状態になり、その後、1991年9月28日午前10時40分、肺炎と呼吸不全などの合併症の為、逝去している。

逝去直前まで、意外と元気に演奏していたんやなあ、と改めて感心するやら無念やら。マイルス本人もこんなに早く鬼籍に入るとは思ってもみなかったのでしょうね。

Miles Davis『Amandla』(写真左)。1988年12月から1989年初旬での録音。本作は、マーカス・ミラー、ジョージ・デューク、ジョン・ビグハムというマルチ・ミュージシャン3名が、トラックを打ち込み作成、マイルスが、そのトラックをバックにトランペットを吹きまくるという内容のアルバム。参加ミュージシャンは多数におよぶので、詳細は割愛する。

このアルバム、内容的には前々作『Tutu』、前作『Music from Siesta』の流れを汲む、兄弟盤の様な内容。この前の2作はマーカス・ミラーべったり、マーカスがトラックを作成し、マイルスがトランペットを吹く、そんな二人三脚な作品だったが、今回は3人がバック・トラックを作成している。さすが、マーカスのみ3連発はマンネリ化、平凡化が懸念されるので、この今回の「3人がかり」は正解だったと思う。
 

Miles-davisamandla

 
この盤でもマイルスは「トランペッター」に専念している。三者三様に用意されたバック・トラックの印象を基に、イマージネーション豊かでクールでブリリアントなトランペットを吹き上げている。即興性溢れるアドリブ・ソロの嵐。緩急自在、硬軟自在、変幻自在、流れる様に叫ぶ様に、唄う様に囁く様に、マイルスはクールでヒップなトランペットを吹き続ける。

これって、1950年代後半、マイルスが大手コロンビア・レコードに移籍して直ぐ、ギル・エヴァンスとのコラボに似ている、と思った。ギル・エヴァンスがアレンジした、ギルならではのジャズ・オケをバックに、マイルスというトランペッターが、緩急自在、硬軟自在、変幻自在、流れる様に叫ぶ様に、唄う様に囁く様に、マイルスはクールでヒップなトランペットを吹きまくった、そんなギルとの共同創作を想起した。

この時期、マイルスは自らがイノベーターとして、クリエーターとして、先頭を切って新しい音を創作するのではなく、一人のトランペッターとして、トランペット吹きに専念したかったのではないか。トランペッター・マイルスを表現したかったのではないか、と思うのだ。別に死期を悟っての仕業ではないだろう。

この『Amandla』こそ、メインテーマが「マイルスを聴け」。三者三様の印象的なトラックをバックに、マイルスが「マイルスしか吹けない」トランペットを吹く。トランペッター・マイルスの面目躍如。この盤にはトランペッター・マイルスだけがいる。この盤はトランペッター・マイルスだけを愛でる。
 
 

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2024年1月17日 (水曜日)

北欧のマイルス『Aura』

晩年のマイルス・ディヴィスの聴き直し。この盤は1985年に録音されながら、4年ほどお蔵入りしていた、マイルスにとって「曰く付き」の企画盤。マイルスのアルバムは録音されたらなるべく時を置かずにリリースされていたのだが、この盤は違う。どうも、録音当時のコロンビア・レコードと契約などでもめていたらしく、リリースは1989年になっている。

Miles Davis『Aura』(写真左)。1985年1月31日〜2月4日、デンマークのコペンハーゲンでの録音。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), John McLaughlin (g), Bo Stief (el-b), Vincent Wilburn Jr. (el-ds)。バックに地元のビッグ・バンドがつく。

ギターにマクラフリンが参加しているが、マイルス・バンド全体からすると、新しい何か創造的な録音をする、というような面子ではない。あくまで、ジャズロックやジャズ・ファンクなど、エレ・マイルス色の演奏を展開する時の「備え」という感じの面子。

このアルバム、マイルスが、1984年にデンマークで『レオ二ド・ソニング賞』というものを受賞、その授賞式では、財団が委託した作曲家の作品を演奏するのが「しきたり」だったそうで、マイルスは、パレ・ミッケルボルグが作編曲した組曲『オーラ』をビッグ・バンドと共演、この時の演奏の出来が良かったことで、マイルス自ら正式にスタジオ録音したのが本作とのこと。

ビッグバンドをバックにマイルス・バンドが演奏する、と聞くと、1950年代後半の「ギル・エヴァンスとのコラボ」を想起するが、ギルとのコラボの時の様に、この北欧のビッグバンドとの共演で、マイルスとして「新しい何か」を生み出したかと言えば、そうではない。が、マイルスのパフォーマンスだけ捉えれば「素晴らしい」の一言。
 

Miles-davisaura

 
流麗にクールに、アグレッシブにリリカルに、ジャジーに朗々とトランペットを吹き回し、吹き上げるマイルスは全編に渡って「一級品」。これだけ、マイルスのトランペットをズット愛で続けることの出来るアルバムはそうそうない。特に、マイルスの晩年のトランペットの素晴らしさを長時間に渡って体感できるのはこの盤しかない。

ビッグバンドの演奏としてはまずまずのレベルだが、マイルスの、マイルス・バンドの演奏を前面押し出し、引き立たせる為のビッグバンドという役割については、その役割を堅実に果たしている。ソリストの活躍するパートもあるが、マイルスのトランペットを阻害することは全くない。そういう意味では、マイルス・ウィズ・ビッグバンドとしては、サウンドのバランスは良好。

ビッグバンドをバックに、マイルスがトランペットを朗々と流麗に吹き進める演奏から、ビッグバンドのソリスト、オーボエのソロにハープやピアノが、はたまたエレギが絡む、現代音楽の様な展開があったり、ミディアム・テンポのジャズロック風のエレ・ファンクがあったり、単純に「ウィズ・ビッグバンド」の企画盤として楽しめる内容になっている。

マイルスの「創造的なSomething(何か)」は感じられないので、そこは硬派なマイルス者の方々には大いに不満が残る内容らしいが(我が国の評論家諸氏の評価も散々・笑)、マイルスのトランペットを愛でる、という一点では、まずまずの内容の「マイルス・ウィズ・ビッグバンド」な盤だと僕は思う。マイルスも意外とノリノリでトランペットを吹いているみたいで、意外とマイルスの充実したプレイが楽しめる。

ちなみに、ジャケット・デザインは平凡でちょっと酷いもの。当時、コロンビア・レコードとして、マイルスに全く力を入れていなかったことが良く判る。まあ、歴史的に振り返ってみて、コロンビア・レコードとか、エマーシー・レコードとか、大手のレコード会社は、結構、ジャズを粗末に扱うところがあるが、この『Aura』のジャケの酷さからも、そんなところが窺い知れて面白い。
 
 

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2024年1月16日 (火曜日)

これも好盤『The 45 Session』

中間派トロンボーンの代表格、ベニー・グリーン。リーダー作の多くをブルーノートからリリースしており、その内容はどれもが優れたもの。中間派、つまりはスイングとハードバップの間。スイングの雰囲気を残しつつ、ロング・レンジのアドリブ・ソロを展開する。

と言って、ハードバップの様に切れ味良く、丁々発止としたアグレッシブなソロでは無く、スイングの雰囲気を踏襲した、味のあるミドル・テンポの小粋で聴き心地の良いソロを展開する。ハードバップの様でハードバップでは無い。モダンの様でスイングの雰囲気が漂う。中間派の個性はいかにも「ジャズらしい」もので、一旦、ハマると病みつきになる。

Bennie Green『The 45 Session』(写真左)。1958年11月23日の録音。ちなみにパーソネルは、Bennie Green (tb), Eddie Williams (ts), Sonny Clark (p), Paul Chambers (b), Jerry Segal (ds), Babs Gonzales (vo)。ベニー・グリーンのトロンボーンとエディー・ウィリアムスのテナーがフロント2管のクインテット編成。1曲だけボーカルが入る。

不思議なタイトルが付いているが、この盤の収録曲については、当初、45 rpmシングルとしてリリースされる予定だった、とのことで、その由来から『The 45 Session』というタイトルになっている。

ちなみに、この盤の音源、1975年に日本のキングレコードから『Minor Revelation』のタイトルで、Blue Note世界初登場シリーズ第3期のうちの1枚としてリリースされている。
 

Bennie-greenthe-45-session

 
録音当時のブルーノートは、この中間派のベニー・グリーンのトロンボーンの個性の活かし方がとても上手い。「ホンワカしたトロンボーンならではの音色とスイング・スタイルを踏襲した、伝統的なフレーズと味のあるブルージーなプレイ」が独特の個性を十分に活かせる様な楽曲を選んで、のびのび演奏させている。

2曲目の「On the Street Where You Live(君住む街角)」が良い例で、この曲、ミュージカル「マイ・フェア・レディ」の有名な挿入歌なのだが、この曲の持つ美しいフレーズをゆったりとしたテンポで、味のあるホンワカ、ほのぼのとして暖かく優しいトロンボーンで唄い上げている。これ、なかなかほのぼのとしていていい感じ。トロンボーンならではの音色が、この曲の旋律に良く合っている。感心した。

7曲目の「Minor Revelation」はエキゾチックな趣も含んだマイナー調の雰囲気が心地良いのだが、この曲でもトロンボーンの音色が映える。フレーズの作りは中間派のスイングの雰囲気を踏襲した、味のあるミドル・テンポの小粋で聴き心地の良いもので、これも良い感じでトロンボーンが活躍している。自身作のブルース・ナンバー「Ain't Nothin' But The Blues」も同様。

このセッションでは、バリバリ、ハードバップなジャズマン、ピアノのソニー・クラーク、ベースにポール・チェンバースが入っているが、ベニー・グリーンのトロンボーンの個性を損なうハードバップな演奏は全くしていない。どころか、両者、中間派の演奏に寄り添っている感じで微笑ましい。

当初、45 rpmシングルとしてリリースされる予定だったセッションだが、曲毎に統一感があって、一枚のアルバムにまとめても違和感が無い。さすがである。この盤でも、ベニー・グリーンの中間派トロンボーンがとことん楽しめる。
 
 

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2024年1月15日 (月曜日)

中間派の名演『Walking Down』

トロンボーンのホンワカした丸いフレーズと力感のある低音のブリリアントな響きが好きだ。ビ・バップからハードバップ畑には、J.J.ジョンソン、カーティス・フラーらがいる。また、スイング・ジャズからハードバップ手前まで進化した「中間派」には、ベニー・グリーンがいる。

特に、中間派のベニー・グリーンについては、ホンワカしたトロンボーンならではの音色とスイング・スタイルを踏襲した伝統的なフレーズと味のあるブルージーなプレイが独特の個性。そんな個性をしっかりと表出しつつ、ハードバップには無い、小粋で味のあるスインギーなフレーズを吹きまくる。この朴訥としたスインギーなトロンボーンがとても素敵なのだ。

Bennie Green『Walking Down』(写真左)。1956年6月29日の録音。ちなみにパーソネルは、Bennie Green (tb), Eric Dixon (ts), Lloyd Mayers (p), Sonny Wellesley (b), Bill English (ds)。ベニー・グリーンのトロンボーンとエリック・ディクソンのテナーがフロント2管のクイテット編成。
 
ブルーノートでのリーダー作が好盤のベニー・グリーンだが、プレスティッジにも良い内容のリーダー作を残している。この盤はそんな中の一枚。この盤は、中間派のベニー・グリーンのトロンボーンとエリック・ディクソンのテナーを心ゆくまで愛でることの出来る好盤である。
 

Bennie-greenwalking-down

 
ベニー・グリーンのトロンボーンは、味のあるホンワカ、ほのぼのとして暖かく優しいフレーズが個性なのだが、この盤では、意外にダンディズム溢れる硬派で切れ味の良いトロンボーンを聴かせてくれる。しかし、そのフレーズはハードバップっぽくない。スイングっぽく、ハードバップ一歩手前、いわゆる「中間派」のフレーズ。

ベイシー楽団のエリック・ディクソンがテナーを担当しているが、このディクソンのテナーがとても良い。思う存分、テナーを吹きまくっている様で、彼のテナーはダンディズム溢れ硬派で切れ味の良いテナー。このディクソンのテナーに呼応して、ベニー・グリーンのトロンボーンが、ダンディズム溢れる硬派で切れ味の良いトロンボーンに変身している様なのだ。

と言って、ダンディズム溢れる硬派で切れ味の良いベニー・グリーンのトロンボーンが悪い訳で無い。要所要所では、持ち味の「ホンワカしたトロンボーンならではの音色とスイング・スタイルを踏襲した伝統的なフレーズと味のあるブルージーなプレイ」をしっかり散りばめ、表現の幅を広げている。

リズム隊は無名に近いが、意外と良い音を出している。スイングでもハードバップでも無い、その間の「中間派」のブルージーで小粋なフレーズの数々。ビ・バップでもハードバップでも無い「中間派」の名演。これもジャズ、である。
 
 

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2024年1月14日 (日曜日)

弦をバックに『Waiting Game』

ジャズマンにとって、一流の証の一つに「ウィズ・ストリングス」がある。「ウィズ・ストリングス」とは、オーケストラをバックにしたインプロビゼーション。ストリングスは楽譜でガッチリ固められた定型の演奏。反対に、ジャズマンは即興演奏をメインとして演奏。定型のストリングスをバックに、いかに即興演奏を展開し、自らの個性を表出するか。それは一流のジャズマンでないと出来ない「技」である。

Zoot Sims『Waiting Game』(写真左)。1966年11月28 & 30日の録音。インパルス・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Zoot Sims (ts, vo), David Snell (harp), Gary McFarland (arr), Kenny Napper, (cond, tracks 6 & 7), Jack Parnell (cond, tracks 1–5 & 8–10), Unknown Orchestra。

ズートのサックスは、ストリングスに負けない、力強くて流麗、説得力抜群の吹きっぷり。ズートはイマージネーション溢れるアドリブ・ソロを吹く。曲の主旋律は「力強くて流麗、説得力抜群の吹きっぷり」で明確にメロディアスに吹く。アドリブ部はズートならではの即興フレーズを吹く。そんなズートの「ウィズ・ストリングス」な企画盤である。
 

Zoot-simswaiting-game

 
「ウィズ・ストリングス」盤はアレンジが「カギ」。アレンジは、ゲイリー・マクファーランド。マクファーランドのメインはジャズのアレンジャー。自らもジャズ演奏する。そんなマクファーランドのアレンジは、「ジャズマン・ファースト」の即興演奏のスペースをしっかり取った、ジャズ志向のアレンジ。この盤では、このアレンジが「成功のカギ」。

「ジャズマン・ファースト」のアレンジに乗って、ズートは気持ち良さそうに、テナーを吹き上げていく。主旋律は明確に、アドリブ部はイマージネーション豊かに吹き進む。軽やかに爽やかにスインギーに、有名スタンダード曲をメインに唄い上げるズートのテナーは優しくリリカル。極上のイージーリスニング・ジャズ。

手に汗握る、はたまた、ブンブンにスイングするジャズではない、ちょっとメインストリームから横道に逸れたジャズではあるが、そのジャズマンの即興演奏の充実があれば、イージーリスニング・ジャズも、純ジャズ同様、「即興演奏の妙」を楽しめる。この盤はそんな「ズート・シムスの即興演奏の充実」を伴った、上質のイージーリスニング・ジャズである。
 
 

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2024年1月13日 (土曜日)

ズートの未発表音源集『Choice』

我が国の20世紀のジャズ盤紹介は、少し偏っていたように思う。特にテナー・サックスについては、ジョン・コルトレーン、ソニー・ロリンズばかり。ちょっとマニアックなところで、ウェイン・ショーター。テナー・サックスは、ジャズ演奏者の中でも数が多い楽器にも関わらず、コルトレーン、ロリンズ、ショーター以上、終わり、という感じの紹介が多かった。

でも、実は、テナー・サックス奏者については、聴き応えのある、個性溢れるジャズマンが沢山控えている。渋いところでは、デクスター・ゴードン、ズート・シムズ。次世代を担った本格派として、マイケル・ブレッカー、ジョシュア・レッドマン、ブランフォード・マルサリスなどが挙げられる。当ブログでは、これらのサックス奏者についても、積極的に記事にしているので、アルバム評については、ブログ右下の「カテゴリー」からどうぞ。

Zoot Sims『Choice』(写真左)。1954年12月と1959年3月の録音。ちなみにパーソネルは、1954年12月については、Zoot Sims (ts), Gerry Mulligan (bs, p), Bobby Brookmeyer (valve-tb, p), Jon Eardley (tp), Red Mitchell (b), Larry Bunker (ds)。1959年3月については、Zoot Sims (ts), Russ Freeman (p), Billy Bean, Jim Hall (g), Monte Budwig (b), Mel Lewis (ds)。

タイトルが「Choice(選択)」なのは、ズート・シムズのアウトテイク集的なアルバムだから「Choice(選択)」。この『Choice』のリリースが1961年なので、1954年12月と1959年3月の、当時、パシフィック・ジャズに残されていた未発表音源を蔵出してアルバム化したもの。
 

Zoot-simschoice

 
前半の1〜4曲目、1954年12月の録音については、バリサク奏者、ジェリー・マリガンのコンサートにズートが参加したときのライブ音源。後半の5〜7曲目、1959年3月の録音については、女性ジャズ・ボーカリスト、アニー・ロスのアルバム「A Gasser!」(25日録音)のバックの演奏隊だけが、翌日26日に集まってセッションした音源。

2つのセッションの寄せ集めで、パーソネルも演奏曲によって、組み合わせが代わったりするが、ズートのテナーは一貫して「渋い」。力感十分、軽やかに爽やかにスイングするテナーは聴いていて心地良い。特にスタンダード曲においては、歌心溢れ、スインギーで流麗で小粋な個性が全開。

基本、ウエストコースト・ジャズの範疇なので、アレンジも「聴かせる」アレンジで良好。他のメンバーも、さすが、ウエストコーストのスター・ジャズマンの集まりなので、良好極まりない。ウエストコースト・ジャズではあるが、意外とホットな演奏なので、ハードバップな演奏として聴き応えがある。

ズートのサックスは力強くて流麗、説得力抜群の吹きっぷり。この未発表音源集は、決してお蔵入りの「捨て曲」集では無い。録音時期は二つに分かれるが、共通の「秀逸なアレンジ」、そして、ズートの「ブレの無い」吹きっぷりのお陰で、録音時期の違いでの違和感は無い。ズートの優れた未発表音源集として、十分に楽しめる内容になっている。

20世紀の我が国のジャズ者の方々はどちらかと言えば「東海岸ジャズ」優先。そういう背景から、ズート・シムズは「西海岸ジャズ」系に分類されるテナー・マンなので、「覚えめでたい」存在では無かったみたいだが、どうして、なかなかに渋くて小粋な「正統派テナー・マン」で、彼のリーダー作には「ハズレ」が無い。この盤もなかなかに楽しめる好盤です。
 
 

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2024年1月12日 (金曜日)

ファーマーの好盤『Perception』

アート・ファーマーの好盤を聴き進めている。ジャズを本格的に聴き始めた頃から、ずっと聴いてきた、お気に入りのトランペッターなのだが、意外と当ブログの記事になっていない好盤がまだまだ沢山ある。ファーマーについては、ジャズ盤紹介本に載らないリーダー作にも優れたものが多い。

Art Farmer『Perception』(写真左)。1961年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Art Farmer (flh), Harold Mabern (p), Tommy Williams (b), Roy McCurdy (ds)。ファーマーはフリューゲルホーンを持って「ワン・ホーン」のカルテット編成。トランペットのワン・ホーン・カルテットは多くは無いのだが、ファーマーは一人でフロント・フレーズを吹きまくっている。

アート・ファーマーのトランペットは「力感溢れ端正でブレが無く流麗でウォーム、エッジがラウンドしていて聴き心地の良い」もの。そんなファーマーの「流麗でウォーム」の部分が突出した、ファーマーの紡ぎ出す流麗なフレーズがとことん愛でることの出来る盤である。
 

Art-farmerperception

 
フリューゲルホーンで吹いているので、出てくるフレーズが、トランペットの時よりもエッジがラウンドして、耳当たりが優しく、聴き心地が増す。全編、落ち着いた、温かみを感じる「クール」なフリューゲルホーンがとても良い。スタンダード曲もファーマーの自作曲も、同じトーンで統一される。それぞれの曲の持つ流麗なメロディーだけが浮かび出る。

メイバーンの小粋でメリハリの聴いた流麗なピアノをメインにした、ウイリアムス、マカーディのリズム・セクションが、ファーマーの落ち着いた、温かみを感じる「クール」なフリューゲルホーンをしっかりとサポートする。ファーマーのフリューゲルホーンが引き立つリズム&ビート。このリズム・セクションの貢献度は高い。

レナード・フェザーがライナー・ノーツを担当しているのだが、最後をこう締め括っている。「As long as there is room for beauty and lylicism in jazz,such voices as Farmer's will never be silenced.」(ジャズに美しさと叙情性の余地がある限り、ファーマーのような声が沈黙することは決してありません)。良いこと言うなあ、と思う。このリーダー作にぴったりの表現だと感じます。
 
 

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2024年1月11日 (木曜日)

隠れ名盤 Live at the Half-Note

アート・ファーマーは、ジャズ・トランペッターとしてお気に入りの一人。ジャズを聴き始めた頃から、ずっとファーマーのトランペット&フリューゲルホーンを聴いてきた。アート・ファーマーの「力感溢れ端正でブレが無く流麗でウォーム、エッジがラウンドしていて聴き心地の良いトランペット」がずっとお気に入り。

Art farmer Quartet featuring Jim Hall『Live at the Half-Note』(写真左)。1963年12月、NYの「ハーフノート」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Art Farmer (flh), Jim Hall (g), Steve Swallow (b), Walter Perkins (ds)。このライヴでは、ファーマーはフリューゲルホーンを吹いている。フロントの相棒にジム・ホールのギター、ピアノレスの変則カルテット編成。

録音時は1963年。ハードバップをベースに、ジャズは多様化の時代に突入。純ジャズ志向としては、モード・ジャズが主流になり、エンタテインメント志向としては、ファンキー・ジャズ、ソウル・ジャズなど、聴いて楽しいジャズが主流に、そして、新しいジャズとしては、フリー&スピリチュアル・ジャズが出現していた。

しかし、ここでのアート・ファーマーは、ハードバップを極める「志向」でパフォーマンスしている。演奏志向はあくまでハードバップ。しかし、従来のハードバップのフレーズとは違う、従来のコード進行とは違う、クールで静的な響きを持ったフレーズ展開で、当時として新しい響きのハードバップな演奏を繰り広げる。
 

Art-farmer-quartet-featuring-jim-hallliv

 
いわゆる「ジャズのライヴ演奏」と聞いて、熱いバトルチックな演奏を想起するが、このファーマー・カルテットの演奏はクールで静的。ファーマーはフリューゲルホーンを使って、流麗でウォーム、エッジがラウンドしていて聴き心地の良いフレーズを吹き上げる。しかし、そのフレーズの響きは、1950年台のハードバップのそれでは無い。それまで聴いたことのないフレーズで攻める。

おそらく、ジム・ホールの、それまでに無い新しい響きのコード進行と間を活かしたインプロに触発されたのではないか。ジム・ホールのギターは、意外と「プログレッシヴ」。従来のブルージーでジャジーな定型的な響きではない、そこはかとなく捻れて少し破調なフレーズは、今の耳にも新しい。このホールのプログレッシヴなギターがファーマーのフリューゲルホーンのフレーズを刺激する。

そして、そんなプログレッシヴな響きと間を活かしたフレーズの「底」を支えるのが、スティーヴ・スワローのベース。スワローのベースもプログレッシヴ。まるでモーダルなベースラインを弾くように、それまでに無い、新しいベースラインで、ファーマーとホールをガッチリ支える。

クールで静的な響きがメインのライヴ盤なので、一聴すると地味な印象を感じるが、じっくり繰り返し聴くうちに、それぞれの演奏の「プログレッシヴ」さを感じて、何の変哲もない、手垢の付いたハードバップ演奏なのに、滲み出てくる「新しさ」に引き付けられる。

そして、このハードバップな演奏は「只者では無い」ことに気が付く。気がついて、このライヴ盤は隅に置けない、と思う。そんな「隠れ名盤」がこの『"Live" At the Half-Note』である。
 
 

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2024年1月10日 (水曜日)

トミフラ『The Cats』のトレーン

コルトレーンに関する記事の改訂を行なっている。とにかく、当ブログでのコルトレーンの記事は古いものがほとんど。10年以上前のものが大多数で、内容的にも整理されていないものもあり、もう一度、見直さないとなあ、ということで、今回の改訂作業である。

コルトレーンはリーダー作で演奏する場合は、基本的には「我が道を行く」タイプで、サイドマンの音を聴きながら、自分の音を調節したりは滅多にしないタイプ。とにかく、自らの思いのままに「吹きまくる」。

しかし、他のジャズマンのリーダー作にサイドマンとして入る時は、特にリーダーが先輩の場合、「我が道を行く」スタイルを引っ込めで、グループ・サウンドの中で、しっかりと落ち着いて吹き上げることが多い。つまり、コルトレーンの良き個性だけのブロウを捉えるには、意外とサイドマンでの参加のアルバムが良いのでは、と思っている。

Tommy Flanagan『The Cats』(写真左)。1957年4月18日の録音。ちなみにパーソネルは、ちなみにパーソネルは、Idrees Sulieman (tp), John Coltrane (ts), Kenny Burrell (g), Tommy Flanagan (p), Doug Watkins (b), Louis Hayes (ds)。トランペットとテナーの2管+ギターがフロントのセクステット構成。記録では「The Prestige All Stars」と表記されている。

「The Prestige All Stars」=「プレスティッジ・レーベルお得意のジャム・セッション構成」。セクステットとはいえ、その日の急造セクステット。プレスティッジだから、ギャラをケチって、お得意のほとんどリハーサル無しの本番演奏だっただろう。それにしては、この盤の演奏はよくまとまっている。
 

Tommy-flanaganthe-cats

 
その一番の理由は、リーダーのフラナガンのピアノ、ワトキンスのベース、ヘイズのドラムの「ピアノ・トリオ」の演奏が充実しているからだろう。リーダーのフラナガンのピアノは申し分無い。じっくりと渋い、小粋で落ち着いたアドリブを聴かせてくれる。ダグ・ワトキンスもベースも良し、ルイ・ヘイズのドラミングも堅調。

さて、コルトレーンといえば、なかなかのブロウを聴かせてくれる。冒頭の「Minor Mishap」はコルトレーン抜きのクインテットでの演奏。2曲目「How Long Has This Been Going On?」から、コルトレーン登場。明確な「コルトレーン」節でソロを吹く。この時点で、コルトレーンの個性は固まっていたと見て良い、コルトレーンらしい吹奏。

3曲目「Eclypso」では、コルトレーンの高速吹き回しを聴くことが出来る。シーツ・オブ・サウンド一歩手前と言ったところか。続く「Solacium」では、哀愁を漂わせた力感溢れるソロで参加。これもコルトレーンらしい吹奏。そして、ラストの「Tommy's Time」では、流麗なソロを聴かせる。ハードバップ時代のコルトレーンの「良き個性」がこの盤に散りばめられている。

ちなみに、ケニー・バレルのギターがなかなか洒落ている。アドリブ・フレーズは短めだが、イマージネーション溢れるプレイを展開している。逆に、トランペットのシュリーマンだけが「置いてきぼり」。音だけはトランペットらしく鳴るが、テクニック中庸、アドリブは凡庸。シュリーマンだけは「我慢」である。

この盤は、ピアノ+ベース+ピアノのリズム隊の妙技を楽しむのが正解のアルバム。しかし、その中で、コルトレーンとバレルは、上質なパフォーマンスを聴かせてくれる。ハードバップの佳作として、一息つきたくなる時に聴きたくなるジャズ盤の一枚です。
 
 

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2024年1月 9日 (火曜日)

八代亜紀『夜のアルバム』再聴

演歌の代表的女性歌手・八代亜紀さんが昨年12月30日に逝去していたとの報道が流れた。なんてことだ。

八代亜紀さんは、1973年に「なみだ恋」のヒットででメジャーに。その後「愛の終着駅」「もう一度逢いたい」「おんな港町」「舟唄」など数々のヒット曲をリリース、1980年には「雨の慕情」で第22回日本レコード大賞の大賞を受賞している。とにかく歌が上手い。声量、テクニック、申し分なく、演歌がメインでありながら、心を揺さぶられる様な情感溢れる歌声は、ジャンルを超えて、僕は好きだった。

情報によると、八代亜紀さんは若い頃、ジャズ・ボーカルもやっていた、とのこと。昔取った杵柄のひとつの「ジャズ・ボーカル」を、還暦過ぎて、もう一度やってみようじゃないの、というノリだったのだろうか、ジャズ・ボーカルの企画盤を2枚、リリースしている。

当ブログでも、以前、八代亜紀さんのジャズ・ボーカル盤についての記事をアップしている。が、2013年3月のことで、すでに10年以上が経過している。今回、以前のブログ記事に加筆修正を加えたリニューアル記事をアップして、八代亜紀さんの逝去を悼みたいと思います。

八代亜紀『夜のアルバム』(写真左)。2012年のリリース。ちなみにパーソネルは、八代亜紀 (vo), 有泉一 (ds), 河上修 (b), 香取良彦 (p, vib), 田辺充邦 (g), 岡淳 (as, ts) がメインのバンド編成。八代亜紀のボーカルに、サックス、ギター入りのクインテットがバックに控える。

加えて、曲ごとにゲストが入る。ゲストについては、渡辺等 (b) <3>, 布川俊樹 (g) <5>, 田ノ岡三郎 (accordion) <6>, 松島啓之 (tp) <8>, 山木秀夫 (ds) <9>, 江草啓太 (p), 織田祐亮 (tp), 藤田淳之介 (as), 石川善男 (fh) <12>, 木村 "キムチ" 誠 (perc) <4,7,9>, CHIKA STRINGS (strings) <4,9>。

演歌の女王、八代亜紀さんがジャズ・ボーカルに挑戦した企画盤がこの『夜のアルバム』。その内容はなかなかのもの。さすが、若い頃、ジャズ・ボーカルにも手を染めていただけはある、堂々とした歌いっぷり。もともと、歌が素晴らしく上手い歌手である。とにかく上手い。情感を込めて、きめ細やかに、隅々にまで心配りをしながら、魅力的なジャズ・ボーカルを披露してくれる。
 

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2曲目の「クライ・ミー・ア・リヴァー」や、5曲目の「サマータイム」、ラストの「虹の彼方に」の、英語の歌詞での歌いっぷりを聴くと、これが素晴らしい出来で、もう「参りました」と謝ってしまいそうな位、素晴らしい歌唱。完璧なジャズ・ボーカル。味わいも豊か、情感がこもっていて、それはそれは素晴らしい。

それぞれが大スタンダード曲で、何百人何千人というボーカリストが唄った、いわゆる「手垢が付いた」曲で、独特の個性を出しつつ唄いこなすには難しい曲ばかりなんだが、演歌出身など関係なく、今までに無い独特の個性を発揮しつつ、完璧にこれらの大スタンダード曲を朗々と唄い上げている。

逆に、このアルバムには、日本語の歌詞のボーカル曲が幾つかある。冒頭のジャズ・スタンダード曲「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」は、途中で日本語の歌詞に変わる。ちょっとズッこけるが、これは「ご愛嬌」。

リリィの「私は泣いています」、松尾和子の「再会」、伊吹二郎の「ただそれだけのこと」のカヴァーであるが、純ジャズ風のアレンジに乗って、魅力的なボーカルで唄い上げていく。ただ、出来映えは素晴らしいのだが、日本の歌謡曲のカヴァー故、ジャズ・ボーカルというよりは、ジャズ風のムード演歌風に聴こえる。ジャズ・スタンダード曲と混在させると、ちょっと「浮いて」聴こえるのが「残念」。

これならば、日本語の歌詞のボーカル曲なんか織り交ぜずに、完全に英語歌詞のジャズのスタンダード曲で勝負すれば良かったのに、と思ってしまうのは僕だけだろうか。完全に英語歌詞のジャズのスタンダード曲だけで勝負して欲しかったなあ。なんせ、ジャズ・ボーカル歌手専門として、十分やっていける位、英語の歌詞での歌いっぷり、どの曲も本格的で素晴らしいんですから。

良い内容のジャズ・ボーカル盤。八代亜紀さんのジャズ・ボーカリストとしてのポテンシャルが並外れたものであることは良く理解出来る。日本の女性ジャズ・ボーカル盤の優秀盤です。
 
 

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2024年1月 8日 (月曜日)

ブラス輝く『ブラス・シャウト』

10歳代後半以降、マイルス・ディヴィスが大のお気に入りゆえ、ジャズ・トランペットについては、かなり昔から聴き親しんでいる。

トランペットという楽器の性格上、サックスの様に激情にまかせて、長々とフリーキーに吹き続けることが不得手。肉声よりもキーが高音なので、大きな音はかなり耳障りにもなる。

よって、ジャズ・トランペッターは正統派、純ジャズ志向が大多数。それでいて、音色や吹き方、表現がそれぞれ個性があって、様々なジャズ・トランペットが楽しめる。

Art Farmer『Brass Shout』(写真左)。1959年5月14日の録音。ちなみにパーソネルは、Art Farmer, Lee Morgan, Ernie Royal (tp), Julius Watkins (French horn), Jimmy Cleveland, Curtis Fuller (tb), James Haughton (b-horn), Don Butterfield (tuba), Percy Heath (b), Philly Joe Jones (ds), Benny Golson (arr, cond)。

ウォームで端正、唄うがごとく流麗なフレーズが個性のトランペッター、アート・ファーマーのリーダー作。ファーマーを含めトランペットが3本、フレンチ・ホルンが1本、バリトン・ホルンが1本、トロンボーンが2本、チューバが1本の計8本のブラスに、ピアノレス、ベースとドラムが加わった11人編成。アレンジ&指揮は、テナー奏者のベニー・ゴルソン。
 

Art-farmerbrass-shout

 
サックスとピアノがいない、ブラスがメインのフロント、リズム隊はベースとドラムのみ。なかなか面白い編成だが、アレンジャーが「ゴルソン・ハーモニー」の主、ベニー・ゴルソンが担当している。なるほど、ゴルソン・ハーモニーはブラス・セクションのユニゾン&ハーモニーが一番映えるので、この変則編成には合点がいく。

しかも有名ジャズマンがずらり顔を揃えて、この11人編成のアンサンブルに不足は無い。そんな豪華なバックを従えて、ファーマーだけが、ウォームで端正、唄うがごとく流麗なトランペット・ソロを吹き上げる。

ゴルソン・ハーモニーは、分かり易い、シンプルな、美しいフレーズに一番映える。そういうこともあるのだろう、収録された曲は、有名スタンダード曲ばかり。「Nica's Dream」「Autumn Leaves」「Moanin'」「April In Paris」「Five Spot After Dark」「Stella By Starlight」「Minor Vamp」の6曲。

聴き心地に重点を置いているのか、どの曲もちょっと軽めのアレンジが施されていて、軽快で明るい雰囲気で統一されている。そこに、ゴルソン・ハーモニーでメイン・テーマを印象的に浮き出していてメリハリが効いている。そして、アドリブ・フレーズをウォームで端正、唄うがごとく流麗なトランペットで吹きまくる。

なんだか訳の判らない女性の横顔のオブジェのジャケには「?」ですが、ゴルソンの良く考えた小粋なアレンジと、ファーマーのウォームで端正、唄うがごとく流麗なトランペットの相乗効果がとことん楽しめるスタンダード曲集です。ながら聴きにもいい感じの聴き心地の良い好盤。
 
 

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2024年1月 7日 (日曜日)

ケニーGの新盤『イノセンス』

ジャズは「純ジャズ」ばかりでは無い。「純ジャズ」に8ビートを導入、ロックの要素を融合したクロスオーバー・ジャズ、そこから、ソフト&メロウ、そして、アーバンな要素を加えて一世を風靡したフュージョン・ジャズ。そして、フュージョン・ジャズの流麗さ、聴き心地の良さを強調したスムース・ジャズ。

ジャズ盤を聴いて楽しむのは、基本、純ジャズがメインなんだが、ここバーチャル音楽喫茶『松和』は、クロスオーバー&フュージョン・ジャズもバッチリ守備範囲で、その延長線上にあるスムース・ジャズも嗜む。純ジャズを聴いて疲れたら、もしくは、何かの作業のバックに流れる「ながら聴きジャズ」は、クロスオーバー&フュージョン・ジャズ、そして、スムース・ジャズになる。

Kenny G『Innocence』(写真)。2023年12月のリリース。ケニーGの通算20枚目になるスタジオ盤は、「エーデルワイス」「虹の彼方に」「ロック・ア・バイ・ベイビー」など、「子守唄」をテーマにした企画盤。アルバム全体の雰囲気は、絵に描いた様な「スムース・ジャズ」。さすが、現代のスムース・ジャズの第一人者の音世界である。
 

Kenny-ginnocence

 
ケニーGのアルバムを聴いて、常に思うのは「ソプラノ・サックスがいい音出しているなあ」と言うこと。しかも、ケニーGにしか出せない独特の音色。ブリリアントでブラスの輝く様な響きが豊か、音が適度に大きくスッと伸びる。そんなケニーG独特の音色で「子守唄」を唄い上げていく。めっちゃ聴き味の良い、流麗なソプラノ・サックスの音世界。

ケニーGはソプラノ・サックスの名手。スムース・ジャズの範疇でありながら、スピーカーに対峙して、じっくりとその音を味わえる質の高さ。もちろん、上質のイージーリスニングとして、「ながら聴きジャズ」に最高に適した、耳障りでは全くない、ながらを邪魔することなく、スッと耳に入ってくる心地良さ。

スムース・ジャズの範疇の究極の「イージーリスニング」。現代のイージーリスニング・ジャズの優秀盤と評価して良いと思う。即興の妙とは無縁だが、1960年代からある「イージーリスニング・ジャズ」の現代版。純ジャズの合間の「耳休め」に、何かしながらの「ながら聴き」に最適の、ケニーGの上質のスムース・ジャズです。
 
 

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2024年1月 6日 (土曜日)

「バレル & コルトレーン」再聴

コルトレーンの共演盤はフリー&スピリチュアル志向のものは「それなり」に評価されているが、ハードバップ時代の共演盤については評価が芳しくない傾向にある。特に、20世紀の我が国の評論にその傾向が強い。どうも、コルトレーンには「共演」が許されていない感じなのだ(笑)。

『Kenny Burrell & John Coltrane』(写真左)。1958年3月7日の録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Burrell (g), John Coltrane (ts), Tommy Flanagan (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds)。ケニー・バレルのギターとジョン・コルトレーンのテナーが2管フロントのクインテット編成。

そもそも、ギターとテナー。音の線の細いギターと音が太くて力感のあるテナー。そもそも、フロントとして相立ち、相入れることが出来るのか。漆黒ブルージーでアーバンなバレルのギターと、豪快でエモーショナルで光速切れ味の良いコルトレーンのテナー。ムードで聴かせるバレルとテクニックで聴かせるコルトレーン。聴く前は、合わないよなあ、と感じる。

冒頭の1曲目「Freight Trane」では、いつもより音量を上げたバレルのギターを全く気にせず、我が道を往くテナーのコルトレーン。この曲ではまだ「良好な一体感」は無い。しかし、これは「我が道を往来たがる」コルトレーンの性格によるものではないか。

2曲目の「I Never Knew」、3曲目の「Lyresto」と聴き進めていくと、コルトレーンがバレルに歩み寄るのが判る。コルトレーンが、シーツ・オブ・サウンド風に光速に吹きまくるのでは無く、、歌心溢れるブルージーなテナーとなって、ブルージーなバレルの漆黒ギターに合わせ始める。いい感じの共演フロントになってくる。
 

Kenny-burrell-john-coltrane

 
そして、4曲目の優しいバラード曲「Why Was I Born?」。この演奏、コルトレーンとバレルのデュオなのだが「絶品」。いつもより音量を上げて音が太くなった、漆黒ブルージーでアーバンなバレルのギターの伴奏に乗って、コルトレーンが歌心溢れる優しいテナーを奏でる。

すると、代わって、漆黒ブルージーでアーバンなバレルのギターが、いつになく「しっとり」と語りかける。「絶品」。この演奏を聴くだけの為に、このアルバムを手に入れても良い位の名演である。

以前、ジャズ盤紹介本で、この盤ってミスマッチの極致の様に書かれていた記憶があるが、本当に自分の耳でしっかり聴いた上での評論だったのだろうか。頭で考えるとバレルとコルトレーンはミスマッチの様に感じるが、聴いてみると実は相性は良い。

バレルとコルトレーン、どちらも優れた一流ジャズマン。フロントに相立ったら、相手の音をしっかり聴きながら、良好なマッチングに持ち込もうとするのがプロと言うものだ。このバレルとコルトレーンの共演盤は正式にリリースされている。アマチュアの我々が聴いて「ミスマッチの極致」などとは決して思わない。

このバレルとコルトレーンの共演盤。バレルとコルトレーンの相性は良いです。迷うことなく聴くことをお勧めします。こういう、フロントのパートナーに寄り添うコルトレーンも聴き応え十分です。
 
 

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2024年1月 5日 (金曜日)

『バグス & トレーン』の再聴。

アトランティック・レコード時代のコルトレーンは、シーツ・オブ・サウンドを吹きまくったり、モード・ジャズやソプラノ・サックスにチャレンジするリーダー作は評価が高いが、それ以外のリーダー作については評価がイマイチ。20世紀の時代では、我が国でその傾向は顕著で、我が国のコルトレーン盤の紹介本では、評価は「けちょんけちょん」である。

今となっては、どうして、そんな評価になるのか、その真意はよくわからないが、どうも、コルトレーンは「シーツ・オブ・サウンド」か「モード・ジャズ」か「フリー&スピリチュアル・ジャズ」をやらないといけないらしく、それもワン・ホーンで、コルトレーンのみを愛でることが出来る盤でないと駄目みたいなのだ。しかし、それは余りに偏った評価で、現代においては参考程度に留めておいた方が良いだろう。

Milt Jackson and John Coltrane『Bags & Trane』(写真左)。1959年1月15日の録音。ちなみにパーソネルは、Milt Jackson (vib), John Coltrane (ts), Hank Jones (p), Paul Chambers (b), Connie Kay (ds)。ミルト・ジャクソンのヴァイブとコルトレーンのサックスがフロントのクインテット編成。

クールでファンキーなミルトのヴァイブと、豪放でバップなコルトレーンのテナー、その個性が正反対のミルト(愛称・バグス)とコルトレーン(愛称・トレーン)の競演の「妙」が楽しめる。よってアルバム・タイトルが「バグス&トレーン」。この正反対の個性の共演、これはとんでもない「ミスマッチ」とするのが、20世紀の我が国のジャズ評論の評価。
 

Milt-jackson-and-john-coltrane_bags-tran

 
しかし、自分の耳で聴くと、ミスマッチどころか、バグスとトレーン、それぞれの個性が、双方の個性を引き立て合っているように聴こえる。正反対の個性なので、ユニゾン&ハーモニーを取るのはちょっと難しい。それでも、ソロ・パフォーマンスの受け渡しでは、クールでファンキーなミルトのヴァイブと、豪放でバップなコルトレーンのテナーの対比がとても印象に残る。

冒頭1曲目の「Stairway to the Stars」、この曲を聴くだけで「それ」が判る。ミルトの美しく響く、ブルージーなヴィブラフォンの調べ、そして、その後に入ってくるコルトレーンの豪快で真っ直ぐなテナー。正反対の個性、好対照な個性の共演。メリハリがあって陰影が深い。それでいて、底はブルースで一体となっている。申し分ないパフォーマンスである。

4曲目の「Be-Bop」は高速バップな演奏。当然、コルトレーンは「シーツ・オブ・サウンド」風の高速フレーズを吹きまくる。すると、ミルトは2本マレットで、これまたブルージーでファンキーな高速フレーズで応戦する。正反対の個性、好対照な個性の高速フレーズの共演。これも「聴きもの」、良好なハードバップなパフォーマンス。

バックのリズム・セクションも無難なハードバップ基調のバッキングをしていて、フロントの二人のパフォーマンスを損なうことは無い。そう、このミルトとコルトレーンの共演盤は「ハードバップ」。成熟したハードバップのアルバムとして聴けば、ミルトのヴァイブもコルトレーンのテナーも全く違和感は無い。

ミルトもコルトレーンものびのび、リラックスして演奏している。これだけ、のびのび、リラックスして演奏しているのだ。演奏している当の本人たちは「ミスマッチ」などとは全く感じていなかっただろう。そもそも、ミスマッチで出来が悪いセッションであれば「お蔵入り」だろう。
 
 

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2024年1月 4日 (木曜日)

心地良きハリスのエレ・グルーヴ

今年の冬は暖冬傾向だとは言うが基本的には冬、当然、寒い日が続く。寒い日には暖かい部屋でジャズを聴く、と言うのが定番なんだが、聴くジャズもクールなジャズは心までがクールになりそうでちょっと。ファンキーでソウルフルなジャズが温まって良い。と言うことで、この冬は「エディ・ハリス」を集中して聴き直している。

「趣味が悪いなあ」と言う声が聞こえてきそうなんだが、それもそのはず。エディ・ハリスは、ソウルフルでグルーヴィーなエレ・ジャズがメイン。電気増幅サックスを導入したことでも知られ、それ故、我が国では「キワモノのテナー奏者」扱いされる傾向がある。彼のテナーは素性が良く、彼の奏でるソウルフルなジャズ・ファンクは今の耳にもしっかりと訴求する優れものである。

Eddie Harris『Plug Me In』(写真左)。1968年3月14 & 15日の録音。ちなみにパーソネルは、Eddie Harris (ts, varitone), Melvin Lastie, Joe Newman, Jimmy Owens (tp), Garnett Brown (tb), Haywood Henry (bs), Jodie Christian (p), Ron Carter, Melvin Jackson (b), Chuck Rainey (el-b), Richard Smith, Grady Tate (ds)。
 

Eddie-harrisplug-me-in  

 
前作『Mean Greens』で、ソウルフルでグルーヴィーなエレ・ジャズへ転身。この盤では、セルマー社が開発した「ヴァリトーン」を大々的に導入している。「ヴァリトーン」とは、サックスのネック部分にピックアップを取り付け、アンプを通して変調させたり、エフェクターのオクターバーやコーラスのようなことができる代物。

冒頭の「 Live Right Now」は、エレクトリック・サックスが炸裂、渋〜いジャズ・ファンクが心地よい。4曲目の「Lovely Is Today」はエレベの絡みが実にファンキー。そして、面白いのは、5曲目の「Theme In Search Of A T.V. Commercial」。ダイナミックでスリリングなアレンジのビッグバンド・ジャズ・ファンクで、ビッグバンドをバックに、ソウルフルなハリスのテナーが乱舞する。

この盤の収録曲、現代においてサンプリングされているものが多い。それだけ、ソウルフルでファンキーで魅力的なフレーズが詰まっている。加えて、自在に音色を変化させ、ノリに乗ったブロウを吹き上げる、エレクトリック・サックスのグルーヴの心地よさ。クロスオーバー・ファンクとして、十分に楽しめる好盤です。
 
 

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2024年1月 3日 (水曜日)

ガーランド5 の 『Soul Junction』

1950年代「ハードバップ・マイルス」の良き相棒、レッド・ガーランド。ガーランドのピアノはシンプルでバップでブルージー。バックに回れば伴奏上手。フロント管を引き立て鼓舞する、合いの手を打つような、シンプルなピアノ。そんなガーランド。意外とハードバップ時代のコルトレーンのバッキングにも、上質の「伴奏上手の妙」を発揮する。

Red Garland『Soul Junction』(写真左)。1957年11月15日の録音。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), John Coltrane (ts), Donald Byrd (tp), George Joyner (b), Art Taylor (ds)。ピアノのガーランドがリーダー。コルトレーンのテナーとドナルド・バードのトランペットがフロント2管のクインテット編成。

コルトレーンとガーランドの共演はたくさんある。録音年1957年としては、例えば、『John Coltrane with the Red Garland Trio』=『Traneing In』がある。ただ、この盤はパーソネルが雑然としていて、あまり「パーソネルは関係無し」な盤で、初期の「シーツ・オブ・サウンド」だけを体感できる、少し偏った盤であった。

だが、この『Soul Junction』は違う。ガーランドがリーダーの盤なので、コルトレーンはあくまでサイドマンとして振る舞っている。しかも、フロントの相手が大先輩のドナルド・バード。『Traneing In』はコルトレーンはバックをおいて吹きまくるのだが、この盤では違う。しっかり、グループ・サウンドの中で、周りの音を聴きながら、サックスを吹き回す。ところどころ、「シーツ・オブ・サウンド」を控えめに吹きまくるのはご愛嬌。
 

Red-garlandsoul-junction

 
冒頭のタイトル・ナンバー「Soul Junction」は絶品のスロー・ブルース。冒頭、絶妙なガーランドのピアノ。コルトレーンとバードのソロは中盤。リラックスした雰囲気で悠々と流れていく、絶品のスロー・ブルース。続く有名スターダードの「Woody’N You」は小粋で絶品のハードバップ。コルトレーンとバードのフロントのパフォーマンスも申し分ない。

しかし、このコルトレーンの「我慢」がガーランドにも伝わったのか、ラストの「Hallelujah」は熱いバップ・パフォーマンス。この曲だけは、コルトレーンは存分に「シーツ・オブ・サウンド」を吹き回す。

演奏の形式がモードではないので、ガーランドもバードもコルトレーンに付き合って、「シーツ・オブ・サウンド」のパフォーマンスを披露する。ドラムのテイラーもバッシバッシとバップなドラミングで応戦する。微笑ましいバンド・パフォーマンスである。

さすが、人気のガーランドのリーダー作。パーソネルの人選も良く、ガーランドのピアノが一番に映える内容になっている。コルトレーンはさすがに、ガーランドを差し置いて好き勝手に吹くことはしない。この辺のバランスがとても良い、ガーランドがリーダーのクインテット盤。コルトレーンの「シーツ・オブ・サウンド」も五月蝿くなく聴けます。
 
 

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2024年1月 2日 (火曜日)

コルトレーン『Traneing In』再び

明けましておめでとうございます。今年最初のブログ記事は、コルトレーン記事のリニューアルからスタート。コルトレーン関連の記事については、2010年代前半に書かれた記事が多く、今を去ること10年以上になる。10年以上にもなると、自分のジャズの「聴き耳」も進歩しているので、昔、聴けなかった音が聴けたり、昔、気が付かなかったフレーズや展開、アレンジに気がついたりする。

John Coltrane『Traneing In』(写真左)。1957年5月31日の録音。プレスティッジ・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、John Coltrane (ts), Johnnie Splawn (tp), Sahib Shihab (bs), Red Garland (p on 1-3), Mal Waldron (p on 4-6), Paul Chambers (b), Albert "Tootie" Heath (ds)。基本はフロント3管(テナー、トランペット、バリサク)に、ピアノ・トリオのリズム・セクションがバックに控える。

この盤、プレスティッジのコルトレーンのリーダー作の中で、唯3枚しかない、在籍録音時に直ぐにリリースされたリーダー作の中の一枚。しかも、この盤、当初は『John Coltrane with the Red Garland Trio』(写真右)のタイトルで1958年にリリースされている。

が、コルトレーンがプレスティッジを去って、アトランティックに移籍して人気を獲得した1961年に、この『Traneing In』のタイトルに変えて、再リリースされている。内容は全く同じ。タイトルとジャケが違うだけ。プレスティッジって、ほんとエゲつないことするなあ。
 
この盤、バックにガーランド or ウォルドロンのトリオが控えた、コルトレーンとトランペットのジョニー・スプローンがフロント2管のクインテット編成。プレスティッジのコルトレーンのリーダー作って、大体がそうなんだが、パーソネルが雑然としている。プレスティッジって、コルトレーンを低く見ていたのか、パーソネルが雑然としている盤が多い。この盤も例に漏れず、である。
 

Johncoltranetraneing_in   

 
しかし、この盤はあまり「パーソネルは関係無し」な盤。この盤は、コルトレーンがフリー〜アバンギャルドに傾いていない頃の演奏で、ハード・バップを基調にした、実に素直な「シーツ・オブ・サウンド」のフレーズを体験することができる。つまり、コルトレーンの初期の「シーツ・オブ・サウンド」を楽しむ、その唯一点に価値がある盤である。

冒頭の「Traneing In」、3曲目の「Bass Blues」、ラストの「Soft Lights and Sweet Music」では、高速の「シーツ・オブ・サウンド」が堪能できる。単に速いだけではない、コードを分解して、いかに高速に、いかに鋭く吹き切るか、を追求する、修道僧のような求道的なコルトレーンを体験できる。

そして、2曲目の「Slow Dance」と4曲目の「You Leave Me Breathless」では、バラードでの「シーツ・オブ・サウンド」が体験できる。コードを分解して、いかに単純に、いかに簡素化して、最短距離でバラードを吹き切るか、を追求する、甘いエモーショナルを排除した、禁欲的なコルトレーンを体験できる。

特にこの盤では「シーツ・オブ・サウンド」へ至る、演奏上のアプローチが体感できる。最初は手探りで入りながら、確信を掴むと一気に吹き切る、ジャズのインプロの「最良のサンプル」のひとつがここにある。全5曲で、トータル38分ちょっと。今のCD前提のアルバムと比べると、ちょっと短い収録時間だが、唯、コルトレーンの初期の「シーツ・オブ・サウンド」を楽しむには問題は無い。

コルトレーンのアルバムの中では、地味な存在で、ジャズ入門本では、滅多に取り上げられることの無いアルバムですが、どうして、コルトレーンの初期の「シーツ・オブ・サウンド」が体感できる、意義のあるアルバムです。マニアだけが知っている「オタク盤」で留めるには勿体ない。もっと、広く聴かれても良いのでは、と僕は思います。
 
 

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