エディ・ハリス最後の大衆ジャズ
エディ・ハリスのテナーは、先日ご紹介した『Mean Greens』で、圧倒的熱量とエモーショナルなファンクネスを撒き散らしたソウルフルなテナーを引っさげ、ソウルフルでグルーヴィーなエレ・ジャズへ転身した訳だが、デビュー当時は「スムージーでイージーリスニング・ジャズ志向のファンキー・ジャズ」だった。
Eddie Harris『Cool Sax From Hollywood To Broadway』(写真左)。1964年9月、NYでの録音。コロンビア・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Eddie Harris (ts), Kenny Burrell (g), Cedar Walton (p), Bob Cranshaw (b), Billy Brooks (ds)。
リーダーのエディ・ハリスのテナー・サックスと、ケニー・バレルのギターがフロントのクインテット編成。バックのリズム隊は、シダー・ウォルトン率いるトリオ。充実のパーソネルである。
デビュー盤『Exodus To Jazz』に収録された「Exodus」がヒットしたことで、エディ・ハリスのリーダー作は「スムージーでイージーリスニング・ジャズ志向のファンキー・ジャズ」で統一される。いわゆる「大衆ジャズ」「大衆迎合ジャズ」である。ただ、内容が良いので、僕はこれは「アリ」だと感じて、「ながら聴き」盤として聴いている。
そんな中で、この『Cool Sax From Hollywood To Broadway』は、デビュー盤から数えて、11枚目のリーダー作。デビュー盤が1961年、この11枚目のリーダー作が1964年。3年間で11枚のリーダー作を量産している。いかに人気があったかが窺える。
ミュージカル曲や映画音楽のカヴァーが主のアルバム。この盤で「スムージーでイージーリスニング・ジャズ志向のファンキー・ジャズ」路線も11枚目。
聴く側からすると、完全に飽きがきており、かつ、演奏する側もアレンジについては「手練れた」感があって、ちょっとマンネリな雰囲気が漂う。しかし、原曲の良さが上回っていて、日米の評論で「ケチョンケチョン」なのだが、聴いてみるとそんなに内容の無いアルバムでは無い、と思う。
エディ・ハリスのテナーはスムーズでファンキー。バレルのギターがファンキーで流麗。この名手二人のフロントがミュージカル曲や映画音楽の印象的なフレーズを基に、小粋なパフォーマンスを繰り広げる。バックのリズム・セクションも、名手ウォルトンのピアノが洒脱、クランショウのベースがビートをしっかり抑えていて好サポート。
充実したメンバーで、スムージーでイージーリスニングなジャズをやるのだ。もちろん、聴き心地は抜群。まあ、それが硬派なジャズ者の方々からすれば「商業主義」に流れて許せないのでしょうけど(笑)。
大手のコロンビア・レコードに移籍したので、どうしても「大衆迎合的なイージーリスニング・ジャズ」を求められてしまうので、この盤の内容がスムージーでイージーリスニングになってしまうのは仕方がない。
でも、そんなに悪くは無い。パーソネルが充実しているだけに、硬派なジャズを聴いた合間に聴く「ながら聴き」のジャズ盤としては良好な内容だと思います。とにかリラックスして、難しいこと考えること無く聴ける。
なお、エディ・ハリスは、次作『The In Sound』で、ジャズの志向を方向性をガラリと変え始める。その第一歩が名曲「Freedom Jazz Dance」。この曲がエディ・ハリスの大きな転換点となる。
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