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2023年12月29日 (金曜日)

『Coltrane(Prestige)』再び

コルトレーンのリーダー作の記事を整理し始めた。コルトレーンのリーダー作の記事については、2010年代前半に書かれた記事が多い。今を去ること10年以上になる。10年以上にもなると、自分のジャズの「聴き耳」も進歩しているので、昔、聴けなかった音が聴けたり、昔、気が付かなかったフレーズや展開、アレンジに気がついたりする。

つまりは、今の自分の「聴き耳」による、今の自分のコルトレーンのリーダー作の評価が以前とは異なるケースもあるので、他ならぬコルトレーンである。もう一度、しっかりコルトレーンのリーダー作を聞き直して、今の自分の「聴き耳」で、今の自分の評価をまとめて、以前の記事を修正しようと思い立った。

John Coltrane『Coltrane(Prestige)』(写真左)。1957年5月31日の録音。この盤は同一日セッションの音源オンリーで、1957年10月にリリースされている。ちなみにパーソネルは、John Coltrane (ts), Johnnie Splawn (tp), Sahib Shihab (bs), Red Garland (p on 1-3), Mal Waldron (p on 4-6), Paul Chambers (b), Albert "Tootie" Heath (ds)。基本はフロント3管(テナー、トランペット、バリサク)に、ピアノ・トリオのリズム・セクションがバックに控える。

コルトレーンの初リーダー作になる。この初リーダー作については、プレスティッジからのリリースだが、プレスティッジお得意の様々なセッションからの寄せ集め、という暴挙はなく、1セッションの録音成果から、コルトレーンの初リーダー作を編集している。よって、曲によって、演奏の雰囲気が違ったり、演奏の編成がガラっと違ったり、コルトレーンの調子が変化したりすることは無いので、安心して聴くことが出来る。

ただし、コルトレーンの初リーダー作にしては、ちょっと狙いがボンヤリとした、とっ散らかったパーソネル。これはプレスティッジ・レーベルお得意の「エイヤっでジャズマン集めて、誰かをリーダーにして、ジャム・セッション分の一発録り」だったようで、プロデューサーのボブ・ウェインストックからすると、コルトレーンの初リーダー作については、ほとんど重要視していなかったようで、これだけが残念である。
 

John-coltranecoltraneprestige

 
よって、このコルトレーンのリーダー作については、バックのミューシャンのパフォーマンス込みで評価するのは、いささか無理がある。バックのミュージシャンの演奏を聴いていていも、コルトレーンの初リーダー作だから、しっかりサポートしないと、と言う雰囲気は感じられない。このコルトレーンの初リーダー作については、コルトレーンのパフォーマンスに絞って評価するのが一番だと思う。

そういう点では、この盤のコルトレーンのパフォーマンスは申し分無い。デビュー当初は「いもテナー」と評されたテクニックも安定し、速いフレーズにも破綻の無い、どっしり落ち着いた安定感がある。アドリブ・フレーズも当時としては新しい、イマージネーション溢れる優れたもので、聴けばすぐにコルトレーンだと判るくらい。

また、この盤でのコルトレーンのパフォーマンスで、特に優れているのは「バラードの表現力」。今では語り尽くされている感があるが、この盤の2曲目「Violets for Your Furs(コートにすみれを)」のバラード表現は絶品である。この時点でのコルトレーンのジャズ・テナーの表現力が非常に高いことを証明している。この時点でのコルトレーンのテナー・サックスのバラード表現の力量は他のテナー・マンと比べて、頭ひとつ飛び抜けている。

コルトレーンのテナー・サックスの個性と特性はこの盤を聴くと良く判る。コルトレーンは、この個性と特性をベースに発展していくことになる。プレスティッジ時代のコルトレーンはまだまだ進化前。真の進化は、アトランティックに移籍後の『Giant Step』以降を待たねばならない。しかし、プレスティッジ時代の各リーダー作では、研鑽を重ね、ハードバップを極めていく、頼もしいコルトレーンを確認することが出来る。
 
 

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