ヘンダーソンの円熟を聴く。
Smoke Sessions Records。コンスタントに良い内容のアルバムをリリースしていて、常々、感心している。
実績のある中堅〜ベテランのジャズマンをリーダーにしたアルバムをメインにリリースしているのだが、その内容は「昔の名前で出ています」的な旧来のハードバップな演奏を懐メロ風にやるのでは無く、しっかりと現在の「ネオ・ハードバップ」な演奏に果敢に取り組ませている。これが「当たり」で、あのベテランが、と感じる快作を多くリリースしている。
Eddie Henderson『Witness to History』(写真左)。2022年9月13日、NYの「Sear Sound Studio C」での録音。ちなみにパーソネルは、Eddie Henderson (tp), Donald Harrison (as), George Cables (ac-p, el-p), Gerald Cannon (b), Lenny White (ds), Mike Clark (drums on 1)。
Eddie Henderson(エディ・ヘンダーゾン)は、エレ・ファンク出身のトランペット奏者。1970 年代初頭、ハービー・ハンコックの「ムワンディシ・バンド」のメンバーとして有名になり、その後、10年間を通じて、自身のエレクトリック・ジャズのグループを率いている。そして、ヘンダーソンは医学の学位を取得し、精神科医とミュージシャンとして並行してキャリアを積み、1990年代、アコースティック・ジャズに復帰している。
エディ・ヘンダーソンのSmoke Sessions Records からの最新作、4枚目となるリーダーアルバム。冒頭「Scorpio Rising」は、エレ・マイルスを彷彿とさせる「エレ・ファンク」。ヘンダーソンのトランペットは、マイルスみたいなんだが、マイルスほど尖んがってはいない。エッジの丸い流麗なマイルス、って感じのトランペットが「今風」で良い。しっかり、現代のエレ・ジャズの雰囲気を醸し出す、なかなかのエレ・ファンク。
2局目「Why Not?」以降、エレ・ファンクから、ネオ・モードな演奏に変わるが、このモーダルな演奏の中で、ヘンダーソンのモーダルなトラペットが実に映える。流麗でドライなマイルスの様な、モーダルなヘンダーソンのトランペットが良い感じ。ただし、モーダルなフレーズはどれもが「今風」で、昔のモーダルなフレーズを模したりはしていない。この辺りに、ヘンダーソンの矜持を強く感じる。
マイルスのモード・ジャズからエレ・ファンクを踏襲しているが、マイルスのフレーズやアイデアを模すことなく、現代のエレ・ファンクやネオ・ハードバップの感覚をしっかりと踏まえて、ヘンダーソンなりのエレ・ファンク、ヘンダーソンなりのモード・ジャズを展開しているところに僕は感心する。今回のセッションに参加しているベテラン・ジャズマンも良い味を出している。
ヘンダーソンは1940年10月生まれ。録音時は83歳。もう大ベテランの域に達したヘンダーソン。今回のアルバムは「ヘンダーソンの円熟」を音に変えて我々に聴かせてくれた様な「快作」である。
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