フェローシップ・バンドの新作
現代のジャズ・ドラマーのお気に入りの一人に「ブライアン・ブレイド(Brian Blade)」がいる。米国のジャズ・ドラマーで、1970年7月生まれなので、今年で53歳になる。自身が運営するグループ「フェローシップ・バンド」にて、初リーダー作をリリースして以降、ずっと、この「ザ・フェローシップ・バンド」で自身のリーダー作を発表し続けている。
ブライアン・ブレイドと言えば、サイドマンとしての活動にも優れた実績を残していて、チック・コリア、ケニー・ギャレット、ジョシュア・レッドマン、ウェイン・ショーター、ノラ・ジョーンズ、そして、ボブ・ディラン、ジョニ・ミッチェルなど、ジャズがメインではあるが、ジャンルの垣根を超えて、ロック畑の一流ミュージシャンとの共演が目を引く。ジャンル問わずのオールマイティーなドラマーでもある。
僕は「ブライアン・ブレイドがドラマーとして参加するアルバムに駄盤無し」と常々感じていて、ブレイドのサイドマンとしてのドラミングは適応力、応用力、説得力が抜群。ブレイドのドラミングの個性&特徴はそのままに、それぞれのリーダーに合ったリズム&ビートを的確に提供している。しばらく聴いていると、これってブレイドかな、と判るくらい、個性と特徴のあるドラミングで、お気に入りになると「クセになる」ドラミングである。
Brian Blade & The Fellowship Band『Kings Highway』(写真左)。ちなみにパーソネルは、Brian Blade (ds), Melvin Butler (ts, ss), Jon Cowherd (p, org), Kurt Rosenwinkel (g), Christopher Thomas (b, c.t. synth), Myron Walden (as, b-cl)。2017年『Body And Shadow』以来の、ブライアン・ブレイド率いる「ザ・フェローシップ・バンド」としての7枚目のスタジオ盤になる。
内容的には従来からの「ザ・フェローシップ・バンド」の音世界を踏襲している。1970年代、ECMレーベルがメインにリリースしてきた「ニュー・ジャズ」、いわゆる現代のコンテンポラリー・ジャズ。ハードバップの様な4ビートの旧来のジャズではなく、モーダルな展開をメインに、リズム&ビートはジャジー、即興演奏を旨として、自由度の高い、それでいて流麗〜メロディアスでキャッチャーなフレーズ展開がメインの音世界。
冒頭、ブレイド作の「Until We Meet Again」のフェローシップらしい分厚いハーモニーが「らしくて」良い。続くカワード曲「Catalysts」は、柔軟でしなやか、力強くて切れ味抜群のブレイドのドラムと、ローゼンウィンケルの高速テクニカルで浮遊感のあるエレギが印象的。3曲目の、これまたカワード曲「People’s Park」、サックスとギターのアンサンブルが美しい。
以降、ブレイド作が続いて「Kings Highway」、ドラマチックな展開にワクワクする。ハイレベルなソロ・パフォーマンスも聴き応え十分。「Look to The Hills」の高揚感が印象的で、「Migration」は15分超えの大作だが、この大作をフェローシップはダイナミックにリリカルに演奏しきってしまう。展開のバリエーション豊かで、マンネリに陥るところは皆無。創造力豊かなフェローシップ・バンドの面目躍如。ラストは讃美歌「「God Be with You」の厳かで敬虔な演奏で幕を閉じる。
ブレイドの硬軟自在、変幻自在、緩急自在な、説得力のあるドラミングは素晴らしいの一言。そして、ギターのローゼンウィンケルが大活躍。他のフェローシップのメンバーの演奏も充実の一言。この盤、ブライアン・ブレイド率いる「ザ・フェローシップ・バンド」として、現時点での最高の内容を誇る好盤だと思う。コンテンポラリー・ジャズ者には堪らない内容。良いアルバムです。
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