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2023年11月18日 (土曜日)

ジョン・ルイス meets 西海岸

ジョン・ルイスのピアノが好きである。ジョン・ルイスは、一流のジャズ・ピアニストであり、クラシックの様々な音楽理論にも精通した、アーティステックな音楽家である。Modern Jazz Quartetでは、弦楽四重奏的な演奏手法を取り込み、対位法を用いた楽曲を作曲&演奏したり、バッハのジャズ化にチャレンジしたり。ジョン・ルイスは、芸術性を前面に押し出したジャズ・ミュージシャンの代表格であった。

ジャズをアカデミックな音楽ジャンルとして捉え、クラシックの手法などに精通している、のが気に入らないとかで、昔の硬派な「4ビート東海岸のモダン・ジャズ絶対主義」のジャズ者の方々からは敬遠されていた節がある。

かなり偏った評価だが、昔はそういう「ジャズの許容量が狭い」ジャズおじさんが沢山いた。ジョン・ルイスは嫌い、MJQはもっと嫌い。個人個人の感じ方なので、それはそれで良いのだが、大きな声で悪口を並べるのは良くない(笑)。

John Lewis『Grand Encounter』(写真)。1956年2月10日、ロスアンゼルスでの録音。Pacific Jazzからのリリース。ちなみにパーソネルは、John Lewis (p), Bill Perkins (ts), Jim Hall (g), Percy Heath (b), Chico Hamilton (ds)。サブタイトルが「2° East / 3° West」。ジョン・ルイスとパーシー・ヒースの二人が「東海岸」、ビル・パーキンス、ジム・ホール、チコ・ハミルトンが「西海岸」。
 

John-lewisgrand-encounter

 
まさに、東海岸ジャズマンと西海岸ジャズマンとの「豪華な出会い」である。フロントのテナーとギター、ドラムが「西海岸」なので、演奏全体の音作りは「ウエストコースト・ジャズ」志向になっていると思いきや、どこか「イーストコースト・ジャズ」のファクネスやブルージーな雰囲気が漂っているところが面白い。

まず、それだけ、ジョン・ルイスのピアノが「黒い」のだ。クラシックの手法に精通しているのにも関わらず、ルイスのピアノは「黒い」、つまりジャジーなのだ。加えて、紡ぎ出すフレーズがそこはかとなくファンキー。そんな「黒い」ピアノで、対位法を用いた楽曲を作曲&演奏したり、バッハのジャズ化にチャレンジする。そんなアンバランスな魅力というか、ジャズのボーダーレスな特質が具現化されているというか、そいうところが、ジョン・ルイスのピアノの魅力。

もともと、ジョン・ルイスの作曲する楽曲は「聴かせる」楽曲。そういう点では、西海岸向きだと言える。そんなジョン・ルイスの楽曲が西海岸のジャズマンと共演することで、映えに映える。西海岸ジャズマンは「聴かせる」ジャズの演奏表現に長けているので、ジョン・ルイスの曲を全く違和感なく、聴き手に訴求する「聴かせる」演奏を展開している。

ジャズは「融合」の音楽ジャンル、他の音楽ジャンルの取り込みに長けるところが長所なのだが、この盤は、東海岸ジャズと西海岸ジャズとの融合。ジョン・ルイスのピアノと作曲センス、パーシー・ヒースの「聴かせるベースラインは西海岸、出てくる音は東海岸」というベースが西海岸ジャズにピッタリ合って、素敵な「融合」ジャズがここに記録されている。
 
 

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