ジョン・ルイスの個性と特徴
ジョン・ルイス(John Lewis)は、ジャズをクラシックと同等のアーティステックな音楽と捉え、ジャズの基本であるブルースから、ファンクネスの源泉であるゴスペル、はたまたクラシックの数々の手法にも精通したジャズ・ピアニストである。
自らのリーダー作では、対位法を用いた楽曲を作曲&演奏したり、バッハのジャズ化にチャレンジしたり。音楽監督として腕を振るったグループ「Modern Jazz Quartet」では、弦楽四重奏的な演奏手法を取り込んだり。ジャズの持つ「芸術性」を一段階、押し上げたイメージの辣腕ピアニスト&コンポーザーである。
John Lewis『The John Lewis Piano』(写真左)。1956年7月30日、1957年2月21日、8月24日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、John Lewis (p), Barry Galbraith (g, tracks 3,5,6), Jim Hall (g, tracks 7), Percy Heath (b, tracks 2,4), Connie Kay (ds, tracks 1,2,4)。ジョン・ルイスの4枚目のリーダー作。
タイトルが「ジョン・ルイスのピアノ」。アルバム・タイトル通り、そんなジョン・ルイスの個性と特徴がしっかりと記録されているリーダー作である。ピアノ・ソロの演奏は無いが、デュオ(ドラムかギター)とピアノ・トリオによる演奏がメインで、ジョン・ルイスのピアノが全面に押し出され、その個性と特徴が良く判る内容になっている。
端正で知的、リリカルで洗練されていてクール。その底にはブルージーな感覚と、そこはかとないファンクネスが漂っている。バリバリ弾きまくることは皆無。音を厳選した、シンプルで音の間を活かした弾き回し。左手が刻むビートは「黒くてジャジー」。決して、ラウンジ・ピアノっぽくはならない。そんなところ、対位法などクラシックの手法を応用した展開や弦楽四重奏的なアレンジが出てきたりして、全体に「アーティステック」な雰囲気が色濃く漂う。
バップなピアノとは対極に位置するような、無理にスイングさせない、古き良きブルースやゴスペルの感覚を漂わせながら、シンプルに、抑制されたオフビートな弾き回しを披露する。特に、ドラムのデュオ、ギターとのデュオに、ジョン・ルイスのピアノの個性が映えに映える。あぁ、これがジョン・ルイスのピアノやな、と実感する。
アーバンなインテリジェンスも感じさせる、ジョン・ルイスの作曲とアレンジについても特筆に値する。そんなジョン・ルイスの個性と特徴がしっかりと感じ取ることのできる『The John Lewis Piano』である。
「バリバリの演奏力」や「聴けばすぐに判る個性的な弾き回し」で勝負するのではなく、生涯ブレる事の無かった「自らの美意識に基づいた弾き回し」と、作曲&アレンジの才による「作品の完成度&構築力」で、ジャズ・ピアニストとしての格好たるポジションを獲得した。そんなジョン・ルイスの個性と特徴がダイレクトに体感できるアルバムがこの『The John Lewis Piano』である。
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