ヴァーヴのウエスは只者では無い 『Movin' Wes』
ウエス・モンゴメリーのリーダー作に駄盤は無い。ウエスの場合、初リーダー作にして、彼のギターのスタイル、個性が完璧に確立されていて、リーダー作を重ねるごとに、そのテクニックが段階的に向上していって、ピークを迎えた後、急逝するまで、そのピークな状態を維持し続けた。つまり、ウエスは、そのギターのスタイル、個性、テクニックがピークに達したまま、鬼籍に入ったことになる。
Wes Montgomery『Movin' Wes』(写真左)。1964年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Wes Montgomery (g), Bobby Scott (p), Bob Cranshaw (b), Grady Tate (ds), Willie Bobo (perc) 、ウエスがフロントのカルテット編成+パーカッションがメインで、バックに3トランペット、4トロンボーン、2チューバのブラス・セクションが付く。そして、異色の楽器として、Jerome Richardson (woodwinds) が入っている。
この盤は、ウエスがヴァーヴ・レコードに移籍した後、第一弾のリーダー作になる。プロデューサーは、後のCTIの総帥プロデューサーのクリード・テイラー。ジョニー・ペイトがアレンジを担当している。パーソネルを見ても分かる通り、プロデューサーの名前を見ても分かる通り、演奏の編成から聴こえてくる音は「イージーリスニング・ジャズ」。
ただし、ウエスの「イージーリスニング・ジャズ」は只者ではない。とにかく、ウエスがギター弾きまくっている。ギター一本がフロントなので、フロント旋律は「細身」なのかと思いきや、ウエスのギターの旋律は太くて切れ味抜群、奏でる旋律がブラス・セクションの音をバックにくっきり浮かび上がってくる。ブラス・セクションの助けを借りての「イージーリスニング・ジャズ」では無い。ブラス・セクションをウエスのギターの「引き立て役」にして、ガッチリ従えている。
冒頭の有名スタンダード曲「Caravan」を聴けば、それが良く判る。「Caravan」は、フロント楽器の超絶技巧なテクニックが映える名曲だが、この曲でのウエスの引き回しは凄い。切れ味の良い、鬼気迫る弾き回しながら、そのテンションは軽やか。凄いテクニックで弾き回しているのに、それが耳につかない、どころか、心地よい響きで耳に伝わってくる。そして、そんなウエスの弾き回しが、ブラス・セクションを従えることによって、さらに引き立つ。
ヴァーヴ・レコードは大手ジャズ・レーベルだけあって、大衆にアピールし訴求する「売れるイージーリスニング・ジャズ」をウエスに求めた。そして、ウエスはその要求に応え、さらに、ウエスのスタイルと個性とテクニックで、その「イージーリスニング・ジャズ」をアーティステックな、メインストリーム志向の純ジャズのレベルに押し上げている。改めて、ウエスの「イージーリスニング・ジャズ」は只者ではない。
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