ジャズ喫茶で流したい・268
クリス・ポッター(Chris Potter)。米国シカゴ出身、1971年1月1日生まれ。今年で52歳になる、ジャズ・サックス奏者の中堅。純ジャズのみならず、フュージョン、ファンク的なアプローチにも長けている、オールマイティーなサックス奏者だが、やはり、メインストリーム系の純ジャズを吹かせたら、現代ジャズ・サックス奏者の先頭集団に値するパフォーマンスを披露してくれる。
Chris Potter『Got the Keys to the Kingdom: Live at the Village Vanguard』(写真左)。2022年2月、ニューヨークのライヴ・ハウス「The Village Vanguard」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Chris Potter(ts), Craig Taborn (p), Scott Colley (b), Marcus Gilmore (ds)。ポッターのテナーがワンホーン・フロントの、いわゆる「ワンホーン・カルテット」編成。演奏楽器もしっかり「アコースティック」のみで編成されている。
ワンホーン・カルテットのパフォーマンスは、フロント1管の演奏内容が聴き取り易い。この盤では、フロント1管の、ポッターのテナーのパフォーマンスの内容をじっくりと味わい尽くすことが出来る。
加えて、本ライヴ盤は収録されている6曲全てがカヴァー、オリジナル曲は無い。ジャズ・スタンダード、アマゾン民謡、ボサノヴァ、静的なスピリチュアル・ジャズなどを演奏している。このオリジナル曲の無いライヴ音源というのは、アレンジ、楽曲の解釈、アドリブ展開の仕方などが、他のサックス奏者のライヴ・パフォーマンスと比較し易い。そのライヴ盤のリーダーが吹くサックスの力量と才能を推し量り易くなる。
力感溢れる、高テクニックで悠然とブロウするポッターのテナーは実に魅力的。実に硬派でクールで歌心満載のポッターのテナーは、メインストリーム系の純ジャズでのパフォーマンスにおいて「映えに映える」。ポッターのテナーの力量と才能がハイレベルであることを十分に確認することができる。
ネオ・ハードバップな、ネオ・モーダルな正統派なテナーで、スタンダード曲やボサノバ曲を悠然とブロウし、テクニックを駆使して、アブストラクトな展開、フリーな展開にも対応する。高速フレーズも難なくこなす。圧倒的である。ポッターのテナーの優れたところは「オリジナリティー」を保持していること。コルトレーン風の吹き方をしそうな展開でも、ポッターはそうはならない。ポッター・オリジナルな展開を吹き上げていく。これは「見事」というほか無い。
バックのリズム・セクションも優秀。ECMでお馴染みのフリー〜スピリチュアル系、ミネソタ州ミネアポリス出身のピアニスト、クレイグ・テイボーン。お爺さんがロイ・ヘインズ、ヴィジェイ・アイヤーのトリオでドラムを担当するマーカス・ギルモア。ポッターと何作も共演しているお馴染みのベーシスト、スコット・コリー。このリズム隊が、適応力抜群なネオ・ハードバップなリズム&ビートを叩き出す。
クリス・ポッターのテナーは純ジャズにこそ、ネオ・ハードバップにこそ、最高に「映える」。そんな事実をこのビレバガでのライヴ盤はしっかりと伝えてくれる。ポッターのメインストリーム系のテナーを愛でるに最適な一枚。良いライヴ盤です。
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