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2023年11月12日 (日曜日)

「ECMのロヴァーノ」の新作です

寒い。とにかく寒い。気象通報によれば「年末年始頃の寒さ」。あの〜今はまだ11月の上旬なんですが。これだけいきなり寒くなると、外出するのも憚られる。こういう日は、冬の身支度をして、部屋の中で熱いコーヒーでもすすりながらジャズを聴く。それも耽美的でリリカルなニュー・ジャズだ。それに限る。

静的で耽美的でリリカルなニュー・ジャズとくれば「ECMレーベル」のジャズ盤だろう(なんかこればっかりやなあ・笑)。特に21世紀に入った後のECMの音は幅が広がってきた。ECMといえば「欧州ジャズ」の老舗なんだが、21世紀に入って、ボーダーレスになってきた。東欧的な音、米国的な音、イスラエルな音、音の幅が広がって「ワールド・ワイド」になってきている。

Joe Lovano, Marilyn Crispell, Carmen Castaldi『Our Daily Bread』(写真左)。2022年5月の録音。ちなみにパーソネルは、Trio Tapestry : Joe Lovano (ts, Tarogato, Gongs), Marilyn Crispell (p), Carmen Castaldi (ds)。ベースレス、テナー+ピアノ+ドラムの変則トリオ、ジョー・ロヴァーノのトリオ・タペストリーからの3枚目のアルバム。

ジョー・ロヴァーノ(Joe Lovano)は、アメリカのジャズ・サックス奏者。1952年12月29日生まれ。今年で71歳。大ベテランの域。初リーダー作は、1985年の『Tones, Shapes & Colors』。ちょうど、純ジャズ復古の時期に新鋭サックス奏者としてデビューしたので損をしている。純ジャズ復古のタイミングでカムバックしてきたベテラン・ジャズマンや、1960年代のハードバップを最良のジャズとして、その再現に精進した新伝承派ジャズマンに混じってのデビューだったので、目立ち損ねた感がある。
 

Joe-lovano-marilyn-crispell-carmen-casta

 
ECMレーベル独特の音世界の中での、ボーダーレスな「静的でスピリチュアルなジャズ」。即興演奏をメインとした、ボーダーレスなモード・ジャズをベースに、ECMお得意の「静的で耽美的でリリカルなニュー・ジャズ」が展開される。そんまニュー・ジャズの音世界にスピリチュアルな要素がしっかりと反映される。ECMにとって「新しい響き」ひとつ。

まず、ロヴァーノのサックスの音自体が「スピリチュアル」。そこに耽美的でリリカルなクリスペルのピアノが絡む。そして、このボーダーレスな「静的でスピリチュアルなジャズ」のリズム&ビートを、カスタルディのドラムがガッチリと支える。

ロヴァーノのサックスとクリスペルのピアノが醸し出す、耽美的でリリカルな音の広がり。その音の広がりに、カスタルディのシンバルがビートを刻み、印象的なメリハリを加える。典雅で流麗な、そして浮遊感溢れるバラードチックな展開には、思わずじっくりと聴き惚れてしまう。

今年のECMからリリースされた「静的なスピリチュアルなニュー・ジャズ」のアルバムの中でも白眉の出来。耽美的でリリカルな音の広がりだけでなく、リズム&ビートもしっかりと刻む。水墨画の様な仄かな暗さだけでなく、仄かに明るいブリリアントでくすんだ音の輝きもあり、アドリブ展開の巧みさと相まって、ジャズの持つ「即興の妙」を心ゆくまで楽しめる。良いアルバムです。
 
 

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