久々のマンジョーネ『虹への旅』
「哀しみのベラヴィア」や「サンチェスの子供たち」、そして「フィルソー・グッド」など、フュージョン・ジャズにおけるヒット曲を持つチャック・マンジョーネ。1970年代後半から1980年代前半、フュージョン・ジャズのブームをリアルタイムで体験したフュージョン者の方々であれば知らない人はいないはず。
トランペット&フリューゲルホーンの両刀使いではあるが、印象的なのはフリューゲルホーンの方だろう。柔らかだが芯があって伸びが良く、ミッドテンポに乗って、中低音域から高低音域の真ん中レベルの音程で、朗々とゆたっりとフレーズを吹き上げていく様は、マンジョーネ独特なもの。
Chuck Mangione『Journey To A Rainbow』(写真)。1983年の作品。邦題『虹への旅』。ちなみにパーソネルは、Chuck Mangione (flh, el-p, syn), Chris Vadala (fl, sax), Peter Harris (g), Gordon Johnson (el-b), Everett Silver (ds)。マンジョーネ以外、知らない名前ばかり。スタジオ・ミュージシャンで固めたのか、の5人編成。
この盤を聴いてつくづく思うのは、マンジョーネのフリューゲルホーンの音が、すごく聴き心地が良くて印象的だなあ、ってこと。まず、マンジョーネのフリューゲルホーンは「音が魅力的」。
朗々とゆったりと鳴って、音のエッジが丸くて暖かい。音がス〜っと伸びていく。そして何より音に翳りがなく明るい。それじゃあ、イージーリスニングでしょ、と思われるのだが、それがそうではなくて、どこかジャジーな響きがして、決して、イージーリスニングでは無いのだから不思議。
この人のフリューゲルホーンは、高速な吹き回しやハイノートは無く(元々、フリューゲルホーンは苦手)、テクニック的にアピールするところはほぼ無い。演奏曲もミッドテンポの曲が多く、マンジョーネのフリューゲルホーンは、中低音域から高低音域の真ん中レベルの音程をキープして、ゆったり朗々と吹き上げていく。
おそらく、演奏する曲自体が、そんなマンジョーネのフリューテルホーンの特性を活かした楽曲でありアレンジなんだろう。マンジョーネのフュージョン盤が、どの盤もすごく聴き心地が良くて印象的なのは、マンジョーネのフリューゲルホーンの個性とそれを活かす楽曲とアレンジがバッチリ合っているからなんだろう。決して「無理をしていない」のだ。加えて、アレンジに様々な工夫が凝らされていて、アルバムを通して飽きることが無い。
この『Journey To A Rainbow』も同様の内容の、マンジョーネ節満載の好盤である。まず冒頭のタイトル曲が良い感じ。親しみやすく美しいフレーズ、いわゆる「マンジョーネ節」が良い。そして、興味深いのは、4曲目「Buttercorn Lady」。かつて、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズに在籍中の1966年にチャックが作曲した楽曲。
そう、マンジョーネって、元は純ジャズの出身。将来有望な若手ジャズマンの登竜門的存在であった、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズに在籍していたのだから、基本的には、素性はまともなトランペット&フリューゲルホーン奏者である。
決して、ゲテモノでもなければ、ラッキーな「一発屋」でもない。マンジョーネは、素性確かなフュージョン・フリューゲルホーンのスタイリストである。これだけ朗々と印象的なフレーズを吹き上げるフリューゲルホーンは、彼をおいて他にない。だからこそ、今の時代にも、マンジョーネのリーダー作は好盤として聴き親しむことが出来るのだ。
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