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2023年10月23日 (月曜日)

キャリントンの幻の初リーダー作

ジャズの世界では1940年代から、女性の活躍がある。ボーカリストから始まって、ピアニスト、ベーシスト、ドラマー、そして、サックス奏者、トランペット奏者、などなど、知る限りでは、ジャズの楽器のほぼ全てにおいて、女性ミュージシャンが存在している。これは素晴らしいことで、才能さえ伴えば性別は関係ない、は、ジャズにおいては、もはや「常識」である。

Terri Lyne Carrington(テリ・リン・キャリントン)。1965年8月4日生まれ。米国マサチューセッツ州出身。ジャズドラマー。ジャズにおける第一線級の女性ジャズ・ドラマー。バークリー音楽大学の教授も務める才媛。僕は彼女の名前とドラミングを、Wayne Shorter『Joy Ryder』で知った。スインギーではない、テクニカルなスクエアなノリの、圧倒的なグルーヴ感と硬軟自在、緩急自在な「攻めるドラミング」が個性。

Terri Lyne Carrington『TLC & Friends』(写真左)。1981年10月19日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Terri Lyne Carrington (ds, arr), George Coleman (ts), Kenny Barron (p), Buster Williams (b)。

パーソネルを見て、思わずビックリ。今の目で見ると「大御所」ばかりではないか。録音当時、ピアノのバロンは38歳、テナーのコールマンは46歳。ベースのバスター・ウィリアムスは39歳。リーダーのキャリントンが16歳だから、まさに「親子」ほど年齢差のある、キャリントンの早熟さが際立つパーソネルである。

さて、この盤は、キャリントンが1981年16歳の時に自主制作した未発表デビュー・アルバムになる。今回、キャンディッドより初のオフィシャル・リリースがなされた。いわゆる「幻の初リーダー作」である。
 

Terri-lyne-carringtontlc-friends

 
この16歳当時のキャリントンの初リーダー作を聴いて、キャリントンのドラミングの個性をしっかり把握することができた。弱冠16歳の初リーダー作である。飾り気のない、真っ正直な才能の開花が感じられる。とにかく、実に楽しそうにハイレベルなドラムを叩いている。この錚々たる共演者を前にして、である。

父ソニーがプロデュースを務め、サックスのジョージ・コールマン、ピアノのケニー・バロン、ベースのバスター・ウィリアムスらの「強者」達と堂々としたインタープレイを繰り広げる。このドラミングで16歳のものかいな、と半ば呆れた(笑)。

どこかでこの様なシチュエーションがあったなあ、と思ったら、18歳で鮮烈なデビューを飾った、トニー・ウィリアムスのデビュー当時のドラミングだ。しかし、このキャリントンのドラミングはトニーより2歳若い。これは凄いなあ、と思わす聴いていてウキウキする。

コール・ポーターの「What Is This Thing Called Love?」から始まり、キャリントン自作の「La Bonita」、マイルスの「Seven Steps To Heaven」、ロリンズの「St. Thomas」「Sonny Moon For Two」、そして、ビリー・ジョエルの名曲「Just The Way You Are」がカヴァーされている。スタンダード曲から、ミュージシャンズ・チューン、そして、ロック・ポップスまで、なんとケレン味のない、楽しい選曲だろう。

キャリントンは、これらの聴いて楽しい楽曲の中で、実に楽しそうにドラムを叩いている。そして、共演の「父親の様な」強者ジャズマン達が、つられて、いつになく楽しそうに朗らかに演奏しまくっているのが、実に微笑ましい。

これだけ楽しそうで朗らかで明るい純ジャズな展開なので、パーソネルを確認するまでは、キャリントンと同世代か兄姉レベルの年齢のメンバーで和気藹々とやっているのかと思った(笑)。そして、パーソネルを見てびっくり。強面、強者の「おとーさん」ジャズマンばかりはないか(笑)。
 
 

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