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2023年10月25日 (水曜日)

「たをやめオルケスタ」の最新盤

ビッグバンドには、そのバンド毎に「志向」がある。とにかく、アーティステックにストイックにビッグバンドの「芸術性を追求するバンド」。エリントンやベイシーなどのレジェンドなビッグバンドの音を「研究〜現代で再現しようとするバンド」。元々はダンス・ミュージックなのだからと、多人数のアンサンブルやユニゾン&ハーモニーを楽しみ、ソロ演奏を楽しむ「エンタテイメント性を追求するバンド」などなど。

ビッグバンドの音は追求すればするだけ面白いのだが、多人数がゆえ、バンド全体の運営が厳しい。世界的に見ても、テンポラリーにビッグバンドを編成し、演奏することはままあっても、恒常的にバンド活動を維持し、コンスタントにアルバムをリリースしているビッグバンドは数少ない。我が国においては、宮間利之ニューハード、東京キューバンボーイズ、ちょっとジャズから外れるが、東京スカパラダイスオーケストラ。メジャーなところでこれくらいしか、名前が浮かばない。

たをやめオルケスタ『祝宴フィフティーン』(写真左)。2023年9月のリリース。 活動15周年を迎える女性16名のビッグバンドの最新フル・アルバム。2021年にリリースされた二枚の7inchに納められた楽曲を含む計11曲を収録。

「たをやめオルケスタ」とは、女性のみで構成されるトロピカル楽団として、岡村トモ子 (as, fl) を中心として2008年に結成。「たおやめ」は「手弱女」と書くのだが、どうして、迫力のあるブロウ、力感溢れるアンサンブル、ドライブ感豊かなユニゾン&ハーモニー、手に汗握るインタープレイと、その音だけ聴けば、女性のみで構成されるビッグバンドとは思えない。
 

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収録された楽曲を見渡すと「Take the A train」「Someday My Prince Will Come(いつか王子様が)」「A Night in Tunisia(チュニジアの夜)」などの有名ジャズ・スタンダード曲や、ラテン・ジャズやカリプソ、アフター・ビートルズ、アメリカン・ポップス、はたまたヒップホップなどの楽曲をカヴァーしていて楽しい。そして、このバラエティーに富んだ楽曲を、工夫とアイデアに富んだアレンジで、とっても楽しいビッグバンド曲に変身させている。

じっくり聴いてみて、とにかく演奏テクニックが確か。とにかく上手い。揺らぎもなければ、ふらつきもない。一糸乱れぬユニゾン&ハーモニー、ズレのないバッチリ合ったアンサンブル。音の迫力、音の厚み、音の輝き、どれをとってもビッグバンドとして一級品。ソロイストのパフォーマンスも及第点(ちょっと安全運転風。ライヴだと違うのかな)。

そして、このビッグバンドの一番は「聴いていて楽しい」こと。適度なスイング感、アクセント確かダンサフルなオフビート、そして、流麗で明るいフレーズ。そんなビッグバンドが、デューク・エリントンの「Take the A train」や、ジョージ・ハリソンの「I've Got My Mind Set On You」、カーペンターズの「Close to You」なんかをブイブイやるのだ。聴いていて楽しいことこの上ない。たをやめオルケスタって「エンタテイメント性を追求するバンド」の優れものである。

たをやめオルケスタ。バンド名だけは知っていたが、こんなに素晴らしいビッグバンドだとは知らなかった。スミマセン(笑)。結成以来15年というが、その間、たをやめオルケスタの音源に全く出会えなかったのだから、こういうこともあるもんだなあ、と(笑)。今回、やっと、たをやめオルケスタの音源に出会えた。聴いて思う。良いビッグバンドに出会えたと....。
 
 

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