『Ahmad Jamal Plays』を聴く
2023年4月16日、アーマッド・ジャマル(Ahmad Jamal)が天に召された。まだ半年しか経っていない。もともと長生きで92歳での逝去だった。ジャマルについては、『At the Pershing: But Not for Me』を聴いて、ジャマルを知ってから45年。ずっとジャマルのリーダー作をリアルタイムで聴いてきたから、いまだに逝去したのが実感できない。
『Ahmad Jamal Plays』(写真左)。最初は弱小レーベルParrotからのリリース。Parrotが潰れて、Argoレーベルから再発された時は、タイトルは『Chamber Music of the New Jazz』。現在では、このArgoレーベルの『Chamber Music of the New Jazz』の方が通りが良い。
1955年5月23日、シカゴでの録音。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (p), Ray Crawford (g), Israel Crosby (b)。ピアノ、ドラム、ギターの「オールド・スタイル」のピアノ・トリオである。シカゴ出身のジャマル初期の盟友、ドラムのクロスビーと、ピッツバーグ出身のギターのクロウフォードが、ジャマルの脇を固める。
実に良い雰囲気のラウンジ・ピアノが展開される。ピアノ、ベース、ギターの「オールド・スタイル」のピアノ・トリオが、ばっちりハマっている。ジャマルのピアノは、「間」を活かし、弾く音を限りなく厳選し、シンプルな右手のフレーズと合いの手の様に入る左手のブロックコードが特徴。これが1950年代ジャマルの演奏スタイル。この「オールド・スタイル」のトリオ演奏が、ジャマルの「1950年代の個性」を増幅する。
こうやって聴いていると、ジャマルって、いつの時代も、ラウンジやライヴハウスで聴かせる「ラウンジ・ピアノ」が基本で、その音志向については、それぞれの時代のトレンドや流行に則って、ジャマル独自のスタイルを作り出しているのではないか、と思い始めている。聴き手の要求に応じて、ラウンジやライヴハウスで聴かせるジャズ・ピアノ。それがジャマルのスタイルなんだろう。
マイルスが欲しがったというジャマルのピアノ。それだけで、ジャズ・ピアノの偉大なスタイリスト、として語られることが多かったジャマル。その証拠として『At the Pershing: But Not for Me』ばかりがもてはやされるが、それは違うだろう。ジャマルは、その時代ごとに聴き手の要求に応じて、ラウンジやライヴハウスで聴かせるジャズ・ピアノが身上。時代ごとにスタイルは変わるが、ジャマルは、ジャズの歴史上、最も偉大な「ラウンジ・ピアニスト」だと思う。
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