新しいビッグバンド・サウンド
ジャズのビッグバンドについては、コロナ禍にも関わらず、有名ビッグバンドについては、その組織を堅調に維持し、録音も順調にこなし、内容充実の好盤をリリースし続けている。これは素晴らしいことで、コロナ禍ゆえ、バンドのメンバー全員が集まってリハーサルをこなすことなど、なかなか出来なかったと思うのだが、その高度なテクニックとアンサンブルを維持する努力は並々ならぬものがあったのだろう。本当に頭の下がる思いである。
挾間美帆 feat. Danish Radio Big Band『Imaginary Visions』(写真左)。2021年3月の録音。挾間美帆の作曲&指揮、デンマーク・ラジオ・ビッグバンドの演奏。デンマークは2020年12月から2021年の2月までロックダウンで、そのロックダウンが解けたあとの録音とのこと。挾間美帆が作曲したオリジナル作品をビッグバンドで演奏するというのは初めて、とのこと。
2019年に彼女がデンマーク・ラジオ・ビッグバンドの首席指揮者に就任して以来、満を持してのオリジナル作品。これまで彼女の作品は、彼女自身が主宰するM_unitでの活動&レコーディングがメインだったので、本格的な正統派ビッグ・バンドでの初の録音になる。これは注目盤である。
まず、アレンジが個性的。伝統的なビッグバンドの正統派なアレンジなんだが、今までの正統派ビッグバンドのアレンジと響きと音の重ね方が違う。音の重なり方は重厚なのだが、どこが明るい感じのオープンな音の重ね方で、響きが軽快。重厚で複雑なビッグ・バンドのパフォーマンスでありながら、フレージングは軽やかで躍動感がある。今までに聴いたことがない、ビッグバンドのアレンジについつい引き込まれる。
かつ、ギル・エヴァンスのアレンジの如く、アドリブ・ソロをとる楽器のみならず、一つ一つの楽器の力量と個性を活かし、その集合体として相乗効果溢れるアンサンブルが素晴らしい。特に楽器一つ一つの音が分離して聴こえる様で、それがバラバラにならず、一体となって、バンドの音となり個性となる。狭間美帆の書く楽曲が良いのだろうし、そのアレンジも十分に考え抜かれたものなんだろう。このビッグバンドのアンサンブルも個性的。
狭間美帆ならではのビッグバンド・サウンドがこの盤にある。21世紀の新しい響きと新しい響きのアンサンブルを個性とした、新しいビッグバンド・サウンドの出現である。あまり、話題に上がっていない様だが、この狭間美帆の初のビッグバンド・サウンドは要チェックだろう。とりわけ、ビッグバンド者の方々には是非一聴を、と思う。
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