マクレイヴンの最先端ジャズ
マカヤ・マクレイヴン(Makaya McCraven)は、1983年10月19日、仏パリ生まれのジャズドラマー(マルチ奏者)&プロデューサー。今年で40歳になる中堅に差し掛かる年齢。このマクレイヴン、現代ジャズ屈指のビート・サイエンティストと評価の高いドラマー。現代ジャズの最先端の音の一つを聴かせてくれる、現代ジャズの重要人物の一人になる。
Makaya McCraven『In These Times』(写真左)。2023年6月のリリース。他の作品と並行して、7年間の制作期間を経てリリースされた、現代ジャズ屈指のビート・サイエンティストが辿り着いた最高点であろう秀作。ちなみにパーソネルは、
Makaya McCraven (ds, sampler, perc, tambourine, baby sitar, synths, kalimba, handclaps, vibraphone, wurlitzer, organ), Junius Paul (b), Jeff Parker (g), Brandee Younger (harp), Lia Kohl (cello), Macie Stewart,Zara Zaharieva (vln), Marta Sofia Honer (viola), Greg Ward (as), Irvin Pierce (ts), Marquis Hill (tp, flh), Greg Spero (p), Rob Clearfield (p), Joel Ross -(vib, marimba), Matt Gold (g, per, baby sitar), De'Sean Jones (fl)。
オーケストラやラージ・アンサンブルのアレンジ、オーガニックなビート・ミュージックが織り込まれたマクレイヴン独特の音世界。サンプリング、リミックスも素晴らしい。5つのスタジオと4つのライブ演奏スペースで録音され、マクレイヴンが自宅でポスト・プロダクション作業を徹底的に行っているという。オーガニックで中毒性のあるビート感が独特で、現代ジャズの最高のエレ・ジャズともThe Jazz Files: Makaya McCraven評価できる内容。確かに「中毒性」が溢れている。
重層的で肉厚な生楽器のアンサンブルとオーガニックなビートの掛け合わせは、音響的にも心地よい響き。これだけでも聴いていて気持ちが良い。ポスト・プロダクションを緻密に行なっているからといって、ジャズの即興性が損なわれている訳ではない。ましてや、「作られたジャズ」だからといって、聴く価値がない、と判断するのも違うだろう。ポスト・プロダクション前の演奏自体が、完璧にジャズしているし、即興性、創造性ともに高いレベルにある。
マイルスが開拓したエレ・ジャズ。ライヴ演奏をメインに、エレクトリック楽器の特性を活かして、即興性、創造性を最大限に広げた。そして、21世紀に入っての今、このマクレイヴンのエレ・ジャズは、ファンクネスを超えて、ワールドワイドなビートをメインに、独特の「クールな」、とびきり「カッコ良い」エレ・ジャズ。
タイトル曲の「In These Times」は、観客の拍手や歓声が、フェードアウト〜フェードインするように、変拍子のハンドクラップに変わるという「小粋」な始まり方。シンセの使い方はユーロビートの様でもあり、プログレッシヴ・ロックの様でもあり。そこに、生楽器のサックスやトランペット、フルートが入ってきて、ハープの音がアクセントを添える。マリンバもワールド・ミュージック的な躍動感を醸し出し、エレギの音が不思議な浮遊感を醸し出す。ワード(語り)の使い方もミステリアスで絶妙。
今年に入っての、意外と「とんでもない」内容のマクレイヴンの新盤。これまでのジャズが追求してきた「融合」の部分がこの盤の中で結実し、ビートの重要性を再認識させ、ジャズにおける即興性を再定義する。これも立派なジャス。これが現代の最先端のジャズの音の「一つ」である。マクレイヴンの次作は要注目である。
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