ローゼンウィンケルのギターソロ
Kurt Rosenwinkel(カート・ローゼンウィンケル)。1970年、米国フィラデルフィア生まれのジャズ・ギタリスト。今年で53歳になる中堅。初リーダー・アルバム『East Coast Love Affair』(1996年)から、ほぼ1枚/年のペースで、堅実にリーダー作をリリースしている。
2016年には、独立した音楽レーベル Heartcore Records を設立し、この独自レーベルを基点に活動している。不思議とコロナ禍が始まった2020年辺りから、活動が活発になっているみたいで、新盤のレビューを見ていると、ローゼンウィンケルの名前をちょくちょく見かけるようになった。
Kurt Rosenwinkel『Berlin Baritone』(写真左)。2022年、ベルリンの「Heartcore Records Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Kurt Rosenwinkel (g) のみ。カート・ローゼンウィンケルの初のギター・ソロ盤になる。このソロ盤は「バリトン・ギター」というアコギを使用している。この「バリトン・ギター」を採用した効果が全編に渡って漲っている。
テンポはミッドテンポ中心のゆったりとしたテンポ。そんな余裕のあるテンポで、ローゼンウィンケルは、クールで印象的で、ちょっとワームな「バリトン・ギター」を弾き進めていく。この「バリトン・ギター」の音が実に印象的。思わず聴き耳を立て、しばらくジックリと聴き込んでしまう。
普通のギターとの違いは、ベースラインの低音。ベース・ギターの様に、ソリッドでタイトな低音が鳴り響く。このバリトン・ギター独特の低音が、ソロ・パフォーマンスにおけるベースラインを明確にしてくれる。これは、普通のアコギではなかなか出ない低音で、ここにもバリトン・ギター採用の効果が出ている。
そして、中音域の音が豊か。曲のメインフレーズや、アドリブ展開の弾き回しなどが、クッキリと浮き出てくる。そして、ストロークを奏でる時の音の分厚さ。とにかく、中音域から低音域の音の響きが豊かで厚みがある。まるで、ソロ・ギターの為にあるような「バリトン・ギター」である。ローゼンウィンケルの個性的な和音や繊細なタッチが明確に伝わってくる。
ローゼンウィンケルのギター・テクニックが冴え渡る。一本弾きのアドリブ・フレーズは耽美的で流麗。即興演奏のフレーズは、マンネリズムなど何処吹く風、新鮮な新しいフレーズがどんどん湧いて出てくる。どこかアーバンな響き、どこか黄昏色の黄色く輝く様な音の響き。アーバンとはいえ大都会では無い、地方都市サイズの、少しフォーキーなアーバン感。
クラシックの佳曲などを選んでいることもあって、20世紀のファンキーでブルージーな米国ジャズの音とは異なる、端正でアーティスティックな、どこか欧州ジャズ的な音。ローゼンウィンケルは米国出身のギタリストなのだが、出てくる音はどこか「欧州ジャズ的」。ここにも、ジャズのボーダーレス化を感じる。
ちなみに、バリトン・ギターは、ローゼンウィンケルが、2019年の 「NAMM Show」(世界最大規模の楽器見本市)で出会い、夢中になったらしい。また、このソロ・ギター盤であるが、バリトン・ギターの細やかな余韻まで、しっかりと捉えた録音がとても良い。
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