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2023年9月16日 (土曜日)

1980年代タイナーのジャズオケ

1980年代のマッコイ・タイナーの聴き直しに突入。1970年代はほぼマイルストーン・レーベル一本槍で、タイナー・ミュージックの確立期の記録が追体験出来る。1980年代はマイルストーン・レーベルを離れ、複数のレーベルを渡り歩く、タイナー・ミュージックの「成熟と過渡期」の時代。そんな1980年代のタイナーにも魅力満載。

McCoy Tyner『13th House』(写真)。1980年10月の録音。ちなみにパーソネルは、McCoy Tyner (p, arr), Oscar Brashear (tp), Kamau Muata Adilifu (flh), Slide Hampton (tb, arr), Gregory Williams (french horn), Bob Stewart –(tuba), Hubert Laws (piccolo, fl), Joe Ford (as, ss, fl), Ricky Ford (ts, ss), Frank Foster (ts, ss, cl, arr), Ron Carter (b), Jack DeJohnette (ds), Airto Moreira, Dom Um Romao (perc), Jimmy Heath (arr)。

タイナーのマイルストーン・レーベルの最終作。1972年のタイナー流モード・ジャズの名盤『Sahara』から始まり、毎年1〜2作のペースでリーダー作を発表、この『13th House』で、タイナーの「黄金期」であるマイルストーン時代は一旦の終結を迎える。マイルストーン時代は、タイナーがタイナー流のモード・ジャズを確立し、コルトレーンの「アフリカン・ネイティヴな音志向」を前提としたモーダルなジャズオケ演奏を継承した時代である。

当盤『13th House』は、大編成ジャズ・オーケストラにおけるタイナー・ミュージックの完成形。タイナーの大編成ジャズ・オーケストラなリーダー作は、以前に『Song Of the New World』(1973年)、『Fly With The Wind』(1976年)の2枚がある。いずれも、ジャズ・オーケストラにおけるタイナー・ミュージックの名盤であるが、内容の充実度からすると、今回の『13th House』が頭1つ抜きんでている。
 

Mccoy-tyner13th-house

 
今回はアレンジがとても優れている。資料を紐解くと、スライド・ハンプトン(3曲目「Search For Peace」)、ジミー・ヒース(2曲目「13th House」)、フランク・フォスター(5曲目「.Leo Rising」)の3人が1曲づつ担当、残りの1曲目「Short Suite」と4曲目「Love Samba」の2曲を、リーダーのマッコイ・タイナーが担当。

タイナーのアレンジも良いが、他の3人の「タイナーのアフリカン・ネイティヴな音志向」を前提としたモーダルなジャズオケ演奏を想定したアレンジが、それぞれ個性があって、全く飽きの来ない展開になっているところが良い。

そして、ジャズオケの肝になるリズム・セクションについては、リーダーのタイナーがピアノ、そして、ベースにロン、ドラムがデジョネットと、振り返れば、ビックリする様なレジェンド級のメンバーによる、重厚で柔軟度の高いリズム・セクションで、ジャズ・オケのフロント楽器に全く負けない、逆に、フロント楽器全体を鼓舞しコントロールするリズム・セクションで、このリズム・セクションの存在がとても効いている。

この『13th House』は、タイナーの「アフリカン・ネイティヴな音志向」を前提としたモーダルなジャズオケ演奏のアルバムの中で一番、内容の充実度が高い。タイナーのピアノの充実度も最高レベルに近い。

我が国のジャズ盤紹介本や雑誌の名盤紹介には、タイナーの「アフリカン・ネイティヴな音志向」を前提としたモーダルなジャズオケ演奏のアルバムについては、何故か『Fly With The Wind』ばかりが、ほんの時々『Song Of the New World』が紹介されるが、このこの『13th House』の紹介記事については、ほとんど見たことが無い。タイトルが良く無いのか、ジャケが良く無いのか、それでも内容は、前の2枚『Fly With The Wind』と『Song Of the New World』を凌駕する優れもの。

紹介記事が僅少なのに怯まず、一度は聴いて欲しい優秀作。特に、マッコイ・タイナーのファンには絶対お勧めです。
 
 

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