1990年代の唯一のリーダー作 『High Life』
Weather Report(ウェザー・リポート, 以下略して「WR」)以降の「Wayne Shorter(ウエイン・ショーだー)」のリーダー作を聴き直している。
1985年の『Atlantis』から始まり、『Phantom Navigator』『Joy Ryder』と、基本的には、WRの音世界をショーターなりに、ショーターとして解釈し、ショーター印のWR的な音世界をずっと追求し続けて来た。
Wayne Shorter『High Life』(写真左)。1995年の作品。ちなみにパーソネルは、Wayne Shorter (sax), Rachel Z (p, syn, sequencing, sound design), David Gilmore (g), Marcus Miller (b, rhythm programming, b-cl), Will Calhoun (ds), Terri Lyne Carrington (ds, track 8), Lenny Castro, Airto Moreira (perc), Munyungo Jackson, Kevin Ricard (perc, track 8), David Ward (additional sound design)。
前作『Joy Ryder』は1988年の作品で、バックの演奏を含め、当時として、最先端のコンテンポラリーなエレ・ジャズの記録がこの『Joy Ryder』に満載。逆に、この盤以上の内容を追求する必要がないくらい充実していた。それから7年経ってのリーダー作である。1995年の秋。きっと「新しいショーターの音世界」が展開されているに違い無い、とワクワクしながら、この『High Life』を聴き始めたのを覚えている。
で、出てきた音は、なんと再び「ショーター印のWR的な音世界」。未だにWRの音世界を追求するショーターがいた。しかも、キーボードは、ザヴィヌルの代わり、ザヴィヌルの影武者の様な「レイチェルZ」が音楽監督も兼ねて、担当している。
前作までは「ショーター印のWR的な音世界」を追求してはいるが、基本的に「ザヴィヌル抜き」のイメージでの「ショーター印のWR的な音世界」の追求であり、それが効果的で、ザヴィヌル主導のWRとの比較が明確に出来て、ショーターのクリエイターとしての矜持を強く感じたものだった。
が、この盤では、ザヴィヌルの様な、どこかエスニックで、どこかワールド・ミュージックの様な旋律が微かに流れている。趣味の良い、耽美的でリリカル、複雑に捻れた「ザヴィヌルの様なキーボードの音」の印象が耳に強く残る。この『High Life』の音世界は一番、WRに近い。
レイチェルZとデヴィッド・ワードの音作りは、モードを基本とした音の繋がりで、当時としてユニークではある。しかし、大本の音世界が「ショーター印のWR的な音世界」で、一番WRに近いので、音作りのユニークさ、より先に、未だWRの音世界を追い続ける「マンネリズム」が先に立ってしまうところが実に惜しい。
ショーターのサックスは伸び伸びとショーターなりの捻れフレーズを吹きまくっているし、マーカス・ミラーのエレベは、斬新で複雑なモーダル・ラインを連発する。レイチェルZのキーボードは妖艶でショーターっぽい。演奏自体は当時としてハイレベルの演奏で、この1枚だけを聴けば傑作なんだが、WR以降のリーダー作を続けて聴いてくると、どうしてもこの盤の音の基本が「ショーター印のWR的な音世界」であるところに、どうにも「またか」的な印象を持ってしまう。
単発だと名盤だが、リーダー作の中では、ちょっとレベルが下がる、そんな「困ったちゃん」なショーターのリーダー作である。
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